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第275話― 修羅の道

ブレストはフランス、ブリュタ―ニュ半島の先端に位置するフランス最大の軍港である。

機動戦艦を簡易であれば整備する施設もありその、存在は大きい。

しかし、現在、フランスは解体されており、ドイツ神聖帝国の軍港ブレストとして機能していた。

そんな、ブレストを襲ったのはアドルフ・ヒトラー率いるSSの残党だった。

彼らは、フレドリクに不満を持っており、再起をかけて機動戦艦が出払っているこの隙に反旗を翻したのである。

軍港を制圧した後、アメリカから奪った戦艦隻の一部を制圧し、SSの残党は砲をブレストに向けてけん制しつつ街を制圧したのである。

ドイツの将兵達もフレドリクに不満を持つものもいたのだろう。

ヒトラー軍の規模は1万にまで膨れ上がった。

このままなら、各地で反乱の旗があがるのは時間の問題だろうとSSの将兵達は思っていた。

しかし、反乱の当事者であるはずのアドルフ・ヒトラーは頭を抱えていた。


「なんということをしてくれたんだ!」


ヒトラーは戦艦、ミシシッピからザクセンと名を変えた戦艦の部屋で頭を抱えた。


「しかし、総統、我々はブレストを抑えています。 あのフレドリクといえど安々とは手を出せないでしょう」


ヒトラーを命がけでかばったことを買われ今やヒトラーの1番信用できると言われるヒムラ―であったがヒトラーは後悔していた。


「お前は、あの男を甘く見ている。 奴は目的のためなら手段を選ばんのだ。 10万程度の犠牲など何も気にせず攻撃してくるだろうそれに、やり方がまずい、砲を街に向けるやり方はな」


「ま、まさか! この、ブレストには大量の民間人がいるのですぞ?」


「あの男は、そんなことを気にしない男だ」


ヒトラーはアドルフ・フレドリクに恐怖を抱いていた。

ヒトラーはアドルフ・フレドリクが敗北する可能性にかけていた。

日本連合艦隊ならばあるいは奇跡を起こすのではないかと・・・

報告を受けていた紀伊や三笠がフレドリクの野望を砕いてくれるのではないかと・・・

だが、ブレストを制圧した直後、入った情報は紀伊・三笠の撃沈の報告だった。

ブレストの制圧にせよ、将兵の独断専行にすぎない。

一度壊滅したことにより、指揮系統に混乱があるのは無理がない相談だった。

むしろ、ここまで立て直せたことが奇跡に近い。

それに、期待していた各地での反乱も今のところない。

フレドリクがレジスタンスを壊滅状態に追い込んだことと、生き残った小規模なレジスタンスも様子みているらしい。

無理もない相談だった。

あの恐ろしい機動戦艦が戻ってくればあっけなく戦局は逆転する状況で反乱もない。


「しかし、際は投げられたのです。 ここまでくれば我らが勝つかあの男が勝つかです」


ザクセンを始めとする艦は砲をブレストに向けていた。

これにより、ブレストの町に大きな混乱はない。

恐怖で街を押さえこんでいるのである。

しかし、次の瞬間、ヒトラーは顔を青くする。


「そ、総統、アドルフ・フレドリクを名乗る男から通信です」


兵の言葉にヒトラーは電話を手に取った。

この受話器を通じて遠くの相手と話せるようにザクセンは改装されていた。


「お久しぶりです義父上」


声だけでも顔が鮮明に浮かんでくる。


「あ、ああ、久しぶりだな」


冷や汗が出てくるのがヒトラーには分かった。

まるで、処刑の宣告をされているような気分だった。


「やはり、生きていらっしゃいましたか? これがどういうことか説明していただけますか?」


「し、知らん! これは部下が勝手にやったことだ」


ヒムラ―が何か言いたそうにするがヒトラーはそれを睨みつけるようにして制した。



「それではあなたに2つの選択肢をあげましょう」


「2つの選択肢だと?」


ヒトラーが聞くと受話器の向こうからヒトラーにとって冷酷な選択肢が告げられる。


「降伏し、処刑されるか。 帝国の糧となるかの2択です」


がんと頭を殴られたような衝撃を受けてヒトラーは言う。


「そのし、処刑されるというのは分かるがドイツの糧とはどういうことだ?」


「それを教える気はありません。 10秒差し上げましょう。 ここで返答してください10・・・9・・・」


カウントが始まってしまう。


(どうすればいいんだ・・・)


ヒトラーは頭を抱えた。

この電話の相手には得意の演説も何の役にも立たない。

仮にも血が繋がっている相手に人はここまで冷酷になれるのか・・・


(戦うしかないのか・・・)


駄目だ、勝てるわけがないとヒトラーは頭をかきむしった。


「4・・・3・・・2・・・」


カウントは進められていく。

もう時間はない。

ならば・・・


ヒトラーは受話器を叩きつける。


「全軍に通達! これより・・・」


「総統! 海上に発砲炎を確認! 敵です!」


慌てて入ってきた兵が告げる。

同時に艦内に戦闘用意のブザーが鳴り響いた。

その、ほぼ同時にヒトラーの耳に連続した爆発音が響いた。

しかし、衝撃はない。

一体なんだとヒトラーが思った時、新たな兵が飛び込んできた。


「ブレストが砲撃されています!」


窓に駆け寄ると連続した爆発と炎が艦の窓からでも分かった

沖合にいる艦からの砲撃らしい。

その砲撃は嵐のようにブレスト市内に展開していたSS達を消し飛ばしていく。

むろん、民間人も巻き添えである。

沖合の艦は無差別砲撃を繰り広げているのである。


「あの男は狂ってる!」


ヒトラーは言った瞬間、フレドリクの思惑に気付いた。


「ま、まさかドイツの糧というのは・・・」


市内でひと際巨大な炎が巻き起こった。

同時にザクセンに火柱が巻き起こった。


「うわ!」


ヒトラーは床に尻もちをうち机を掴み立ち上がろうとしたがさらに衝撃が走り、艦が傾いていることに気付いた。

街への砲撃は続いている。 同時にザクセンの右舷に4つの水柱が巻き起こった。

魚雷攻撃である。

ヒトラーは静かに目を閉じた。


「あの男はユダヤ人よりもはるかに危険だった。 気付いてさえいれば・・・」


そこから先はヒトラーは言うことができなかった。

ザクセンの弾薬庫に引火した炎は大爆発を引き起こし、ヒトラーの体を焼き尽くした。

今度こそ、アドルフ・ヒトラーは死亡したのである。

生き残ったSSの将兵達はブレストの市内を逃げ回っていた。

街の外に脱出しようとした将兵もいたがそれは敵わなかった。


「敵機だ!」


空を指した兵の言うとおり巨大な爆撃機の集団が空を埋め尽くさんとばかりに空を埋めている。

雨のように爆弾が降ってくると思い、兵達は恐慌状態に陥った。

ブレストの近くにある飛行場の戦闘機は専門の訓練を受けないと動かせないジェット戦闘機でどうにもならない。

わずかながらに飛び上がった戦闘機は紅い機体に一蹴されてしまった。

そして、極めつけはブレストの外から土煙を上げながら近づいて来る何かがいる。

戦車と歩兵を乗せたトラックなどの陸上戦力だった。

その数は5万は下るまい。

戦力差は5倍以上、おまけに半壊状態に陥ったヒトラー軍が勝てる道理はない。

その時、彼の後ろの港で巨大な炎が立ち上った。

制圧した戦艦がやられたのだろう。

同時に砲撃が止んだ。

しかし、兵達にとってはもはやどうでもいい。

シャツを切り裂いて兵達は白旗を作り始めた。










「元帥、奴らは降伏するようです」


「ああ・・・」


ロンメルはドイツ軍の戦車レオパルドの上で双眼鏡を覗き込みながら言った。

ブレストの町は炎に包まれて激しく炎上している。

上空の爆撃機が消火剤をばらまき始めた。

あの爆撃機の集団は消火剤を満載しているのである。

もちろん、これだけでは火は消えない。

街を制圧したら消火活動を兵に命じなければなるまい。


「この炎はヒトラーの戦艦が放った砲撃と聞きましたがひどいことを・・・」


「確かにな・・・ドイツが日本を攻略する前に反乱を起こす可能性がある彼らを倒す必要があった・・・だが、ヒトラーを殺すのにこんな方法を使わなくても・・・」


ブレストの民間人の被害は数万人を越えるだろう。

ロンメルは突入していく歩兵達を見ながら小さくつぶやくのだった。


その後、ブレストの制圧は1日をかからず完了し、一部の兵が反抗を試みたがそれも制圧された。











「おい! ブレストが壊滅したって話、聞いたか?」


フランスのとある田舎の民家の中である。

もはや、壊滅状態となったレジスタンスのわずかな生き残り達はラジオを囲んでいた。

ブレストが壊滅した次の日、重大な報告があるというラジオが流れたのだ。

それが後、数分で始まるのである。


「知ってるさ。 だから、こうやってラジオを囲んでいるんじゃないか」


「しっ、始まるぞ」



「ドイツ神聖帝国連合艦隊司令長官アドルフ・フレドリクだ。 本日は皆に先日起こった悲劇と栄光をお伝えしなければならない」


「栄光と悲劇?」


「黙れ」


つぶやく仲間を黙らせながら耳を向ける。


「まずは、悲劇を、先日、ブレストの町は、アドルフ・ヒトラー率いる反乱軍に制圧されたが陸軍による奪還作戦の結果、反乱軍の長アドルフ・ヒトラーを殺害。 これは、栄光ではなく悲劇だ。

なぜなら、ブレストの町はヒトラーが制圧した戦艦の砲撃により大きな被害を出し、4万人以上の死傷者を出し、今もなお行方不明者の捜索は続いている」


「ブレストに艦砲射撃か・・・ヒトラーの野郎悪魔だな」


「死んでせいせいしたわ」


「くそ! 俺の妻を殺したのはヒトラーの野郎か!」


「ドイツに併合された時はどうなるかと思ったけどこの人はゲルマン民族でなくても平等ね」


「ユダヤ人達も解放してくれたし」


「世界を統一し戦争をなくすなんて夢物語だと思ってたけどこいつならやるかもな」



各地でラジオを聞いた人々が口に出すのはヒトラーへの憎悪の言葉とフレドリクに対する

褒め言葉であった。

そして、犠牲者への哀悼を告げた後彼は言った。


「そして、栄光の報告は。我らドイツ神聖帝国艦隊は日本海軍の切り札であり、最後の希望『紀伊』『三笠』、そして、『大和』を撃沈した」






「大和?」


「噂に聞いたことがある。 日本海軍には奇跡を起こす戦艦があったらしい。 それが大和」


「その奇跡を起こす戦艦とやらも俺達ドイツには勝てなかったわけだ」


「紀伊と三笠って戦艦も聞いたことがあるぞ」


「倒した艦なんて鉄屑よ」


「それもそうか」


酒場で男女は再びラジオに耳を傾ける。





「栄光と悲劇! 帝国は2つの大きな試練を乗り越えた! そして、我々は世界統一に向け滅ぼさなければならない者達がいる」


一体なんなんだとみんながラジオを見ている。

そして、フレドリクは言ったのである。


「日本連合艦隊の壊滅こそ我らに残された最後の試練である! ドイツ神聖帝国に栄光を!」


国土全体から湧き立つような歓声が起こった。

フレドリクを懐疑的な目で見ていたものも見る目を変えたものは多かった。

反対にレジスタンスや反抗勢力はもはや、これまでかと絶望した。












「お疲れさまでした」


「ああ」


アドルフ・フレドリクは差し出されたタオルを受け取りながら廊下を進んでいく。

彼の従兵であるヘレン・ヴァイスはその後に続く。

彼の演説をヘレンはまじかで聞いてた。

エリーゼはいない。 今、フリードリッヒ・デア・グロッセはドイツに戻る途中であるからだ。

彼らは一足先に航空機でドイツに戻ったのである。


用意されていたヘリに乗り込み、飛翔していく。


フレドリクは窓の外を見ながら小さくなっていく地上を見ながら


「滑稽だと思うか?」


「え?」


ヘレンが聞き返すとフレドリクは言った。


「ドイツ国民の士気を高めるためとはいえ、俺は数万の人間を虐殺するように命じた。 表向きはヒトラーがやったとなるだろうが虐殺と聞いても俺は心が痛まない」


「・・・」


ヘレンは何も言い返せなかった。

人が死ぬのは悲しい。

自分を助けてくれたフレドリクがそんなことをするのかは知っている。

国家間の戦争を無くす。

そのためには、例え、数千 数億が死ぬことになるともフレドリクはあらゆる手段を講じるだろう。

だが、同時に知っているのだ。

彼は心の奥は優しい人なのだと。

魔王と呼ばれる男はきっとこの先、ドイツが勝利し、世界を統一しても多くの人間に恨まれることになる。

まして、ドイツが敗北することになれば誰も彼を・・・エリーゼ以外の誰もが彼を憎み蔑むだろう。

もはや、後には引けないのだ。

ドイツ神聖帝国が建国されたあの日から、この人の役に立ちたいと思い始めたから・・・


「私は…フレドリク総統が優しい人だと知っています。 もちろん、人が死ぬことは嫌いです。 でも、それを1つでもなくすことができるならフレドリクそ・・・」


「誰もいないならフレドリクでいい」


「え?」


ヘレンが驚いて聞き返すと彼は両手を前で組み、腰を少し曲げて手を目に当てていた。


「お前の声や容姿は似てるんだあいつに、 だから助けた。 俺は、優しい男なんかじゃない」


「いいえ、あなたは・・・フレドリクは優しい人です」


ヘレンは言いきった。

あいつとは誰かあえて聞かなかった。

エリーゼ達との会話である程度は予想がついている。

誰か、大切な人が昔はいた。

だけど、その人はもう、手の届かない所にいる。

それこそが、彼を魔王とする所以なのだろう。

そうでなければ、あのエリーゼがこの人にあそこまで忠誠を誓ったりはしまい。

彼の過去を知っている艦魂や人はフレドリクを嫌ってはいないのだから


「俺は世界を統一するまで後、数百万を殺すことになるだろう。 もっとかもしれない」


「それでも私は・・・エリーゼ達と一緒に最後までいさせてください」


「・・・」


フレドリクが顔を上げた。

そして、彼女は驚愕した。

一瞬ではあるが彼がほほ笑んだのだ。

エリーゼすらあの未来を最後に見れていなかった微笑みを。

だが、それも1秒もせず消失しあの魔王のような表情に戻る。


「物好きな奴だな」


「はい」


ヘレンは頷いた。

どんな結末を迎えることになろうとも彼と居ようとし続けるエリーゼの気持ちがより深くわかった瞬間だった。


作者「え? ヒトラーの存命1話だけ!?」


メグ「ま! この小説じゃもう、彼に逆転のチャンスはなかったってことだよ」


作者「まあ、国内の地盤固めもするんだろうけど・・・」


メグ「反乱があったこの状況じゃさすがにすぐには動けないかな」


作者「イギリスは国土の上では滅亡したようなもんだし、フランスもスペインもスイスもポルトガルも滅亡してるからね」


メグ「ま、フランスはド・ゴールがアメリカで再起を図ってるけどね」


作者「アフリカは制圧されてるし、インドではイギリス軍とにらみ合ってるし、満州国境では関東中国連合軍がにらみ合ってるからね」


メグ「世界地図みてもユーラシア大陸はもう落ちたも同然だね」


作者「まあ、このままだと確実に勝機は薄い」


メグ「日本人としてはどうするの?」


作者「いや、フレドリクやエリーゼ様嫌いじゃないしドイツって結構好きなんですよね。 売国奴と言われるかもしれませんが現実に民主党のように日本を動かしてるわけじゃないので」


メグ「それってドイツ勝利エンドのフラグか何か?」


作者「えっと・・・」


メグ「草薙さんドイツに来たら生涯、援助してあげるよ」


作者「え!まじ!」


メグ「吹き飛ばされまくる野蛮な日本の艦魂なんかの国にいても死期を早めるだけだよ」


作者「結構、ドイツの艦魂にもぼこぼこにされてるんですがまあそういうことならいこうか・・・」


桔梗「あほか作者! さっさと日本に帰るで!」


作者「じゃあ、帰ろうかな」


メグ「だめ~! 草薙はもう、私達の奴隷なの!」


桔梗「なんやて! ならうちらは超奴隷や!」


作者「両手に花の気持ちがっていだだだだだだ! 手を引っ張るな!裂ける!」


バリイイイイイイイ


メグ「あ」


桔梗「あかんなこれは」


メグ「大丈夫、ゾンビだから」


桔梗「ついにアンデットにまで落ちたか作者」


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