第273話 始まりへの終焉
「ち、長官! 三笠の反応が途絶えました!」
「何!」
山本が言った時だった。
武蔵の艦橋に光がともり、2人の人間がいきなり現れる。
周囲の兵や参謀達が目を見開くが山本は彼女達が艦魂の力により現れたことを悟った。
「藤森艦長に釘宮参謀長! 何があったんだ!」
山本が聞くと藤森 冬花は床に目を向けたまま
「三笠は・・・炎樹は死にました」
やっとのことでそれを言う。
山本は瞬時に、何が起こったのか悟った。
そして、怒りが心の奥から怒りがともった。
大和を撃沈され、次は三笠。
今の状況は分かっている。
機動戦艦をこの海域で失った以上策もない日米艦隊は壊滅する。
それはまぎれもない・・・
山本は艦内マイクを取ると怒鳴った。
「砲撃用意! 砲弾が尽きるまで怒りを込めて撃ち尽くせ!」
その時、兵が艦橋に飛び込んできた。
「敵艦より通信です!」
「何? 読め」
「はっ!」
「0537エデン終了を宣告する。 紀伊 三笠 大和は我が艦隊が撃滅した。 日本及び、アメリカ等連合国に残された道は一つ、ドイツ神聖帝国に下ることである」
艦橋がざわめく。
山本は読ませるんじゃなかったと思ったが後の祭りだった。
「や、山本長官本当なのですか? まさか、大和が・・・紀伊が破れたなど・・・」
「嘘だと言ってください・・・」
参謀達の顔が絶望的な表情に満ちていた。
無理もない。
機動戦艦の強さは彼らは嫌というほど分かっている。
その紀伊や大和ですら敵わなかった相手と戦う無謀さなど・・・
「敵の情報に惑わされるな! 紀伊と大和は負けてはいない」
紀伊の情報はなかったが山本は大和が撃沈されたことは知っている。
兵の指揮を下げるわけにはいかなかった。
「長官! ドイツ機動戦艦が遠ざかります! 追撃を! 三笠の仇を討つのです!」
誰もが怒りで我を忘れていた。
もちろん、山本も悔しい。
今のドイツからの通信で頭も冷えた。
最大戦速で追撃して攻撃したかったが連合艦隊司令長官だからこそ命令しなくてはならなかった。
「全艦に打電・・・追撃は許可しない・・・この海域より離れる・・・」
「長官!」
「黙れ!」
なおも食い下がろうとする参謀達を山本は怒鳴りつけた。
その手を潰れそうなほど握り締めて・・・
この後、ハルゼー率いる艦隊は追撃するも圧倒的な速力のアポクリファを見失い偵察機による補足もできなかった。
空母を後方に下げたのが裏目に出た結果だった。
数時間後、日本艦隊は損傷が激しい艦を除きオアフ島を目指していた。
武蔵の甲板では日本を目指す艦魂達が集まり静かに連合艦隊司令長官を見ている。
張り裂けそうな気持ちを感じながら、山本は彼らにただ、真実のみを伝える。
「みんな聞いてくれ・・・すでに、知っているものもいるだろうが南太平洋の艦隊は全滅、紀伊と大和は沈んだ」
目を見開くもの絶句するもの、その一瞬は静かだった。
歴戦の艦魂である長門の艦魂、鈴は腕を組んで目を閉じ、悔しそうにうつむいた。
「私より先に逝く奴があるか・・・」
「凛……撫子長官………炎樹大元帥……う……姉さんに続いて凛達まで」
霧島の艦魂、刹那は両手で顔を抑えながら泣き崩れた。
姉の一人である榛名の艦魂、翡翠は歯を強く噛みしめながら
「山本長官……確かにアメリカとの講和はこれで達成できるかもしれないがこれは勝利なのか? 敗北なのか?」
「勝利だ・・・」
山本は言う。
「そうでなければ、散った者たちが報われない・・・元々、この戦争はアメリカと講和を終着と定めて始めた戦争だ」
「でも、山本長官・・・」
雪風の艦魂、雪が不安そうに
「全ての機動戦艦を失った日本に……ドイツに対抗する手段はあるんですか?」
「・・・・・・」
艦魂達は誰もが彼女の質問を叱責しない。
彼女達も聞きたい質問だったからだ。
「降伏するんか?」
武蔵の艦魂、桔梗の言葉に艦魂達が息を飲むのが分かった。
彼女達は艦魂、人間が戦いをしないと決めて降伏すれば後は解体か敵の艦隊に取り込まれるかの2択となる。
山本は太陽が見えない雲が広がる空を見上げながら
「俺は……最後まで戦うつもりだ。 日本に帰り、大本営や陛下に働きかける。 そして、負けるつもりはない」
「精神論だけでは勝てない相手だぞ?」
鈴の言葉に山本は頷いた。
「分かっている」
「でも・・・」
おずおずと言ってきたのは信濃の艦魂小雪である。
彼女もまた姉を失った一人だ。
「小雪の言いたいことは分かるわ……いくら、アメリカと講和出来ても・・・ドイツの機動戦艦を殲滅できずに凛や撫子長官達が死んで・・・これでもし、連合艦隊が壊滅して日本がなくなるなら・・・無駄死にじゃないの」
村雨の艦魂の由真の言葉に山本は拳を握りしめた。
そして、山本が言う前に鈴が口を開いた。
「無駄死になんかでは断じてない。 日本にはまだ、海軍や陸軍の基地航空隊が残っている。 近江だってある。 山本日本に帰ったら」
「ああ、仕切り直しだ」
時に昭和18年4月15日、これより3日後大日本帝国と連合国との講和は成立。
アメリカは日本より技術支援を受け、アメリカが飲むことができる条件を提示した日本の要求を全て飲んだ。
そして、日本が提唱した対ドイツ神聖帝国への対抗戦力国際連合、通称国連軍を対ドイツ同盟の勢力と名称する。
日米決戦及び日独艦隊決戦により 日本独立機動艦隊は原子力空母2隻機動戦艦3隻を失い事実上壊滅した。
日本連合艦隊は戦艦金剛 空母幻龍を始め多数の艦艇を失った。
アメリカも同様に被害は大きかった。
日米決戦より1年後 昭和18年4月下旬、国連軍は最後の大反撃作戦を実行する段階にあった。
そんな中。
広島の呉の戦艦、武蔵の長官室にいた山本の元に情報が届けられた。
その内容は
「ドイツ神聖連合艦隊ジャワ海にて確認。 数は大艦隊であり特定不能。 戦艦、空母多数。その後衛機動戦艦及び空母群多数」
そこまでだった。
これを発信した伊号は撃沈されたのだろう。
ついに、ドイツの日本攻略艦隊が動き出した瞬間だった。
『日本海軍の全戦力を集結させ迎え撃つ』
日本が活路を見いだすにはここでドイツ艦隊を壊滅させ返し刃でドイツに攻め込むしかないのだ。
だが、何度考えてもあの強大なドイツ艦隊を・・・特に機動戦艦を殲滅できる作戦は思いつかない。
このままでは確実に負けるのは明白だった。
勝ち目はないと言っていい。
奇跡を信じるしかない。
(奇跡か・・・)
山本は思った。
(この戦いが日本海軍最後の戦いとなると言うなら俺は・・・)
作者「ついにくるか」
エリーゼ「この侵攻は私達は本気で行きます。 勝ち目はありません」
作者「大和・・・紀伊・・・尾張・・・三笠・・・全ての機動戦艦を失った日本は・・・」
エリーゼ「滅びです」
作者「これじゃ・・・みんな無駄死にじゃないか・・・」
エリーゼ「諦めなさい草薙」
作者「まだだ、日本連合艦隊をなめるなよ。 楽には勝たしてやらないぞ」
エリーゼ「その言葉は負けるのを前提とした言葉ですね」
作者「く、くそう・・・」
エリーゼ「さて、次回より日本海軍の最後を書くのですね草薙」
作者「書かないよ」
エリーゼ「はい?」
作者「今回は日米決戦終了後の大まかなあらすじみたいなもんでこの1年を詳しく書いていく」
エリーゼ「さっさと書きなさい。 2012年まで引っ張るつもりですか?」
作者「こ、今年こそ完結させたいところだ。 まあ、待ってくださいエリーゼ様ドイツの話もこの1年には含まれるんですから」
エリーゼ「内容次第では許してあげましょう」
作者「もちろん、かわいい巫女の・・・」
エリーゼ「草薙新年そうそう、消しとびたいようですね」
作者「ま、まさか! ああ! 荷電粒子砲はやめて!」
ゴオオオオオオオオオオン
作者「ぎゃああああああああ!」
エリーゼ「馬鹿な男です。 それではみなさん今年こそ日本の崩壊の時を楽しみにしてなさい。 ああ、そうですね。 この話が投稿された日はあなたがたのお正月でしたね。 それではあけましておめでとうございます」