第267話―1つの終焉
「ワグネル長官! グングニルが……!」
「馬鹿野郎が……油断しやがったな」
参謀の言葉に舌打ちしつつ、グングニルの艦長の顔を思い浮かべてからワグネルは指示をだした。
「ダメージは与えたはずだ! ラグナロクを除く全艦の火力を大和に集中させろ! 敵のアイギスは健在か?」
「健在です!」
「盾すら奪えなかったのか……」
仮に大和がアイギスを失っていれば、砲弾の届かない場所からミサイルを嵐を撃ちこんでやればいい。
機動戦艦が機動戦艦以外に近代戦闘で無敵を誇っているのはアイギスがあってこそ成り立つ。
ミサイルの部類で機動戦艦に対抗できるものは核だけだろう。
この戦場でそれを持っている機動戦艦がいる。
レーダーの光点に移るその機動戦艦の名は紀伊。
今まさにラグナロクと撃ちあいをしている艦だ。
核攻撃を直撃で受ければ船体は無事でも中の人間は死んでしまう。
だが、アドルフ・フレドリクは紀伊は絶対に戦術レベルでの核の使用はないと断言していた。
現に、核ミサイルを積んでいたはずの尾張は核ミサイルを使わなかった。
ワグネルの知る日本が核を使ったのはアメリカに叩き込んだ、たったの1発のみ。
核は戦争を終結させる切り札なのだ。
そして、その歴史は形を変えて起こるべくして起こる。
ニューメキシコ州、ロスアラモスにある原子爆弾研究所はまるで監獄のような建物だった。
周囲は金網により、厳重に囲い科学者たちから抗議の声を受ける原因となっていたがそれれは完全に無視されている。
それだけ、この研究所の意味は大きいのである。
その日、原子爆弾研究所の守衛の兵は空を見上げながら
軽く欠伸をした。
「おい! せめてあくびは噛み殺してしろ! 上にばれたら殴られるぞ!」
「大丈夫だって! こんな暗いのに分かるものか」
今は太陽は落ち、今日は満月のはずだが空には分厚い雲がかかっている。
雨でも降るのかもしれない。
サントス伍長は呆れながら周囲を警戒する。
ここ最近、このぴりぴりした空気が研究所全体に張りつめていたので同僚の気持ちは分からなくなかった。
それに闇は眠気を誘うものと決まっている。
そして、あくびは移る。
「ふわ……」
サントスは軽く欠伸をした瞬間同僚のラリー伍長が空を見上げて首を傾げた。
「おいサントス」
「なんだよ、お前もしただろ?」
「いや、何か音が……」
「音?」
サントスが空を見上げた瞬間、彼らは何が起こったのかも分からず消滅した。
圧倒的な熱量と爆風の嵐。
核ミサイルはロスアラモスをこの世から消し去った。
ロス・アラモス原子爆弾研究所に巨大なキノコ雲を確認と轟音がしたという情報はアメリカ艦隊大勝利の報告を待つホワイトハウスのルーズベルトの部屋に届けられた。
「こんな馬鹿な話があっていいものか!」
ルーズベルトは机をばんばんと叩きつけると偶然居合わせたスチムソン陸軍長官とキング海軍長官を睨みつけた。
後少しで、原子爆弾は完成するはずだったのだ。
原子爆弾研究所が原子爆弾で消滅などジョークにもならない。
「日本艦隊との戦いはどうなってる! 奴らさえ潰せば終わりだ!」
「日本艦隊にはかなりの打撃を与えたはずです。 朝には大勝利の報告が届くかと……」
実のところ、アメリカ艦隊もこの時点の、情報では大打撃を受けていたがキングは恐ろしくてそんな情報は伝えらえなかった。
「ジャップめ! ジャップめ! 忌々しいイエローモンキー共が!」
ルーズベルトはネクタイを掴みながら怒りの声を上げ続ける。
もう、余計な情報はこないでくれと部屋にいる人間は全員思ったが彼らの願いは敵わなかった。
「大統領大変です!」
「今度はなんだ!」
ルーズベルトが怒鳴り返す。
「ジャップの戦闘機が!」
その瞬間、けたたましい空襲警報がワシントンに鳴り響いた。
サーチライトが空を照らす。
ルーズベルト達は窓に駆け寄り空を見上げるとキィィィィィという音を立てながら
低空を戦闘機が飛んでいるのが見えた。
一瞬しか見えなかったが日の丸に間違いない。
「ナチの次はジャップか! 叩き落とせ!奴らを地獄に落とすんだ!」
しかし、日本の戦闘機12機はまるでここにいるぞということをアピールするようにワシントン上空を飛びまわる。
「どういうつもりだ! 1発も撃ってこないじゃないか!」
副大統領のトールマンが言った瞬間、再び
「大統領!大変です」
そう言って入ってきたのは外務大臣だった。
「次は何なんだ!」
ルーズベルトは怒鳴る。
「東条総理から親電です!」
「何!」
ルーズベルトは紙を奪い取ると目を通してから紙をぐしゃぐしゃにして窓に投げつけた。
ガラスに当たり紙が下に落ちる。
「おのれはげが!あのはげめがねめ! 絞首刑にしてやる!」
「大統領、よろしいですか?」
トルーマンは紙を拾いながら言う。
「好きにしろ!」
トルーマンが紙を開く。
その内容は簡単に訳すとこんなものだった。
『ルーズベルト大統領閣下、貴国の勇戦を私は心から尊敬いたします。
ドイツ神聖帝国なる国家は着々と世界統一の野望を進めています。 今こそ、総力をあげてドイツと戦う時ではないでしょうか? 再度私は休戦を提案したいと思います
その際の条件は追って休戦の話し合いでお伝えします。 休戦に同意していただけるなら30分以内に返信を なお、拒否か無視なされた場合上空にお邪魔している雷神が核を落とし、各都市に核攻撃を開始します。 賢明なご判断を心から願っております
東条 英機』
トルーマンが顔を上げた。
キングとスチムソンもそれをルーズベルトの許可をもらい読むと顔面蒼白になった。
「大統領休戦すべきです」
トルーマンの言葉にルーズベルトは頭を抑えた。
「5分だけ1人にしてくれ……」
4人は顔を見合すと外に出て扉を閉めた。
時計を見ながら4分が経過してそろそろかと思っていたその時銃声が響き渡った。
「大統領!」
4人が部屋に飛び込むと頭を吹き飛ばしたルーズベルトがあった。
どう考えても即死である。
狂気を重ね、日本との戦いにこだわり続けた男の最後だった。
「副大統領、あなたが今から大統領です」
キングが言うとトルーマンは頷いた。
「日本との戦いは終わりだ。 敵はドイツ神聖帝国。 そう、東条総理に親電を」
「戦っているドイツ機動戦艦はどうしますか?」
キングが聞く。
「ハルゼーに日本艦隊と協力して撃滅せよと伝えろ!」
キングは闇が晴れた気分になったついにルーズベルトに抑えられていた戦いができる。
だが同時に、トルーマンは思っていた。
(果たしてここまで膨れ上がったドイツ神聖帝国に勝つことができるのだろうか……)
これからは日本を含めた連合国とドイツの戦いになるがすでに国力はドイツが上回っている。
もっと、早く日本と休戦できていればとトールマンは医者が囲むルーズベルトの死体を睨みつけた。
日米休戦なる
そして、その情報を伝えられた魔王と呼ばれた男は笑みを浮かべ
その背中を見る少女は静かに目を閉じた。
ドミニク「おお、ついに日米の戦いは終わりか」
作者「長かった……ついに1つの区切りまできたね」
ドミニク「まあ、トルーマンが命令出すまで日米艦隊は殴り合いだがな」
作者「それに時間的に紀伊や大和の戦場にはこの休戦は意味をなさないからね」
ドミニク「あれ?そういや、三笠とやり合ってるアポクリファはどうしたんだ?」
作者「それはまた、書く。 今回はルーズベルトの死=休戦」
ドミニク「まさか、自殺とはな……」
作者「最初は心臓病で死ぬとか考えてたんだけど極度のストレス与えて」
ドミニク「いや、作者俺があの状況なら死ぬって」
作者「実際心臓やばかったんだろうな……」
ドミニク「で? 次回は」
作者「大和・紀伊の戦場に戻るかあるいは日本連合艦隊の戦いにいくかの二拓かな……日米英艦隊が一斉にアポクリファに反旗を翻す話か……もう一つは書きたくない……」
ドミニク「ああん?」
作者「いずれにせよ不定期更新なのは仕方ないさ」
ドミニク「ちっ使えねえ作者だ」
凛「あんたね……ものの見事に私をスル―してない?」
作者「おや? あなた様は凛様!」
ドミニク「やめろ作者! 逃げるんだ!」
凛「うるさい!」
ドミニク「ぎゃああああああああ! なんで俺だけ!」
ズドオオオオオオオオオオン
作者「助けてくれえええええええ!」
凛「森に逃げ込んでも無駄よ!」
その後、いつものズドオオンと共に作者は森の中で次回の感想まで消息を絶つのだった。




