第266話―血染めの大和
「大和接近してきます! 距離、5万4千!」
「ハープーン発射! 烈空弾発射用意!」
グングニル艦長、エドガーが言った。
日本艦隊とドイツ艦隊は互いに2対1という構図での戦闘に突入する。
固まって行動すればバルムンクの餌食になるということはこれまでのドイツとの戦いで分かっていた。
まして、機動戦艦の数の上では日本はドイツに劣っているのである。
それに、ドイツには日本が持っていない潜水型の機動戦艦や潜水空母を持っている。
それらが、いつこの戦場に現れないとも限らない。
時間をかけて戦うわけにはいかなかった。
大和と紀伊はそれぞれ南と北に航路を訳、敵戦力の分散を図ったのである。
もちろん、日本も戦力が分散してしまうがバルムンクを固まった場所に打ち込まれれば勝つのは難しい。
結果は成功し、ドイツは2隻で1隻を狙うという構図を作ることに成功する。
始めは、三笠を加える案もあったが、日本が機動戦艦を集中させればドイツも機動戦艦を集中してくる恐れがあったため実現には至らなかった。
「目標、αよりミサイル4来ます!」
「目標γよりバルムンク発射傾向あり!」
「取り舵一杯! 最大戦速! シースパロー発射始め!」
戦艦大和のCICは艦の奥に設けられた場所である。
大和の艦長、有賀は言った。
ここで、バルムンクを防ぐための一面集中型のアイギスを張ればミサイルの被害を受ける。
戦艦の装甲にミサイルでは大したダメージは与えられないが外部にあるCIWSやレーダーといったものはそうはいかない。
戦闘力を失えばドイツに勝つことはできないのだ。
日本は、アイギスを破れる烈空弾の数は少ない。
一撃必中、それに尽きるのである。
「αとの距離5万4千!」
「回避と同時に反撃! ハープーン、砲撃用意! 取り舵と同時に斉射する!」
「了解!」
レーダーのγの光点が一瞬ぶれた。
同時に、大和は左へと曲がっていく。
轟音と煙を上げながら迎撃ミサイルが発射される。
同時に大和の主砲が天空に向けられる。
雷鳴のような轟音と共に46センチ速射砲が砲撃を開始した。
同時に、大和の右舷をバルムンクが海を切り裂き目にもとまらない早さで通過した。
爆風のような風に髪をなびかせながら戦艦大和の艦魂、撫子は薙刀を構える。
艦魂の武器とは兵装と一体化していると言われる。
その一撃一撃に艦魂達は己の魂を込めた一撃を放つのである。
上空で、ミサイルとミサイルがぶつかり、夜の闇を照らした。
大和のミサイルが全てのミサイルの迎撃に成功したのである。
「日本をあなた方の好きにはさせません」
気迫のこもった薙刀を振り下ろすと同時に、大和の兵装が火を噴いた。
VLSからはミサイル、主砲からは砲撃である。
「ほう、撃ってきたか」
エドガー艦長は大和の主砲発射の報告を受けても冷静だった。
艦はアイギスを張り、直進している。
いくら、未来の戦艦とはいえこの距離で当てることは難しい、それに虎の子の烈空をこんな所で使うはずがないとエドガーは判断していた。
ならば、通常砲弾を蹴散らし、前進して一撃を叩き込むのだ。
速力50ノットを維持したままグングニルは進み続けた。
途中何度か、後ろの、ヘイルダムからバルムンクが発射されるが大和はそれを、巧みにかわし、あるいはアイギスでそれを防いだ。
バルムンクを防ぐアイギスがあるとは驚きだったが、ドイツの圧倒的な優位は変わらない。
「劣等民族がこざかしいことを……」
グングニルの三連装46センチ速射砲の上で艦魂のネフィーリアは哀れに思いながら目を細めた。
その先にあるのは、大和の砲弾だった。
アイギスが先に届いた大和のミサイルを防ぎ、同時に、グングニルの周囲に巨大な水柱が形成される。
46センチ砲の水柱はそれは巨大なものだ。
最後の砲弾が、飛んでくる。
しかし、ネフィーリアはエドガーの判断が誤っていたことを知った。
その砲弾は突如、薄紫の光を放ったのである。
「しまっ……」
エドガーが言った時には手遅れだった。
烈空弾はアイギスとアイギスを激突させてそれを相殺してアイギスを抜ける砲弾である。
一瞬、拮抗したかに見えた大和の烈空弾はアイギスの中に飛び込んできた。
ネフィーリアは激突する前に歯をかみしめ怒りの形相を大和に向け叫んだ!
「この! 劣等戦艦が!」
大和の砲弾はグングニルの右舷甲板に飛び込んだ。
丁度、設置されていたミサイルランチャーが吹き飛び、その爆風でCIWS
が破壊される。
巨大な火柱と炎がグングニルから立ち上った。
「があああ!」
ネフィーリアは脇腹を押えながら左ひざをついた。
血があふれ出てくる。
しかし、ネフィーリアを突き動かしたのは憎悪だった。
格下の戦艦に気づつけられたこの恨み10倍……いや1億倍にして返してやらなければ気が済まない。
「被害状況を報告せよ!」
エドガーは帽子を押さえながら悔しがった。
まさか、日本がいきなり烈空弾を撃ってくるとは思わなかった。
敵をなめきったつけが回ってきたのだろう。
相手は未来の世界で今もなお、畏怖される伝説の戦艦大和なのだ。
油断が許される相手ではない。
「右舷ミサイルランチャー大破! 21番CIWS大破! 右舷より進水! 速力41ノットに減速!」
「隔壁閉鎖! まだ、戦えるな!」
「いけます!」
兵の強い言葉がエドガーの闘志に火をつけた。
絶対に大和を沈めてやるとエドガーは決意したのである。
そのためならば……
新たなカードを切るだけだ。
「ベオウルフに支援を要請! それと打電を打て!『槍は竜巻を求む』とな」
「アイサー!」
「烈空弾装填! 数はこちら上だ! 大和だ!奴を潰せ!生かして帰すな!」
甲板では激怒の表情を浮かべるネフィリーアが西洋式の剣を振り上げた。
「大和ぉ!」
ネフィーリアは脇腹から手を話左手で頬を押さえる。
赤い血がべっとりとネフィーリアの顔につき、それは鬼神を思わせる風貌になった。
有賀は、グングニルに被害を与えたことを喜ぶと同時に、舌打ちしていた。
敵の戦闘能力を奪うことは出来なかった。
高く望むなら一撃で轟沈させたかったがそれはぜいたくだろう。
予想通り、敵はバルムンクの支援を大和に集中させてくる。
冷や汗をかきながら有賀は回避の指示を出しながら思った。
操艦の神様と言われた森下の方がこの場は適任だなと……
だが、彼は近江の艦長になったためここにはいない。
大和は面舵を切り、グングニルの砲弾をかわす。
水柱の中に没しているのはアイギスを破る砲弾である。
距離、2万1千まだだ、と有賀は思った。
後少しである。
もはや、不意打ちは通用しまい。
「北よりミサイル来ます! 数32!」
「北だと!」
「レーダーにいきなり現れました! 潜水型の機動戦艦です!」
距離は遥かにあるが、ミサイルの射程に入っている。
これで大和は4対1の構図になってしまった。
幸いなのは紀伊はラグナロクと1対1で戦ってい点だ。
持ちこたえればきっと、紀伊は来てくれる。
「迎撃ミサイル発射!」
「バルムンク2!来ます!」
「αよりミサイル及び、砲弾来ます!」
「くっ……」
有賀は帽子を右手で掴んだ。
避けられない。
考える時間は一瞬だった。
この攻撃は計算された一撃だろう。なら、取るべき道は1つしかない。
「前面にアイギスを集中せよ! 総員衝撃に備えろ!」
(撫子……すまない)
有賀は心の中で思いながら手を握り締めた。
音速を越えるバルムンクが大和のアイギスに命中し、消失した。
撫子はそれを受け止めながら同時に迫ってきたミサイルを見上げて微笑んだ。
(幸作様……どうか気にしないでください)
そう、言葉を有賀に送った。
大和のCIWSが狂ったように対空砲火を張り、ミサイルを撃墜しようとするがいかんせん、ミサイルの数が多すぎた。
迎撃しきれなかったミサイルが大和に飛び込んだ。
爆音と閃光、撫子は体のあちこちが裂け血が吹き出る感覚を感じながら薙刀を握り締めてそれに耐えた。
大和の右舷ミサイルランチャーが吹き飛び、ミサイル1発は後部格納庫に飛び込んだ。
ヘリの整備をしていた整備兵達が爆風に吹き飛ばされる。
艦橋の風防が全て割れた。
さらに次々、ミサイルが大和に命中し、戦闘能力を奪っていく。
計11発の対艦ミサイルが大和に命中した。
甲板は火の海とかしている。
「ゴホ……」
口の中から血の塊を吐き出し、撫子は右手でそれをぬぐった。
「まだ……いけます」
薙刀を振りかぶる。
血に真っ赤に染まった白い軍服の撫子は炎の中立ち上がる。
「後部、格納庫火災発生! ヘリ全機使用不能!」
次々と被害報告が届いてくるが奇跡的に主砲撃てる状況であり速力に支障はない。
ただ、多くのCIWSやミサイルランチャーが破壊されてしまった。
「消火急げ!」
「主砲撃てます!」
砲術長が怒りの声を上げた。
撃たせてくれと言っているのだ。
その気持ちは有賀にもよくわかった。
取るべき道は1つだった。
「撃て!」
炎の海と化した大和はそれでも砲撃を再開した。
兵達は必死に消火活動を行い火は消えて行く。
しかし、ミサイルや砲弾の嵐は大和に集中している。
有賀はバルムンクと烈空弾を避けることだけに集中して操艦し、ミサイルは迎撃のみにとどめた。
しかし、距離を詰めると言うことは、当然、相手の命中率も上がる。
ついに、その時はやってきた。
グングニルの烈空弾が大和の艦橋に飛び込んだ。
爆発を起こし、艦橋の上部が鉄の曲がる異音を発しながら海に落下した。
それでも大和は突き進む。
これほど、損害を与えてもなお、70ノットの速度で突撃してくる。
この戦艦は不死身なのかとエドガーは恐怖すら覚えた。
「う、撃て!何してる! 大和を潰せ!」
「や、やってます!」
兵が動揺して言った。
みるみる迫ってくる炎を纏った大和にグングニルは砲撃するが操艦とその装甲のせいで止めることができない。
距離はすでに2千を切った。
目と鼻の先だ。
「いい加減……しつこい劣等戦艦大和ぉ!」
ネフィーリアが言った時、大和の主砲が動いた。
まじかですれ違う格好になる。
この時、斉射うを選べば合い撃ちにできただろう。
だが、エドガーは恐怖からその選択をとれなかった。
「あ、アイギスを張れ!」
炎の中で大和は46センチ砲9門をグングニルに斉射した。
9つの巨大な穴がグングニルにあいた。
9の巨大な裂け目から血を噴き出しネフィーリアは大和を……甲板で凛として薙刀を振りおろした撫子と目があった。
「こ、この、劣等民族の戦艦が! や、やまとぉおおおおお!」
呪いに満ちた怨嗟の声を上げグングニルは大爆発を起こし、海底に沈んでいった。
作者「勝った! 勝ったぞ!」
ドミニク「久しぶりのドイツ機動戦艦撃沈かよ!この調子で全滅だ」
作者「だが、撫子様は……もう、大和の戦闘力は……」
ドミニク「大和は沈まねえ、俺達の世界では大和は伝説の戦艦なんだ」
作者「そう、古き良き時代……今の民主党のように中国にぺこぺこするしかできない時代とは違う日本が誇りを持っていられた象徴ともいえるのが戦艦大和」
ドミニク「だから、作者! 勝たせろ!」
作者「ああ、予定通りに行くだけさ」
ドミニク「しかし、潜水型の機動戦艦ってのはやはり……」
作者「暗号の内容でばればれだと思うけど竜巻のコンビだね」
ドミニク「ミサイルの射程ぎりぎりにいるんだよな」
作者「たぶんね……」
ドミニク「で? 次回の更新はいつだ?」
作者「未定、忙しいのさ私は」
ドミニク「活動報告で助けてもらったのにこりてねえな」
作者「いや、アヒルボートで戦艦を相手にできるわけがない」
ドミニク「さて、次回はどんな内容になるんだ?」
作者「予定タイトル(あくまで予定) 257話 生きてください」
ドミニク「おい……まさかこのタイトル……」
作者「さて、もう一度、100%支那が悪い尖閣の漁船激突映像でも見るか」
ドミニク「作者ぁ!」
艦魂達「それはそうとして、更新が遅かった罰を受ける気ある?」
作者「え? あああ!」
作者・ドミニク「御約束だから(かよ)ぎゃああああああああああああああ!」
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオン