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第263話 堕ちた蒼き翼

降り注ぐ蒼雷零式の残骸の中に凪は小川の姿を見つけようとした。

もしかしたら、脱出しているかもと僅かな希望にすがるがその姿を見つけることはできなかった。

嘘だと思いたかった。

失ったと分かった時、始めに感じたのはどうしようもない悲しみだった。

だが、その悲しみは瞬時に憎悪に代わった。


「っ!」


たたき付けるように機器をいじり震電が加速する。

むろん狙い小川が死んだきっかけを作ったマーナガルムである。

ハルトマンは予想外の出来事と僅かな迷いのため出遅れたため震電はみるみるマーナガルムに追い迫っていく。

敵は戦えないらしく反転する気配はない。

好都合だ。

反撃できない恐怖に怯えながら死ね。

凪は普段なら絶対に考えないことを考えながらミサイルをロックオンしようとした。

後ろでソラが何かを言っているが今の凪は敵しか見えない。

「っ!」


それを感じたのは恐らくエースとしての経験が原因だろう。上空からヴィゾフニルが突っ込んでアルテミナスを発射しようとしている。


(邪魔をするな!)


凪は心の中で怒鳴り震電の先端を空に向けた。

アルテミナスが急速に減速した震電の下部を通過する。

間髪容れず電子音がし、ヴィゾフニルをロックすると凪はミサイルを発射した。

実の所、ヴィゾフニルはアルテミナスを発射した僅かな間アイギスを使えない。この弱点を嫌いハルトマンは実弾で戦っているのである。

アイギス装備の戦闘機にはまだ、課題が多い。


ミサイルはアイギスを張れないヴィゾフニルに直撃し爆散する。

そこにユルゲンが差し向けた新たに1機加えた4機が震電をおってくる。

通常なら絶体絶命の危機だが凪は機体を垂直に降下させる。ヴィゾフニル達もそれを追ってすさまじい速度で降下しはじめる。

渦を巻くようにハイGバレルロールに似た機動で降下していく。

その機動は直線しか攻撃できないヴィゾフニルのアルテミナスの攻撃を封じている。

海面がみるみる迫ってくる。

まだ、引き起こさない。

ぶつかるとソラが悲鳴をあげた。

そこで凪は操縦桿を引き上げた。

爆風が海面を揺らし震電の下部に海面がかすったがぎりぎりで震電は上昇する。しかし、ヴィゾフニル達に待ち受けていたのは悲劇だった。4機は4機とも海面に突っ込んで衝撃でばらばらになった。

猛然と震電はマーナガルムを追う。

その戦いかたはまさに鬼神のようである。







「な、なんてやつだ」


わずかな間にハリアーを圧倒したヴィゾフニルを5機落とされユルゲンは驚愕した。

こうなれば残りの戦力を全てぶつけて落とすしかない。

ユルゲンがその命令をヴィゾフニルに送ろうとした時、通信が入る。

僅かな会話でその相手が言った最後は


「……頼む」










憎悪の中でもわずかに冷静な部分は残っている。

凪がヴィゾフニルを圧倒できているのは怒りで力が上がったとかそんなものではない。

ヴィゾフニルはいわば試作機である。

まだまだ、AIは未熟だしエースパイロットの技量には敵わない。

性能は確かに高いからハリアー程度なら撃墜できるが震電のような最新鋭の戦闘機と凪のような技量があればそれほど恐れることのない敵なのだ。

これが有人機ならこうはいかなかっただろう。

だが、所詮は無人機である。

エースパイロットを凌駕するのはまだまだ、不可能だ。


マーナガルムを落として小川大尉の敵を討つ。

今、凪が考えるのはそれだけだ。


「凪!駄目です!こんな戦い方じゃ……」


ソラの声を凪は聞かなかった。

敵は近い。

被弾し、右の翼から煙を出しながらふらふら飛んでいる目標を見つける。

殺す。

凪はミサイルをロックオンしボタンを……


「凪!」


気づくのが徹底的に遅れた。

ソラの言葉の時には彼の機関砲が発射されていたから……


メッサーシュミットゼロは上空から接近し、ミサイルを発射しようとする震電に向かい20ミリ機関砲を発射した。


轟音と共に震電に穴があき機器のあちこちが赤い警報を鳴らす。


「ああああ!」


血が飛び散る。

それはソラのものだろうか………

しかし、凪も激痛を感じた。

見ると風防は割れている脇腹を押さえると血がじわりと滲み出てきた。


「う……」


激痛に堪えながら機体を回避行動に移す。

しかし、震電はもはや戦えない。

機体が振動し、制御がまともに聞かない。

冷静ならば気づけたであろう。

ハルトマンの一撃は獲物を目の前にした凪には防げなかった。

ハルトマンが追ってくる気配はない。

もはや、勝敗はついた。

自分は負けたのだ。

気を抜けば気絶してしまいそうな激痛を感じながら凪は言った。


「ご、ごめんソラ……私……」


「……」


しかし、ソラは無言だった。


「ソラ?」


凪が言うとソラは穏やかな声で言った。


「凪……お別れです」



「え?」


冗談のような言葉に凪が言うとソラは言葉を紡ぐ。


「私は……震電はもう飛べません……間もなく墜落するでしょう」


その言葉に凪は悲しみに支配された。


「い、いや!藤宮君も小川大尉もいなくなってソラまで失ったら私もう飛べない!ソラ!さっき言ったじゃない!引退まで飛ぶって……」



「お別れです……凪あなたと飛べたこの数ヶ月……本当に楽しかった」


「嫌!」


「さよなら凪……私の大切な大空のエース」


その瞬間、凪は爆発のような衝撃とともに震電から脱出させられた。

誰でもない。

ソラの意思で……

パラシュートが開き落ちながら凪は震電が回転しながら落下していくのが見えた。


「ソラぁ!」


凪の叫ぶと同時に空中に大爆発が起き、日本最強の蒼き戦闘機震電は大空にその姿を炎の中に消した。










「あ……」


凪はパラシュートに揺られ泣きながら破片が落ちていく海面を見つめていた。

パラシュートが落ちる先そこには紀伊があった。

ソラは紀伊がいるこの場所まで飛んでくれたのだ。


パラシュートを操り紀伊の右舷甲板に降り立ち凪は感情が抜け落ちたような瞳で膝をついた。


「凪!」


「凪ちゃん!」



声のした方を見ると彼方やドミニクが衛生兵を連れて走ってくるとこだった。

崩れ落ちるように彼方の腕に凪は倒れた。


「ちょ!凪!凪!」


「彼方……」

最後の意識を保ち凪は泣きながら言った。


「藤宮君が……小川大尉が……ソラが私が弱いせいでしんじゃった……」



「違う!」


彼方は白衣が血に染まるのも構わずぎゅっと凪を抱きしめる。


「私の責任よ……ドイツを上回る戦闘機を作れなかった私の……」


「……」


「凪?」


彼方が言うが凪は答えない。

血が甲板を広めていく。


「おい、彼方ちゃんこれはやばい!早く!」


「わ、分かってるわよ」


ドミニクの言葉に凪は慌てて凪を衛生兵に渡した。

彼等は大慌てでタンカーにのせて凪を運んでいく。

恐らく手術することになるだろう。

素人の目から見ても凪の傷はひどそうだ。


「く……」


凪が去ってからも彼方は震電の残骸が浮かぶ海を睨み付けるように見ていた。


「彼方ちゃん……」


ドミニクが声をかけるが彼方は答えない。

白衣を風に揺らしながら彼方はじっと海を見ながら


「ねえドミニク……」


「ん?」


「あんたは飛魂って見える?」


「真のエースのみに見えるってあれか?あいにくだが俺は見えねえな」


「凪には見えてたそうよ……震電にはソラという飛魂がいた……」


「……」


ドミニクは答えない。

彼方のいいたいことがわかるから……


「もっと強い……ドイツを上回れる戦闘機さえ作れればみんな死なずにすんだのに……」


「んなことねえよ」


彼方が振り返る。


「俺達は……ドイツはいわば彼方ちゃんが作った戦闘機や技術を上回る研究をしてたんだ。後の技術に負けても恥じゃねえ」


「でも勝たないといけなかった。このままじゃ紀伊や大和も……」


「勝つ努力はしたんだろ?なら、後はやるだけだ」


彼方は再び海を振り返り小さな声で言った。


「ありがとうドミニク」


「ん?なんか言った?」


聞こえなかったドミニクが聞き返すと彼方は振り返り舌を出すと


「なんでもない。調整に戻るわよ」


「おう!」










この日独航空戦は日本の戦闘機全滅ドイツ戦闘機は半数以上を戦闘不能にすることで終了した。

しかし、この戦いで日本は全ての第7世代戦闘機を失い。

優れたエースパイロットの多くを失ったのである。

しかし、ドイツ艦隊も航空戦力の大半を戦闘不能にしたことから戦いの主役は移りかわる。

そう機動戦艦に命運は託されたのだ。


日本最後の希望紀伊・大和はドイツ機動戦艦に決戦を挑む。

その行方は栄光か絶望……

作者「3話連続で死ぬなんて……」


ドミニク「こんどは凪ちゃんの相棒ソラちゃんか」


作者「次も誰か死ぬのか……」


ドミニク「おい作者!凪ちゃんも死にそうだしまさか、てめてこの戦いで……」


作者「戦いの行方は誰にもわからないさ」


ドミニク「しかし、これじゃあんまりだ」


作者「読者の大半は奇跡の逆転勝利を期待してるみたいだけどどうしたらいいんだ」


ドミニク「作者……次の戦いはいよいよ紀伊と大和の艦隊決戦だな」


作者「この艦隊決戦が未来を決める戦いなのかもしれん」


ドミニク「フリードリッヒデアグロッセもきてるのか?」


作者「ある意味凛様とエリーゼ様は宿命のライバルだからこないとは言えない」


ドミニク「てことはあの男も……」


作者「可能性はある」


ドミニク「俺は紀伊と大和を信じるぜ」


作者「ああ、紀伊と大和は負けない!最後の希望なんだ。あの2艦の敗北は日本の敗戦と同意味」


ドミニク「姿はドイツ人だが俺も日本人だぜ!日本万歳!」


作者「日本万歳!チャンコロは死ね!」


ネフィーリア「関係なですが中国人が劣等民族というのは認めましょう。私から見たら大和民族も劣等民族ですよ。小賢しい叫びを」


作者・ドミニク「ぎゃあああああああああ!」


キュイイイイイイイン


ネフィーリア「劣等民族が」

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