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第262話 じゃあな

ピーという警告音を聞きながら凪は震電を加速させる。


「ミサイルにロックされてる、凪!」


「分かってる!」


後部席から聞こえてくるソラの言葉を聞きながら凪は巨大な雲の中に突っ込み同時にアイギスのスイッチを押した。

同時に機体の周囲に爆炎が撒き散らされる。


炎が見えなくなると震電は雲を抜ける。その時、彼女は上空に殺気を感じ機体を横に倒しながら空を確認する。

レーダーを無効化させるアイギスを消しつつあるメッサーシュミットゼロだった。

世界一の撃墜王の名はかざりではない。エーリッヒ・ハルトマンのメッサーシュミットゼロは機関砲を発射した。

20ミリ機銃の射線からかろうじて回避した凪は機体を下に落しこんだ。

スパイラルダイブである。

気を抜けば気絶してしまいそうなすさまじいGを感じながら凪は後ろから追ってくるメッサーシュミットゼロの存在を感じていた。

高度を示す機器がみるみる海面に迫って行くのを示している。

凪はわずかにスロットルをしぼる。

同時に黒い戦闘機が震電を追い抜く。


(今だ)


凪は全神経を集中させながら機体を加速させ、メッサーシュミットゼロの後ろをとった。

その時間は僅かである。

メッサーシュミットゼロをロックオンした瞬間空対空ミサイルを発射した。


ミサイルはみるみるメッサーシュミットゼロに吸い込まれるが直前にアイギスに阻まれる。

アイギス装備の戦闘機同士の戦いは決め手がないのが現状だった。

しかし、震電はアイギスを使うとエンジンが停止してしまうのに対し、メッサーシュミットゼロはエンジンをふかしたまま、戦闘を続行してくる。

圧倒的に凪が不利な戦いである。

凪は雲に入ったりとエンジン停止の弱点を補ってきたが突破口が見つからない。

ふと航空レーダーを見るとマーナガルムと蒼雷零式が激しい空中戦を繰り広げている。

すでに、ハリアーは半数を失っておりヴィゾフニルに圧倒されていた。

性能だけでいえばドイツが圧倒しているのだ。

エースパイロットの腕がなければこの戦場で勝利という栄光を掴むのは不可能だ。


ミサイルは残り3発。

航空機の常識を考えてメッサーシュミットゼロのミサイルも2~3発のはずだった。

一秒でも早くメッサーシュミットゼロを落として味方の救援に駆け付けたかったがハルトマンはそれを許さない。

彼はこの空で凪と決着をつけるつもりでいるのだ。


「いくよソラ、体調は万全?」


「はい、凪も大丈夫ですか?」


油断はない。

凪は神経をメッサーシュミットゼロに注ぎながらソラと会話をしている。

極度の緊張の中で聞く友の声は安らぎを与えてくれた。


「ねえソラ……」


「はい?」


「ずっと一緒に飛ぼう。引退するその日まで」


ソラが首を傾げる気配が伝わってくる。

「どうしてそんなことを急に言うんですか凪?」


ハルトマンには勝つつもりだ。

だが、この航空戦は日本の完敗である。

ハリアーは駆逐されるだろう。

いかに凪と震電といえどもヴィゾフニル全機を相手にすることは不可能である。死ぬかもしれない。そんな不安な思いから出た言葉でもあった。

凪は軽く首を振りながらつぶやいた。


「まあ、いいじゃない?」










「こ、この野郎!」

ヴェルナーのマーナガルムは先程から高機動と一撃離脱の戦法をとる蒼雷零式に翻弄されていた。

この空域は雲が多く蒼雷零式は雲に入ってはまた、現れて一撃を加えるという戦法を徹底してとっている。

マーナガルムが雲に入れば航空レーダーには移っているのにその姿を捕らえられない。

それどころか一度ヴェルナーのマーナガルムは20ミリ機関砲に傷を付けられていた。

かすった程度だがこれはヴェルナーのプライドを著しく傷つけていた。


「ヴェルナー!その機体にはヴィゾフニル4機を回す!お前はハリアーの掃討に加われ」


「っせえユルゲン!黙ってろ!こいつは俺が落とす!」


レーダーが示す方角にアルテミナスを発射。

しかし、目標に命中した様子はない。

嫌な予感がしたヴェルナーはアイギスをはると同時に雲の中から蒼雷零式が現れ機銃を発射した。

振動を感じながらヴェルナーは憎悪の言葉を撒き散らす。


「調子のってんじゃねえよ!劣等民族の分際でぇ!」


その時、蒼雷零式が進路を変えた。

何ごとかと空を見ると紅い機体4機が蒼雷零式を追っている。

ヴェルナーは歯を食いしばると通信に怒鳴り付けた。


「ユルゲン!あいつは俺にやらせろ!あのうざい無人機を下げろ!」


「駄目だ」


ユルゲンの短い言葉が聞こえる。


「ユルゲン!」


ヴェルナーが怒鳴るが返答は変わらない。


「冷静になれヴェルナー、奴はお前と互角かそれ以上のエースだ恐らく紀伊航空隊の隊長小川だ」


「しるかよ!てめえが俺の邪魔すんなら考えがあるぜ!」


何をする気だとユルゲンが聞くより早く、ヴェルナーは目標に襲い掛かった。


そう、1対1の戦いをユルゲンから厳命されたハルトマンと戦う凪を。

ちょうど、アイギスを切り著しく速度の落ちた震電を狙うには絶好の場所であった。


「ヴェルナー!」


ユルゲンの激怒の声が届くがヴェルナーは止まらない。

情報では震電はアイギスを切った直後はアイギスを再び張れないわずかな隙がある。

最高のタイミングでヴェルナーは震電を射程に納めたのである。


(あばよ空のあばずれ)


アルテミナスの発射ボタンが押し込まれようとしたその時、警告音。

はっとした時、蒼雷零式がマーナガルムに機銃を発射。

無数の穴がマーナガルムにあき。

マーナガルムはアルテミナスの発射を妨害された。

電子機器のあちこちで異常が起き墜落はなさそうだがヴェルナーのマーナガルムはもう戦えない。

怒りと共に蒼雷零式を睨もうとするがその目に飛び込んだのは……










マーナガルムに加えた攻撃は小川は強引な機動で与えたものだった。

4機のヴィゾフニルに致命的な隙を見せて……

4のアルテミナスの光が発射される。

小川は間に合わないと思った。

脱出レバーを引いて射出される前に蒼雷零式は落ちる。

走馬灯とはこういうものを言うのだなと小川は思った。

全てがスローに感じる。


「お前の娘は守ったぞ……進。神崎……響介……」


小川は口元を緩めた。


「じゃあな」


光が蒼雷零式を貫き空に爆発の光が辺りを照らす。


その光景をまるで止まっているように見ていた凪は目を見開いて爆炎を見ている。


「小川……大尉?」

凪にとって小川は父の友人であり頼れる存在でもう一人の父親のような存在だった。


「そんな……嘘ですよね凪」


ソラの声を聞きながら凪は叫んだ。


「大尉!」

作者「また……エースが逝ったか」


ドミニク「ああ、これで空にはわずかなハリアーと凪ちゃんだけだな……」


作者「航空戦に勝ち目は……ないな」


ドミニク「おっさん……凪ちゃん泣かせんじゃねえよ……」


作者「小川大尉は凪にとって父同前の人でしたからね」


ドミニク「凪ちゃんの父親と親友だろ?エースパイロットでもあったんだよな」


作者「くそここまで追い込まれるとはもはや日本には勝ち目はないのか……」


ドミニク「……」

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