第259話―日独機動戦艦決戦!―航空決戦!
艦内の巡回が終わった後、日向 恭介は自室でパソコンの画面を見ながら何かを考えていた。
画面にはドミニクの情報を始めとする様々な情報を総合した敵のデーターが表示されている。
特にアメリカ軍との戦いで使われたというバルムンクと言う兵器。
この武器は彼方によればレールガン、正式にはレールキャノンというが破壊力はアイギスを破るということだ。
だが、勝機はある。
彼方はそれを実行するために大和と紀伊を走り回っている状況だった。
「・・・」
日向はちらりと部屋の隅に置いてある大型テレビを見ながら先日、艦魂達が遊んでいた様子を思い出した。
守るためには使う覚悟も必要か……
紀伊には核が搭載されている。
彼方に聞けば核が直撃すれば機動戦艦を撃破できるということだ。
だが、核は戦術レベルでの使用をしてはならないと未来の日本では決められていた。
状況は変わっているのだから日向の判断で使用しても構わない状況であったが
それでは、尾張の艦長椎名の信念を裏切ることになる。
だが、核を使わず勝つ方法。
分が悪い賭けだがやる必要があるかもしれない。
日向がそこまで考えていた時だった。
コンコンとどこか遠慮勝ちのノックが聞こえた。
「誰だ? 入ってきて構わないぞ」
ドアが開き遠慮がちに入ってきたのは凛だった。
どこかきまずそうに入ってくる。
そんな凛を日向はいつものように迎える。
「おう凛、どうかしたのか?」
「・・・・・・」
凛はうつむいたり恥ずかしそうにしたりしていたがやがておずおずと口を開いた。
「恭介……怒ってない?」
「怒る? 何を怒るんだよ?」
日向は面白そうに言うと凛はばつの悪そうに
「わ、私が部屋を出て行ったり、恭介にひどいこと言ったじゃないだから……」
「ひどいことね……別に俺はひどいことなんて思ってないぜ? 妹を亡くしたんだから当然だ」
凛は不安そうにぎゅっと両手を胸に持っていきおずおずと
「本当に怒ってないの?」
「ああ」
「許してくれるの?」
「許すも何も怒ってないからな」
凛の顔がぱっと明るくなる。
「じゃ、じゃあまたこの部屋に戻ってきていい?」
「ん~、まあ部屋はそのままだからな」
「ありがとう恭介!」
取り戻していく。
凛は思った。
明が死に狂っていた自分の周りを……
刹那は友でいてくれたし撫子も変わらず自分を見ていてくれる。
そして、恭介も……大好きな彼は態度を変えようとしない。
「ところで凛、ベッドに潜り込んだりするなよ?」
「どうして?」
凛は首をかしげる。
「その……」
日向は成長した凛の姿を見て明後日の方向を向いた。
今の凛は以前と違い胸も大きくなり身長も伸びている。
見た目は16~18歳といった少女だったのだ。
「別にただなんとなくだよ」
その時、凛は悟った。
日向 恭介はわずかかもしれないが自分を少女ではなく女として見てくれていることに……
凛は意地悪く笑うと言うのだった。
「油断してたら忍び込むかもね恭介」
その顔は本当にうれしそうな笑顔であった。
紀伊に搭載されているシーホークは航続距離が戦闘機と比べると短い。
そのため、ドイツ艦隊の偵察にはハリアー3がその役目を果たしていた。
「どうだ? レーダーに反応はあるか?」
複座のハリアー3のパイロットは下の海面を見ながら言う。
地平線に至るまで蒼の海。
ハリアー3が発する音以外は波の音しかしないであろう海面に機動戦艦の姿はない。
紀伊は遥か後方で目視で確認できる距離になかった。
「レーダーに反応はありません。 もしや、潜水型の機動戦艦では?」
「だとすりゃ厄介だな……これだけ海が広いと見つけるのは簡単じゃないぞ。 もう少し行ってみるか?」
「ですがそろそろ、航続距離の限界です」
「そうか……ならもど……ん?」
「どうかしましたか?」
後ろの席から無線越しの部下の声を聞いてハリアー3のパイロットは目を細めて海面を地平線の向こうを見つめる。
「何か光らなかったか今?」
「レーダーに反応はありませんが……」
「行ってみよう」
「ですが航続距離が……」
「そんなものやり方しだいでいくらでも伸ばせるんだよ。 何年戦闘機に乗ってやがる」
「すみません」
部下の言葉を聞いてハリアー3は加速する。
そして、彼はその判断が正しかったことを知るのだった。
「間違いない! ドイツの機動戦艦だ!」
薄紫の膜を纏うドイツの機動戦艦はレーダーでは補足できない。
また、攻撃するためにはアイギスを解かないければならないのでミサイルはこないのだ。
「至急紀伊に知らせるんだ!」
「了解! こちらバトル1! ドイツ機動戦艦を発見! 数は4!」
詳細な位置を紀伊に送る。
その時、機動戦艦のアイギスが消えて行くのが見えた。
「まずい! ずらかるぞ!」
ハリアー3は直ちに反転し逃げに入った。
機動戦艦相手に1機で立ち向かうなどあり得ない。
ピー
と電子音がハリアー3のコクピットに響いた
ロックされたのだ。
見ると白煙が機動戦艦から吐き出されている。
「み、ミサイル来ます! 数3!」
「くそ! 見逃すつもりはないわけか!」
ハリアー3はチャフとフレアをばらまきながら急降下に移った。
しかし、1発のミサイルは惑わされずに突っ込んでくる。
「ここまでか! 脱出する!」
股のある黄色と黒のレバーをハリアーのパイロットは思いっきり引いた。
次の瞬間二人は外に座席ごと吹っ飛びパラシュートで降下が始まる。
敵のミサイルは落下するだけとかしたハリアーに食いつき、ハリアーは爆炎に包まれたかと思うとばらばらになり落ちていった。
無論、紀伊では大騒ぎになったのは言うまでもない。
日向はCICに入ると艦長席に腰を下ろす。
「状況は?」
その言葉に古賀参謀長が口を開いた。
「バトル1よりドイツ機動戦艦発見の報がありました。 本艦より南東920キロの海上です」
「遠いな」
日向が言う。
「航空隊をだしますか司令?」
「そうだな……いや、緊急発進が可能な状態で待機だ」
「了解! では本艦は?」
「大和・紀伊は南東に進路をとれ!」
2隻の巨大戦艦はドイツ艦隊と雌雄を決するべく南東に進路を取る。
日向は艦内マイクを掴むとスイッチを入れた。
「総員に告げる! 我々はドイツ艦隊を発見した! だが、航空機での先制攻撃は被害を増やすものとして実行しない。 ドイツ機動戦艦とは艦隊決戦にて決着をつける! 各員奮闘を期待する」
艦内マイクのスイッチを切った日向は今度は耳につけているインカム型の通信機のボタンを押した。
「そっちはどうだ彼方博士?」
電話の向こうから焦った様子の声が返ってくる。
「今手が離せない! ドイツ艦隊が見えるまでには仕上げるから放っといて!」
ぶつんと通信機が乱暴に切られる。
日向は苦笑しながら古賀に向き直った。
「さあ、決戦だな」
「そんなに気楽に言わないでください。 といいたいですけど長官が絶望していないことは安心できるので許します」
「ハハハ、ひでえ言われ方だな」
CICの兵達の口元に笑みが浮かぶ。
いつものやり取りだ。
彼らは緊張などしていない。
この戦いで紀伊が世界最強の機動戦艦だと言うことをドイツに教えてやろうと
燃えているのだった。
神埼 凪は警報に飛び起きると服を着て部屋を飛び出した。
耐Gスーツに着替えてから格納庫に飛び込んで走る。
「遅いぞ神崎!」
「すみません!」
凪はヘルメット片手に震電の操縦席に飛び込んだ。
後部座席にいるのは飛魂のソラである。
「凪? よく眠れましたか?」
心配そうにのぞきこんでくる少女の姿をした飛魂の声を聞きながら凪は計器のチェックを素早く済ませて行く。
「眠れたよ。 今日こそあの人と決着をつけたいから」
「出てくると思いますか? ハルトマンは?」
「うん、出てくる。 なぜかわからないけど絶対」
「あのルチアという飛魂と私がどちらが強いか証明してあげましょう凪」
凪は口に笑みを浮かべてから計器のチェックを再開する。
その時、ヘルメットに通信が入った。
「神崎中尉」
「はい小川大尉」
「1度話してあるが再度確認を行う。 俺の蒼雷零式、藤宮少尉の蒼雷、神崎中尉の震電の3機で1小隊だ」
「はい」
「3機で1小隊だ。 紀伊の戦闘機は12機で4小隊、俺たちの小隊は俺が率いる。 全体の中隊の隊長も俺が務める。 コールサインは俺がブルーリーダー、お前がブルー1、藤宮がブルー2だ」
「あ、あの小川大尉」
「なんだ?」
耳にはっきり届く小川の声。
凪は口を開いた。
「ハルトマンとの決着を……」
通信の向こうで呆れたような沈黙が起こる。
怒れらるかと思ったがその言葉は意外な言葉であった。
「元々俺たちの小隊は奴らの高性能の戦闘機とやり合うための小隊だ。 震電はハルトマンを押さえろ。 俺達はあの銀色の戦闘機を叩く」
「ありがとうございます小川大尉」
「別にお前のためじゃない。 だが、決着は早くつけろ。 俺たちの機体はともかくハリアー部隊ではあの赤い戦闘機相手に長くは持たん」
紀伊のハリアー3のパイロット達は皆、ベテランであるが性能差は覆せない。
それに、あの機体は無人機なだけにGを気にしない動きをしてくるので厄介極まりない相手だった。
「あ、あの神崎中尉、小川大尉」
不安そうに口を挟んできたのは藤宮少尉であった。
「何だ?」
「この戦い勝てるんでしょうか?」
「さぁな、お前は撃墜されないように逃げ回っていればいい」
「そんな! 自分も戦いますよ」
「なら、俺の後ろから離れるな」
「はい!」
その時、小川の通信機に日向の声が響いた。
「小川聞こえるか?」
「どうかしたか?」
「南東方面より敵戦闘機を確認した。 数は14機、奴らだ」
「出ていいんだな?」
「任せる」
たちまち、格納庫が慌ただしくなる。 優先順位はブルー小隊からとなる。
まず、蒼雷零式と蒼雷がエレベーターに運ばれ上昇していく。
続けて震電がエレベーターに運ばれていく。
機動戦艦に搭載されている戦闘機は垂直離陸可能な戦闘機のため飛行甲板を必要としない。
「今度こそ決着つけられるかなソラ」
凪はエレベーターで上昇していく感覚を感じながら言った。
「分かりませんですが……」
一瞬、黙りソラが口を開く。
「この戦いは負けられない戦いだと言うことは確かです」
「うん……そうだね」
メッサーシュミットゼロを落とし制空権を確保する。
それが自分たちに与えれた任務なのだ。
「続けてブルー1発艦してください」
CICからの言葉に凪は震電の計器をいじり、震電は爆風を甲板にまき散らしながらふわりと舞い上がった。
たちまち紀伊が前方に進んでいくのが眼下に見えた。
凪は一気に加速させると先に出た2機の蒼雷を追った。
無言で凛は部屋の隅に置いてあった剣を手に取ると横に置いてあった紅く染まった槍を手に取った。
槍を見て一瞬、凛は悲しそうな顔をしてから転移の光の中に消えた。
ある部屋の中で少女は大好きな男が大切にしている写真立てに手を置いた。
その写真には彼女も大好きでたまらなかった女性が移っている。
「……」
口を動かしかけるが少女は首を横に振ると西洋式の剣を握ると転移の光に消えて行った。
日本とドイツの2人の艦魂の思いは2つだった。
『必ず仇は撃つから……』
『あの人は必ず守るから……』
作者「今週は大変だった!」
ドミニク「何があったんだ作者?」
作者「警察に怒られるという経験をしました」
ドミニク「まあ、詳しくは利かねえが豚箱行きか?」
作者「いや、別に犯罪を犯したわけじゃないんですけどね。 詳しくはネット上の私の周りを探れば分かるので詳しくは言いません」
ドミニク「まあ、いいけどな」
作者「せっかくですから大東亜戦争の話をしましょう。 広島の原爆の話ですが」
ドミニク「ああ、アメリカの核の傘から脱退しようとか言ってる狂った発言している奴の話か?」
作者「まあ、そこは置いておいて、今日は祖父の話をしようかな」
ドミニク「草薙の祖父か? どんな戦争時代送ったんだ?」
作者「もちろんのことながら私の祖父は大東亜戦争の時代を生き抜きました。
一人は海軍軍人。 もう一人はすでに亡くなっていますが満州にいました」
ドミニク「満州か……てってことは」
作者「ええ、卑怯な下種のソ連軍から命がけで逃げのびました」
ドミニク「詳しくはわからねえのか?」
作者「残念ながらそれを聞く前に亡くなってしましました。 子供の頃は興味なかったことが今になって悔やまれます」
ドミニク「まあ、仕方ねえな。 それでもう一人の祖父は?」
作者「広島の原爆が落ちた日、上から広島にアメリカ軍の新型爆弾が落ちたから調査して来いと派遣されたそうです」
ドミニク「てことはあの地獄を生でみたのか……よく放射能にやられなかったな」
作者「祖父は現在も健在ですが多くは語ってくれません。 分かっているのは祖父が戦艦に乗っていたこと、日本近海以外で撃沈された以外の戦艦に乗っていたことぐらいです」
ドミニク「というと大和・長門・陸奥・日向・伊勢・榛名は省かれるか」
作者「海に投げ出されて数日海を漂流した経験もあると言っていました」
ドミニク「まあ、海軍ならあり得る話だな」
作者「その祖父は昔、今の日本を見ながら私に言った言葉があります。 草薙(むろん私の本名の名前を言っています)俺はな家族に死んでほしくないから志願して海軍に入ったんだ。 今の日本は平和だろ? あれほど憎しみ合ったアメリカとは同盟を結んでいる。 でも今の日本を見ているとあいつらは無駄死にしたように見えてならない」
作者「子供の私は平和なら駄目なのと聞くと祖父は私を見て言いました。 大人になってみたら分かると」
ドミニク「分かったのか?」
作者「今日本を見ていると分かりますよ。 左翼の固まりの広島の平和式典……
核の傘をなくしたら新たな戦火がやってくることを理解しようともしない人々……攻められても守ってくれる保証もない米軍に頼る人々、9条は尊いといい周辺諸国になめられる日本。 今の日本を知れば知るほど祖父の言葉の意味がわかります」
ドミニク「無駄死にといえば怒る人間もいるだろうな」
作者「日本という国が存続したことで無駄死にではなかったかもしれません。
ですが、アメリカに敗れた日本は国が残っても精神は滅ぼされたのかもしれません……」
ドミニク「まあ、どうとるかは後の人間しだいか」
作者「売国奴の民主党が政権をとる今の日本を見れば祖父が無駄死にだったと言うのも分からなくはありません……」
ドミニク「そうだな……」