第26話 スターリン死す
時は飛び1942年11月下旬の出来事である。
日本のハワイ攻略作戦の準備が行なわれていく中
首相官邸にとんでもない報告が舞い込んできた。
「スターリングラードが陥落しただと!?」
東條はその報告をもらした秘書に驚愕の表情で言った。
「はい、未確認ですがドイツ軍はスターリンを捕らえ処刑したという報告も
入ってきています。
そのためソ連軍は総崩れとなりドイツ軍はさらに快進撃を続けているとか…」
「馬鹿な!ドイツはスターリングラードで敗北して敗戦に転がり込むんじゃなかったのか!?」
思わず東條は声を上げて叫んだ。
秘書はなぜそんなことを知ってるんだろうと思ったが黙っていた。
それほどまでに東條は取り乱していたということである。
スターリングラードでドイツが敗北した理由の1つとしてはヒトラーがソ連軍を過小評価し自軍を過大評価しすぎていたということが上げられる。
勝つはずがないのだ。
それなのにドイツはソ連に勝利したという。
東條は驚愕の顔のまま独立機動艦隊の日向を呼ぶために外に飛び出した。
それから1日とおかずして日向、山本が首相官邸にやってきた。
東京まではハリアーを使ったのでそこまで時間がかからなかったのである。
「これは由々しき事態だぞ?」
東條は3人しかいない部屋に入るなり言った。
日向も事前にソ連のことは聞かされているのでそこまで驚いた様子ではなかったが…
「すでに私の知る歴史とは大きく異なり始めています。予想外のことが起こる可能性は
以前にも説明したはずですが?」
そうなのである。
以前東條と未来の話をした時バタフライ効果の話を事前にしておいた。
それは北京で蝶が羽ばたけばニューヨークで嵐が起こるというカオス理論に元ずく話しだった。
独立機動艦隊という異物が現れた以上起こりうる可能性として話をしていたのだ。
「しかし、スターリングラードの攻防戦にドイツが勝利したということはヒトラーの考え方が何か変わったということです。日本が三国同盟を脱退したのが原因かも知れませんが
それだけで根本的な考えが変わるとも思えません」
日向も考え込むように言った。
「この情報は遅れて入ってきたのだろう?すでにドイツは他の地域も制圧に乗り出しているかも知れない。スターリンがもし、本当に処刑されたとすればソ連軍は組織的な反抗力を大きくそがれることになる」
山本が言った。
彼は未来を知るものとして東條に呼ばれたのである。
「ドイツへの備えは万全なのだろうな?」
東條が言っているのはドイツ軍が北海道になだれ込んでくる可能性についていっているのだ。満州に対してもだ。
「正直十分とはいえませんね」
日向が言った。
彼は独立機動艦隊を率いて戦っているが情報収集にも余念がない。
日本で1番陸海の情勢を把握しているのは間違いなかった。
「北海道への侵攻は海を渡らなければいけませんから早々攻撃することは出来ないでしょう。すでに尾張と蒼龍を北海道に向かわせています、仮に侵攻があったとしても問題はありませんが問題は満州です」
そう、満州だ。
今満州の関東軍はハワイ攻略の戦力を整えるため10万の軍を本土に戻してしまっている。
残りの戦力は30万だがそのうち10万ほどは予備役なども含まれるため実質戦力は20万という数になる。
ドイツに攻め込まれれば関東軍は敗退する危険性を払拭できない。
日本は陸戦は正直他国より劣っているとしかいいようがないレベルなのである。
「独立機動艦隊から援護は出せないか?」
東條が聞くと日向は首を横に振った。
「せいぜい神雷を侵攻してきたドイツ軍にぶつけることぐらいしか出来ません」
「核を使えばいいではないか」
東條が言うと山本も目を丸くした。
この男は核の恐ろしさを知っているのにそんなことを言うとは…
「核は使いません」
日向は言い切った。
「ならばどうするというのだ!」
東條が声を荒げた。
しかし、まずいことになった。これではハワイ攻略どころの話ではない。
日本は2正面作戦を戦い抜く力はないのである。
いくら独立機動艦隊の力が優れているとはいえドイツとアメリカがもし手を組めば
恐るべき事態となる。
そんな時首相官邸に再び緊急の連絡が舞い込んできた。
「何!ドイツが!」
それはスイスの大使館からもらされた。
ドイツは1度日本と会談を設けたいというものだった。
「君にも出席依頼が来ているぞ?」
東條が日向に言うと日向は驚いた顔をした。
「私をですか?」
「ああ、独立機動艦隊司令長官、そして紀伊の艦長の日向 恭介を会談に連れてきてほしいと言ってきた。それが適わぬ場合は会談は出来ないといってきている。私とはしては
出席してほしいが…」
だが、日向は妙だと思った。
なぜ自分のことを知っているのだろう?
独立機動艦隊の司令長官と言うことなどはまあ、調べれば分かるだろう。
だが独立機動艦隊は出来てから日も浅い。
それに日向の戸籍はこの日本には存在しないのである。
そのためいろいろ調べることも不都合が生じるのだが…
そして、紀伊の艦長を兼任しているという点も知っているというのが気になる。
そして、そのスイスからの話には1人と男の名が浮かび上がった。
アドルフ=フレドリク
それは世界中で今様々な場所で噂になっているヒトラーの養子となった男の名であった。
凛「日本は窮地にたたされたわね…」
明「ええ、私達がいくら優れているはいえ2正面作戦を戦う力は日本にはない・・・」
星菜「次の会談しだい…」
凛「そうね…次のドイツの会談でもし、ドイツが日本に宣戦布告なんてことになったら…」
明「ハワイ攻略作戦は頓挫してアメリカに時間を与えてしまう。そして、最後は原子爆弾が…」
星菜「アドルフ=フレドリク…彼は何者?」
作者「なにやら皆さん深刻な表情を浮かべておりますので私が言わせていただきます。次回はドイツの会談です。そして、アドルフ=フレドリクも出てきます。
ご意見・感想お待ちしております。この変わった歴史についての感想などは特にほしいです」