第257話 日米最終決戦-稲妻の一撃バルムンク
「アポクリファ艦長、ステラです」
三笠のCICの空気が変わる。
若いとみなが思った。
三笠の艦長藤森 冬花よりさらに下に見える。
長い金髪をポニーテールにし、それを黒い紐で結わえている。
加えて、その存在は絶対的優位を疑わない王者の風格を表していた。
「日本独立機動艦隊所属、機動戦艦『三笠』艦長、藤森 冬花です。さっそくですが用件を聞いても?貴国と我が国は戦争中です」
「フフフ、おかしなことを言われるのですね藤森……いえ、冬花艦長は」
一瞬、冬花は名前で呼ばれたのを不快に思ったが表に出さずに微笑みを浮かべる少女に問い掛ける。
「おかしなこととはどういう意味でしょうステラ艦長、まぎれもなく日本とドイツは戦争状態にあります」
「ですが合衆国日本とドイツは戦争状態ではない。違いますか?」
「それは……」
機動戦艦は本来のこの時代に存在していない。 つまり厳密に所属する国家は2042年の未来の日本ということになるが三笠の故郷となる日本は滅んでいる。
「あなた方は日本を破滅から救うためにこの世界に来ました。ですがとある条件を飲めば日本を存続させることができます」
「ドイツの軍門に下り、三笠を明け渡せと?」
冬花が言うとステラは天使のような微笑みを浮かべたまま
「はい、もちろん発言力などかなり下がるでしょうが日本という名前は残ります」
「……」
「分かってるでしょう? 大日本帝国は絶対にドイツ神聖帝国に勝てません。そして、三笠ではアポクリファには勝てません」
「言ってくれるわね」
冬花の横に三笠の艦魂炎樹が転移してきた。
画面の向こうのステラは少し首を動かし炎樹を見ている。
「あなたが三笠の艦魂ですね」
「私が見えるということは……」
「ようやく会えたな三笠の艦魂よ」
画面のステラの横に現れた女性炎樹は不適に笑いながら
「ええ、会いたくなかったわアポクリファ」
「我が名はアポクリファ!真名をイザヴェラという」
真名を名乗る。
イザヴェラの行動は昔の武士が名乗りをあげる行為と同じものだ。
名乗られたら名乗り返すのが礼儀
炎樹は背筋をピンとはり圧倒的な存在感を出して
「我が名は三笠! 大日本帝国海軍所属!真名は炎樹!」
イザヴェラは気圧されそうになりながらも心では喜びに震えていた。
(これが三笠の艦魂!日本海海戦でバルチック艦隊を撃ち破った英雄の艦!面白い)
そこで2人は黙る。
互いに視線をぶつけながら話の主導をステラと冬花に戻したのだ。
「さすがは三笠の艦魂ですね。 尊敬に値します」
「三笠は敵国の軍艦よ?」
「知ってますわ冬花艦長、でも私は偉大な艦にはそんなことは関係ありません」
「話がそれたわね」
「ええ、三笠に敬意を表していいことを教えてあげましょう」
「何かしら?」
「ドイツ神聖帝国は1年後、日本攻略に乗り出します」
「これまでもあったようだけど?」
ステラは微笑みながら
「あんな侵攻ではありませんよ? アドルフ・フレドリクは沖縄を目指します」
「沖縄を?」
冬花が聞くとステラは頷いた。
「沖縄近海で日本と決戦を行うと答えておきましょう」
「でも沖縄が落ちたとしても本土には陸軍や海軍の航空隊だってあるわ。簡単には……」
「沖縄が落ちれば日本は降伏する。これは確定事項です」
何を根拠に言っているのかわからないがその言葉に嘘はないように冬花には感じられた。
何か切り札があるのだろう。
それに沖縄は日本の科学の生命線でもある。
確かに沖縄が落ちれば日本は危うい。
だが……
「なるほどこの作戦で私達機動戦艦を壊滅させ日本と決着をつけると」
「機動戦艦、特に大和、紀伊は私達の世界では奇跡を起こす戦艦、伝説の戦艦と讃えられる艦です。それが日本にあると邪魔になります」
「簡単に行くと思うの?大和や紀伊、そして三笠は簡単には……」
ステラはそれを遮るように声を出す。
「返答を聞きましょう冬花艦長。三笠を明け渡して降伏するかどうかを」
「返答?」
冬花は炎樹を見上げた。
彼女は黙って頷いた。
「返答は……拒否!降伏はありません」
CICの兵達も嬉しそうに微笑んだ。
そして、ステラは軽く息を吐き瞳を閉じ、スゥと青い瞳を静かに開けた。
「バルムンク発射用意」
「!?」
モニターが切れる。
「て、敵機動戦艦にレールガン発射反応あり」
「面舵いっぱい!アイギス展開!出力最大展開! 乗員に通達!」
艦内マイクを通じて冬花は怒鳴った。
「これより本艦は主砲射程圏内に突撃を開始する!各員奮闘努力せよ!」
三笠は46センチ速射砲の射程にアポクリファを入れるため50ノットで突撃を開始した。
一方でアポクリファではイザヴェラが西洋式の大剣を引き抜き空に振り上げる。
「受けよ我が必殺の一撃を!」
バチバチと大気がスパークするように砲に電撃が蓄積されたのがわかる。
「発射!」
「でりゃああああ!」
ステラの言葉と同時にイザヴェラは甲板で気迫の篭る声を出し三笠に向かい剣を振り下ろした。
バルムンクと言う名前のレールガンは真っ直ぐに三笠に向かう。
「っ!」
甲板の炎樹は刀に手をかけた。
作者「つ、ついにバルムンクが機動戦艦に!」
ドミニク「考えてみりゃ水上型で純正の機動戦艦同士の戦いは始めてだな」
作者「むぅ……」
ドミニク「次回からついに砲撃戦だな」
作者「違うよ」
ドミニク「何?」
作者「次回から少し時間を戻して紀伊と大和の戦場に行くよ。正確にはドイツの機動戦艦探索中の紀伊だから少し日常が入る」
ドミニク「3つのうち最後の戦場か……そういや最近凛ちゃんや撫子姉さんに会ってねぇな」
作者「私は今から凛様に吹き飛ばされます」
ドミニク「は?なんで」
作者「なぜなら昨日凛様が楽しみにしていたケーキを冷蔵庫からとって食べたからだ!監視カメラを偽装するの忘れてたから確実にばれてる!」
ドミニク「え?ケーキってイチゴタルトとかいうあれか?やべえ俺も一個食っちまった」
作者「……」
ドミニク「なあ作者」
作者「ああ……」
作者・ドミニク「逃げよう!」
凛「逃がさないわよあんたたちぃ!」
作者・ドミニク「ペペロンチーノォ!」
ズドオオオオオオン
凛「食べ物の怨みは恐ろしいんだからね!」