第249話 日米最終決戦―蒼龍・飛龍離脱! ステラとフレドリクの出会い
「赤城! 加賀轟沈! 蒼龍 飛龍被弾!」
「な、なんだと!」
山本はその報告に驚愕した。
一回の報告で最強を誇る機動部隊の一角が突き崩されたのだ。
「蒼龍、飛龍は離脱すると……」
「やむおえまい……」
山本は苦しそうに言った。
「村雨を蒼龍、飛龍の護衛に付けるように打電を」
「それは危険です! 村雨がいなくなれば我が艦隊の防空能力は低下します」
「蒼龍と飛龍を失うことの方が危険だ! 命令を実行しろ」
「り、了解!」
直ちに、村雨に蒼龍と飛龍の護衛が命じられる。
蒼龍と飛龍は航行可能な状態であることから沖縄まで行き修理を受けることになるだろう。
「それから、各空母に神雷の着艦の要請を……」
山本がそこまで言った時だった。
「ちょ、長官! アメリカ軍機が蒼龍、飛龍に向かいます!」
「何!」
とどめを刺すつもりだと山本は思った。
直ちに直掩の竜神、神雷は蒼龍、飛龍の護衛を命じられる。
3万5千の高空からはアメリカ本土から来襲したB29がばらばらと爆弾をまき散らしている。
アベンジャー、ヘルダイバーは炎上を続ける蒼龍、飛龍にとどめを刺そうと2艦に殺到した。
「チャンスだ! モンスター空母を葬る機会見逃すな!」
魚雷を投下しようとしたアベンジャーだったが上空より飛来した竜神にミサイルで消しとばされた。
「守り抜け! 蒼龍、飛龍をやらせるな!」
日本のパイロット達は必死に戦い続ける。
しかし、500機以上の大編隊である。
ついに、魚雷が投下された。
「ひ、左舷魚雷接近!」
狙われたのは蒼龍である。
被弾の影響から速力は20ノットまで落ちている。
「取り舵一杯!」
航海長が怒鳴り声をあげて実行する。
蒼龍のすれすれを魚雷が通過していった。
「戻せぇ!」
攻撃は執拗に続けられている。
その時、三笠が咆哮した。
対空ミサイルで次々にアベンジャー、ヘルダイバーが駆逐されていく。
そんな中、村雨も砲撃を開始した。
速射砲は冗談のよう命中率で蒼龍、飛龍に集中する米艦載機を撃滅していく。
「ファック! モンスターめ!」
忌々しげにアメリカのパイロットが言った。
これでは、近づけるはずがない。
「「もう、1発も通さない!」」
強い決意の元、三笠の艦魂、炎樹、村雨の艦魂由真はたがいに武器を片手にアメリカ軍機をたたき落としていく。
その働きはまさに鬼神のごとくで第3次攻撃隊の被害は甚大なものになりつつあった。
「シット! 駄目だ目標を切り替えよう!」
狙うは他の輸形陣である。
村雨は砲撃を続けていたがミサイルは沈黙していた。
もはや、無駄弾は1発も撃てないほど対空ミサイルはないのだった。
しかし、村雨の援護がなくとも日本の対空砲火はすさまじい、そして、怒りに燃えた艦魂達や兵達の気迫がこもった弾は次々と、アメリカ軍機を落としていった。
アメリカ第3次攻撃隊は駆逐艦に至近弾を落とした程度に終わり、壊滅したのである。
その頃、日本海軍の第3次攻撃隊も米艦隊と交戦中であった。
「ファイア! ファイア!」
撃つまくれと怒鳴りながら空母ホ―ネット甲板で兵士は滝のような汗を流していた。
無理もない。
ザ・シンクの炎は米艦隊の周囲ですさまじい熱気を放っていたからだ。
この状況はサウナで走り回るような過酷な戦場だった。
戦場という通常の感覚がマヒする場所でなければとうに兵たちは根を上げている。
しかし、彼らは日本海軍を押しているという結果も幸いし戦えていたのだった。
「日本海軍のモンスター空母2隻を撃沈、2隻を大破確実か……」
ハルゼーは呟くように言った。
「あの超巨大空母をしとめることができたのは夢のようですが……」
「そうだな……」
参謀長の言葉にハルゼーは呟いた。
日本のモンスター空母にはとてつもない被害を与えられたのが米艦隊である。
しかし、喜ぶべきことなのか……
どうしても、ハルゼーは心の底から喜ぶことができない。
高揚感はある。
もちろん、敵の空母を……切り札に近いモンスター空母を葬ったのは素晴らしい戦果である。
(これでよかったのか……本当に)
空を見上げると日本軍機とシューティングスターが空中戦を演じている。
シューティングスターが炎を巻き上げて墜落していく。
その空中戦を見ていてもハルゼーは正しいのか間違っているのかの結論で出そうになかった。
「やりましたね。艦長」
機動戦艦アポクリファ、ドイツ機動部隊の旗艦である。
「蒼龍、飛龍は打ち洩らしましたが構いません」
参謀長の言葉にステラは言った。
「誤差の範囲内です艦長。 残るならあの2艦は沖縄沖の決戦で撃沈する定めになるのですから」
「その前に、日本が降伏する可能性もありますよ」
ステラが言うと参謀長は
「あなたが言うのでしたらそうなのでしょう」
ステラは微笑しながら
「フフフ、冗談です。 日本連合艦隊は壊滅するまで戦いをやめないでしょう」
このエデン終了後、ドイツは準備が終わり次第日本攻略に乗り出す。
北海道のような甘いものではない。
ドイツ主力による日本連合艦隊の殲滅後、降伏しないなら日本に上陸し、本土決戦に突入する。
日本は国体護持を条件に降伏を打診してくるはずだが、認めない。
日本と言う国は解体されドイツの一部となるのだ。
しかし、妥協案は必要である。
フレドリクは天皇の命を取ろうとまでは考えていない。
それをしてしまえば、1億総玉砕も幻ではなくなってしまうからだ。
逆らう者には死をという方針を取ってきたドイツ神聖帝国だが日本が降伏すれば対抗できる国はもうなくなる。
「艦長、懸念すべき点が一つだけあります」
「なんですか?」
ステラが聞くと
参謀長は一呼吸置いてから
「合衆国日本です」
「確かに……」
ステラは優雅に微笑を浮かべて答える。
「合衆国日本の技術力は私達と互角かそれ以上です。 ですが、彼らには何もできません」
「というと?」
「タイムスリップに必要な鉱石『クロノ』はあの世界にはもう、存在しないからです」
2042年に存在していたタイムスリップに必要な鉱石クロノ、それは隕石からもたらされた未知の鉱石である。
偶然か必然かその隕石はドイツに落ちてきた。
巨大なクレーターの真ん中から出てきたその鉱石はドイツの人物に一つの野望を抱かせた。
日本が大勝利を収めたことによる起こった第3次世界大戦の危機を回避する。
それが、当初の計画だったが。
野望はさらに深まった。
ドイツが世界を統一し、国家間の戦争を永久になくす。
それが計画である。
計画を知らされた者たちはアドルフ・フレドリクに心酔している。
世界を統一するというとんでもない野望。
アレクサンドロスやナポレオンといった数々の英雄が成し遂げられなかった夢をこの男はかなえつつある。
この決戦に勝利し、日本を屈服させれば世界征服という統一国家の樹立は完了するのだ。
その樹立は、未来に起こる数々の悲しみを取り除いてくれるはずだった。
ステラもアドルフ・フレドリクに心酔した一人である。
彼のゆるぎない決意についていこうと決めた。
最年少で、機動戦艦の艦長に上り詰めた彼女に彼は言ったのだ。
「戦争のない世界を作る気はないかと……」
始めは馬鹿な理想主義者だと思った。
だが、アドルフ・フレドリクは断るステラに何度も接触を図った。
ステラは孤児である。
両親は、ロシアとの小競り合い死に、ドイツに難民としてやってきて必死に努力して海軍にはいった。
海軍にはいり、努力して、努力して昇進していった。
そして、機動戦艦の艦長になってからしばらくして、ステラは年齢が気に入らないらしい上官に暴行を受けた。
もちろん、そういう上官を裁く組織もあるが、その上官はその方面に顔が聞くらしくステラは助けてはもらえなかった。
何度も殴られ、軍をやめるように強要されたがステラは軍にしがみ続けた。
フレドリクに誘われたのはそんな頃である。
大佐という自分と変わらぬ当時の階級から悩みを打ち明けることはなかったが
その日はやってきた。
いつものように、軍の施設に呼び出されたステラは、上官に見えない位置を殴られる。
軍をやめろという上官の言葉にひたすら拒絶の言葉を吐く。
そんないつもの日常が繰り広げられている場所に彼は現れたのだ。
「な、なんだ貴様!」
階級は、フレドリクより上、その上官は掴んでいたステラの髪を掴んだまま言った。
ステラは視線だけをフレドリクに向ける。
(馬鹿な人……この人は政治家にも顔が聞く……いいなりになるしかないのに……)
フレドリクは冷たい目を上官に向け直後、上官の頬を殴り飛ばした。
吹っ飛ばされて壁に激突する上官。
「が、害虫だと! き、貴様大佐の分際でなんだ! 私の父は軍の……」
「黙れ、害虫」
ステラは目を見開いた。
軍の上官を害虫という軍人がどこにいる。
案の定、上官の男は顔を真っ赤にした。
「き、貴様! どこの所属だ!名前と所属をいえ!」
フレドリクは、凍てつくような冷酷な視線を向けながら答える。
「機動戦艦フリードリッヒ・デア・グロッセ艦長、アドルフ・フレドリク大佐だ」
「覚えたぞ貴様の名前!」
上官は慌てて去っていった。
ステラは地面に膝をつけたまま
「なんで助けたんですか……」
軍事政権のドイツであの上官の逆らうのは自殺行為だ。
下手したら処刑すら免れないと言うのに……
「簡単だ」
アドルフ・フレドリク言い。
揺るぎなき信念を無表情の顔に宿し、ステラに右手を差し出した。
「俺の計画にはお前が必要だ。 だから、手を貸せ」
始めは、馬鹿な男と思った。
だが、今ステラはこの男を信じてみてもいいんじゃないかと思っていた。
果てしない野望を抱き、危険を顧みず優秀な人材を集めていること男を……
「ええ、喜んで」
ステラは手を取った。
「フフフ」
「どうかしたんですか艦長?」
参謀長の言葉に
「アドルフ・フレドリクにあった頃を思い出していました」
あの後、上官は裁きを受けた。
数々の暴行や横領が発覚し、殺人にもてを染めていたらしいその男は処刑された。
あの後、分かったことだが、アドルフ・フレドリクの後ろには軍事政権の最高指導者のレイがバックについていたらしい。
どうりで無茶ができるわけだ。
だが、それを知ってもステラは彼についていこうと決めていた。
仮に、彼が失敗したとしても変わらない。
あの日、フレドリクに救われた日から彼に生涯の忠誠を誓おうと決めたのだから……
だから……
「この決戦、踊ってもらいますよ日本海軍、そして、紀伊・大和……」
ステラは微笑を崩さずいうのだった。
作者「へー、フレドリクって結構、女泣かせ?」
ドミニク「まあ、奴は認めたくないがかっこいい奴だからな」
作者「あったことあるのかドミニク」
ドミニク「ん?ちょっとだけだがな。 信念を持つ男は女から見たらかっこいいんじゃねえ?」
作者「確かにそうかもしれない……」
ドミニク「案外、ステラもフレドリクのこと好きだったり……」
作者「可能性はあるね」
ドミニク「ちくしょう! なんで俺はもてねえんだ作者!」
作者「いや、君はその気になれは彼方を落とすことができ……」
彼方」「死になさい!」
作者・ドミニク「ぎょわああああああああああああああああああああ!」
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
彼方「ふん!