第248話 日米最終決戦―日本独立機動艦隊機動部隊壊滅! 明の思い
「長官、第2次攻撃隊が帰還しました」
「戦況はこちらの不利だな……」
山本は言った。
「はい、やはり、レシプロ機では容易に敵艦隊の近接信管の砲弾を突破できません」
頼みの神雷や烈風はドイツの戦闘機が執拗に妨害をかけてくるので米艦隊への攻撃は期待できなかった。
だが、航空戦ではどちらも大打撃は受けていない。
日本海軍の防空能力は高いためである。
航空機の損失率に関しては日本の方が被害は遥かに軽微だった。
だが、こちらも打撃を与えられていない以上、下手すれば計画に支障をきたす恐れがあった。
(やはり、艦隊決戦か……)
山本としては艦隊決戦は避けたかった。
情報では敵は武蔵と同格のアンドロメダ級戦艦を数隻そろえているらしい。
練度で負けることはないが苦しい戦いになることは明白だった。
戦闘のどなり声を耳にしながら山本は言う。
「第4次攻撃隊には集中的に戦艦を狙うように厳命してくれ」
「つまりは艦隊決戦ですな?」
黒島がにやりとしていった。
艦橋の兵達も顔つきが変わった。
艦隊決戦は文字通り、戦艦を主軸にする決戦である。
菊水作戦に参加している日本海軍の戦艦・空母は以下のとおりである。
戦艦:武蔵 長門 陸奥 伊勢 日向 扶桑 金剛 比叡 榛名 霧島
正規空母 5隻
輸送船改造空母 15隻
ちなみに比較のため並べるとアメリカ軍は
戦艦 15隻
正規空母 27隻
護衛空母 49隻
イギリス軍
戦艦 3隻
空母 3隻
日本独立機動艦隊
原子力空母 4隻
機動戦艦 1隻
ドイツ独立機動艦隊
機動戦艦 1隻
核融合空母 6隻
差は歴然としていることが分かる。
だが、それでも山本は米軍に艦隊決戦を挑まなければならない理由がある。
全艦撃沈など望んでいない。
日本海軍に敗退したという事実が必要だった。
「第4次攻撃隊を急がせろ!」
山本は言うのだった。
「急げ! 第3波が来る前に全部あげるんだ!」
「……」
信濃の甲板では艦魂の小雪がその様子をじーと見つめていた。
「小雪!」
その時、イージス艦村雨の艦魂由真が甲板に転移してきた。
その呼吸は少しだが確実に乱れていた。
「……大丈夫由真?」
彼女は旗艦 武蔵もいるこの輸形陣の中で獅子奮迅の活躍で敵航空機を落としている。
だが、高性能艦の宿命か右に左に動き回っているので疲れるのは当然だった。
「私は大丈夫だけど問題は弾よね……」
「うん……」
早朝からの戦いで村雨は対空ミサイルを撃ち尽くしつつあった。
対艦ミサイルは残っているが、現在、米軍に対して使用は認められていなかった。
山本の思惑があるのだが由真はその許可が欲しかった。
といっても、米艦隊は対艦ミサイルの射程を知ってるようであり射程には近づいてこない。
夜戦なら活躍できるかもしれない。
「……」
「どうしたの小雪?」
不安そうな顔をする小雪を見て由真はその気持ちに気がついた。
「撫子長官なら大丈夫よ。日本海軍……いえ、世界最強の戦艦大和は不沈艦なんだから」
「うん……」
頷く小雪だがその頷きに力は感じられない。
不安はある。
この戦いで機動戦艦を全て失うようなことになれば日本は降伏以外の道は残されていないからだ。
連合艦隊が壊滅しても同じである。
陸軍だけでは戦えず、日本海軍に残された戦艦は近江のみとなる。
近江は確かに強力な戦力だが戦艦1隻では戦況は変えられない。
できることと言えば、史実であったという沖縄特攻のような使い方しかできまい。
「何、不景気そうな顔してんだよ2人とも」
その時、2人に話かけてくる人間があった。
格納庫まで移動していた2人の前に現れたのは夏目 煉。
小雪の友人であり由真のもっとも警戒すべき男だった。
由真は威嚇する猫のように目を細めて煉を睨みつける。
対する小雪はどこかうれしそうに
「……煉、出撃ですか?」
「おう、第4次攻撃隊にな。 たく、第1次にも参加したんだから休ませてほしいぜ」
「ふん、死ねばよかったのに」
由真が吐き捨てるように言った。
「相変わらず、口の悪い奴だなお前」
「ふん」
「あ……あ……」
小雪はおろおろしながら2人を交互に見る。
なんでこの2人はこんなに仲が悪いのだろう?
出会ったときからそうだった。
「まあいいけどな。 俺が留守の間小雪を頼むぜ」
由真はつんとしながら
「言われるまでもないわよ。 あんたはさっさとドイツにでもアメリカにでも落とされてきなさいよ」
「了解、行ってくるよ」
「え? ちょっ!」
本当に言ってしまいそうになったので由真は慌てて呼び止めた。
「夏目!」
「ん?」
錬が振り返ると由真は屈辱か照れか顔を真っ赤にしながら
「う、嘘だからね」
「何がだよ?」
それを、錬は意地悪くにやつきながら返した。
「……から」
「ん?聞こえないぜ?」
馬鹿にしたように右手を耳にかざす練
「だから!」
その時、由真は空を飛んだ。
空中でぶおんというすさまじい風圧を作りながらその蹴りは練の顔面にめり込んだ。
「ぐわ!」
悲鳴をあげて吹き飛ばされる練
「練!」
小雪が悲鳴をあげる。
「帰ってこなかったら承知しないんだからね! 小雪を泣かせたら地獄の底まで追いかけて蹴りを入れてやるんだから!」
「由真……」
小雪は嬉しかった。
なんだかんだ喧嘩しても由真は練を心配してくれてるのだ。
(よかった……)
小雪が思った時、練ががばりとおきて頬を押さえながら由真に詰め寄る。
「おい! 暴力女! 顔をける奴があるか! 骨が砕けるかと思ったぞ」
「あ~ら、鼻がへこんだ方がもっときれいな顔になるんじゃないかしら?」
「ふざけんな! 俺は鼻が高いわけじゃねえ!」
(け、喧嘩するほど仲いいんだよね?)
少し、不安げに小雪は思うのだった。
「長官! 村雨からです。 北より敵第3次攻撃隊接近中!」
「直掩の竜神を迎撃に回せ。 第4次攻撃隊発艦を急ぐように各艦に伝達せよ」
「了解!」
「踏ん張りどころだぞ! 第4次攻撃が終われば我々は、米艦隊と艦隊決戦に突入することになる」
信濃のエレベーターが上昇していくのを感じながら練は計器のチェックを済ませる。
(問題なしと)
竜神の調子は問題ない。
第1次攻撃の時も被弾しなかったので今回もそうあってほしかった。
(母さん、父さん、行ってくるぜ)
計器に張った写真を見ながら練は言った。
そして、
(小雪、由真、戻ってくるまで沈むなよ)
蹴られた頬を押さえながら心配そうにしていた2人の顔を思い出す。
竜神がカタパルトに乗せられ、甲板上の兵が旗を振った。
グンと後ろにGがかかり、竜神は一気にアフターバーナーの炎を後ろから出しながら出撃した。
各空母からも次々と戦闘機、雷撃機、爆撃機が出撃していく。
出し惜しみはなしである。
出せる航空機は直掩を残して全てが攻撃に当てられるのだ。
航空決戦は終わりを迎えつつある。
米第3次攻撃隊は始めはドイツ軍機と合わせると600機の大編隊であった。
だが、ここに至るまで、竜神や神雷の妨害に会い100機ほど減り、500機の編隊になっていた。
「会いたかったぜジャップ!」
ついに視界に捉えた日本艦隊を見て、パイロットが言った。
対空砲火が彼らの周りに炸裂し味方機が落ちていく。
なんとすさまじい対空砲火か
「1発でいい! 奴らのケツ穴に棒(魚雷)をぶち込んでやれ!」
猛然とアメリカ軍パイロットは突撃を開始した。
同行していたドイツ軍戦闘機バッヘムは迎撃に出てきた神雷とミサイルや格闘戦に入る。
日本艦隊にはこれまで手を出してこなかったバッヘムだが3機のバッヘムが神雷との戦いの輪から飛び出した。
そして、それぞれ艦船にミサイルを放ったのである・
彼らの狙いは蒼龍だった。
「ば、バッヘムミサイル発射! 狙いは本艦です!」
CICで兵士が怒鳴った。
艦長の雨宮葵はアイギスを使うか一瞬迷った。
あれを使えばしならく、使えなくなってしまう。
核融合炉と違い原子力のエネルギーだけでは艦全体をカバーするアイギスを維持するのは不可能だった。
「CIWSで迎撃!」
蒼龍の直掩の神雷が3機のバッヘムの前に割り込もうとした。
だが、直後、閃光が走り神雷が炎をあげて落ちて行った。
「物足りねえよ! 後少し遊んでもらうぜ日本海軍!」
ヴェルナーのマーナガルムだった。
圧倒的な性能と操縦技術で神雷を駆逐していく。
その隙に、バッヘムはさらにミサイルを放った。
蒼龍のCIWSが断末魔の咆哮のように海面に水しぶきを上げていく。
初弾の3発はCIWSにより迎撃されたがCIWSの迎撃には限度がある。
頼みの三笠もアメリカ軍の攻撃から日本海軍を守ることが精いっぱいで援護は望めそうになかった。
「っ! アイギスを!」
「あ、アイマム! アイギス起動!」
蒼龍の周りにうす紫色の膜が展開される。
ミサイルは全てそれに命中し、四散した。
しかし、3機のほかにも執拗にドイツ軍機は蒼龍、飛龍、赤城、加賀に攻撃を集中させた。
同じように他の3艦もアイギスを展開させられてしまい。
その、時はやってきた。
「あ、アイギスの限界時間です!」
「っ! 直掩に防がせて! 三笠にも援護要請を!」
葵は苦渋に満ちた顔で言った。
ドイツ軍機が殺到する。
神雷は必死に防ごうとするが100機近いバッヘムは隙を見て何機かが対艦ミサイルを発射した。
CIWSの防御は健在であるがもちろん完ぺきではない。
いくつかは、チャフにより船体からそれるがついにその時はやってきた。
ズドオオン
ズドオオン
立て続けに、赤城、加賀にミサイルが命中した。
「「がああああ!」」
赤城の艦魂優妃、加賀の艦魂月花が血の海に倒れ込んだ。
「優妃! 月花!」
妹の被弾に飛龍の艦魂、弥生が泣きそうな声で言った。
しかし、そんな彼女の船体にも無情にもミサイルは突き刺さった。
ズドオオン
「あああああ!」
口から血を吐き脇腹が裂けるのを弥生は感じた。
「痛い……痛いよう……」
泣きながら甲板を弥生はのたうちまわった。
兵たちが必死の消火活動を行っている。
致命傷ではないことを弥生は感じていた。
しかし、甲板は炎に包まれており発艦は不可能な状態にあった。
(すまん……弥生姉さん……星菜姉さん……炎樹元帥……凛長官……)
「え?」
それは念話だった。
頭に直接響くその言葉、弥生は慌ててその念話の発進先である赤城と加賀を見る。
ミサイルが直撃する間際だった。
「っ!」
叫ぼうとした瞬間、対艦ミサイルが6発それぞれ赤城、加賀に命中、その瞬間、大爆発を起こして日本海軍の最強の機動部隊の一角赤城・加賀は轟沈した。
「う……そ……」
2042年の世界から共に戦ってきた大切な妹が死んだ……
明に続いてまた、2人……
「う……わ……」
涙を流しながら弥生は救いを求めるように蒼龍を見た。
その瞬間、蒼龍に炎が舞い上がった。
対艦ミサイルが直撃したのだ。
「星菜お姉ちゃん!」
たまらず、弥生は蒼龍に転移していた。
甲板を見渡すと炎の中に少女が倒れていた。
血の海に沈むのは大好きな姉だ。
「星菜お姉ちゃん!」
痛みに耐えながら弥生は星菜に駆け寄った。
「お姉ちゃん!」
もう一度、呼ぶが姉からの反応は薄い。
「お姉ちゃん!」
先叫びながら血の海の中で姉を呼び続ける。
「……うるさい」
「お姉ちゃん」
姉の言葉に弥生は安堵しながらも言葉を続ける。
「大丈夫!? ねえ! 大丈夫なの?」
「……まだ、沈まない」
星菜はそういうと体を確かめてみる。
炎は広がっているが兵達の活躍により、消し止めることはできそうだ。
まだ、死なない。
「弥生……配置に戻る」
「でも、お姉ちゃん!」
「戻る!」
強い口調で言う星菜の言葉には日本を守るという決意が込められているのが弥生には分かった。
「わかった……戻るよ」
死なないでという言葉と共に弥生は飛龍に転移する。
星菜はそれを見届けた後、防御に猛然と参加した烈風の攻撃により駆逐されつつあるドイツ軍機を見ながら思った。
(……独立機動艦隊の空母の艦載機はもう、使えない……)
残るは、三笠の烈風のみだ。
神雷は日本海軍の空母が無事なら収容は出来るだろう。
神雷全滅と言う最悪の状況はなさそうだった。
「……」
星菜は赤城、加賀の沈没した地点を見て敬礼した。
(……後は任せてゆっくり休んで……)
星菜の目からは静かに涙がこぼれおちた。
花畑を月花と優妃は静かに歩いていく。
川の前には一人の艦魂の姿があった。
そのショート髪の少女は、静かに立ち上がると呆れたように言った。
「何? あんた達もきたの? 早すぎない?」
「明……さん」
2人は死に別れた偉大な艦魂に涙して飛びついた。
2人を抱えながら明は思う。
(凛……お姉ちゃんあなたが最後の希望……星菜、弥生、撫子……日本を……救って)
それは、願いだった。
作者「そ、そんな……」
ドミニク「独立機動艦隊の機動部隊はほぼ、壊滅か……」
作者「脇役とはいえ原子力空母が……」
ドミニク「これで日本の戦力はかなりおちたな」
作者「蒼龍、飛龍はまだ、浮いてるけど余談は許されないし艦載機の発進は難しいだろうね」
ドミニク「星菜ちゃんや弥生ちゃんは血まみれか……」
作者「そして、久しぶりに天国に現れた明さま」
ドミニク「というか、明ちゃん三途の川渡ってないのか!?」
作者「彼女は何かを待ってるのかもしれませんね。あるいは、何か違う考えがあるのか」
ドミニク「てか作者! やばすぎだろ! 原子力空母どころか神雷も大量に失っちまったぞ!」
作者「大丈夫! かなりの神雷は空にいたから」
ドミニク「でも、全部じゃねえだろ!」
作者「ミッドウェーの再来だ……」
ドミニク「まあ、蒼龍の飛龍が無事なのは不幸中の幸いだが……離脱か?」
作者「避けられないかもしれない……」
ドミニク「く! ドイツが全力で日本艦隊を攻撃したら防ぎきれねえぞ! 烈風は高性能だが数が……」
作者「このままでは……」
ドミニク「奇跡をおこしてくれ作者! 合衆国日本の援軍を!頼む作者」
作者「……駄目だ……合衆国日本の援軍は許さない。 それだけは許さない」
ドミニク「作者!」
作者「私だって辛いんだ! 日本圧倒で終わらせたいさ!でもどうしようもないじゃないか!」
ドミニク「紀伊・大和……日本を救ってくれ」
作者「日本海軍最後の希望はやはり、大和・紀伊……凛様……撫子様」
ドミニク「日本を救ってくれ……