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第239話 2つの決戦 

炎で真っ赤に染まった零戦改がオアフ島に墜落し燃えていたその時も大空は閃光と鉛の殺戮の攻防は続いていた。

襲来したドイツ軍機は全機健在。

対する、日本軍は陸上基地が壊滅したため、一部を除き海軍航空隊のみ、つまり空母艦載機及び機動戦艦艦載機がドイツ軍の相手をしていた。

空母が無傷ということもあり、迅速に展開した日本軍機は100機を越えようとしていたがその数をもってしてもドイツ軍機を破壊することは容易ではなかった。

しかし、追い詰めつつあると神雷のパイロット高畑 賢治は思っていた。


(どれほど性能差があろうと……)


操るのは人間である。

集中力にも限界がある。

高畑は部下と共に執拗に一機のマーナガルムを狙った。

ヴェルナーのマーナガルムである。


「ライトニング1! 右に追い込め! 俺が決める」


「ライトニング1了解! やってみます!」


高畑の狩る神雷がライトニング1の神雷に追われてくるマーナガルムの後ろをとった。


「もらった!」


ミサイルの発射ボタンを2回

白煙を吐いて対空ミサイルが発射される。

そのミサイルは回避行動をとるマーナガルムに命中したが爆炎の中かから薄紫の幕を纏ったマーナガルムが飛び出してくる。


「ちっ! 化け物め!」


アイギス搭載戦闘機はとてつもなく厄介だ。

こっちがいくら空戦の技量を叩き込んでもアイギスという究極の防御兵器に阻まれてしまう。

考えねばならない。

あのアイギスを破りマーナガルムを撃ち落とす戦術を……

だが、この戦いの最中、思いつくことはなかった。








一方、高畑達が空戦をしている場所より東の空域では漆黒の戦闘機と蒼の戦闘機が何度目になるかわからない格闘戦を挑んでいた。

震電はミサイルを撃ち尽くし機銃のみ、メッサーシュミットゼロは対空ミサイル1発に機銃が残されていた。


「凪、一回戻って弾の補充を!」


「できないよ! 基地はやられたし紀伊や大和は戦闘中だから着艦できない! それに……」


ソラに凪は怒鳴りレーダーに映る漆黒の戦闘機の光点を見ながら


「……あの人を吹き切れる自信は私にはないよ! ここで決着をつける!」


「でも、凪……っ!」


「ソラ?」


戦闘に集中しながら凪は奇妙な声を上げた飛魂の少女に声をかける。

その瞬間、震電の中にあるランプの一つに点滅が起こる。


「凪、アイギスが……」


「あ……」


震電のアイギスが停止した光点であった。

今まで、メッサーシュミットゼロと渡り合えたのはアイギスがあってこそだった。

アイギスがあるため、チャフ等の兵装は震電にはない。

それに、戦闘中アイギスが停止するなど想定されていないのだ。


「そんな……」


凪の頭に最悪の事態が浮かんだ。

それが彼女の一瞬の油断となったのだ。

けたたましい警報が鳴り響く。

ロックオンの警告音である。




「これが、最後の1発だ!」


「死んじゃえ震電!」



メッサシュミットゼロの飛魂ルチアと世界最強の撃墜王エーリッヒ・ハルトマンは同時に言うとミサイルを発射した。





「凪!脱出してください!」


「嫌!」


凪は震電を垂直に最大速力で落下する。

すさまじいGが凪を襲うが構わない。

ミサイルの警報は止まらず、みるみる接近してくる。


「凪、何を!」


「黙って! 気が散る!」


彼女が降下する先にあるのは炎を巻き上げる真珠湾の造船施設である。

凪は震電を垂直からやや傾けるとそのまま、突っ込んでいく。

みるみる迫る倉庫らしい建物を見てソラは悲鳴をあげた。


「……」


刹那の瞬間、震電は倉庫と倉庫の間を飛ぶ抜けた。

抜けた瞬間目の前にドッグがあったが凪は操縦根を限界まで引き機体すれすれの状態で上空に飛び去った。

見ると後ろでは震電を追っていたミサイルが倉庫に当たり燃えている。

間一髪であった。


「……時々恐ろしいと思います凪あなたの腕」


「何度もできないよこんなこと……」


凪は言いながら思った。

きっと、戻れば思うだろう。

あの刹那の瞬間、少しでも機体がぶれていたら倉庫に激突して即死だった。

だが、あの判断は正しかったのだと





倉庫を滑り抜けた震電を見てハルトマンは驚愕していた。


「なんという技量だ」


「まぐれだよまぐれ」


2人が言った時、彼らの近辺で砲弾が炸裂した。


「く」


ハルトマンは舌打ちして右を見ると真珠湾の外を出た戦艦部隊や重巡が砲撃を行っている。

彼らは射程内に来たメッサーシュミットを狙っているのだ。


「今回はここまでか……」


機銃の残量も多いとは言えない。

それに、震電にこの空域で戦闘されたら厄介だ。

戦艦の砲撃が当たるとは思えないが下には紀伊や大和もいる。

今はミサイルの迎撃を行っているが彼らがメッサーシュミットゼロを狙ったら厄介なことになる。

ハルトマンはあるボタンを押した。




日本艦隊の射程内に留まる凪のヘルメットに声が届いた。


「聞こえるかな? ナギ カンザキ」


「え?」


突然、通信に入ってきた声を凪は素早くドイツ語から日本語に翻訳した。


「ドミニクさんですか? なんでこのチャンネルを……」


「私はエーリッヒ・ハルトマンだ」


「え?」


「敵である私からこのような通信があるとは思わなかっただろう。 しかし、君がこの周波数を使っていることは悪いが調べさせてもらった」


「何のつもりですか?」


凪が声を低くして言う。


「どうやら、私だということは知っているようだな。 まあ、そんなことはどうでもいい。

君との大空の決闘もどうやら今回はこのあたりのようだ。 だからこそ、私達は宣言する。

次に会う時必ず君を落とすと」


「私達?」


「そう、飛魂という存在を知っているかな? 私の相棒はメッサーシュミットゼロ、ルチアという名を持つ飛魂だ」


「あなたも飛魂が……」


「その言い方、君にも見えるのだな? 真のエースにしか見えない飛魂が」


「私の相棒は震電、名前はソラ」


「覚えておこう。 今回、我々は引く。 忠告しておくが追ってはこないことだ」


「そんなことあなたにいわれなくても……」


「一つ聞きたい、君の母艦は紀伊か?大和か?」


「敵であるあなたには言えません」


「そうか……」


しばし、無言が続く。

先に口を開いたのはハルトマンだった。


「……君の操縦技術は素晴らしかった」


敵であるハルトマンからの言葉。

凪は驚いたが素直に言葉を返す


「はい、あなたの空戦の技量は最高でした」


通信が途切れる。

メッサーシュミットが去っていく方角へマーナガルムやヴィゾフニルが飛び去っていく。











「何? 引くじゃと?」


戦艦日向で軍刀を振り回し仲間と共に対空砲火を張っていた日向の艦魂京子はレーダーの目を通じて敵が引いていく様子を見ながら驚いたように言った。

ここまで、日本軍の戦闘機は相当数が破壊された。

対して、ドイツ軍機は一機も落ちていない。


「完敗じゃな……」


京子は呟くと軍刀を鞘におさめた。







紀伊のCICでは戻った日向 恭介の指揮の元、戦闘は続行中であった。


「敵の戦闘機が逃げていきます! 追いますか長官?」


参謀長兼副長の地位に戻った古賀が聞く。


「偵察に向かわせた神雷はどうなった?」


「7分前に敵、戦闘機群と戦闘に入ったと報告以来連絡がありません」


「その敵、戦闘機群と遭遇した場所は?」


「本艦位置より南東976キロ地点です」


「……」


日向は何かを考えるようにモニターの地図を見ていた。


「他の偵察に出した部隊からの報告は?」


「ありません。 ドイツの機動戦艦あるいは、空母はこのあたりにいるんでしょうか?」


「断定はできないが……」


古賀が聞くと日向は首を横に振りながら答えた。

 

「古賀、震電と蒼雷は?」


「まだ、回収したばかりですが……」


「整備が完了次第悪いが飛んでもらってくれ。 それと、山本長官につないでくれ」


「了解!」


日向がしばらく待つと、山本の声が聞こえてきた。


「山本だ。 してやられたな……」


声が届くと同時に山本の苦汁に満ちた声が届いた。


「はい、艦船に被害は皆無とはいえこれで、ハワイからの航空支援は無くなったと言っていいでしょう」


「だが、ドイツが攻めてきたということは時間がないと言っていい。 少し、予定が早まるが……」


「はい、ですがドイツの機動戦艦や空母を放置はできません。 背後をつかれれば連合艦隊は全滅します」



「もっともだな……しかし、作戦を中止すればアメリカと講和することはできなくなる。ハワイがこのありさまではもはや、アメリカまで遠征することは難しい」


「はい、そこで、長官にお願いがあるのです」


「なんだ?」


「大和を貸していただきたいのです」


「……なるほど、君たちはドイツ艦隊に決戦を挑むつもりか?」


察しの良い山本はすぐに日向の言葉を理解した。

確かに、何隻いるか分からないドイツ艦隊と決戦するには紀伊だけでは心細い。

大和・紀伊・三笠があれば三隻で決戦に挑め勝率は上がる。

山本がそこまでいうと日向は首を横に振りながら言った。


「三笠は連れて行けません。紀伊、大和のみで出撃します」


「空母は連れて行かんのか? 蒼龍は飛龍は……」


「アメリカの戦いは制空権を制さなければ勝ちは難しいでしょう。 大和や紀伊が抜けるならなおさらです。 三笠には空母を守る大任があります」


「せめて、こちらから護衛をつけたいところだが……」


「機動戦艦同士の戦いにアイギスや重装甲を持たない戦力は邪魔なだけです。 大和をこちらの指揮に移していただければ十分です」


「……分かった。 ドイツ機動戦艦の存在を無視するわけにはいかん。 この攻撃で機動戦艦か空母が近海にいるのは兵達も気づいておるだろうからな。 大和と紀伊が後方を守ってくれると聞けば安心して戦えるだろう。 反対する参謀がいても私が何とかしよう」


「ありがとうございます山本長官」


「君たちは日本のために戦ってくれているのだ。感謝してもたりないぐらいだ」


「はい、では次は日本で会いましょう」


「うむ、日本に帰ったらお勧めの店があるんだがどうかな?」


「お供しますよ。長官」



その1時間後、オアフ島内の日系人が日本軍に一つのテープが届けられた。

その中身は、あのフレドリクの演説でドイツがドイツ神聖帝国と改名し、アドルフ・フレドリクがドイツを掌握しことが録音されていた。

そして、ヒトラーの死。


太平洋のどこかに潜む巨大な闇の渦との決戦は刻一刻と迫りつつあった。

アメリカ軍との決戦に挑む日本連合艦隊。

神聖ドイツ帝国海軍に決戦を挑む紀伊・大和。

太平洋と言う広大な海で2つの巨大な最終決戦がどちらに傾くのかは誰にもわからない。

ただ一つ、日本はどちらの戦いにも負けは許されないという事実のみである。


京子「いよいよ決戦じゃな……」


鈴「この戦いで日本の命運が決まる……」


星菜「でも、ドイツ艦隊の規模は今なお不明。 位置すらも……」


作者「日本に勝ち目はあるのか」


凛「勝つのよ。 絶対、明の仇は私が打つ」


刹那「凛……」


作者(右手をけがしたことは今回は言わないでおこう。ところで、活動報告返信しようとしたら消えた人がいたんだけどどうしたんだろう?)


鈴「どうした作者?」


作者「い、いえなんでもありません」


凛「そうだ。 あんたならドイツ艦隊の規模も知ってるわよね」


作者「そりゃ作者ですからね」


鈴「星菜、こいつを捕えろ」


星菜「……捕まえた」


作者「あ、あのみなさんどうしたんです? 私を縛るなんて」


鈴「はいてもらおうかドイツ艦隊の規模と編成。ついでに弱点も」


作者「いやいやいや、後書きの情報は本編には影響しないから!」


凛「万が一ということもあるわよね」


作者「ないないない! 誰か助けてぇ!」


鈴「あきらめろ」


星菜「哀れ作者」


作者「ぎゃああああああああああ!」


それから数時間、作者は艦砲射撃の嵐を受けたが口を割らなかったという。

ただ、一言『悪夢の最強戦艦』という言葉を残して……



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