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第238話 日独大空戦―現れる神の雷

「敵はドイツの新型戦闘機だ。 あなどるな! だが、必ず破壊しろ」


「了解!」


部下からの返事をヘルメットの通信越しに聞いた原子力空母蒼龍の神雷パイロット高畑 賢治は部下の返事を聞いてから機器のチェックを手早く済ませる。

すでに、スクランブルとして甲板に待機していた神雷は発進しており、高畑の順番が回ってきた。

カタパルトに機体が乗り、ジェットブラストディフレクターが展開される。

高畑は私情で飛ぶタイプではないが日本人なら誰もが感じるであろう怒りは当然あった。

そして、このような一方的な攻撃をしかける敵を許すわけにはいかない。


「……」


一瞬、息子の顔を思い出そうとして、やめた。

今は、飛ぶ時だ。

発艦士官から出撃可能の命令を受け取るとリニアカタパルトが放電を始める。

現在、空母の航空隊には3つの命令が出されている。

1つは、ミサイルの迎撃任務、2つ目は上空で暴れまわるドイツ軍機の撃墜、そして、3つ目は敵機動部隊の発見を目的とした偵察任務である。

ミサイルの飛んでくる方角から大体の場所は割り出されていたがドイツ機動戦艦や空母の発見の報告は今だになかった。


(どこにいるんだ……このままではなぶり殺しだぞ)


高畑は思った時、発進のタイミングはやってきた。

グンと座席に押しつけられると同時にカタパルトから高畑の神雷が飛翔する。

続けて、第2、第3カタパルトからも高畑の部下達が発進していく。

今回は、6機1中隊としての発進である。

ドイツの新型戦闘機を倒す戦術は1対1に持ち込まないことにあった。

1機に必ず2機以上で戦うことを高畑は自分の部下に厳命していた。


「ライトニングリーダーより各機へ、我々はドイツ戦闘機部隊の排除に当たる。 遅れるな」


「ライトニング1了解」


「ライトニング2了解」


部下達からの返答を待ち、高畑率いる蒼龍戦闘機部隊は戦場の空へと飛びたった。

艦僑で空を見上げていた蒼龍の艦魂。星菜は無表情だが自分の息子達のような戦闘機達が1機でも多くで返ってくることを願い敬礼した。






空の戦いは続いていた。

ミサイル迎撃のため、紀伊や大和からの援護が望めない今、空の戦いは航空機だけの戦いになりつつあった。

奇襲により、日本軍の基地航空隊は壊滅状態にあったが、空母が無傷のため艦載機が次々と空に上がっていくが、やはり、艦載機に与えられた命令の大半は日本の機動戦艦の防空能力を越える量のミサイルの迎撃任務だった。

そのため、マーナガルムやヴィゾフニル迎撃に回せる戦闘機は限られていた。


「おらどうした! 張り合いねえな!」


ヴェルナーのマーナガルムが1機の竜神の後方につく。

絶好の射撃位置である。

竜神は逃れようと速度を上げるがヴェルナーは嘲笑う。


「遅えよ!」


ボタンが押しこまれ、機体の下につけられた筒状の兵装から光が発射された。

その光は竜神の翼に吸い込まれるとボンと炎を上げた。


「しまった! くそがぁ!」


竜神のパイロットは脱出レバーを引くと座席ごと外に飛ばされる。

そして、彼は戦慄した。

マーナガルムが反転して戻ってくる。


「まさか……」


嫌な予感は自身に向けられる殺気により悟る。

まさに、彼の予感通り口元を歪めたヴェルナーがアルテミナスの発射ボタンを押そうとした瞬間、ピーとロックオンの警告音が機体内部に鳴り響く。


「ちっ!」


ヴェルナーは舌打ちして機体を反転させ回避行動をとり、ミサイルは彼の機体をそれた。


「またてめえかよ!」


ヴェルナーは通り過ぎた緑の戦闘機、蒼雷に怒りの声をぶつけながら猛然と追撃を開始した。


「き、来た! くそぉ!」


藤宮 海斗は猛烈なGに耐えながら機体を加速させた。

たちまちマッハ2を超え機体はさらに加速する。

そのGは新型の耐Gスーツをもってしても完全には殺しきれない。

素人が乗ればたちまち気絶してしまうであろうその場であっても海斗はGに耐える。

Gに耐える訓練は海斗は他のパイロット達より、多くこなしており簡単には気絶しない。

もっとも、この戦場の空で気絶は死に直結している。


「速ぇな! くそ」


ヴェルナーは舌打ちした。

あの、蒼雷とかいう機体は加速と運動性能が尋常ではない。

マーナガルムをもってしても追いかけるのが精いっぱいだった。

だが……


「でも、動きがルーキなんだよ!」


蒼雷の進行予測場所にアルテミナスを発射しようとした瞬間マーナガルムに衝撃が走った。

機体に警告音が鳴り響く。


「何! 被弾した! の野郎!」


通り過ぎた戦闘機部隊を見てヴェルナーは怨嗟の声を上げる。

6機の神雷であった。


戦闘の隊長機高畑の撃った20ミリ機銃がマーナガルムの羽をかすめたのである。

日本軍の初めてのマーナガルムへの被害であった。


「ライトニング2と5は右に回り込め! 残りは、あの銀色の戦闘機を潰せ!」


「この野郎! たかが第5世代の旧式が!」


「何あんた、苦戦してるわけ? 助け欲しい?」


通信で馬鹿にしたフランカの声がヴェルナーの耳に入る。


「ちっ! いるかよ馬鹿」


ヴェルナーは機体にアイギスを展開させると急上昇を開始した。

高畑達が追うが第5世代と第7世代の差は埋めがたく一気に引き離される。


その頃、蒼雷はフランカの狩るマーナガルムの追いまわされていた。

そして、追うフランカも蒼雷の動きを妙に感じていた。


「素人? 動きが新人にしか見えないけどちょろちょろ動き回って……」


アルテミナスの最大の欠点はミサイルのように敵を追撃できないことだ。

発射されればその射線は直線のみ、マーナガルムとヴィゾフニルにつけられたアルテミナスだがドイツの科学者ユリウスによればまだ、改良点は多いとのことだ。

アルテミナスをドイツ戦闘機に搭載するにはまだまだ、データーの収集が必要だった。

アルテミナスの射線を蒼雷は右に左に動き回り回避し続ける。

攻撃の射線などとらせない。

フランカはマーナガルムを手足のように操り、蒼雷の背後にぴたりとついていたのである。


「くそ! くそ! このままじゃ……」


藤宮 海斗は泣きそうだった。

格納庫での会話が思い出される。








「蒼雷は藤宮 海斗、あんたに預けるわ」


「え? 僕ですか?」


海斗は蒼雷の開発者、天城 彼方特別中将の言葉に驚いた声を上げる。


「そりゃねえぜ、彼方ちゃん! 俺にも戦闘機くれよ!」


ドミニクが不満を口にするが彼方はぎろりとドミニクを睨んだ。


「うっさいわね。 よく考えたらあんたドイツ人だし、裏切るかもしれないでしょ?」


「安心しな。 俺は今、愛した女がいる国を裏切らねえ」


「あ、愛したって……」


彼方は少し赤くなりながら言った。


「そう! 日本人女性はかわいい! 艦魂達も含めこの国の女の子はかわぐびゃん!」


ドミニクは彼方の蹴りに吹き飛ばされて伸びてしまった。

彼方はゴミを見るような目でドミニクを見た後、海斗に振り返る。


「機体に乗って、登録するから」


「あの、でも僕……」



「早く来なさい馬鹿! この格納庫だっていつ破壊されるかわからないでしょ! 孝平!そこの馬鹿、シェルターに入れて!」


「人使い荒い奴だな」


月城 孝平にずるずるとひきずられていくドミニクを見ながら藤宮 海斗は蒼雷のコクピットに乗り込んだ。

彼方が機器をいじくり海斗の手を操縦根に握らせてから声を登録していく。


「あの、天城中将……」


「あによ! 今忙しいのよ!」


機器をすごい速度でいじくる彼女に引け目を感じながら海斗は泣きそうな声で言った。


「ぼ、僕、先日ようやく戦闘機の部隊に配属された新人なんです!」


彼方の手が止まる。


「今、何て言ったの?」


「僕は新人です! 紀伊に配属されたのも何かの間違らしくて……でも、紀伊に乗るのは航空隊の最高の栄誉だから……」


「ざけんじゃないわよ! 新人? 新人に私の蒼雷託さないといけないの? もう、登録しちゃったわよ! このデーター消すのにどれだけ時間かかると思うの! ああ! もういい! 落としたら殺す! 爆死しても墓を掘り返してやめてくださいというまで蹴り続けてやる!」


「でも……」


「状況が状況! 破壊されるぐらいならあんたに預ける! 文句は?」


「ありません!」


「こんなことだったらドミニク乗せた方がよかった……」


彼方は頭を押さえながら顔を上げた。


「できた、操縦方法が分からないなんて言ったら許さないわよ?」


「それは大丈夫です。 ハリアーは何度か飛ばしてますから」


「そう、じゃあ蒼雷は任せたわよ」


「ど、努力します」


彼方が蒼雷から離れる。

風防を閉じる。

すると、格納庫の隅にいた凛と刹那の目があった。

彼女は達は一瞬目をそらしたが、口だけを動かす。


「目がいい海斗はそれが何を言っているのかを知った」


「死んだら殺すわよ」


「がんばってください」


そう、彼女達は言った。

そして、彼女の体は光の粒子となり消えてしまった。

つくづく、艦魂というのは不思議な存在だと海斗は思った。


(守らないとな)


艦魂は刀で切られても死なない。

しかし、本体である艦が破壊されれば死ぬ。

それはとても嫌なことだと海斗は思う。


「だから……」


「聞こえる? 藤宮少尉」


すでにシェルターに退避したのだろう。 彼方の声が通信越しに聞こえてくる。


「はい、中将」


「本来なら生き残ることのみを考えてほしいけどそれじゃ、意味がない。 敵の戦闘機をひっかきまわしてくれればいい。 蒼雷の運動性能ならそれができるから……」


「了解、やってみます」


蒼雷が滑走路に引き出されていく。

海斗は基本はハリアーと変わらない機器をいじりながら


(蒼雷……垂直離陸ができるのか……)


滑走路に引き出された蒼雷の中で海斗は空を見上げた。


(行こう、蒼雷)


グンと下に押しつけられる感覚を感じ、蒼雷はふわりと浮きあがった。

そして、次の瞬間には蒼雷は空の人となっていたのである。



ちなみに、シェルターで目覚めたドミニクは彼方に戦闘機をくれと粘ったが結局敵わなかったという。


作者「馬鹿な!そんなの嘘だ!」


凛「どうかしたの草薙」


作者「おお、凛様! だいぶやわらかくなったじゃないですか」


凛「ふん」


星菜「で? どうした作者」


作者「聞いてください! 読んでた小説が絶筆になったんです!」


凛「絶筆?」


星菜「書いてた作者が死んだりして二度とかけなくなること」


作者「最悪だ! あの先めちゃくちゃ気になる!」



星菜「今調べた……あの作者と比べ物にならない偉大な作者は昨年に亡くなっている」


作者「気付いたのが最近です。うう……先生」


凛「ふん、たかが小説で……」


作者「先生を愚弄するな!」


凛「は、はい!」


星菜「勢いある作者……」


作者「あの先生を偲んで黙とう」


凛「……」


星菜「……」


作者「絶筆は悲しいです……」


星菜「でもよく考えたらこの小説に関係ない」


凛「!? そうよ! よくも!」


作者「ああ、風の……」


星菜「死ね作者」


凛「あんたも絶筆させてやるわよ!」


作者「ま、待て! 私ごときが絶筆しても……ぎゃあああああああああああああ!」


ズドオオオオオン



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