第236話 天空の決闘
「なんてことだ……」
オアフ島全域に空襲警報が発令されたその時、連合艦隊司令長官山本五十六は機動戦艦大和のCICで艦長の有賀幸作と話をしている所であった。
素早く戦況を把握するには機動戦艦のCICは最適の場所と言えた。
「合戦用意!」
「対空戦闘!」
有賀のどなり声と共に機動戦艦大和の兵達は持ち場に向けて走る。
その素早さは世界一の錬度とされるが山本にはなおも遅く感じられた。その間に大和のレーダーとリンクした対空ミサイルは14機をイージスシステムによりロックする。
後は、有賀の攻撃命令を待つだけである。
「う……」
「敵、戦闘機を見失いました」
撃てと有賀が言おうとした瞬間レーダーを見ていた兵が悲鳴のように怒鳴った。
「何!?」
当然のことながら、大和のミサイルも目標を見失いロックを外してしまう。
「またあらわれました! 数は変わらず14機!」
しかし、有賀が再び攻撃命令を出すより早く戦闘機を指す光点は消えてはあらわれるという現象が起こり続けた。
「ステルス機とかいう戦闘機の特徴でしょうか?」
困った有賀は山本に向けて話しかける。
「いや、君も聞いただろう。 アイギスを展開する戦闘機はレーダーから消える」
「すると、この14機は……」
「ああ、震電と同じアイギスを搭載する戦闘機……ドイツの戦闘機だ……」
敵はアイギスを展開・消滅・展開・消滅を繰り返しこちらに接近してきている。
これでは、ミサイルは役に立たない。
「艦長、大和は紀伊と共に敵の放つミサイルを迎撃するのに集中させるのだ」
「しかし、敵戦闘機はどうするのです?」
有賀が聞き返す。
「もちろん、落とす。だが、今は真珠湾から艦隊を脱出させるのが先だ。連合艦隊が壊滅した時こそ……」
日本は終わるのだという言葉を山本は飲み込んだ。
少なくてもここで言っていいセリフではない。
奇襲だったため山本の近くには参謀たちはいない。
だが、不幸中の幸いだったのは大和は警戒のため真珠湾の外に出ており、菊水作戦を当日に備えた連合艦隊は真珠湾から出撃しつつあったのだ。
しかし、まだ空母や戦艦の一部は真珠湾内にあったのである。
「来るかも知れんと思っていたがまさか、本当に来るとはな……」
山本は静かに呟いた。
そして、紀伊は現在真珠湾内にあった。
湾外に出て艦隊を組むまで大和は外を警戒し、紀伊は湾内を警戒するというプランを立てていた。
もう一隻の機動戦艦三笠は他の艦隊と行動を共にしておりハワイにはいない。
つまり、独立機動艦隊の量産型の最強戦闘機烈風はハワイにはほとんどなかった。
紀伊の参謀長兼副長も兼任する古賀 美咲はすぐ戻るという、日向 恭介の通信を切った後、CICに向き直った。
眼鏡を中指でくっと持ち上げるとCICの薄暗い闇の中声を上げる。
「対空戦闘用意! ハリアーの状況はどうなっている?」
「1番機の小川大尉のハリアーがエレベーターに乗ったところです。 続けて2番機、3番機10分以内には全てのハリアーが発艦できます」
「遅い! 5分で発艦させろ!」
「アイマム! 5分でやります!」
まるで、豹変したかのような古賀の言葉に紀伊の兵達は命令を伝達していく。
いつも、ふざけた態度が目立つ彼らだが、やはり計画のために集められた人材である。
その錬度は帝国海軍にも引けを取らない。
そして、彼女も大和同様にミサイルがロックできない事実を知る。
そして、こちらに向かってくる70のミサイルの報告が紀伊に飛び込む。
「湾内に残っている空母と戦艦は後、何隻いる?」
「本艦と蒼龍、飛龍、連合艦隊の空母は信濃、紅龍、大鳳 戦艦は扶桑、霧島、です」
こがは一瞬考えてから決断する。
「紀伊は艦隊の盾となる。 砲雷長! 艦隊に向かってくるミサイルに対して迎撃を集中させろ!」
「アイマム! シースパロー対空ミサイルによる迎撃を開始します」
「ミサイルロックオン」
「ハリアーの発艦を一時中止!」
紀伊のVLSが開いていく。
古賀の頬から静かに汗が滴り落ちた。
時は少し戻り、オアフ島の彼方の格納庫である。
「蒼雷にのるのは……」
ドミニクか、海斗か……
ごくりと海斗は唾を飲んだ。
対するドミニクはにやにやとしている。
(選ばれたらどうしよう……)
海斗はそんなことを思っていた。
そして、彼方が口を開いた瞬間ジェット戦闘機の発進の際にでるすさまじい轟音が彼方の言葉をかき消した。
しかし、海斗は聞いたのだ。
誰が選ばれたのかを……
そして、震電が出撃する。
「凪、敵は14機です。 他の航空隊と協力して……」
「うん、分かってる」
飛魂のソラの言葉に耳を傾けながら計器のチェック。
ソラが体に異常を訴えているため念入りにチェックするがどこも異常が見当たらない。
みるみる、オアフ島が小さくなっていく。
(異常は? 異常はどこ?)
凪はしばらく計器をいじくるが時間切れを起こしてやめる。
今は戦いに集中しなくてはならない。
現在、震電には僚機はいない。
緊急事態と言うこともあるが誰も、震電に追従できないからだ。
生半可な性能や腕では返って邪魔である。
(あの人はいるのかな……)
凪の頭に浮かぶのは黒き悪魔エーリッヒ・ハルトマンの狩るメッサーシュミットゼロ
満州で激突したが決着をつけられなかった。
凪が初めて負けるかもしれないと思ったパイロットと戦闘機。
決着をつけたい。
凪はいつからか、あの人を倒したいと思い始めていた。
最強の座には興味はない。
しかし、純粋に空の騎士として、あの人と決着をつけたいと願っているのだ。
「凪!」
ソラの鋭い声が響く。
レーダーに映る光点は18機、すでに、前方の空では味方が交戦を開始しているようだった。
「凪、前方に!」
「っ!」
いるのは敵だけではない。
無数のミサイルの白煙がレーダーに映っている。
(迎撃を!)
凪が機体をミサイルの射線に向けようとしたまさにその時だった。
震電がロックされたことを示す警報装置がけたたましく鳴り響く。
「っ!」
いきなり上空に現れたそれは明るくなりつつある薄暗い空から一直線に震電に迫る。
「上!」
ソラの声を聞き凪はアイギスのボタンを押しこんだ。
直後、震電の周囲で爆発が起こり破片が降り注ぐと同時に震電の横を黒い影が通り過ぎる。
「ハルトマン!?」
一瞬だったが見間違いようのない黒い戦闘機だった。
エーリッヒ・ハルトマンのメッサーシュミットゼロである。
量産されてる可能性もあるが、凪はあの機体はハルトマンの機体であることを瞬時に悟った。
アイギスを切り、エンジンを始動させる。
一瞬で爆発的な推進力を取り戻した震電は加速する。
(外したか……)
上空からの一撃に耐え抜いた震電を目で捉えてハルトマンは嬉しそうに思った。
「生意気、アイギスがなかったら今の一撃でハルトマン大尉の勝ちなのに……」
「そうでもない、あの奇襲はアイギスで彼女のレーダーから消えることができたからこそできた奇襲だ。 互いにずるいものを持っているということだ」
メッサーシュミットゼロの飛魂ルチアに言葉を返しながらハルトマンはミサイルの迎撃に向かおうとする震電に猛撃をかける。
「逃がしはせん。 今日で決着をつける」
鋭い目で蒼い機体を追いながらハルトマンは言う。
上空に核パルスのすさまじい推進力で上がっていくメッサーシュミットゼロ。
ハルトマンは加速に耐えながら震電の行動を見守る。
このままなら、再びミサイルでロックする。
メッサーシュミットゼロはアルテミナスを装備していなかった。
いや、装備することを拒んだのだ。
これ以上、震電と性能差を広げることはハルトマンの本意ではない。
互角とまでは言わないがせめて近い性能で戦い勝利したいのである。
(もし、行きたいなら俺を倒すしかないカンザキ ナギ)
「凪!」
「分かってる!」
ソラの声に鋭く返してから凪は機体を下方に傾けた。
もはや、ミサイルの迎撃はできない。
無論、他の機体を落とすこともできない。
今やることは一つだけだ。
「あの人を……エーリッヒ・ハルトマンを落とすよソラ!」
「ええ、凪、見せてやりましょう私とあなたの腕を」
「うん」
正面にメッサーシュミットゼロを捉える。
互いに警報音が鳴り響きミサイルの発射ボタンを押しこみアイギスを展開したのはほぼ同時であった。
これが後の世でミリタリーに詳しい者達の中で語り継がれ、映画にもなった黒と蒼の空の騎士達の2度目の激突だった。
星菜「作者は?」
京子「さっき部屋を見てきたがおらなんだな」
星菜「逃げた?」
京子「どうじゃろうな……ありえんとも……」
作者「いやぁ、疲れた疲れた」
星菜「作者……」
京子「なんじゃその大荷物は」
作者「おお、京子に星菜じゃないですか。いやぁ、旅行に行ってたんです」
星菜「どこに?」
作者「大阪です」
京子「大阪じゃと? 大阪に軍港はなかったはずじゃが……」
作者「ハハハ、違いますよ。 聖地に行ってきたんです」
星菜「何それ?」
作者「大阪の難波と言えば分りますかね?」
京子「ではこの荷物は……」
星菜「漫画やライトノベル……ゲーム……メモリースティック……SDカード……数えきれない……」
京子「無名のメーカーばかりじゃのう……」
作者「しかし、安いのです」
星菜「いくら使った?」
作者「ハハハ、ほんの7万ほどですよ」
京子「7万じゃと! 家が何件買えるかわからん大金じゃぞ」
作者「いや、それは昭和の価値ですから」
星菜「だけど大金は大金」
作者「いやぁ、あの町で7万近い大和のプラモデルが売ってたのを見たときは衝動買いしそうになりましたよ」
星菜「無理、大きすぎる」
京子「そうなのか?」
作者「まあ、精巧であの大きさですからね。 水に浮かべたらかっこいいだろうなぁ……」
星菜「こんなのあるから執筆が遅れる……」
京子「廃棄じゃな」
作者「ああ! やめて! 私の愛が!」
星菜「きもい……」
京子「燃やして置くぞ草薙」
ゴオオオ
作者「ひいいい! SDカードが! メモリースティックがぁ! 漫画が!ライトノベルがぁ!」
星菜「燃やしても復元されるかもしれないからここにいれる」
ポイ
京子「ブラックホールじゃな」
作者「今行くぞ友よ!」
京子「あ! 馬鹿もの!」
シュポン
星菜「ブラックホールに消えた作者……」
京子「うつけめ……そこまで命をかけるとはまさしく愛じゃな」
星菜「歪んでる……」
京子「うむ、否定はできぬな……あわれな奴じゃ」
その後、宇宙空間をさまよっている草薙を戦艦大和が保護。
作者は撫子様におこずかいをもらい再び購入したそうな。
余談だが怒りに燃えた草薙は星菜、京子に復讐を企てたが見破られ艦砲射撃を受け粉々にくだけちりましたとさ
星菜「おしまい」
京子「じゃな」




