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第234話 刹那の想い 決戦の序章

結局、弥生が箱の中からもう一人を選出することになった。


(もう、好きにして……)


凛は諦めたように思った。

弥生の手元を見る艦魂達の目が輝いている。

いつの時代でも、こういうイベントは盛り上がるものなのだろう。


(……)


凛はちらりと、日向 恭介を見たが彼は面白そうに弥生を見つめている。


(やっぱり……恭介は私のことなんか子供としてしか……)



その時、弥生の手に紙が現れる。

そして、口が開く瞬間、みんながごくりと息を飲んだ。

柚子や鈴といったこういったイベントに巻き込まれたくないいわゆる厳格な性格の艦魂達は冷や汗を流しながらその光景を見詰め。

逆にキスという言葉に興味津津の艦魂達は興奮してその名を待った。

そして……


「もう一人は! 刹那だよ!」


弥生は高らかに宣言した。


キャーと艦魂達から悲鳴が上がる。


「わ、私ですか!」


自分が当たるだと予測もしていなかったのだろう。

刹那は悲鳴のような声を上げた。


「おー、撫子姉さんおもしろい展開になってきたな」


少し離れたところで戦艦武蔵の艦魂、桔梗が言うと薄く微笑む戦艦大和の艦魂撫子は


「あらあら、うふふ」


と楽しそうに言った。


そして……


「うう……」


少年を挟み込むようにして、凛と刹那が向かい合う。

周りは艦魂達が包囲しており逃げ場はない。

というより、こんな面白いイベントから逃がしはしないぞという気迫がびりびりとあたりを支配するぐらいの気合の入りようだ。


「かわいそうに……」


離れた場所で彼方は本気で同情した。




「り、凛」


少しだけ気まずそうに刹那が凛を見つめる。

半分涙目なのはやはり、こういったことをするのが初めてだからだろう。

柚子が何か言いたそうにしていたが何も言わない。

彼女なりにルールを厳守させねばならないという思いがあるのだろう。

軍隊というのはルールが命と言っていい組織であり、守らなければ規律が維持できないのだ。

それがどんなくだらないことであろうと……


「ほ、ほっぺよ!ほっぺ!それでいいのよね!」


確認をとるように弥生に聞くと弥生は小悪魔のような笑みを浮かべる。


「うん、でも唇にしちゃいなよ」


「ふざけないで!」


もうとっとと、済ませてしまおう。

日本にはなじみはないがアメリカではほっぺにキスなどあいさつにすぎないのだ。


「凛……」


刹那が涙目で凛を見る。


(ああ、うるさい)


こういった気の弱いところを見てるとやはりかまいたくなる。

そもそも、刹那は戦艦の艦魂のくせに……金剛姉妹のくせに気が弱すぎる。


「勢いよ! 刹那」


凛が言う。

刹那の目が見開かれ潤んだ。

今の言葉は本当に久しぶりに聞く。

自分を気遣ってくれる言葉だったからだ。

その言葉を聞ければ勇気は最大だ。


「うん、凛!」


2人は突撃するように少年の頬に接近していく。

その時、悲劇は起こった。


「う……ここは……うむ!」


「むぐ」


少しだけ、首をひねって体を起しかけた藤宮 海斗は頬にキスをしようとした凛の唇に自分の唇が当たってしまった。


「う、うわ!むぐ」


海斗は驚愕して一瞬で離れようと逆を向いた瞬間、今度は同じく接近していた刹那の唇に自分の唇を衝突させてしまう。

つまり、いうなれば彼はわずか5秒もない間に2人の少女とキスをしてしまった。

それも唇同士で……


「ひいいいい!」


訳が分からず海斗は後ずさったが後は壁で下がれない。

周りを見渡すと少女、少女、少女の大軍。

藤宮 海斗は完全に混乱した。


「ここどこ! 一体何ここ!」


硬直する凛と刹那。

そこへ怒りで顔を真っ赤にした柚子が艦魂達の間から現れた。


「貴様ぁ!」


「ひぃ!」


いきなり現れた金髪の女性を見て海斗は逃げようとしたが逃げ場がない。


「ちょっ! 待ってください柚子さん!」


駆逐艦の艦魂達が5人柚子にとびかかったが柚子は止まらない。

5人を引きずりながら海斗に迫る。


「よくも私の妹の唇を! 立てぇ!」


「は、はい!」


海斗は立ち上がる。


「手ぇ後ろに組め!」


「はい!」

言われた通りにする。


「足開けぇ!」


「はい!」


「歯ぁくいしばれ!」


言われた通りにぐっと歯を食いしばった瞬間、すさまじい衝撃が海斗を襲った。

柚子に殴られたのである。

吹っ飛ぶ瞬間、鉄拳制裁を受けたのだと自覚した。

でも、なんでかはよくわからなかった。

なぜなら、彼は再び気絶したのだから……









そして、彼が再び目を開けた時はざわざわという声は聞こえたが自分を囲んでいる状況ではなかった。


「あたた……」


頬を抑えながら上半身を起こす。

誰かは分からないが治療が施されている。

思わず、先ほどの金髪の少女を探したがいなくてほっとする。


「起きた?」


声のした方を見ると2人の少女が座っていた。

一人は自分と同じくらいの長い少し気が強そうな少女で、もう一人は気の弱そうな髪の短い少女である。


「君達は……あ、君はさっき紀伊であったよね」


まだ、少しぼやけている頭を抱えながら海斗は言った。


「どうだったかしらね」


凛は海斗から視線を外す。


「……」


視線を感じたので海斗がそちらを見るとショートの少女が顔を真っ赤にして海斗と目が合うと慌てて眼をそむけてしまう。


「あの……」


「おう、目が覚めたか?」


頭上からの声、海斗が顔を上げると……


「ぶっ!」


思わず吹き出してしまった。

なぜなら、そこにいたのはパーティー用の鼻眼鏡をつけた男だったからだ。


「ああ、これか」


男は納得したように鼻眼鏡をとった。


「恭介、なにそれ……」


凛がさしたのはもちろん、鼻眼鏡のことである。


「ハハハ、これをかけるようにさっきゲームで当たったんだよ」


凛達が見ると伝言ゲームは続いているようであった。

今は柚子が武士の格好で薪を割っているところであった。


「で? ここには暇だから来たの?」


「いや、違う違う。 紀伊の配属されるなら顔いぐらい見とかないとと思ってな。

小川にはあったか?」


日向 恭介が海斗に言うと小川という名前が紀伊の航空隊のトップ、小川大尉のことであると海斗は思いいたる。


「あ、はい 他のパイロット達には会ってないんですが……」


「ん?紀伊の中にみんないるはずだが……」


「いえ、探してたんですが……」


そう言いながら海斗は凛をちらりと見て


「この子にブッ飛ばされちゃって……」


「ふん」


凛は気まずそうに明後日の方向を向いた。

隣では刹那が苦笑している。


「そうかそうか、ブッ飛ばされたのか。 それでここにいるんだな。駄目だぞ凛、新人いじめは」



「……っ!」


恭介が面白そうに言うと凛は何か言いたそうに口を開きかけたが黙る。


びりびりと殺気を感じるのをひぃと思いながら海斗は男を見た。


「あの、あなたは?」


「何を隠そう俺が……」


「アホよ! ただの」


そう言いながら天城 彼方と神埼 凪、ドミニクが人垣の中から出てきて言う。


「ハハハ、きついな彼方は」


アホと言われてもまったく怒ることなく恭介は笑った。


「ちょっ! 彼方日向長官にそんなこと言ったら駄目だよ。 ドミニクさんならともかく」


「何気にひどいぜ……凪ちゃん……」


ちょっと涙目のドミニクだった。


「あ……ぅ……ち、違うんですドミニクさん。 これは……」


「それもそうね」


彼方のとどめの一撃がドミニクに突き刺さった。


「ぐわ!」


大げさに胸を押さえてうずくまるドミニク


「さて、馬鹿はど放っておいて、この男は独立機動艦隊の総司令官、未来では連合艦隊司令長官だった男よ。まあ、あんたの一番上の上司ね」


「ち、長官! この人が?」


思わず指をさしてしまったので海斗は慌てて指をひっこめた。


「すすす、すみませんお、おれ……いえ、私は!」


慌てて立ちあがって敬礼しようとしたが日向が手で制す。


「ああ、気にしなくていいって、それよりお前が探してたパイロットならここにいるぞ」


「え?」


海斗が凪達の方を見ると一歩前にいた。

凪が微笑みながら敬礼した。


「神埼 凪中尉です。 これからよろしくお願いします。 藤宮 海斗少尉」


「あ、あなたが……! あ、いえ藤宮 海斗少尉であります! 本日付で紀伊航空隊に配属になりました! よろしくお願いします!」


「紀伊に配属されたってことはあんた、かなり腕が立つはずよね?」


彼方が言うと海斗は戸惑ったように


「あ、実は……その……」


「腕があるのは当然か……愚問だったわね。ああ、名乗ってなかったわね。 私は天城 彼方特別中将。 まあ、中将と言っても技術関連のお飾りみたいな階級だけど」


(なんでこんな階級の高い人が集まってるんだ)


と海斗は内心で悲鳴を上げた。

独立機動艦隊司令長官と言えば名実ともに日本艦隊のトップクラスの人材だ。

それに、神埼 凪中尉と言えば自分がいた琉球航空隊のみならず、日本軍全体にも知れ渡る最強の女性パイロットである。

満州で震電の劇的なデビューのおかげで敵味方に知れ渡るエース。

それに、天城 彼方と言えば父親と並び日本の技術の底上げを行う日本の頭脳と言える存在である。

日本の未来を担う人たちばかりだ。

きっと、そこに倒れているドミニクという人や先ほどの少女達も名のある存在なのだろう。


「……」


思わず振り返って凛と目を合わせてしまった海斗は先ほどのキスを思いだして少し赤くなった。


「?」


凛はそれを怪訝な目で見ている。


「あ、それで君達は……」


目があったのでついでに聞いてしまおうと思った。


「戦艦、霧島の艦魂です。 刹那でいいです」


「ちょっ! 刹那! あんたこんな会ったばかりの奴に真名を許すの!?」


凛が声を荒げて言うと刹那はぽっと赤くなり


「唇の奪われちゃったから……」


「それが理由!?」


「うん」


ぎろりと凛が海斗を睨みつける。


「あ、あの艦魂って何?」


凛の気迫に押されながらもなんとか海斗が言うと凛は彼を睨んだまま


「艦魂というのは軍艦に宿る精霊みたいなものよ。 分かる?」


「精霊? う、うんなんとなくわかるよ。 それで君は……」


火のような少女に気圧される自分って情けないなぁと思いながら海斗は聞いてみた。


「……」


凛は一瞬何かを考えるように黙り込んだが


「機動戦艦紀伊の艦魂、真名は凛」


おおっと後ろで日向 恭介が意外そうな顔をした。


「凛……ちゃん?」


「ちゃんをつけないで馬鹿!」


「いいの凛?」


刹那も以外そうだ。

凛は顔を真っ赤にしながら海斗を睨むと


「か、勘違いしないでよね。 事故とはいえく、唇が当たってき、キキ、キスしたんだから真名を許せないような相手だと嫌なの」


「ごめんなさい! 本当にごめん!」


海斗は頭を下げた。

さすがに、事故とは言え男が圧倒的に悪いだろう。


「ふん、誤ったぐらいで許されると思うの? あんたが真名を許せるような相手じゃないと考えを改めたら即座に殺すからね」


「はい、殺しちゃいますよ」


にっこりと笑みを浮かべる刹那

本気だとその場にいるみんなが思った。


「あのところで真名って何?」


海斗が聞くと凛が答えてくれる。

真名とは自分が持つ名前の他に同じ艦魂以外では特別親しい相手にしか教えない特別な名前なのだという。

凛なら名前は紀伊だが真名は凛となる。


「へぇ……知らなかったよ」


「まぁ、私に言わせればこれまで艦魂とかかわってこなかったのが奇跡的な確立よね」


天城が感心したように言うと近くでハンバーグに箸を突き刺していた由真が言った。


「君は?」


海斗が聞くと由真は口の中のものを飲みこむ


「私は村雨の艦魂よ」


つまりは真名を教える気はないらしい。


「私は信濃の艦魂です。真名は小雪です海斗さん」



「小雪!」


少し照れたようにいきなり、真名を暴露した小雪に悲鳴をあげる由真


「あらあら、いいの小雪? 真名を許して」


「うん撫子姉様」


いつの間に立っていたのか小雪の傍らに大和の艦魂撫子が微笑んで立っている。

一瞬、海斗は撫子と目が合い、その未来では失われてしまった純水の大和撫子の気に圧倒され顔を赤くしてしまう。


「初めまして、藤宮様、大和の艦魂です。 真名は撫子と申します」


「長官!」


再び悲鳴を上げる由真は海斗を睨みつけた。


(そう言えば聞いたことがあるわね)


こういった優男系で優しい男は無条件で女に好かれるという。

だが……


(こんな奴に小雪の真名を!)


ゴオオと嫉妬の炎を舞いあがらせる由真。

由真にとって、小雪は命そのものと言っていい存在である。

そんな、小雪を……


「よ、よろしく小雪ちゃん、な、撫子さん」


「はい!」


「よろしくお願いします」


「ふーん、やるじゃない」


小声で凛がつぶやく。

大和姉妹の内2人までもが新参者に真名を預ける。

なぜ、2人が真名を預けたのか……

凛は気づいていないが藤宮 海斗が現れたことにより、凛は昔と同じような関係を艦魂達ととれている。

明が死ぬあの前の時まで時が戻ったかのような光景だった。


「……」


彼方はふと何かに気づいたように日向 恭介を見る。

彼は安心したような笑みを艦魂達に向けている。


(敵わないわねあんたには……)


そう、思うのであった。










「ぐわあああ!」


再び柚子に空高く舞い上がるような内容の紙を引いたドミニクは悲鳴を上げて地面にたたきつけられた。

ちなみにドミニクは運が悪いのか誰かが図ったのか次々と運の悪い紙を引き散々な目に会っている。

彼の運の悪さは並行世界のどこかの日本のパソコンの前でキーを叩いている青年と一部の読者の望みの結果なのかもしれない。


「さあ、いよいよパーティーも佳境だよ! みんなお待ちかねのプレゼントタイムに映るけど準備はいいかなぁ!」


舞台の上では弥生がマイクを振り回し料理も大半を消火した艦魂達に向け怒鳴った。


「おおおお!」


すでに、テンションも最大になりつつある艦魂達はノリも良く大声を上げまくる。

止めるべき鈴や柚子も今日は無礼講なので何も言わない。


「照明!凛へ!」


「はっ?ちょっ、聞いて……」


辺りが暗くなり有無も言わさずスポットライトが凛に降り注いだ。


「続いて照明さん刹那へ!」


続いて照明が刹那に降り注ぐ。

そこには、小さなプレゼント用の箱を持った刹那が立っていた。

凛はどうしていいか分からず黙っていると刹那が一歩前の出る。


「凛、誕生日おめでとう……それと、ごめんね」


「え?」


「私……無神経だったよね……明が死んでから凛はずっと辛くて……でも、私は友達をやめたくなくて話しかけて凛の心を抉って……」


周囲は先ほどと違い氷のように静まりかえっている。

そこに刹那の言葉が続けられる。


「でも、迷惑でないなら……私は凛の友達でいたい。明の代わりじゃないけど凛を支えていきたいの」


「……」


凛はどうしていいかわからないというように辺りを見回した。

そして、昭和の艦魂達は皆、2人を見つめている。


「だから……」















二式大艇は太平洋戦争時、最高の性能を持つ、大型水上機である。

1943年のこの年になっても若干の改造は加えられていたが、ハワイの日本軍はこの機を中心として遠距離への偵察を頻繁に行っていた。

レーダーを装備した日本軍であるが機動戦艦などのドイツ艦隊はレーダーで捕捉するのは非常に困難であり、こうした目視での偵察飛行が頻繁に行われていた。


「そろそろ、定時連絡の時間だな大田」


間もなく夜が明ける。

二式大艇の窓からうっすらと見え始めた遥か下の海面に目をやりながら兵が言った。


「そうだな、準備しておくか」


大田と言われた兵が腰を浮かし立とうとする。


「いよいよ決戦が近いんだろうな……」


海面を見ながら兵が呟いた。

太陽が闇を払しょくし黒の海を青に染めていく。

今日も平和だといいなと大田が思った時であった。


「おい、大田右だ!何か光らなかったか」


「何?」


大田は慌てて窓に張り付いた。

何も見えない。


「いや、何もみえな……」


彼が言えたのはそこまでだった。

大田が最後に見たのは黒の戦闘機と銀色の機体であった。

その瞬間、二式大艇はボンと炎の塊となり海上に落ちて行った。












「だから……」


刹那が決意を込めて言おうとした時だった。


うーーーーーーーーーーーーーー


けたたましい警報がオアフ島全域に響き渡る。


「何!」


誰かが叫んだ。


瞬間、恭介の通信機が光る。

ボタンを押すと緊迫した声が響いた。


「長官!」


「古賀か!? どうした?」


「至急、紀伊に戻ってください! ドイツの戦闘機が接近中です!」


「何!」


正気の沙汰じゃない。

ハワイには日本の主力が集結している。

それに挑むなどということは決戦と変わらない。


「時間はあとどれくらいある!」


「このままだと後、五分でオアフ島上空に差し掛かります! 


「くっ!」


どうして、そこまでの接近に気付かなかったのかとは思わない。

レーダーに映らない戦闘機は震電が実証しているからだ。


「戦闘機の数は分かるか!」


「レーダーには14機が確認されています。 日本軍にはすでに連絡を入れてあります。

竜神が12機スクランブル発進の準備に入っています」


「よし、すぐ戻るが簡単にはいかないだろう。 古賀! 俺が戻るまで独立機動艦隊の指揮は任せる」


「了解しました」


恭介は会場を見渡すとすでに艦魂達の大半は消えている。

皆持ち場に戻ったのだろう。


見ると、着替えた凪が震電に向かい走っている。


「神埼! 無理はするな! だが、時間を稼いでくれ」


「はい!」


震電に飛び乗った凪は計器をチェックする。


「おい、神埼!」


月城が大声で怒鳴った。


「はい! なんですか!?」


「震電の整備はまだ、終わってないんだ!特に計器類のチェックがまだ……」


「仕方ありません、でもそんな場合じゃありません」


「あ、おい!」


「ソラ、いける?」


計器類をチェックしながら凪が言うと飛魂の空が後部座席から返事を返した。


「正直、出たくありません。 何か体の調子がおかしい気もします」


「でも……」


「はい、分かっています」


格納庫全体に警報が響き、震電がレールに沿い滑走路に引き出されていく。

それを見ながら彼方は考え込むように1機の戦闘機に目を向ける。

日本のエースに渡す予定だった量産機の試作型。

この状況なら1機でも戦闘機は欲しいだろう。

パイロットは……

彼方はドミニクと海斗を見る。

蒼雷はまだ、搭乗者の登録を行っていない。

選ぶとしたらこの2人。


「決めたわ」


彼方は言った。


作者「パーティー終了!」


弥生「ひどいよ、作者! この後、恭介お兄ちゃんとあんなことやこんなことをする紙を……」


星菜「意味分かってる妹?」


弥生「お姉ちゃんだっていろいろ裏で何かしてたじゃない」


星菜「知らない」


作者「さてさて、ドイツの戦闘機と言えばもはや、彼らしかいないでしょう」


星菜「……ハルトマン」


弥生「万全のゼロに対し震電は不調だなんてずるいよ」


星菜「しかも、あの3人もいる予感」


弥生「12機の竜神瞬殺フラグたってない作者?」


作者「いや、あいつらじゃいくら凪さんだって……」


星菜「でも、ドイツ軍は無謀。 いくら高性能でも14機じゃハワイに展開している日本の戦闘機には敵わない」


弥生「そうだねぇ、数に押しつぶされるよ」


作者「まあ、独立機動艦隊の戦闘機を含めたら最低でもオアフ島には5000機以上の戦闘機がありますからね。 空母艦載機を含めてですが……」


星菜「でも、スクランブルできる戦闘機が少ない。 もし、ドイツ軍が空母に狙いを絞ったり富嶽に狙いを絞ったら……」


弥生「ちょっ! 富嶽を今狙われたら……」


作者「うーむ……確かにここで空母が全滅したらアメリカとの決戦どころじゃないね」


星菜「ドイツ軍から見ればよりどりみどり」


作者「オアフ島奇襲作戦? はっ!まさかエデンの……」


弥生「作者、エデンってなに?」


作者「ハハハ、何のことでしょう」


星菜「詳しく聞かせてもらう……」


作者「ぎゃあああああああああああああ!」


その後、作者を見たものはいた。



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