第233話 明かされし名前と恐怖伝言ゲーム
「ぐぎゃあああああ!」
オアフ島にある格納庫の中でこの世の終わりのような悲鳴が響き渡る。
「ひいいい!」
互いに肩を抱き合ってその光景を見ていたツインテールとサイドテールの駆逐艦の艦魂は恐怖のあまり後ずさった。
それは他の艦魂達も同様で皆、青い顔で彼女を見つめていた。
「く……かは」
そして彼女は動かなくなった。
「……」
沈黙がその場を支配し、次に皆が目を向けたのは舞台の上にいる艦魂だ。
彼女の妹を含めた複数の目が自分に向けられているにも関わらず、彼女は表情一つ動かさない。
やがて……
「あ、あんた何をいれたのよ」
沈黙に耐え兼ねた彼方の声が格納庫に響く。
しかし、それは皆が期待した質問であり彼女の質問が帰るのを待つ。
そして彼女はぼそりとつぶやく
「……特製青汁」
そうたったいま絶命(誇張)した艦魂が今回の伝言ゲームの当事者だったのだ。
内容は
『青葉』が『ここ』で 『星菜』の『特製ジュース』を『一気飲み』した。
であった。
青汁といえばさる有名な物語で敵味方を壊滅させたあの物語を連想される方もおられるだろうがあの青汁は彼が作った最強のものとほぼ同等と考えてもらってよい。
ちなみに『』の間にある『の』や『に』は意味不明の場合のみ事前き決めてある違う文字をいれるルールが今回採用されている。
それはさておき……
「えっと……で、伝言ゲーム再開するよ!」
場の空気を持ち直そうと弥生が明るく言うが艦魂達は恐怖を感じ始めていた。
仲間の艦魂に介抱されている青葉という艦魂を見て皆思うのだ。
「しまった……調子に乗りすぎた……」
どういうことかと言えば司会の前に並べられた箱には艦魂達から集められた紙がほうり込まれているすなわち最悪、自分が柚子(金剛)を殴り飛ばすだの踏み付けるだのになってしまえば最悪だ。
実はこの青汁の回は4回目である。
それまではポッキーゲームで百合百合しい場面を見せたり恥ずかしい話をこっそり暴露するだのと言ったかわいらしいものであったがここにきてようやく彼女達はこのゲームの恐ろしさを痛感したのである。
(じ、冗談じゃないわよ)
少年を再び掴んだままの凛は焦った。
自分が当たったらどうしようと本気で恐怖した。
そして弥生が紙を箱から取り出して読み上げる。
「『凛』が!」
一斉に艦魂達が凛に注文する。
「はっ? わ、私?」
自分を指さす凛。
完全に余裕を失って本性をさらけ出している。
「……」
そんな凛を見ながら日向 恭介は人知れず微笑んだ。
復讐という鎖にしばられていた彼女の本質は何も代わっていないのだと……そして、撫子もまた、恭介と同じ……いや、それ以上に聖母のような微笑みを凛に向けていた。
「『ここで』」
弥生が読み上げる。ちなみにどこでという部分はパーティーの関係上強制的にここでとなる。
移動時間がもったいないし何よりみる人が減ってしまうためだ。
ごくりと誰かが息を飲んだ。
この先からが結構重要だ。
何せ自分が当たる可能性がある以上恐怖に怯えるしかないのだ。
「『1番近くにいる人』に」
1番近くにいる人?凛は顔をひきつらせて自分が掴んでいる少年を見た。
反射的に投げ飛ばそうとしたが満面のいやらしい笑いを浮かべる桔梗に止められてしまった。
「あかんで凛」
「くっ……」
しかしと凛は思い直す。
ドミニクのような例もある。
嫌だが殴られるだのと言ったことならまだ、我慢できる。
しかし、弥生が読み上げた内容は凛にとって想像を絶するものであった。
「えっと……きゃ!すごいもの引いちゃった」
何を引いたんだと艦魂達の目が集まる。食事に没頭していた榛名の艦魂翡翠も舞台に目を向ける。
「『キス』した」
きゃーと艦魂達から甘い悲鳴が巻き起こる。
さっきのポッキーゲームは女の子同士だったが今回は違う。男と女である。
その反応は尋常ならざるものがあった。
「ち、ちょっと待ちなさいよ! き、キキキキスですってぇ!」
凛の絶叫が響き渡る。
冗談ではないと舞台を見上げるが弥生は乗り気だった。
「おおっとキスの相手はそこの男の子みたいだね!誰か知らないけどラッキーボーイ……あ、ごめん敵国語だけどいいよね~」
一瞬、柚子の眉が動いたが特に何もいうことはなかった。
今日は無礼講だと彼女は思っているのである。
ここにいる艦魂達もアメリカとの決戦で命を散らすものも大勢いるはずである。
無傷の勝利はありえない。
それが連合艦隊司令部の菊水作戦の内容であった。
単純にアメリカと講話するだけが目的なら紀伊を始めとした機動戦艦を前方に押し出せばすむ話であるがドイツの影が見え隠れする以上その戦法はとれないのである。
とはいえ……
「いいなぁ……」
そういったのはドミニクである。
彼方の蹴りを食らった彼であるが復活もまた早い。
「何よ、あんたあの子狙いだった訳?」
彼方が聞くとドミニクはふっと笑い右手を髪においた。
「この世の女性はすべて声をかけるのが俺の生きがいなんでね」
「最低……死になさい」
「凪ちゃん! 彼方ちゃんがいじめるよぅ!」
「ひっ!」
いきなり凪に抱き着こうとしたドミニクを見て小さく悲鳴をあげる。
その時、一陣の風が舞い込んだ。
「死になさい、女の気持ちを踏みにじる悪党」
その時、凪の目に写ったのは二刀流の日本刀がドミニクの腹に減り込み悲鳴をあげながら吹き飛ばされるドミニクであった。
「馬鹿……」
彼方は吹き飛ばしてくれた朱里を一瞥してから全力で回避したのか波のように割れている艦魂達の中心に倒れているドミニクを見てつぶやいた。
一方
「嫌よ!嫌嫌!絶対に嫌!」
凛は全力で少年にキスをするのを拒んでいた。
まあ、普通の反応である。
「困ったなぁ……ゲームが進まないよ……」
弥生が困った顔をする皆同様なようでどうしようと顔を見合わせる。
凛は拒否している以上なんらかの妥協案を探らなければならない。
「なら、こういうのはどうだ?」
その声の主を見ると日向 恭介であった。
「何かいい案あるの恭介お兄ちゃん」
弥生が聞くと恭介は頷きながら
「ようするに凛は一人でキスするのが嫌なんだろ?」
「あ、当たり前じゃない……」
少し気まずそうに凛は言った。
「別に唇にしろって書いてないんだからさ」
「そ、そうだけど……」
「ならもう一人キスする相手を増やしたらどうだ?」
「はっ?」
「弥生! そこの誰がか誰をの箱から一枚引いて凛と一緒にそこの……えっと……こいつ誰だっけ?」
「さあ?」
気まずい空気が流れる。
部外者……まさか、スパイかと疑惑が艦魂達の頭に浮かぶが……
「確かそいつ今日紀伊に新しく配属されたハリアーの補充要員じゃない? 名前は確か藤宮 海斗、階級は確か少尉」
「そうなの由真?」
テーブルで信濃の艦魂小雪と羊羹をつついていた村雨の艦魂由真に小雪が聞く。
「うん、私新しい人員はなるべくチェックしてるから間違いないわよ」
さすがは、艦隊一の情報通である。
「でも……」
由真はあきれた目で恭介を見ると
「自分の艦に配属される人員くらい書類で見てるでしょ?しっかりしなさいよ」
「いや、その辺りは古賀に任せてるからなぁ」
「くしゅん!」
その頃、紀伊の参謀長古賀 美咲はCICで巨大なくしゃみをした。
「風邪ですか参謀長?」
兵が聞いてくるが古賀は
「違うわ。 どうせ今日もどこかでサボってる長官様辺りが何か言ってるんでしょ……フフフフフ……帰ってきたら許さない」
(怖!)
その場にいた兵達は慌てて自分の担当するモニターに目を向けるのだった。
作者「がは!風邪を引いてしまった。しかも、新型」
弥生「焼却処分しよう」
作者「ぎゃあああああ!」
ズドオオオオオオン
作者「やめろ!本当につらいんだから……」
弥生「いいじゃない。 こうして更新できたんだから」
作者「いや、それはそうだが……」
弥生「ところでパーティー編どれくらい続くの?」
作者「予定では後3話くらいの予定だけど」
弥生「フフフ、凛のキス楽しみだねぇ」
作者「もうひとり少年にキスするのは誰になるのか……ちくしょう藤宮め……幸せな奴だ」
弥生「彼気絶してるけど……」
作者「ふん、幸せものには死を!」
弥生「最低だね作者」
作者「ま、彼は準主人公か主人公格になってもらおうかな」
弥生「本当なの?」
作者「いやぁ、だって恭介の凛に対する思いってどう考えても父親に近くない?」
弥生「う、うーんお兄ちゃんは確かに……」
作者「明確に恭介と凛がくっつきますなんて言った覚えはないし」
弥生「それで藤宮お兄ちゃん?」
作者「まあ、どうなるかは教えません。フフフ、私は嘘つきだからね」
弥生「さりげなく最低人間だね作者」
作者「うわああああ!弥生がいじめる!」
星菜「私に抱き着くなダニ」
作者「ぎゃあああああ!」
ズドオオオオオオン
弥生「あらら、お姉ちゃんちょっとは手加減してあげたら病み上がりなんだから」
星菜「問題はない……峰うち」
弥生「爆弾に峰なんてないよ!」
星菜「あると思えばある。ないと思えばない」
弥生「まあ、この人は寿命意外では地球が滅ばない限り生きてるだろうけどね」
星菜「地球がほろんでも生きてると思う」
弥生「ひ、否定できないよ……この人本当に人間なの?」
星菜「このサイトには作者や要塞好きと言った突然変異したような不死身男供が誕生している」
弥生「だよね。あの人も生身で大気圏突入して無事だったし」
星菜「いずれにせよ苦しめるなら問題ない。むしろ死なないいから手加減がいらない」
作者「おいこら星菜いい加減に!」
星菜「……闇に眠れ」
作者「へ?」
キュゴオオオオオオ
作者「ぎゃあああああ!吸い込まれるぅ!へ、ヘルプ……」
パシュン
弥生「今作者が吸い込まれた黒い穴何?」
星菜「ブラックホール」
弥生「さよなら作者」
星菜「……バイ」