第225話 絶望の同盟
すさまじい轟音がホワイトハウスの庭に響いた。
驚いた人が見ると、庭に何かが落下してクレーターを作っている。
直後、上空をマーナガルムがソニックブームを残して通り過ぎて行った。
その場にいた者たちはそれが爆弾だと思いしばらく近寄らなかった。
「投下完了。 ミッションオールクリア。 ヴェルナー! フランカ撤退するぞ」
ユルゲンは通信越しに友人であり、部下である2人に通信を送る。
「「了解」」
2人同時に声が返ってくるのをユルゲンは確認してからヴィゾフニルの攻撃状態を解除。
西に向かいすさまじい速度で離脱を開始しようとした。
(もう、終わり?つまらないわね……)
フランカは離脱行動をとりつつ、ワシントンの街並みを眺めた。
市民が逃げまどう大通りが見えた。
直後、下からシューティングスター一機が舞い上がってくる。
フランカは口元を緩めた。
フランカのマーナガルムは上昇中から反転しシューティングスターと対峙する。
アメリカのパイロットは驚いた顔をするがチャンスとばかりに機銃とロケット弾を発射した。
しかし、フランカはそんなシューティングスターには目もくれずにその後ろに注目。
ピーというロックオンの音と共にミサイルの発射ボタンを押しこんだ。
「ひっ!」
シューティングスターのパイロットは百発百中の敵機のロケット弾の脅威に恐怖の声をあげるがミサイルは彼の横を通過する。
「ハッハハぁ! 下手くそ野郎! あたるかよ!」
パイロットはマーナガルムが横切った瞬間死の恐怖から逃れられたことから敵の罵倒する。
しかし、マーナガルムを再び追おうとした彼は敵のミサイルが何を狙ったのか知り愕然とする。
ミサイルは逃げる市民のど真ん中で炸裂し、死の暴風を巻き起こしていた。
「ふ、フフフ……アハハハ!」
フランカは爆風でゴミのように吹き飛ばされた市民が宙を舞うのを見て声に出して笑う。
密集地帯に対地ミサイルを打ち込んだのだから、30人は死んだはずだった。
「何をしているフランカ!」
ユルゲンの鋭い声が彼女のヘルメットから聞こえてくる。
「ごめんユルゲン、シューティングスターを狙ったミサイルがそれちゃった。
戦場でのミスってやつ?」
「……」
ユルゲンは一瞬黙るが
「本当だな?」
「しつこいわねユルゲン、別に反乱軍の協力者なんてゴミ屑以下なんだから」
「彼らはドイツ神聖帝国の新たなる市民となる。 非戦闘員への殺生は控えろ。 それにまだ、時間にはなっていない」
「了解了解」
「別にいいじゃねえかユルゲン、戦争で市民が死ぬのはお約束なんだからよ。 それにこいつらだって勝ってたら非戦闘員を殺しまくってるんだからよ。 おしおきだぜおしおき」
「……」
市民への攻撃は悪か? 道徳の面から言えば明らかに悪だ。
だが、史実のアメリカは日本に対し無差別爆撃や原爆を投下し大勢の市民を殺している。
合衆国はやられて当然のことをしているのだ。
「てわけで俺も行くぜ!」
「待て!」
ヴェルナーの機体が市民に向く。
「おら!裁きだ!」
対地ミサイルが2発、マーナガルムから発射され、2発が市民の群れに突き刺さり、死の爆炎をまき散らした。
「私も私も!」
再びフランカが対地ミサイルを発射
逃げまどう市民は阿鼻絶叫の混乱に陥った。
「ハハハぁ、粉々だぜ」
「今度は機銃掃射でやる?」
この間無論、アメリカの航空隊を黙っていたわけではない。
誰もが怒り狂い、烈火のごとく猛攻を仕掛けたが、マーナガルムに届く機体とパイロットはいなかった。
基本的な性能が圧倒的に違いすぎるのだ。
彼らはヴィゾフニルに阻まれマーナガルムに接近すらできないのである。
「……もういいだろう……離脱する」
「「了解」」
今度こそ、マーナガルム3機とヴィゾフニルの編隊は離脱を開始する。
「ファック! 絶対に逃がさんぞ!」
「ギムゼルオール!」
「待ちやがれ!ナチ野郎! 逃げんじゃねえ!」
「くそ! このポンコツ!もっと早く飛べ!」
それぞれ罵倒しながらアメリカ軍は追うがマーナガルムの編隊は西の遥か高空に消えていった。
やがて、レーダーからも消え、ワシントンの戦いともいえない虐殺劇は終わりを告げた。
「大統領、被害報告です」
「ああ」
ルーズベルトは今回の戦いでの被害をまとめた紙を受け取ると眼鏡をかけなおしてそれを見た。
航空機 95機破壊
兵の死傷者 49人
非戦闘員の死傷者 178人
たった13機の戦闘機に与えられた被害だとは思えない巨大な被害であった。
特に戦闘機の熟練パイロットを失ったのは痛すぎる被害である。
「なんということだ……兵より市民の被害の方が大きいとは……」
「大統領、奴らは市民にロケット弾を撃ち込んだのです。 許せることではありません!」
会議に列席しているキングが鼻息荒くして言う。
しかし、キングは次の大統領の言葉に目を丸くした。
「同盟を急がねばな」
「大統領! 市民を虐殺されたんですよ! 報復すべきです」
「だからこそ、同盟するんだ長官、同盟すれば彼らは攻撃を仕掛けてはこない」
ふざけるな!とキングは机をたたきたくなったが耐えるしかなかった。
今のルーズベルトには何を言っても無駄だと分かるのだ。
「それで、ホワイトハウスに落とされた者の中身だが興味深いものが入っていた。今日は諸君にこれを見せようと思って招集したのだ」
「というと?」
陸軍長官スチムソンが首をかしげる。
「これだよ」
テープの再生ボタンを押すと流れたのはあのフレドリクの演説である。
それを聞き終わった会議の列席者たちは絶句した。
「ドイツ神聖帝国……」
列席者の一人が茫然と呟いた。
いかれてると始めは思うものもいたが、ドイツの圧倒無比の力。
地はアフリカで蹴散らされ、海は無敵のモンスター戦艦、そして、空はこのワシントンで嫌というほどの絶大な戦力差を見せつけられたのだ。
ドイツ神聖帝国の世界統一はもはや、夢ではないのは間違いない。
「それで……?」
トルーマンの声が部屋に反響する。
「大統領はどうしようというのです?」
「決まっている。」
ルーズベルトは言った。
「利用するんだ。 奴らはジャップを恐れていると見た。 そこで同盟し共にジャップを叩き潰すのだ」
「それでどうなるというのです? 日本が倒れれば……」
「無論、ドイツを叩き潰す」
「どのようにしてです? 奴らの力は嫌というほど見たはずですよ」
「同盟している間に奴らの技術力を盗みつくすのだ。 我が国の基地を開放し、奴らの戦闘機を着陸させて協力させればいい」
「そううまくいくでしょうか?」
「なら技術交換だ」
「技術交換? ですが残念ながらドイツの技術は我が国を圧倒的に……」
「あるのだよ我が国には」
まさかと、この会議の数人の人物は思い絶句した。
ドイツが持っていないものは原子爆弾。
その研究データーを渡せばどうなるか……
「それは危険すぎます」
「冗談だよ」
ルーズベルトは目を閉じた。
「しかし、同盟は決定事項だ。 奴の168時間以内に交渉するのだ。 さしずめ米独同盟だな」
「しかし……」
「それにドイツは素晴らしいものを我々にくれたよ」
ルーズベルトは下に伏せるように言ってあった紙を上に向けるように言った。
そこには……
「これは……」
「日本艦隊の編成……速力や装甲、弱点まで……」
そこに書かれているのは未来のドイツが収集した日本艦隊の情報であった。
未来の情報こそないがジェットエンジン搭載型戦艦の後部ジェットエンジンへの攻撃のもろさや近江に搭載された砲は51センチ砲。
それに、大和型戦艦の弱点副砲への攻撃などありとあらゆる日本艦隊の弱点が記載されていた。
「すごい! これなら勝てるぞ!」
興奮した列席者の一人が言った。
「もうひとつ、手紙が入っていたよ」
ルーズベルトの言葉に皆が注目する。
「ジャップ艦隊との決戦時、相互に攻撃しないという内容の手紙が入っていた。
これは正式な条約というわけではないがこれが意味することは一つだ。 どうやら彼らはジャップのモンスター戦艦を沈めるつもりでいるらしい。素晴らしいじゃないか」
ルーズベルトは狂気に満ちた顔で笑みを浮かべた。
「諸君、勝つのだ! 合衆国はジャップを叩き潰し、盟友ドイツと共にジャップを皆殺しにするのだ!」
(狂ってる……)
そう、キングは思うのであった。
その数日後、ドイツ神聖帝国とアメリカ合衆国は非公式に接触し、日本の機動戦艦殲滅まで休戦及び協力関係を結んだ。
ドイツ神聖帝国はいくつかの条件をアメリカ合衆国に突き付け中には過酷なものもあったがアメリカは全て受け入れた。
かくして、アメリカは破滅への道を一歩踏み出す。
無論、これを知ったイギリスは怒り狂ったが立場的に何も言うことはできなかった。
そして、これは同時に大日本帝国が協力し合うほぼ世界中を敵に回したことを意味する。
作者「マーナガルムのプレゼントとは日本艦隊の弱点だったわけか……」
エリーゼ「その通りです草薙」
作者「ただでさえ不利なのにアメリカに対してもかなり不利に……」
エリーゼ「大丈夫でしょう」
作者「というと?」
エリーゼ「弱点といっても与えたのは限定的な情報です。 私たちに不利になる材料は与えていませんよ」
作者「どれどれ? ああ、確かに機動戦艦の技術やアイギスのことには何も触れていないね」
エリーゼ「技術も渡していません」
作者「確かに……ジェット戦闘機の性能向上は時間的にアメリカには無理だね」
エリーゼ「狂人がトップにいるといろいろ楽ですね」
作者「少しやりすぎた気もするが……」
エリーゼ「あなたはぶっ飛んだ頭をしてますからいいんじゃないですか?」
作者「否定できない……」
エリーゼ「読者に勝てるんですかと質問されましたが?」
作者「うう……」
エリーゼ「私が答えましょう。 日本は大敗北するのです。そして、解体です」
作者「待て! それはまだ分からないんですって!」
エリーゼ「この状況で日本の勝利はあり得ません」
作者「未来から合衆国日本が援軍に……」
エリーゼ「ありえませんね。 あの時代のクロノを作れる鉱石はすべてドイツが回収しています」
作者「ぬうう……拡散破動砲を装備した……」
エリーゼ「無理ですね」
作者「魔術が……」
エリーゼ「ないですね」
作者「もうお手上げ……もう、無駄な抵抗は諦めるべきか……」
エリーゼ「堕ちなさい草薙」
作者「……」
エリーゼ「ところで試験はどうしました?」
作者「フフフ! 見よ! 称えよ! ひざまずけ! 第一次試験海域は突破した!」
エリーゼ「本当ですか?」
作者「ベイビー艦長率いる戦艦部隊の猛攻にあったが打ち破り第二次試験海域に進出した! 第2次試験海域よ! 私は帰ってきたぁ!」
エリーゼ「あなたは●ナベル・ガ●ーですか?」
作者「フフフ、彼のように核を持っていれば楽なんですが第2次試験海域も突破し合格本当に突入して見せる」
エリーゼ「無駄ですね。 私が自らあなたを破壊します」
作者「勝つ! 今度こそ私は勝つぞぉ!」
エリーゼ「今回は吹き飛びなさい」
作者「ぎゃああああああああああ!」
ズドオオン
エリーゼ「次回はおや? 日本に戻るようですね。 そう言えば、ゲスト
出演した彼と私のファンクラブ会員達が最近現れませんね。どうしたんでしょう?」