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第224話 消えていく希望・悪夢の絶望

アメリカ首都ワシントンはかつてないほどの混乱に陥っていた。

真昼間に突如ドイツの戦闘機が現れたのである。

ワシントン初の空襲警報が鳴り響く中、市民は防空壕になっている地下鉄に殺到する。

車の規律などとれるはずもなく、市民達は車を捨てて逃げる。

ドイツ軍機は地上に攻撃を仕掛けてはいなかったが車がぶつかり炎上したりという2次災害が続出した。

ドイツによる被害と言えば撃墜されたシューティングスターやムスタングが家屋に落ちてきて爆発。

その結果火災があちこちで起こり、消防士達は必死の消火作業に従事した。

ハリー・ボーマンは地上に降りるとパラシュートを外し市民と共に走った。

愛機を失った彼にできることはもう何一つ残されてはいない。


「くそ!」


走りながらボーマンは空を見上げる。

上空ではドイツの戦闘機が暴れまわっており、首都防空隊の戦闘機や周辺から駆けつけてきた戦闘機が次々とたたき落とされていく。

ジェット戦闘機との戦いはすれ違いざまの一撃こそ全てという考えの元ボーマン達は訓練をしてきた。

しかし、あの戦闘機達は常軌を逸した装備と性能を持っている。

キングが聞けばそれはバリアだと言っただろうがあいにく彼はここにはいない。

走りながら彼は気がついた。

炎上している建物の下に市民がいる。

倒れているのは母親だろう。

ママ!ママぁと泣きながら体を子供がゆすっている。


「ちっ!」


ボーマンは迷わずそちらに走り寄った。


「おい! どうかしたのか坊主!」


すると、子供は泣きながらボーマンを見上げママがと呟いた。

ボーマンは女性の脈と心臓が動いているか確かめようとしたが胸に近くで炎上しているシューティングスターの破片が突き刺さっているのを見た。

彼女は即死だ。


「坊主こい!」


ボーマンは子供を抱きかかえると防空壕に向かい走りだした。

子供は激しく暴れる。


「ママを置いて言っちゃ嫌だ! ママぁ!」


「……」


お前の母は死んだんだとは言えずボーマンは無言で走り続けた。

直接的ではないにせよ合衆国の民間人の殺害。

ボーマンは憎しみをこめた目で空を見上げた。

彼の目に映ったのは銀色の戦闘機マーナガルム


「絶対にいつか貴様らを破壊してやる! 絶対だ!」


殺された彼の隊の仲間達を思いボーマンは決意するのだった。










「そろそろ頃合いか?」


ユルゲンはボーマンの怒りなど知るはずもなく戦場の遥か上空で1機の赤い戦闘機と共に旋回を行いながら呟いた。

すでに、戦闘開始から10分。

合衆国の多数の戦闘機が到着するころ合いだ。

海には空母もいたし、東海岸にも飛行場は無数に存在する。

現にレーダーには続々と戦闘機を示す光点がワシントンを目指している。

アメリカも防空に対し馬鹿でじゃないということである。

マーナガルムや赤い戦闘機ヴィゾフニルはその気になれば高速で離脱は可能であるが戦闘機である以上弾薬の制限は存在する。

しかし、今回ドイツの博士ユリウスがユルゲン達に託したヴィゾフニルの性能実験とは他にある武装のテストが含まれていた。


「ヴェルナー、フランカ、時間だ」


「ああ? もう終わりかよ」


「つまんな~い」


通信越しに2人の不満の声が響くがユルゲンは無視する。


「命令だ。 私が最後のテストをしている間に作戦通り『プレゼント』を投下しろ」


「ちっ! 了解」














ヴェルナーのマーナガルムがホワイトハウスの方角に向かい機首を向ける。


「逃がすか野郎!」


首都防空隊のシューティングスターはマーナガルムを追うが当然追いつけるはずもない。

逆にマルコシアスに後ろを取られ撃墜されてしまう。

ヴィゾフニルは人間の限界を考えなくていいため無茶苦茶な機動性を誇りながら上に下にと暴れまくる。

通常人間が耐えられるGは7が限界と言われているがヴィゾフニルに人が乗るとすれば瞬間的にかかるGは7どころではすむまい。

すでに防空部隊の損害率はすさまじいものになっている。

数えるほどの戦闘機に数倍以上の戦力でも手も足も出ない。



「強すぎる……」


ムスタングのコクピットの中でジムは思った。

いや違う。

機体性能が違いすぎる。

このムスタングで例えるならライト兄弟が飛ばしたような飛行機VSムスタングというような圧倒的すぎる戦力の差である。


「もたもたするな貴様!」


はっとして彼は無線機を見た。

声の主は隣を飛んでいる彼の編隊の隊長のオスカーである。


「しかし、隊長相手が強すぎます」


悲鳴のように言う。


「馬鹿野郎! 別に撃墜しなくていい! 弾切れに追いこんで撤退させるんだ! それがせめてもの……」


ああ、わかっているんだとジムは思った。

オスカーもムスタングと敵の戦闘機の圧倒的な戦力差は理解できている。

決して撃墜できないというわけではないが容易にいかないのはまず間違いないことを……

この戦いの主目的はワシントンを防衛することで敵機を破壊することではないのだから……


「レッドリーダーより各機へ! 決して編隊を崩すな! 全機で1機に襲いかかる気でいろ!」


「レッドりょうか……」


ジムがそこまで言った時、それはあらわれた。

突如雲の間から銀色の戦闘機が急降下してきたのである。


「もう1機!?」


「各機けいか……」


オスカーの声はそこまでだった。

マーナガルムの武装を施す場所であろう腹部から光が飛び出しオスカー機を貫いたのである。

ボンと炎をまき散らしながら落下していくオスカー機を見てジムは舌打ちした。


(今の光はなんだ!?)


マーナガルムから発射されたあの光は誘導ロケット弾でも機銃でもない。


(新兵器か)


とジムは思った。









一方、ユルゲンは多数あるボタンを制御しながら


「ムスタングの撃墜を確認。 アルテミナスの核パルスとの相互出力安定……作戦実行に支障なし。続いてシューティングスターでの実験を開始する」


ユルゲンのマーナガルムはムスタングの編隊から離れるとシューティングスターの編隊を捉え高速で接近した。

ピーとロックオンの音がユルゲンの耳に届く。

ちらりと、出力の画面を見ると80パーセントと表示がある。

多少、出力は不足している。


「……」


ユルゲンは無言で発射ボタンを押しこんだ。

閃光がほとばしり彼の機から光の線が飛び出し、それはシューティングスターのコクピットに直撃し、防弾ガラスを融解させ、パイロットを焼き殺した上でシューティングスターを破壊した。


「……アルテミナスの性能実験終了。 離脱する」


仲間をやられて怒り狂うアメリカの戦闘機を小馬鹿にするようにユルゲンのマーナガルムはすさまじい速度で上昇。

追おうとしたアメリカ軍の戦闘機は割り込むように入ってきたヴィゾフニルに全て撃墜されてしまう。

無論、アメリカにもベテランパイロットやエースはいる。

しかし、腕のいい彼らが射線にマルコシアスを捉えてもアイギスに阻まれてしまう。

アメリカの航空隊は完全に遊ばれていた。

高射砲も打ち上げられてはいたが、ドイツ軍機どころかアメリカの戦闘機を落としてしまうというありさまでVT信管装備の砲は何の役にも立たずにただ、むなしく鉄の塊を吐き出すしかなかった。















ホワイトハウスの地下でルーズベルトはキングたちと共に入ってくる報告を聞いていた。

ワシントン上空で暴れまわる戦闘機にアメリカの戦闘機は手も足も出ないという。


「まだ落とせんのか!」


「わが軍は奮戦しています。 きっと奴らを撃退することができるでしょう」


トルーマンが言うとルーズベルトはトントンと人差し指を車いすに当て始めた。


「それはいつだ? こちらの損害はどうなっているのかね?」


「まだ、はっきりした数字は分かりませんが相当数の被害が出ていると思われます」


「ファック! 半分ぐらいは落としたんだろうな?」


「……」


誰も何も答えない。

今、空は殺戮の嵐。

一方的にアメリカ軍機がなぶり殺しにされる虐殺の嵐であった。

圧倒的な戦力差。 理不尽なまでの性能差にアメリカの若者やベテランパイロットは次々と命を落として言っている。


「これが我が国とドイツの力の差です」


トールーマンが口を開く。

ルーズベルトがぎろりとトルーマンを睨みつけた。


「副大統領、君は何を言いたいのかね?」


「大統領、私は一つ提案します」


「ほぅ、なんだ言ってみろ?」


「日本とこれ以上戦うというならドイツと休戦し、同盟を締結。そのうえでドイツと共に日本を叩き潰すのです」


「副大統領! ナチスと手を組めという気ですか!」


驚いたキングが悲鳴を上げる。

ヒトラーと同盟などそれは破滅でしかない。

キングはドイツを危険視していた。

内心では日本軍と手を組み、ドイツを叩き潰したいというのが今の彼の本音だった。


「大統領?」


トルーマンがルーズベルトとの返答を待つ。


(国民を守るためだ。 今の大統領に日本と休戦を持ちかけても承諾しまい。なら、逆しかないのだ)


「ふ、フフフ……それは盲点だったよ副大統領、いいだろう。 直ちにドイツと休戦及び同盟の模索に入りたまえ。 イギリスなど知らん。 ヨーロッパやソ連の領土など奴らにくれてやる。ドイツの戦力と我が国の戦力を持ってジャップを粉砕してくれる」


「駄目です大統領!」


キングは思わず叫んでいた。


「ほう、反対かね長官。 では大統領命令でこれを通そうか」


「くっ……」


今のアメリカの議会はドイツか日本との休戦を望んでいる。

国民は戦いにうんざりしているのが現状だった。

自分達を苦しめている片方でも休戦に持ちこめば国民の感情も和らぐ。


「長官……」


トルーマンがキングを見て静かに呟いた。


「君の負けだ」


その声は地下の空間に静かに反響するのだった。

日本の新たなる絶望の言葉は紡がれた。


作者「な、何! アメリカが!」


星菜「自分で書いた……」


弥生「だよねぇ、何驚いてるの?」


作者「いやいやいや、これは大変ですよ。 もし、ドイツが同盟を承諾したら日本はドイツの戦力とアメリカとに挟み込まれます」


星菜「……やばい」


弥生「う、うんどうしようお姉ちゃん……」


作者「まあ、イギリスが承諾するわけないけどね」


星菜「アメリカとドイツが同盟した場合世界の3分の2以上が日本の共通の敵になる」


作者「本気で日本の敗戦が見えてきた……」


弥生「ちょっ! 嘘でしょ作者」


作者「あまりにドイツサイドに有利すぎる……」


星菜「でも、私達は負けない」


弥生「え?」


星菜「この身が砕け散ろうとも日本を守る」


弥生「う、うんそうだねお姉ちゃん……」


作者「どうすればいいんだ! 日本に勝ち目はないのか!」


星菜「ある偉大な人は言った。 『戦争の勝敗を決めるのは兵器ではない。人間だと』」


作者「誰? まあ、しかし人間としても竹やりで1本で戦艦を敵にはできませんよ」


星菜「いずれにせよアメリカの行動は愚か……ドイツがアメリカを見逃すはずがない」


作者「日本が潰されたら次は自分達だとなんでわからないんだ!」


星菜「……」


作者「まさかと思うがこれもオペレーションエデンの1角なのか?」


星菜「ありえる……」


作者「大変だ! 教えるから早く山本長官に知らせて星菜」


星菜「無理、この後書にでる私たちは本編に干渉できない」


作者「嫌だ!日本が負けるなんて嫌だぁ!」


弥生「どれだけ日本を絶望の淵にたたせるの作者!」


作者「好きでこうなったんじゃないです!」


星菜「それは嘘、先日作者の部屋でドイツの資料をたくさん見つけた」


作者「ひ!」


弥生「説明していいよ作者」


作者「あ、あれはドイツについての勉強です。決して戦後を見てでは……」


星菜「もう、勝敗は確定してる?」


作者「黙秘する!弁護士を呼べ!」


弥生「砲弾を呼んであげるよ! 死んじゃえ馬鹿ぁ!」


星菜「……死ね」


作者「ぎゃああああああああああああ!」


ズドオオン


弥生「負けない!」


星菜「大和・紀伊ある限り日本は絶対に負けない」


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