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独立機動艦隊『紀伊』―連合艦隊大勝利!  作者: 草薙
ヴァルキュリア作戦
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第217話 血塗られた戦艦

厚い雲に覆われたカラチ沖の空に3機の戦闘機の姿があった。

ステルスを度外視したその作りは極限まで高められた戦闘機である。

メッサーシュミットゼロや震電と同じ第7世代戦闘機であることがうかがえる作りであった。

その血のように赤い機体の名は『マーナガルム』、北欧神話で出てくる月の狼という意味の名前であった。

全ての死者の肉を腹に満たし、月を捕獲して、天と空に血を塗る。そのために太陽が光を失ってしまうという伝承が残る。

しかし、彼らが奪うのは太陽ではない。

太陽に当たる希望を奪う絶望である。



「そろそろだな」


マッハ5という凄まじい速度の中、マーナガムの1番機に乗るユルゲン・フォンが言った。


「全部やっちまっていいんだよなユルゲン?」


「ヴェルナーか? ああ、問題はない」


ユルゲンは通信越しに届いた部下であり友である男に言った。


「でもさぁ」


その通信に割り込みをかける存在があった。

少し気だるげな声である。


「なんだフランカ?」


ユルゲンが通信越しに声をかける。


「私達のマーナガムの最初の相手が雑魚艦隊って面白みのかけらもないんだけど?」


「んなふてくされんなよフランカ、俺だって不満だぜ。出来るなら大和か紀伊を瞬殺してやりたいぜ」


「いずれ機会はあるさ。ここで成果を出しておかんとユリウス博士に申し訳がたたん」


「ユリウスね。まあ、腕は認めてやるが……」


ヴェルナーが言った。

ユリウス・マテウスはマーナガムの開発者である。

ドイツが生んだ天才科学者で原子力から戦闘機の開発まで幅広い知識を持ち、どれも

一級以上の頭脳を誇っていた。

天才の中の天才とは彼のためにある言葉だった。


「ま、私は戦えればそれでいいんだけどね」


「雑魚艦隊潰したら陸上いくかフランカ?ちょっとインドまで足ののばして機銃で掃射狩りってのも悪くねえよな?」


「それ最高!やる?」


ぞっとするような冷たい声が通信に流れた。

少なくても人の命をゴミとしか考えないものの言葉であった。

そして、フランカとヴェルナーは本気である。


「いい加減にしろ2人とも! そろそろ時間だぞ!」


「はいはい、やれって言われたらやるわよ」


「派手に1発ぶち込んでやるぜ」


雲を抜ける。


「見えた!」


雲海を抜けるとそこにいるのはノイマン率いる艦隊である。

戦艦を挟み込むようにして駆逐艦が付き従っている。

輸形陣を組んでいるつもりなのだろう。

戦艦から炎が沸き立つのが見えた。


「ユルゲン! 主砲!」


フランカの声がユルゲンの耳に突き刺さった。


「分かってる!攻撃を開始する!」


3機のマーナガルムが散開する。

ものすごい速度と運動性能でアウルゲルミルの対空主砲が炸裂した時に3機の姿はその空域にはいない。






「は、早い!敵が早すぎます!」


「機影をロスト! い、いえ再び現れました。なんだこいつは!」


次々とノイマンの下に情報が入ってくる。


「落ち着け! 敵の機種を特定しろ! ゼロなのか?」


ゼロはメッサーシュミットゼロの呼び名だ。

一瞬、ノイマンの頭に量産型という言葉が浮かぶ。

メッサーシュミットゼロは言うならば試作機である。

当然、試作機がそのまま、量産されるわけではなく量産に適した形に変更されるのである。


「識別信号は……『マーナガム』?」


「マーナガムだと? 新型か?」


聞いたことのない名前であった。

メッサーシュミットシリーズとはまた違った戦闘機というわけだ。


その時、アルルゲルゲルミルの艦僑に警報がとどろいた。


「右舷よりミサイル来ます!」


「くっ!迎撃しろ!」


ノイマンは怒鳴った。

アウルゲルミルには対空ミサイルは装備されているがはっきり言えばおもちゃみたいなミサイルである。

ミサイルをミサイルで迎撃なんていう芸当はできない。

かといって、人に手による機銃でのミサイル迎撃など論外だ。


ズドオオン

ズドオオン

ズドオオン


立て続けに爆発が起こった。

しかし、それはアウルゲルミルからではない。


「ホルグ、ブロート・ユール轟沈!」


「何!」


一瞬にしてノイマン艦隊は駆逐艦を失った。

残るはアウルゲルミルただ1艦である。


「マーナガム反転してきます!」


「司令!」


アウルゲルミルの艦長が悲鳴を上げた。


「対空ミサイルにて迎撃せよ」


「了解。ミサイルロックオン完了!」


「撃ち方ぁ、始め!」






「はっははぁ!張り合いがねえ」


「あの大きいのは私がもらう」


「はぁ? ざけんなフランカ、あれは俺の獲物だよ」


「じゃあ、早い者勝ちってことで」


「いい加減しろ2人とも!命令は鹵獲だぞ」


「堅いこと言うなよユルゲン」


「隊長だ」


ユルゲンが訂正を入れる。


「じゃあ、隊長。撃沈しなきゃいいんだろ?形だけ残ってたら修理でできるからな」


「ああ……問題ない」


「じゃあ決まり!」


ピー


その時、ヴェルナーのマーナガムにロックオンの警報が響いた。


「お!?」


「キャハハハハ!ロックされてんのださー」


ユルゲンがアウルゲルミルの方を見ると発砲炎が見えた。

対空ミサイルを放ったのだろう。

マーナガムとはいえミサイルよりは早く動けない。


「うっせえフランカ!わざとロックされてやったんだよ」


「さっさと逃げれば?死んじゃうよ」


「はっ!こんなもの」


ヴェルナーは警報音が鳴り響くコクピットでにやりと笑うと機体を海面すれすれまで降下させると猛烈なソニックブームを撒き散らしながらアウルゲルミルに向かい突撃する。

当然、アウルゲルミルのミサイルも追撃してくる。

つまり、ヴェルナー機の真正面からミサイルが突撃してくることになる。



これは、ノイマンも仰天した。


「何を考えてる! あのパイロット!」


レーダーの画面のミサイルとヴェルナー機が重なった。


ズドオオン


肉眼でもミサイルが炸裂したのが甲板からサラには見えた。


「フフフ、アハハ!やった!倒した!」


狂ったような笑みを浮かべてサラは言った。

しかし……

その表情は驚愕に変わる。

サラの目には爆発の煙から飛び出してきたマーナガルムであった。

損傷は見受けられない。

尋常ではない装甲を持っていようとありえない光景であった。

最強の装甲を持つハインケルでさえミサイルの直撃を受ければただではすまない。


「はっ!格が違うんだよ! おらぁ!抹殺!」


ヴェルナーがミサイル発射ボタンを押し込んだ。

マーナガルムの翼から2発のミサイルが一直線にアウルゲルミルに突撃する。



「迎撃!」


アウルゲルミルの艦長が叫んだ。


「駄目です艦長!迎撃できません!」


アウルゲルミルの各砲が炎を巻き上げてミサイルに弾幕の嵐を浴びせる。

それは機銃の兵達も同様であった。


「あ、当たれ!当たりやがれ!」


ドドドドドドド


から薬莢が鋼鉄の甲板に次々と落ちていき、20ミリ機銃が火を噴く。

しかし、ミサイルの突進は止まらない。


「伏せろ!」


誰かが叫んだ。

その瞬間アウルゲルミルの右舷にミサイルが飛び込み爆発を起こした。

ズドオオン

ズドオオン


「ぎゃああああ!」


瞬間、サラの右のわき腹が裂けて血しぶきが甲板を塗らした。

サラは倒れそうになるが踏みとどまり空を見上げた。

マーナガルムがものすごい速度でソニックブームを撒き散らしながらアウルゲルミル上空を通り過ぎていく。


「う……痛い……痛い…」


目に涙を浮かべながらサラは憎しみのこもった目で自分を傷つけたマーナガルムを見ている。

体の傷の具合から死にはしないことが分かる。

もちろんこれからの兵達の活動しだいだが自分はまだ、戦える。

しかし、戦艦というのはある意味、むごい存在である。

駆逐艦や潜水艦なら一瞬の痛みで死ねる攻撃でも防御力が破格に高いために痛みに苦しむ機会が格段に多いのである。

まさに、アウルゲルミルの姿こそその象徴である。

合衆国はモンタナ級を紀伊を始めとするモンスター戦艦の攻撃、つまりミサイルの対策として破格の防御力を持たせることをモンタナの設計思想に盛り込んだ。

46センチ砲という巨砲による圧倒的な攻撃力に重装甲による防御力。

モンタナは次のアンドロメダ級に繋げる布石の戦艦でもあった。


「まだ……」


口から血を流しながら痛みに右目を閉じながらサラは歯を食いしばった。







「右舷にミサイル2直撃!」


「被害報告!」


艦長が怒鳴りアウルゲルミルの戦闘能力の報告が艦僑に飛び込んでくる。

結果、主砲を始めとする火器は使用可能だが、右舷ミサイルランチャーが全壊したことが告げられた。


「く!」


ノイマンは唸った。

これでは、突撃どころではない。


「左舷より新たなマーナガルムが突っ込んできます!」


「撃ち落せぇ!」


艦長が顔を真っ赤にして怒鳴った。






アウルゲルミルの左舷の火器が断末魔の悲鳴をように炎を上げながら砲撃を撒きちらす。

それらは海面に水柱を立て続けに発生させた。

しかし、海面すれすれを滑るように飛ぶ戦闘機を落とすことは適わなかった。


「もらい」


HMDヘルメットの画面を見ながらフランカは舌なめずりするとロックオンの音と同時にミサイルの発射ボタンを押し込んだ。


ズドオオン

ズドオオン


アウルゲルミルの左舷に火柱が巻き起こる。

サラはあまりの激痛に悲鳴すら上げずに甲板に倒れた。


「……っ!」


サラは憎悪に満ちた目で空を見上げる。

同時にマーナガルムが甲板に近い位置で上昇して言った。

その瞬間、一瞬だがパイロットが見えた。

HMD形式のヘルメットのため顔が見えなかったがその口は明らかに笑っていた。


「がっ……」


再びサラは吐血する。

同時に炎が爆ぜている左舷に爆発が起こった。


機銃座の兵が爆風で空を舞いサラの目の前に叩きつけられた。


「あ……あ……」


その若いドイツ兵はびくびくと痙攣しやがて動かなくなった。


「衛生兵!衛生兵!」


「ちくしょう!ちくしょう!」


「フリック!死ぬな!死なないでくれぇ!」


「死ぬな!恋人が国で待ってるんだぞ!死ぬな!」


「ちくしょうやってやる!やっやるぞ!」


「ママ……助けてママ!」


まさに甲板は地獄絵図と化していた。

右舷左舷共に火砲は死に甲板は兵達の血で赤く染まっている。

無事なのは主砲と艦僑の指揮系統のみである。

致命傷となる機関やジェットエンジンの燃料には当てていないところを見ると

今は沈める気はないようだがもはや戦える状況ではなかった。


「司令……もうよろしいのでは? この戦いに命をかけるのは無意味かと……」


アウルゲルミルの艦長が振り返った。


「……」


ノイマンは目を閉じて天井を見上げている。


「マーナガルムは?」



「引きましたがおそらくこれは……」


「司令、ヘイルダムより再度降伏勧告です」


「司令」


艦長が再びノイマンを見た。


「艦長……降伏を許可する」


「司令!」


徹底抗戦を主張する参謀がノイマンをにらみつけた。

ノイマンは放心したような目でその参謀を見つめた。


「もはやこれまでだ!」


誰もが止める間もなかった。

艦僑に1発の銃声が響きノイマンはその場に崩れ落ちた。


「司令!」


艦長が自決したノイマンに走りよるが頭を打ち抜いたノイマンは即死であった。


「……」


アウルゲルミルの艦長はノイマンの亡骸に向かい敬礼した後参謀達に向き直った。


「よろしいですか?」


その言葉に参謀達は何も言わない。

艦の状況を見ればもはや、どうしようもないことは明らかであった。


「ヘイルダムに降伏すると打電しろ」


「はっ!」






その降伏の打電は当然、サラにも伝わった。

ぼろぼろの体で彼女は泣きながら鋼鉄の甲板を殴り続けた。


「うう……また……また……嫌……アメリカに帰りたい……帰りたいよ……」


その願い適わず、接近してくるヘイルダムが目に入るまで彼女は泣き続けた。







カラチ沖海戦ともいえない一方的な戦いは圧倒的な性能を誇る戦闘機隊の大勝で終わった。

陸上に残った親衛隊も航空戦力が壊滅したところをバッヘムやマーナガルムが襲い掛かり、海上戦力が壊滅したことを更に聞くと陸上のドイツ兵達は次々と降伏したり、逃げ出すものが相次いだ。

戦場が海に近いこともあり、兵達はカイザー艦隊の凄まじい火砲にさらされることに恐怖したことも大きかった。

親衛隊の司令は最後まで徹底抗戦を唱えたが部下に射殺されるという有様であった。

しかし、次々親衛隊が降伏していく中、最後まで戦い続けた国防軍の部隊があった。

ハインツ・グデーリアン率いる機甲師団である。

周りが降伏を勧めるのも聞かず、戦った。

同じ戦車相手ならばおそらく鬼神のごとき戦いを見せたであろう機甲師団はマーナガルムの的にされ全滅。

グデーリアンは生死不明となり、行方不明となった。


こうして、最大の反抗勢力と目されたナチス親衛隊はあっさりと壊滅してしまったのである。


そして、ドイツ国内にそれが伝わると反抗していた勢力も沈静化していくこととなる。

フレドリクのドイツ第三帝国掌握はほぼ完了したといってよかった。

だが、まだ完了はしていない。

あと少し……

あと少しでドイツは堕ちる。































作者「なんと……」


エリーゼ「カラチ沖海戦は終わりましたね」


作者「次回からはドイツ国内に戻ります」


エリーゼ「ようやくですか」


作者「ま、ぶっちゃけドイツ国内はヒトラーが死んだら懸念事項はないんですけどね」


エリーゼ「あの男は恐ろしい男です。特に人の求心力です」


作者「確かに……勝ってたら間違いなく英雄だったでしょう」


エリーゼ「ユダヤ人虐殺は私は認めませんが」


作者「フレドリクだってやってるじゃん」


エリーゼ「馬鹿ですね。フレドリク様はあくまで必要だからやっただけです。国内を掌握すれば必要はありません」


作者「ということはユダヤ人達は……」


エリーゼ「解放します」


作者「ふむ」


エリーゼ「なんですか?」


作者「いえね、国家の政治としては国民の怒りをむける矛先って案外有効ですよね」


エリーゼ「何をいうのです?あるではないです」


作者「というと?」


エリーゼ「日本やアメリカに国民の怒りを向ければいいのです」


作者「む……」


エリーゼ「国内を掌握したらアメリカを叩き潰します。日本かもしれませんが」


作者「日本は負けない!紀伊がある限り!」


フィーリア「劣等民族が作った戦艦などたかがしれていますフフフ」


作者「うわ!」


エリーゼ「久しぶりですね」


フィーリア「ええ、お久しぶりです司令、劣等民族」


作者「待て!私が劣等民族だと!」


フィーリア「フフフ、間違っていますか?」


作者「合ってます」


フィーリア「ほらごらんなさい」


エリーゼ「馬鹿ですね」


作者「くっ……こいつら私の手と頭から生まれた存在の癖に創造主である私を愚弄するか……」


エリーゼ「何をいうんですか草薙」


フィーリア「フフフ、感謝はしていますよ劣等民族」


作者「ええ!まじ!」


エリーゼ「嘘に決まってるじゃないですか」


フィリーア「フフフ」


作者「くそ!こうなったら大和(伊)に連絡して今度はドイツの艦魂をめちゃくちゃな格好にしてやる!もしもし!大和(伊)ですか?」


エリーゼ「罰です」


フィーリア「劣等民族が……こざかしい」


作者「ぎゃあああああああああああああ!」


ズドオオオオオオオオオン

キュイイイイイイイイイン


??「ん?もしもし?」


ブツン

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