第216話 壊れた心
「残存戦力は戦艦1に駆逐艦が3か……奇跡でも起きない限り勝ち目はないな」
ノイマンはあきらめたようにふっと口元を緩めた。
「奇跡……」
アウルゲルミルの艦長が言った。
「日本には奇跡のような幸運がついているそうじゃないか」
「神風ですか?」
それは、もう遥か昔、日本が元という国家に侵略された時、定着した奇跡の名である。
圧倒的な戦力の元艦隊を呑み込んだ2度の台風。
それを日本人は神風と呼びその名を未来永劫人の心に刻み付けた。
そして、今日本にも神風が舞い降りた。
紀伊という名の戦艦の存在である。
ミッドウェー海戦後の絶望的な状況からアメリカを押し返した奇跡の戦艦。
その戦艦の存在こそ再び日本に舞い降りた神風ではないだろうか……
「だが、我々には神風は吹かぬようだな」
ノイマンは言った。
軍人が奇跡に頼るようになれば終わりである。
現在ある戦力で敵と対峙し撃破する方法を考える。
それが軍人のあるべき姿ではないか。
「しかし……」
ノイマンは思う。
どうすればいいのだ。
たった、4隻、それも改装されたとはいえ戦艦1隻と駆逐艦3隻で何が出来る。
どうすればバルムンクを打ち破れるのだ。
「艦長、何か機動戦艦に対する有効な攻撃手段はないか?」
「……」
艦長は黙って首を横に振った。
「残念ながら勝ち目は限りなく0です。唯一の方法は体当たりしかありませんがこれも難しいでしょう」
「カラチ基地との連絡はどうだ?」
「ありません、カイザー艦隊の艦載機に恐らくは壊滅させられたものと思われます」
「……」
その兵が言うようにカラチ基地は粉砕されていた。
ドイツ空軍のフォッケバインを蹴散らしてカイザー艦隊の艦載機は滑走路を使用不能にし、司令部として使っていた基地施設を破壊して言った。
再建は容易なことではない。
少なくてもこの戦いでカラチ基地が復旧することはまずないだろう。
ハリアーのような垂直離陸の機体であれば滑走路がないこの状態でも出撃は可能であったが垂直離陸の戦闘機は製造が難しく、量産態勢なぞ取れるはずもない。
カイザー艦隊の工場で細々と作られているのがせいぜいだった。
空の戦いはカイザー艦隊が制した。
予想していたことだがここまで圧倒的だとむしろ笑えてしまうなとノイマンは思った。
自分達が突撃しても恐らくは無駄死にである。
「カイザー艦隊の動向は?」
「偵察機を飛ばしても撃墜されてしまいますし、レーダーに映らないのではっきりしたことは分かりませんが上空のバッヘムが帰還した方角からカイザー艦隊の……少なくても空母の方角だけはつかめています」
「なるほど、基本的なことは同じというわけか」
カイザー艦隊は鹵獲戦を展開する時はまず、艦載機で敵航空戦力を壊滅させる。
その後、バッヘムの攻撃は敵艦隊へ向かうことはない。
機動戦艦自らが圧倒的な存在を示しながら敵艦隊を粉砕するのだ。
その上の降伏勧告である。
この場合、アウルゲルミル鹵獲と考えるなら駆逐艦が生贄であろう。
あるいは全艦隊が生贄なのかもしれなかった。
海上の戦力が残らず降伏、あるいは撃沈されれば陸上の兵士達は戦意を失うだろう。
制空権と制海権を完全に握られてしまう恐ろしさを彼らは知っているのだ。
しかし、今回の指揮官は違った。
「司令!戦闘機が向かってきます。ものすごい速さです!バッヘムなど比べ物にならない速度です!」
「何!メッサーシュミットゼロか!」
ノイマンは目を見開いた。
メッサーシュミットゼロの基本性能は並外れている。
ノイマンも全てを把握こそしていないが現存するあらゆる戦闘機を凌駕する性能を持つと聞いた覚えがあった。
「数は3機です」
「3機?その3機の速力は分かるか?」
「マッハ5以上は出ているかと、後10分ほどで本艦隊はその機体の射程に入ると思われます」
「司令!」
艦長がノイマンを見る。
今この瞬間ならカイザー艦隊に降伏する選択肢はある。
部下のことを考えればそうだろう。
しかし、ノイマンはどうしてもそうできない理由があった。
上の命令という形でノイマンはユダヤ人処刑を執行した。
恐怖というものを具現化させるために戦艦の主砲により、ユダヤ人達を跡形もなく吹き飛ばしたのである。
戦争において艦砲射撃で人間を吹き飛ばすなど当たり前だ。
艦砲射撃は間違いなく有効な戦術なのだから。
民間人が巻き込まれるのはいたしかたない
しかし、処刑という名の虐殺行為をノイマンはどうしても許すことが出来なかったのである。
「対空射撃にて迎撃せよ」
「はっ!」
兵士達が走っていった後、ノイマンは艦長席に腰を落として目を閉じた。
タバコが欲しいなと思い妻と禁煙の約束をしたことを思い出した。
(私はもう、帰れないよ)
そう、思いながら……
対空戦闘発令により配置についている兵士達は緊張した顔で空を見上げていた。
この日、カラチ沖は曇り空であった。
つまり、対空射撃には向かない空であった。
「敵が討てる……最高の気分」
少女はアウルゲルミルの艦上で小さな声でつぶやいた。
第1主砲の上、大和に匹敵する三連装46センチ砲の上に彼女はいた。
「リア……敵は討つから」
その瞳は静かであるが激しい憎悪の瞳であった。
憎悪を纏えば人は……いや、艦魂は……違う。
憎悪を持つ全ての生物に共通する怒りの瞳である。
妹を殺され、たくさんの仲間を殺された。
サラの怒りの全てはドイツ。
そして、機動戦艦……いや、あのエリーゼと艦魂に向いていた。
直接的にリアを殺したラグナロクの艦魂フィリアも憎んでも憎みきれない相手だが
あの、エリーゼという艦魂はドイツの艦魂の艦隊総司令であると同時に気に食わなかった。
謝ってほしいなどとは思ってはいない。
謝ったところで許すはずもないしリアは帰ってこない。
あの、表情を一つ代えない艦魂はきっと、何も思っていないのだ。
自分がエリーゼを殺そうとしても彼女は軽くいなした。
相手にされていないというのがサラにとって悔しくて仕方ない。
あのすました顔に絶望と苦悩を与えてやりたい。
「フ……フフ……アハハハハハハ!」
サラはエリーゼが自分の足に踏まれて泣いて許しをこう姿を想像して笑った。
『壊れている』
誰かが見ればそう思っただろう。
あるいは、ここにアメリカの鹵獲された艦魂がいれば彼女は憎しみを持ちつつも正常であられたかもしれない。
しかし、ここにはアメリカの艦艇は彼女しかいなかったのである。
「殺す!絶対に殺してあげるわ!泣いて這い蹲るあなたを蹴飛ばして○○して○○してあげる」
適うはずがない。
そんなことはすでに彼女の頭にはなかった。
もはや、彼女は正常な判断力を失っていたのである。
妹を失い。
憎むべきドイツで敵も討てずつらい思いを続けてきた彼女。
そして、ついに獲た復讐の機会。
それら全てが彼女の心を壊したのである。
「フフフ、アハハハ!」
狂喜に満ちたその笑いはフィリアの殺戮の喜びの笑いとも違う恐ろしい笑いであった。
彼女は復讐を果たすことは出来ない。
少なくてもモンタナ級1隻でドイツ機動戦艦を壊滅させることなど奇跡が起きてもできないのだ。
死をもってしか彼女の心を開放することができぬのならきっと彼女を知るものは思うはずだ。
『もう、楽にさせてあげて……』
そう願うのだろう。
作者「オーロラという機体を知っていますか?」
エリーゼ「あなたの世界のエリア51とかいうアメリカの基地で開発が噂されている偵察機のことですね」
作者「そうそう」
エリーゼ「それがどうしたのです?」
作者「いや、次回の伏線みたいな会話をと……」
エリーゼ「つまり、あの3機はオーロラの……」
作者「ストップ!それは次回に」
エリーゼ「ところで最近、アクセス数が止まってますね」
作者「確かに……トラブルらしいですがアクセス数って読者の感想には及ばないながらも
創作意欲の一つですからね」
エリーゼ「アクセス数100万を越えていますね。ユニークは20万を越えています。
よくあなたのような駄目作者がここまでの人間を吸収したものです」
作者「いやぁ、それほどでもないですよ。もうすぐ1周年だからそれまでに100万を越えたのはうれしいですけどね」
エリーゼ「ユニークと80万以上差がありますが?」
作者「無茶言うな!ユニークと総アクセスが一緒なんて恋姫狩人物語でもありえん!」
エリーゼ「さりげなく黒鉄の作品を出しましたね。向こうはユニークだけで1日5000を越える大軍。潰されますよ」
作者「大丈夫!黒鉄先生とは作者仲間という強固な繋がりがあるから」
エリーゼ「そういえば輝龍の後書きでもあなたの名前が出てましたね草薙」
作者「思えば向こうの艦魂達との交流も昔は多かったなぁ……武蔵艦隊VS紀伊・艦魂年代史連合艦隊で艦隊決戦をして武蔵艦隊を撃つ破ったりゾンビに伊勢さんや霧島さん達と逃げ回ったり大鳳さんに助けてもらったり」
エリーゼ「艦魂年代史本編の感想では大和を怒り狂わせて怒りの46センチ砲の嵐を浴びていましたね」
作者「そうなんですよ。スコールに逃げ込んで事なきを得ましたがあれはやばかった」
エリーゼ「人気投票が原因です」
作者「ハッハッハ!嘘はいけないんですよ。正直に話してこそ人気投票の意味があるのさ」
エリーゼ「あの子にはあなたは多大な恩もありますからね」
作者「まあね、輝龍の後書きにあの子が出ないのは残念だね」
エリーゼ「さりげなくリクエストしてますね」
作者「なんのことでしょう?」
エリーゼ「まあ、あの輝龍って子とあの子は似ているらしいですからね」
作者「あの転ぶところがかわいいな。エリーゼ様も転びます?」
エリーゼ「残念ながら……っ!」
バタアアアン
作者「ギャハハハ転んだ!作者様の力があればいきなり石をエリーゼ様の足元に出現させることなんて簡単簡単」
エリーゼ「……」
むくりと立ち上がるエリーゼ
作者「ハハ……ひいいいいい!お許しををををを!」
作者逃亡
エリーゼ「許しません」
ズドドドドッドドドドドドドドドガアアン
バリバリバリバリ
ビシャアアアン
キュイイイイン
作者「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
」
エリーゼ「後悔しなさい草薙!」
作者「ごめんなさああああい!
エリーゼ「許しません」
ズドオオオオオオオオン
みんなも軽はずみなことは気をつけようね




