第210話 殺戮の喜び
「総統府へのミサイルの着弾を確認! バルキュリア作戦開始されました」
機動戦艦ラグナロクCICで兵士が怒鳴った。
「始まりやがったか……」
ラグナロク艦長、ワグネルは太い腕を組んで呟いた。
キール沖合、ドーバー海峡にラグナロクを始めとする艦隊はいた。
「一国の独裁者の最後が爆死なんて笑える最後じゃない」
そう楽しそうに微笑を浮かべて言ったのはラグナロクの艦魂フィリアである。
流れるような金髪に青い瞳。
しかし、その性格は残虐にして非道の彼女は面白いことが起きているはずのドイツの方角を見つめた。
「ついてないわね。お嬢……というよりフレドリクもどうせならインド方面に派遣してくれたらよかったのに」
現在インド方面にはナチス親衛隊を始めとするドイツ陸軍の主力が集結している。
もちろん、機動戦艦や空母などの海軍も派遣されている。
バルキュリア作戦の大元は政府の主要機関をヒトラー暗殺と同時に一気に掌握する作戦である。
そのために、名目上反乱防止のために設立された機関をクーデターに利用し、武装親衛隊を始めとする指揮権を一気に手中に納めるものである。
ヒトラーが死ねば自動的にフレドリクに指揮権が移るのである。
しかし、フレドリクは新参者といっていい人間である。
素直にフレドリクが指導者と認めないものもいるだろう。
そこで、フレドリクは空軍元帥ゲーリングを利用することにした。
ゲーリングはヒトラー派であるが所詮は人間である。
統一国家のトップという椅子をちらつかせればヒトラーを裏切る。
ゲーリングは第一次世界大戦でそれなりの名声を得た男だ。暫定的にトップになるなら問題はない。
だが、クーデターに対する親衛隊の反乱は確実である。
インド方面に派遣されている親衛隊は一気にとって返してくるだろう。
そして、それを殲滅するのは……
「残念、本当に残念ね。たくさん殺せるのにその場に私がいないなんてね」
フィリアはバルムンクやミサイルにより粉々に消し飛ぶナチス親衛隊の絶望に満ちた顔を思い浮かべて綺麗な顔を狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「フフ、ほらチャンスよグレートブリテン島のみなさん。反乱しなさい。殺してあげるから」
フィリアは反対方向のイギリスを見て微笑んだ。
機動戦艦ラグナロクを始めとする艦隊はイギリス市民やレジスタンスの反乱を抑えるためにここにいる。
しかし、フィリアにとって殺し尽くすことは喜びである。
しかし、可能性は高くない。
この日のためにフレドリク達は念入りに準備してきたのである。
反乱の火種になるレジスタンスの大半は殲滅したし、ゲリラ戦を行っていたアフリカのアメリカ兵やイギリス兵も降伏しないものは殺戮した。
結局、今回のバルキュリア作戦の成功において、機動戦艦は抑止力に過ぎないのである。
カイザー艦隊で活躍があるのはインド方面に派遣された艦隊と空母艦載機のみである。
「ああ、つまらない」
フィリアはもう一度呟くとレーダーや通信から入る情報をまとめるために目を閉じた。
「ヒトラーが生きてたら……フフフ」
フィリアは今度はヒトラーが生きていてナチス親衛隊を率いて機動艦隊と激突する様子を思い浮かべた。
悲鳴 叫び 恐怖 涙 命ごい 蹂躙 殲滅 抹殺 破壊 破滅 撃破 歎き 憎しみ 憎悪
ありとあらゆる絶望にうちひしがれフィリアに殺され、死んでいく哀れなヒトラー軍をフィリアは頭に思う。
口元が自然に緩んでいく。
そして……
「き、キャハハハハ! いいわ! 最高よ! ぜひ、生きていなさいヒトラー、私が……」
狂気に満ちた彼女は笑う。
誰が見てもぞっとするような美しい笑み
「殺してあげるから」
バルキュリア作戦は始まったばかりである。
作者「こわ!」
エリーゼ「磨きがかかってますね」
作者「あの人殺せるならなんでもいいのか……」
エリーゼ「フィリアは海の男ワグネルが指揮官ですから不満も多いみたいです」
作者「ああ、無用な殺戮はしない人ね」
エリーゼ「はい」
作者「あれ?でもアフリカではアメリカ艦隊を壊滅させたよね?」
エリーゼ「あれはワグネルは知りませんでした。むしろ、艦長に問題があるのはヘイルダムの艦長ですね」
作者「ああ、あの女艦長……」
エリーゼ「フィリアと組んでいたらフィリアは満足だったでしょうね」
作者「ヘイルダムは優しい艦魂だからね」
エリーゼ「そんな優しい艦魂に殺戮させるなんて草薙、あなたはドSですね?」
作者「ふ、ばれたか。現実でも人の不幸を笑うドSだぜ」
エリーゼ「最低です」
作者「なんてね。小説では結構ドSな内容書いてますが現実の私は……」
エリーゼ「罰です」
作者「ひぃぃぃえ!」
キュイイイイイイン