第205話 幽霊戦艦絶望の会話
星というものは昔から船乗り達に方角を示し、人々の生活にも多大な影響を与えてきた存在である。
その星空の海に一隻の潜水艦が浮上していた。
日本海軍の潜水艦、伊号一七八潜水艦である。
丁度、紀伊がタイムスリップした頃に建造されていた彼女はそのまま大幅な改装が行われた。
レーダーをつけ、機関もガスタービンへと変更したのである。
そのため、伊号178潜水艦は史実とはまったく、別の船と言っていい存在に代わっていた。
通常、潜水艦の任務は偵察、雷撃、通商破壊などだが、現在伊号178潜水艦が受け持つ任務は偵察である。
改装により長大化した航続距離により、ハワイを母港として同じように改装された他の伊号潜水艦とともに偵察任務についている。
その範囲はホーン岬に近い海域にまで延びている。
むろん、ホーン岬を回り太平洋に行くアメリカ海軍の戦艦や空母、そして、潜水艦の天敵である駆逐艦もあるが今のところ伊号の撃沈は皆無であった。
理由は偵察中はよほどのことがない限り攻撃が禁止されているためである。
そのため、伊号の艦長や兵達は悔しい思いをしていた。
彼等からしてみれば魚雷を放ち、海の王者である戦艦や空母を沈めたいのだ。
そして、その機会は皆無だった訳ではないが、各艦長達は命令を守り攻撃しなかった。
もっとも、攻を焦り、雷撃した潜水艦もいたがその潜水艦はアメリカ海軍の駆逐艦の猛烈な爆雷攻撃を受けて撃沈されているのである。
その日、伊号一七八潜水艦はホーン岬より西に300キロの海域にいた。
完全に敵の勢力圏だがレーダにより危険だと判断したら潜水するといった形式をとっていた。
未来からの技術があるだけに、アメリカのレーダを日本軍のものは上回っておりレーダをつけた潜水艦は隠密性は非常に高いものとなり、ホーン岬の近くまで接近することができた。
もっとも、これ以上接近するのは危険すぎるが……
「……」
伊号一七八の艦魂は無言である。
基本的に潜水艦の艦魂は無口なものが多く、伊号一七八の艦魂、纏も例外ではない。
紙は短めのポニーテール、腕を組んでじっと艦長の働きぶりを見ている。
表情は無表情。
彼女が見える乗組員がいないのでその無口には拍手がかかっているのである。
「艦長、そろそろ例の海域です」
「うむ」
副長の言葉に伊号一七八の艦長は頷いた。
実は、この伊号一七八はこの海域で聞き慣れない推進音を聞いたのだ。
後に、紀伊の推進音と比較すると非常に似ていたという。
「いると思うか?」
「どうでしょう……正直出会いたくはありません」
副長が言った。
それは、纏も同意できた。
情報を総合すれば相手は機動戦艦に間違いない。
自分が聞いた音は核融合炉搭載の独特の音なのだろう。
しかし、理解できない。
ドイツの機動戦艦なら推進音を聞けるほど接近していた自分を見逃すはずがないからだ。
まるで、自分はここにいると知らせているような行為である。
実は、纏が見つけた機動戦艦発見の報告は始まりに過ぎず、友軍の潜水艦が幾度か巨大な艦影を一瞬、レーダに捉えたり巨大な艦影を肉眼で確認したという方向が司令部には飛んでいた。
それはアメリカも同様なようで、モンスター戦艦がホーン岬周囲に潜んでいると幾度となく連絡が飛んでいた。
しかし、奇妙なことに機動戦艦は攻撃するものには容赦ない破壊繰り広げたが攻撃してこない軍艦は無視する。
現れては消え、現れては消えの繰り返しでまるで幽霊船のような機動戦艦であった。
「一体、何が目的なんだ?」
「分かりません。ナチの考えることですから……」
「艦長」
その時、レーダを見ていた兵士が艦長に声をかけた。
「どうかしたのか?機動戦艦か?」
見つけた所で、伊号では手も足も出ない。
悔しくもあるが潜水艦では機動戦艦に正面から戦いを挑んでも100%犬死にである。
「分かりません。しかし、東100キロに一瞬、巨大な艦影が移りました」
「近いな……」
「行きますか?」
「そうだな……」
元々、偵察が任務の伊号である。
それに、噂が本当なら向こうは攻撃してこないはずだった。
「その、機動戦艦の反応があった周辺に敵艦はいるか?」
「いません」
「決まりだな」
「ですね」
「取ーり舵!」
「取り舵!」
伊号潜水艦は潜航しないまま、進路を東に向けた。
「いつでも潜航できるようにしておけよ」
「はっ!」
「……」
纏はその、艦長何も言わずにただ見つめていた。
「どうやら接近してくるみたいですね艦長」
「ふ、フフフ……馬鹿な奴らだ」
その艦長はにやりと笑い中指で眼鏡をかちゃりとかけ直した。
伊号一七八潜水艦が捉えた機動戦艦の名は『グングニル』。形状はラグナロクに似ており、バルムンクも見受けられた。
「エトガー艦長、どうしますか? そろそろ一発かましますか?」
「フフフ、確かにもう十分、日本海軍にここに我らの存在があることを知らしめただろう。よろしい、バルムンクで消し炭にしろ」
「バルムンクを使うんですか? 雑魚などミサイルの一発で十分では?」
「ククク、分かってないな君は」
「というと?」
グングニルの副長が首を傾げた。
「今までがまんしたんだ。劣等民族の潜水艦には巨大な絶望をプレゼントするんだよ。いや、絶望を感じる暇もないかな?ククク……」
「……」
グングニルの副長フェリックスはため息をこっそりとついた。
この艦長に何を言っても無駄だ。
「了解しました」
グングニルの艦首には一人の艦魂が立っている。
長い金髪を揺らしながら遥か先にいるはずの哀れな生贄を思いながら静かに、静かにに微笑んだ。
「劣等民族が……小賢しい真似を」
フェリックスはため息をこっそりとついた。
この艦長に何を言っても無駄だ。
「了解しました」
グングニルの艦首には一人の艦魂が立っている。
長い金髪を揺らしながら遥か先にいるはずの哀れな生贄を思いながら静かに、静かにに微笑んだ。
「劣等民族が……小賢しい真似を」
それはぞっとするような冷たい響きであった。
作者「やれやれ、忙しいね」
??「劣等民族は奴隷のように働くのです」
作者「い、嫌ドイツ人って見下すの好きだね」
??「劣等民族に劣等民族と言って何か問題が?」
作者「う……少なくても私は劣等民族というか劣等人間ですが……」
??「それは違います」
作者「なっ! 初めて私を褒めてくれる艦魂がい……」
??「ゲルマン民族を除く全ての民族、そして、大和民族は劣等民族です。貴方だけが劣等民族ではありません」
作者「驚いて損した!」
??「フフフ……」
作者「いや、しかし、最近は本当に忙しいっす!インフルエンザが猛威を奮ってるし……なんか喉が痛い」
??「貴方もインフルエンザですか?」
作者「み、認めたくない。いや!違うぞ!インフルエンザになれば休める!おお!夢の休みが!」
??「考えることがやはり劣等民族の考えですね」
作者「いやっほー!休みだ休みだぜ!」
??「フフフ……」
キュイイイイイイン
作者「ぎゃああああああ!」
??「劣等…民族が」




