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第204話 真名の形

機動戦艦との戦いは演習であった。

その事実を知った兵達はあるものは山本を讃え、あるものはほっとした。


誰も口にはださなかったが機動戦艦と戦うと聞いた時、連合艦隊のほとんどの艦の艦長は死を覚悟した。

最悪、相内にもちこんでやるとさえ、思ったぐらいである。


演習が終わると連合艦隊は小沢の機動部隊に連絡をとり、一応の無事を確かめたが当然、機動部隊は無傷である。

武蔵の幾人かの兵にも山本の演習に対する協力者がいたのである。


当然、機動部隊の艦載機も無事である。

大空のサムライ、坂井は真っ赤な塗料がついた竜神で『翔鶴』に降り立った。


「やられたぜ」


そう、他のパイロットに坂井は笑みを浮かべながら言ったものだ。


戦闘機同士の戦いもミサイルは使用不可、ペイント弾のみでのドッグファイトが確約されていた。

坂井を撃墜したのは震電である。

だからと言って、坂井の腕が悪いわけではない。

震電と竜神ではF35とセイバー以上に性能差がある。

坂井がレシプロ機からジェット戦闘機に乗り換えてさほど時間がないことも影響がある。

実際、坂井はハワイ攻防戦では零戦に乗っていたのである。

相手が零戦であれば坂井は勝ったかもしれないがいずれにせよ負けは負けである。










連合艦隊は長門の損傷がさほどないことに安堵しつつ西に進路を取った。


なぜか?


「長官、大和です。大和が見えます」


「うむ」


武蔵の艦僑で山本は頷いた。

連合艦隊総出の出迎えを受けた戦艦大和は単艦ではない。

多数の輸送船団に大和と共に『大鳳』『蒼龍』『飛龍』『赤城』『加賀』の航空艦隊が護衛についている。

『大和機動部隊』とでも言える陣容である。

空母からはシーホークが対潜警戒を行っており防御は完璧に見えた。


「せっかくだ。世界一の戦艦を並べようじゃないか」


山本の言葉に武蔵の艦長、有馬が頷く。


「了解いたしました。大和に接近します」


「長官」


黒島が山本を見た。

「ん?どうした?」

山本が黒島を見ると黒島は顔を山本に近づけると小声で話した。


「……の…すか?……か……を……にし…て」


山本は頷いた。


「うん……まだ、……い…ろ」


有馬は耳を立てていたが山本と黒島の会話を知ることはできなかった。


だが、一言だけ聞き間違いだろうが聞こえた。

ありえる訳がない。こんな最前線に来るはずがない名前である。


その名前とは










『陛下』










「お久しぶりです。皆さん」


戦艦大和の甲板、

「長官!」

「姉さん!」

「撫子」

「撫子お姉様」


と、数々の艦魂達が大和の甲板に現れ、大和の艦魂撫子に声をかける。

撫子は南国のためか第2種軍装で手を前に揃えて待っていた。

この軍服は、男の軍服と同じ白が基調であるが下はズボンではなくスカートになっている。

連合艦隊の艦魂達は暑い場所ではこの服を着ているのである。


「久しぶりやな姉さん」


「そうね」


撫子は薄く笑みを作って妹の桔梗を見て言った。


「ほんま、びっくりしたで、いきなり機動戦艦が来たなんていうから寿命が縮まったわ」


「その機動戦艦なんだが……」


長門の艦魂鈴はちらりと大和の前方から武蔵と並んでこちらに近づいてくる紀伊を見ながら


「凛はそんなに落ち込んでいるのか? 向こうに行こうとしたら拒否されてしまった」


「そうじゃな…… 久しぶりに顔を見たいと思ったんじゃが我も断られた」


日向の艦魂、京子も紀伊を見ながら言う。

艦魂の能力の一つである転移は相手艦魂が拒否した場合、その艦には転移できないという制約があった。

明を失った凛のことを連合艦隊の艦魂達は気にしており、撫子にその疑問をぶつけたのである。


「……」


撫子は視線を紀伊に向けてから


「凛様は悲しみに負けてしまいました」


「どういうことじゃ?」


「泣いてるの?」


京子と刹那が言った。


刹那は霧島の艦魂で京子と共に凛と仲がよかった。


「それは……」


口を開きかけて撫子ははっとなる。


「単純な話しよ」


「何?」


鈴を始めとする艦魂達が振り返った。

そこには、紀伊の艦魂、凛が立っていた。

艦魂達の目が見開かれる。


「り、凛、髪どうしたの?」


「そ、それに少し成長しとらんか?」


刹那と京子が言うのも無理はなかった。

最後に京子と刹那が凛と会った時と感じが違ったからだ。

長かった髪はかつての明を思わせるショートカット。

これだけなら、髪を切ったですむが凛の身長や顔立ちが僅かに代わっていた。

簡潔に述べるなら13歳くらいだった容姿は16歳くらいの容姿に代わっており身長もだいぶ延びていた。


「ああ、これ? 気がついたら成長してたのよ」


そういいながら凛は髪を左手で撫でた。

かつての彼女と違い少し大人じみて見える。


「凛、明のことだが……あまり……」


落ち込むなと鈴は続けようとした。

しかし、凛はふっと笑った。


「明? もう気にしてないわよ」


「ほんまか?辛いんちゃうんか?」


桔梗が心配そうに言った。


「そうじゃ、我にできることがあるなら力になるぞ」


「うん」


次々と艦魂達から凛を気遣う声が上がる。


「……」


撫子はただ、黙ってその様子を見ていた。

その顔には悲しみともとれない表情を浮かべている。


「ありがとう。大丈夫よ。敵は討つから」


ぞっとした。

『敵を討つから』


その言葉が凛から発っせられた時、殺気に慣れている艦魂達でさえぞっとする殺気が感じられたのだ。


気にしてないなんて大嘘だ。


「やっぱり凛……」


刹那が声をあげるが凛は刹那を見た。


「刹那、復讐なんて無駄だとか言う気なら聞かないわよ。そんな下らないことを言う甘ちゃんなんか友達でもなんでもないから」


「そんな……私そんなこと……」


しゅんとなる刹那。姉の柚子が凛を見て何か言い足そうにしていたが結局何も言わなかった。

しかし


「無駄とは言わん。少なくても復讐は無駄ではない」


「閣下!」


「元帥!」


艦魂達の前に現れたのは栄光の戦艦、三笠の艦魂、炎樹であった。

昭和の炎樹である。凛は炎樹を微笑しながら見た。


「ふーん、日本海海戦の英雄が言うじゃない。あんたも復讐した訳?」


「貴様! 閣下に何と言う口の聞き方を……」


炎樹に付き従っていた長い髪の駆逐艦の艦魂が凛を睨み付けるが炎樹は手で製した。


「口の聞き方がなっていないな。前はそうではなかったがまあ、いい。貴様は元々連合艦隊所属ではないからな」


「ふん」


凛は馬鹿にしたような目で炎樹を見る。凛にとって、炎樹は義理の姉であるが昭和の時代の炎樹は凛から見たら別人と代わらない。

日本に残した機動戦艦三笠に実の炎樹がいる以上、その考えは代わらない。



「貴様らも覚えておけ。復讐はな成し遂げても心は満たされない。何故か分かるか撫子?」


「死んだ人が帰ってこないからです」


炎樹は頷いた。


「ああ、だが逆に復讐をしなくても心は満たされない。何故か分かるか桔梗?」


「え?」


桔梗は少し腕を組んで考えて


「例えば撫子姉さんが殺されたとしてのうのうと殺した奴が生きてたら腹が立つわ……ます」


炎樹は頷いた。



「結局、心は満たされないのだ。選ぶ選択肢は自分にある。復讐するか、諦めるか。あるいは許すか」


「許す?」


凛が睨み付けるように炎樹を見るが彼女は同じない。

むしろ確たる意志を持ち凛と目を合わせる。


「許すなんて私の選択肢にはない。私はトロンべを……ドイツを倒すまで戦うだけ」


「なるほどドイツ軍を皆殺しにするまで戦うか?」


「ええ、そうよ」


凛は目を閉じて言う。


「殺す。特にトロンベは只では殺さない。痛ぶって泣き叫ばせて悲鳴をあげて殺してあげるの。ふ、フフフ……」


凛はその光景を思い浮かべたのか面白そうに笑った。


「り、凛……」


「汝……」


豹変した凛を京子と刹那が信じられないものを見るように見た。

他の艦魂も同様である。

ただ、撫子と炎樹だけは違う。

凛を見ているだけだ。


「ドイツ軍を皆殺しか。私は止めんよ凛。だが、覚えておけ。復讐は身を滅ぼすという理由の一つはな、復讐するものは復讐するものしか見えないために判断能力やその周りを見ないことで友を失うからだ。それだけは覚えておけ。復讐するなら覚悟がいることをな」


それきり、炎樹は何も言わずにその場を去った。


「……」


凛は黙って炎樹が消えた空間を見つめている。


「凛……」



刹那が心配そうに声をかける。


「復讐なんてやめるんじゃ、凛」


「ふ、フフフ……」


凛は冷たい目で刹那と京子を見た。


「復讐をするなら友達を失う? なら、友達のために復讐できないなら友達なんていらない」


「!?」


「!?」


京子と刹那の目が見開かれた。


「じゃあね、『日向』『霧島』」


凛は転移で消えた。思わず刹那は追跡しようとしたが拒否されてしまう。

後に残された艦魂達はなんとも言えない表情で互いに顔を合わせた。


「あいつ……真名を言わなかったな」


鈴が呟いた。

真名とは艦魂にとって親愛の証でもある。

艦魂同士においてはそこまで制約はないが人間に真名を呼ばせることは大切な友であることの証明である。

しかし、逆に艦魂が艦名で相手の名前を呼ぶことは拒絶を意味し、関わりを持ちたくないということになる。

つまり、凛は京子や刹那との関係はもういらないと言い放ったことになるのだ。


「凛……」


刹那は悲しげに彼女が消えた空間を見つめていた。


作者「ゴホゴホ……豚インフルエンザだ……」


京子「ち、近寄るでない!」


星奈「しっし!」


作者「ひでえ……まあ、嘘だけど」


京子「なんじゃと?」


星奈「迷惑」


作者「ハハハ、しかし地元で豚インフルエンザ発生はびっくりしたよ」


京子「汝など死ねばよいのじゃ」


星奈「同意」


作者「ひ、ひどい。私が死んだり隔離されたら続きが書けないぞ!」


星奈「困る」


京子「確かにのう」


作者「フハハハ! 参ったか! 作者は神だ! キャラは大人しく我を認めよ!」


京子「調子にのるでないうつけ」


星奈「ダニ」


作者「うわあああああ!」


ズドオオオオオオン


京子「まったく……ん?これはなんじゃ?」


星奈「『続 独立機動艦隊『紀伊』帝国を撃滅せよ(仮)』?」


京子「ま、まさかこれは奴が考えておるという続編のシナリオ」


星奈「見せて」


京子「うむ、これを見れば誰が生き残るか……」


星奈「これは?」


京子「ん? もう一枚? 『続独立機動艦隊『フリードリッヒ・デア・グロッセ』帝国を撃滅せよ』じゃと?」


作者「ああ!見るな!ドイツが勝利した場合の続編と日本が勝利した場合の続編のシナリオ!」


京子「ええい!みせい」


星奈「どけ作者」


作者「嫌だ!自爆スイッチおん!」


京子「ぬお!」


星奈「……」


ズドオオオオオオン


続編のシナリオは灰となった。

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