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第196話 ドミニクの未来−核なき未来

「さて、どこまで話したっけ?」


トイレまで小川と兵士に付き添われ戻ってくるなりドミニクは言った。


「日本がアメリカに勝利した後よ」


彼方が言う


「おお、そうだったな」


ドミニクが話す前に記録係の兵士がパソコン画面の録音開始のボタンをクリックした。


「日米の決戦が終わったとはいえ独立機動艦隊は解散しなかった。まあ、もう趨勢は決まっていたが太平洋に戦力を回しすぎた欧州はわずかだがナチスが盛り返していたんだよ。まあ、ソ連での大敗北があったからびびたるもんだけどな」


ドミニクは目の前に置かれていたお茶を喉に流し込み空にするとコップを掲げ


「ねえ、凪ちゃんコーラない?」


「欧州の戦いに対して日本は何かしたの?」


凪が答えるより早く彼方が言った。

ドミニクの言葉を無視する気らしい。


「まあ……いいけどな……欧州の戦いに対して日本は連合軍に加わって参戦した。日米決戦で比較的損傷の少なかった空母『大鳳』『信濃』『翔鶴』『雲龍』『赤城』『加賀』、戦艦『大和』『紀伊』『尾張』を中核とする高速機動部隊はヨーロッパに行きオーバーロード作戦。つまりノルマンディー上陸作戦を支援したんだよ。結果はまあ、俺達が支援してないドイツだからな。結局は敗れてヒトラーは自殺。死体は見つからなかった」


「それは私達の歴史でも同じです。ヒトラーの死体は見つからなかった」


凪の言葉にドミニクは頷き


「ああ、まあヒトラーが生きててもあの後何が出来たかは分からねえけどな」


「それで第2次世界大戦は終結したわけね」


ドミニクは頷いた。

「ああ、その後の歴史なんだが日本は大東亜共栄圏の構築を進めていき結構うまくいったみたいだな。首相には山本がなった時期もあったな」


「予想できますねそれは」


凪が言った。

山本長官がもし生きて勝利した日本にいれば首相になる可能性は低くないだろう。


「えっと……確か天皇が人間宣言とかいうのをやって、何年か分からねえけど日本は大日本帝国の名前をやめて民主化を推進して州性を取り入れて合衆国日本と国名を変えたんだよ」


「合衆国日本?日本合衆国じゃなくて?」


彼方が聞くとドミニクは


「ああ、よくしらんが日本合衆国より合衆国日本の方が語呂がいいとかいうのが理由らしいぜ?」


「まあ、日本合衆国は何か合わないわね……」


彼方が言うと凪も頷いた。


「うん、日本合衆国より合衆国日本の方がなんか合う。私達の未来では道州性の話しはあったけど」


「道州国日本や日本道州国よりは語呂は合衆国のほうがいいわね確かに……」


彼方が再び考えて言った。


「戦後の私達はどうしたんですか? 未来に帰ったんですか?」


「公式の記録では独立機動艦隊の艦は沈んだことになってるがまあ、嘘だな。はっきりしたことはわからんが昭和には留まらないで未来に帰ったみたいだ。まあ、俺の未来ではまだ、帰ってなかったみたいだがな」


「そうですか……」


「アジアの情勢は?朝鮮や満州やソ連は?」


「朝鮮半島は大韓民国として独立、満州は皇帝が亡くなると満州共和国となって日本との同盟国になった。フィリピンやビルマも独立したしインドもイギリスの手を離れて独立。独立のオンパレードだな。アジアのほとんどは経済協力機構の大東亜共栄圏に参加したし豊かになったって聞いてる。ソ連がいなかったら日本の理想は叶っていたかもな」


「どういうこと?」


彼方が聞いた。


「ソ連日ソ不可侵条約を5年ごとに延長していった。独立機動艦隊がいなくなっても大東亜共栄圏の戦力は巨大なものだったからな。だが、スターリンを倒せなかったのはあきらかにミスだ。あいつを残したせいでソ連は悪の帝国になったからな。戦後、日本の手動で国際連合、通称国連ができた訳だ。常任理事国は日本、アメリカ、ソ連、フランス、イギリス、中国の6国」


彼方が嫌そうな顔をした。

常任理事国の制度は問題が多いからだ。

「拒否権はあったの?」


彼方が聞くとドミニクは頷いた。


「ああ、常任理事国には拒否権ってのがあったけど常任理事国内で3国の同意が得られない限り拒否権は無効になるって話しがあったな」


「改善したのね」


それは恐らく日本が主導したのだろう。国連を作った当初なら最大の戦勝国である日本の意見はかなり通る。


「そこで日本は核廃絶を謡った。その頃はアメリカはまだ、核を開発してなかった。ロスアラモスが原子爆弾で破壊されたからな。んでもちろんアメリカやソ連は猛反発したな。それで、そんなことを言うなら日本が核を捨ててみせろと言ったんだ」


「それは当たり前ですね……」


凪が呟いた。


「それを日本が狙ってたのかもな。ソ連とアメリカは捨てるはすがないと鷹をくくって捨てるなら開発はやめてやると公の場で言ったんだからな。それを聞いた日本はあっさり核兵器を捨てた」


「アメリカとソ連は驚いたんじゃないの?」


彼方はその時、スターリンやトルーマンを始めとする国の指導者達が仰天する顔を頭に浮かべて口元を緩めた。


「かなり仰天したみたいだぜ? 原子力のエネルギーは平和利用やエンジンと言った動力のみに使う条約を国連参加国に結ばせたんだよ。ソ連は中々信じず日本国内に査察を申し渡すまで信じなかった。まあ、核ミサイルを積んだ独立機動艦隊は未来に帰ったし何も出てこなかったけどな。それで、条約は結ばれた。ソ連も嫌々ながらに調印したんだ。スターリンはじたんだ踏んで悔しがっただろうな。核兵器を開発しようとしたら無条件で国連軍の派遣が可能という国連憲章までできてたしな」


「その効果は?」


彼方が興味深そうに聞いた。


「2000何年かは忘れたがイランが核開発を行おうとした時、憲章は発動しイランの核施設は国連軍に破壊されたよ」


つまり動力を除く核兵器が世界から無くなったのである。


「でもまあ、核による戦争の抑止ってのもあったんだろうな……」

「私達の未来は互いが核を持ち核が戦争の抑止力として働いていた時期もあったけど最後は使用されたわね」


彼方は未来の日本の最後を思い出しながら言った。

彼女が乗る艦が転位する頃、日本各地は少なからず被害を受けていたのである。

「まあ、互いを脅しし合って戦争を抑止してもろくなことにならないんだよ。むしろ憎しみが増していくだけだな。俺の未来でも戦争はあったが……」


「ソ連が原因?」


ドミニクは頷いた。


「ああ、ソ連は2042の頃には悪の帝国とまで言われるぐらいアメリカ、日本、欧州と対立してたな。日本に対しは同盟国の満州共和国の国境をたびたび脅かしてついには死人まで出たんだよ」


「小競り合いですか?」


「ああ、まあな。民間人にも死者が出る騒ぎもあったな。グルジアに対して侵略して併合したりしたし」


「国連は何をしてたのよ?」


「再三避難決議や経済制裁を加えていたが戦争には発展しなかったんだ。理由は簡単。ソ連と戦えば第3次世界大戦規模の戦いが起こる。当時ソ連の軍隊の総数は世界一だった。練度も質も悪くなかった」


「北朝鮮みたいね……」


彼方が吐き捨てるようにいった。


「北朝鮮?」


ドミニクは首を傾げる。


「ああ、あんたの未来には存在しないのよね? 私達の未来では朝鮮戦争が……」


彼方は朝鮮戦争の話しをし北朝鮮の歴史を話した。


「で?どうなったんだ北朝鮮は?」


「滅びたわよ?」


あっさりと彼方がいう。


「あれだけ世界を恫喝してただで住む訳無いでしょ? テポドン2が完成して核ミサイル搭載可能直前にアメリカ、中国、ロシア、韓国、日本の連合軍に滅ぼされたわ。中国も庇いキレなくなったのね」


「馬鹿な国だな。でも俺達の未来のソ連は規模が違う。核は持たないでも戦力は強大だ」



「それでドイツはどうしたの?」


「緊張が高まる世界になのに弱腰の政府にクーデターを起こした指導者がいたんだ。名前はレイ、天才的な手腕で奴はドイツの実権を握ったんだ。それでかねてより考えていた戦力増強計画通称『Z計画』を立ち上げて海軍と空軍の増強に乗り出したんだ。アメリカや日本はこれにいい顔をしなかったがレイは戦力増強は侵略ではなく平和のためであると言いった。実際ドイツは独裁政権になっても国民には寛大だったし世界で起こる紛争に対して積極的にアメリカや日本に協力したから激しくは叩かれなかったんだよ」


「でもそれは……」


「気づいたか凪ちゃん。時空転位の計画の隠れみのだよ。機動戦艦はあの時代ではもはや珍しい艦じゃなかったがこの時代では脅威だ。レイは機動戦艦や空母を作り日本やアメリカ、ソ連に並ぶ海軍力を身につけた」


「ちょっと待ってドミニク。そのレイって人どうやってクロノ、つまりタイムマシーンを手に入れたの? あれは特殊な条件が揃わないと使えないのよ?」


「知らねえよ。俺は一応末端の兵だからな。んな機密までは知らないって。大方レイは変えたかったんじゃないか? 第3次世界大戦が起こりそうでびくびくして生きている人々のことを考えてさ」


「……」


凪はそんな世界を考えてみた。

核による滅びこそなかれ、緊張が高まり戦争が起こるのではないかとびくびくする毎日。

同じ明日が来るという幸せを信じられない日々。

それは地獄だろう。眠る時、起きたら戦争が始まっているかもしれない。

安らかには眠れない。

そんな世界は悪夢でしかない。

そんな世界を作ったのは自分達だ。


「私達は……間違ってたんでしょうか……」


凪が沈んだ声で言った。


「……」


「……」


だれもが無言だった。

これまでの話しをまとめるとドイツがやろうとしていることは決して間違っているとは言い切れない。

彼らも未来を憂いて立ち上がった兵士達なのだ。



「まあ、凪ちゃん達が正しいか間違ってるかは分からねえが……」


ドミニクは凪を見ながら


「国を守るのに理由なんていらねえんじゃねえか? 祖国を守るために戦うということでな」


何が正しくて何が間違っているか……

それは結果を見なければわからない。

そして、結果を見るためには『行動』が必要なのである。

行動の果てにこそ結果はある。



「まあ、分かりやすいわね」


彼方はドミニクに賛同しながら凪を見た。


「凪、ドミニクに何を聞こうと私達がやることは変わらないわよ? 日本を滅びから救うためにあなたは空を飛ぶ。 私は新たな兵器を開発する。それだけよ」


「うん……そうだね」


凪は納得出来ていないのか俯いて言った。


「さて、ドミニク次はドイツの戦力について答えてもらおうかしら?」


「ああ、いいぜ。だが、その前に……」

ドミニクは再び真剣な顔で彼方を見る。

「ま、またトイレなの?」


彼方が呆れていうがドミニクは彼方を見たままにっと微笑んだ。


「腹減った。もう、12時なんだから飯食おうぜ」


「……」


彼方はぶるぶる肩を震わせて怒りの形相でドミニクを睨み付けた。


「いちいち真面目な顔でまぎらわしいのよ!」


「ぎゃあああああ!」


こうしてドミニクは彼方に叩かれながら午前の取り調べは終わるのだった。



京子「核なき世界のぅ……」


作者「兵器としての核がない世界。そんな世界も平行世界のどこかにあるかもしれませんね」


京子「多次元宇宙論のことをいうておるのか?」


作者「そう考えるなら他の艦魂作品も多次元宇宙論の一つの世界として見れるかも」


京子「ふむ……戦艦越後が太平洋戦争の前に現れたり」


作者「あるいは未来でてんりゅうやすずらんと言うヘリ空母や護衛艦ができる未来」


京子「要塞好きという男が……」


作者「いや、違う違う」


京子「ではズッキーニという男が……」


作者「それも違う!」


京子「執行とか……」


作者「誰だよそれ!平行世界と関係ないだろが!おら!」


京子「やかましいわ!黙っておれ!」


作者「ぎゃああああああああ!」


ズドオオオオオオン


京子「邪魔な奴じゃ」

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