第188話 100万の援軍
蒼龍所属の吉原 麻紀曹長は2度目となる神雷での出撃で大慶より北20キロの空を飛んでいた。
下は蟻が動めくような数のロシア連合軍がいる。
彼等は高射砲で吉原達の日本軍の戦闘機を狙うが近接信管すらついていないような兵器では運がよければレシプロ機に当たる程度であった。独立機動艦隊の神雷や雷神は隙あらば敵地上兵器を攻撃しようと試みるが空にも性能は遥かに劣るとは言えフォッケウルフがいるため思うように攻撃ができないでいた。
三笠からの援護はトマホークの射程外のため望めない。
満州の空はミサイルによる白煙や燃えて落ちていく黒煙がよく見えた。
ピーという音を立ててロックオンの音と共に吉原の神雷はフォッケウルフを捉えた。
ミサイルの発射スイッチを押し込むと対空ミサイルが白煙をあげて神雷から飛び出した。
直後、吉原の機体にロックオンされたアラートが鳴り響いた。
確認すると後ろからフォッケウルフが迫りミサイルを発射した。
「くっ!」
吉原はチャフを撒いてミサイルを交わす。交わしたのと同時に吉原が狙ったフォッケウルフにミサイルが直撃し落ちていくのが見えた。
一瞬、脱出した敵のパラシュートが見えたが吉原は新たな敵を求めようとしてミサイルの残弾が0になっているのに気がついた。
「ここまでね…」
機関砲も残り少ない20ミリ機関砲が100発のみである。
数秒で撃ち尽くしてしまう数だ。
吉原は蒼龍に戻ろうとしたが通信に悲鳴のような声が轟いた。
「だ、誰かあいつを止めろ!」
大慶油田にまっすぐ向かうジェット戦闘機ハインケルだ。
ハインケルは無骨な機体のため多少の被弾ではびくともしない。
もちろんミサイルの直撃を受ければ落ちるだろうが零戦の装備、20ミリ機関銃では落とせない。
あの耐久性は片方の翼を失っても帰還したF15戦闘機を彷彿させる機体である。
機動性や速度はF15を上回るハインケルであるが乗っている人物も並外れた男だ。
ルーデルである。
対戦車破壊の悪魔。対池戦闘に至ってはハルトマンを遥かに凌ぐ撃墜王ならぬ撃破王であった。
「ハッハハァ!いただきだぜ!」
ルーデルのハインケルはロシア連合と日本軍が入り乱れる僅かな隙をついて油田に向かう。
ルーデルは対地ミサイルの残弾が十分だということを確認した。
「派手にいくぜ!」
ぐんぐんと迫ってくる大慶油田。
ここを破壊されれば日本軍の補給に確実に影響が出る。
大慶油田の周囲からは高射砲が嵐のように撃ち上げられるがハインケルには当たらない。
制空の隼がブロックしようとしたが40ミリ機関砲に砕かれてしまう。
竜神や神雷はハインケルを追うがとても間に合わなかった。
ルーデルは油田にミサイルを照準を合わせた。
ミサイルが飛び込めば油田は天空を焼くような炎に包まれるだろう。
ルーデルはその様子を思い浮かべて
「ぞくぞくするぜ!終わりだジャップ共」
ピー
「!?」
ハインケルに警報が鳴り響いた。
ミサイルにロックオンされた音だ。
「ちっ!」
ハインケルはチャフをばらまいて態勢を崩した。
そこへ、青い戦闘機が現れる。
ピー
再びハインケルにミサイルの警告音が轟いた。
「ちいい!」
再びチャフを撒き散らすがハインケルの警報は鳴り止まない。
ぐんぐんとミサイルがハインケルをおってくる。
「ちくしょう!黄色猿共がぁ!」
ズドオオオオオオン
ハインケルにミサイルが直撃し片方の翼をもぎ取った。
「やった?」
震電の飛魂、ソラが言ったが震電のパイロット、凪は首を横に振った。
「まだ!」
驚くことに翼を半分失ってもハインケルは北の空へと飛んでいた。
もちろん高度は徐々に下がっているからどこまで持つかは分からないが…
「どうする凪?」
「やるだけはやるよ。新京に残してきた彼方達も心配だし」
凪はどれだけ力になるかは分からないが震電で戻ってきたのである。
「それに一人で来たんじゃないしね」
凪が見た方角には土煙が見えた。
空には黒い点が無数に見える。
「100万の援軍だよ」
凪は言うと震電をロシア連合の戦闘機の方角に向けた。
ロシア連合の指揮を取っていた元帥は仰天した。
「な、何!中国軍だと?」
「はい、奴らは日本軍の兵器を使い100万に迫る大軍で関東軍と共に反撃に出ました。奴らの中には重戦車の姿も多数が見受けられます。空もレシプロ機とはいえ中国軍、日本の連合軍の介入で…」
「なんということだ100万の大軍とは…」
元帥は慌ててドイツの司令部にそのことを伝えて撤退を進言した。
死ぬまで戦えと言われることを覚悟したが以外にも撤退は許可された。
「全軍に撤退命令を出せ!ロシアに逃げ込むぞ! 」
元帥の命令が実行に移されロシア連合軍は撤退を開始した。
「どうやら、なんとかなったようだな」
「そのようだ」
馬に乗り100万の中国軍の後ろでロシア連合軍が引いていくのを見ながら関東軍司令部に中国軍との同盟を伝えた石原莞爾が言った。
横にいる男は奬介石である。
石原は元々国民党の中国軍と同盟を結ぶために中国に行ったのだ。
それに加えて今回のロシア連合の襲撃は日本と中国の同盟を世界にしらしめるいい宣伝になった。
中国としても共産党と戦うには日本軍と手を組むならいいしドイツの目的である世界統一の中には当然中国も含まれるだろう。
中国はドイツ勢力との戦いにおいてのみの同盟を結んだ。
アメリカとの戦いには協力しないというわけだ。
「これからよろしく頼む」
「ああ」
石原と奬介石は笑みを浮かべて言った。
この後、ロシア連合は中国軍と日本軍により満州より追い出されドイツの満州攻略は失敗に終わった。
北海道も紀伊のミサイルで補給路が途絶えたロシア連合軍は多くが降伏し捕虜となった。
とはいえ日本軍の被害はとんでもないものであった。
北海艦隊全滅
近江 大破
尾張 撃沈
航空戦力 1200機以上喪失
戦車 200両以上喪失
戦死 12万
重軽傷 20万
特に尾張の喪失はとんでもない日本軍の痛手であった。
しかも、ドイツの被害は
トロンベ 小破
ローレライ 撃沈
アースガルド 無傷
航空戦力 100機
ハインケル 中破
あきれたことにルーデルは自力でヨルムンガルドまで戻る不死身振りであった。
この結果だけを見れば日本軍は大敗であった。
もし、中国軍との同盟がなければ満州は落ち朝鮮半島も落ちていただろう。
日本の長い2日間は終わった。
日本海、竹島より北西400キロの海域を紀伊を旗艦とする独立機動艦隊の艦が集結していた。
すでにロシア連合軍は撤退に入ったと連絡が来ている。
後は、艦載機を収容するだけだ。
「日向長官。大和からです」
艦長席に座っていた独立機動艦隊司令長官、日向 恭介は兵を見た。
「大和か?いい知らせだぜ多分」
にっと笑い日向は兵から紙を受け取って目を通し目を見開いた。
「長官?」
近くにいた参謀長の古賀が声をかけた。
「古賀…ちょっとこい」
「はっ?はい」
日向はその場を紀伊の副長に任せると外に出た。
古賀も黙ってていていく。
少し歩いてから日向は周りを見渡して
「あいつは…いないな…古賀…」
日向は古賀を悲しげに見て
「まだ、他の兵には言うなよ」
「なんなんですか?一体?」
「尾張が…沈んだ」
「!?」
古賀の目が見開かれた。
「し、椎名艦長は…」
震える声で古賀はいった。
日向は黙って首を横に振った。
「そんな…嘘ですよね…」
「絶対に許可があるまで言うな。いずればれるのは分かってるが…言いたくないが命令だ」
「わかりました…」
古賀は眼鏡をかけ直し日向と共に艦僑に戻った。
「明が…死んだ?」
その話を廊下の角で偶然聞いた凛はつぶやくように言った。
作者「ついに知ってしまったんですね…」
メグ「やっぱり私の情報通り」
作者「君レギュラーになったね…」
メグ「情報を掴んでるといつ後書きやるかわかるの」
作者「なるほど、中国軍が来ることも知ってた訳か」
メグ「まさか!私は神じゃないわよ」
作者「え?」
メグ「後書きでは艦魂には後書きスキルというものがつくのよ」
作者「後書きスキル?」
メグ「私は全てを見通すスキルがあるの」
作者「と、ということは…」
メグ「過去、大和(伊)が現れた情報や加賀などの変態メンバーのリストや出撃パターンとか」
作者「モンスターですか!あの人達は!」
メグ「似たようなものよ」
作者「確かに…」
メグ「あなたが吹き飛ばされるのは…多分200回以上」
作者「ぽへ?」
ズドオオオオオオン
メグ「ね♪」




