第187話 最終防衛ライン大慶油田攻防戦
満州の戦いは続いていた。
数に任せて攻めてくるロシア連合軍に関東軍はなすすべなく蹴散らされていく。
チチハルに本部を置く関東軍第4軍は上からの命令を受けて後退しつつ大慶を目指した。
大半のロシア連合軍は大慶を目指している。
これま間違いなく『大慶油田』の破壊か奪取が目的なのは明らかだった。
すでにチチハルは陥落しロシア連合軍は70万の大軍で大慶にせまっていた。
守備隊に与えられた命令は『死力を持ちて守り抜け』である。
関東軍はここに第4軍を主力とする12万の兵と航空機を集められるだけ集めて決戦の準備を整えていた。
戦法は持久戦が望ましかったが後ろに油田がある状態では持久戦に持ち込むわけにはいかなかった。
「仰角40度!撃てぇ!」
ダダダダダダダダ
指揮官の怒鳴り声と共に五式戦車の対空機銃から銃弾が吐き出される。
狙いは…
「ハッハハハァ!当たらねえんだよ雑魚が!」
ヘォッケウルフやフォッケバインよりも大きめの戦闘機ハインケルは40ミリ機関砲を五式戦車に向けて放つ。
もはや、砲といっても過言ではない銃弾を受けて五式戦車に穴が空き爆発した。戦車の上にいた指揮官は爆風で吹き飛ばされ地面にたたき付けられ動かなくなる。
ハインケルを駆るのは戦車破壊の悪魔ルーデルである。
彼は本来ならハルトマン達と共に原子力空母ヨルムンガルドに戻るはずであったがルーデルは戦場への出撃を選んだ。
ハインケルの動力は核パルスであるので単機でのドイツ帰還も可能である。
いざとなればロシア連合のどこかの国に逃げ込めばいいだけだ。
指揮官は薄れていく意識の中空を見上げた。
空には敵味方の戦闘機が入りみだれて戦っていた。
『フォッケウルフ』『烈風』『神雷』『雷神』『竜神』『隼』など実に多種類の戦闘機がいる。
そう、1000機近くの独立機動艦隊の艦載機の援護があっても侵行を押し止めるのがやっとであった。敵のジェット戦闘機は次々やって来るし烈風や神雷も補給のためにいつまでもいる訳にもいかない。このままでは大慶が陥落するのは誰の目にも明らかだった。大慶を抜かれたら新京まで一直線である。
関東軍は大半の戦力をここに投入しているのだ。破られれば後はない。
「死守しろ!何としとも!大慶を抜かれれば我が軍は完全に崩壊する!」
がなり立てる上官の声を聞きながら五式戦車の指揮官は意識を失った。
新京の関東軍司令部では陸軍の参謀達が地図を広げて怒りあっていた。
「大慶を死守しろとは言ったが敵は100万を越える大軍。いつまでももたんぞ」
参謀の一人が苦虫をかみつぶしたような声で言った。
「油田を捨てれば海軍の援護がもらえるのだが…」
「ふざけるな!今の時点で海軍の空母から艦載機の援護を受けているんだ!これ以上海軍に借りを作るのは断固として反対だ」
「じゃあ、どうする!このままでは守備隊は全滅するぞ」
「ふん、露助やナチの兵など我等の大和魂の前には雑魚同然だ」
「大和魂で敵が倒せるか!」
「何だと!貴様ぁ!」
司令部は大荒れだった。
こうしている間にも若者命は失われていくというのにいつまでたっても考えがまとまらないのだった。
そんな時、司令部に兵士が飛び込んできた。
「何だ貴様!作戦会議中だぞ!」
顔を真っ赤にして参謀の一人が怒り任せに兵士に怒鳴った。
兵士は敬礼し
「申し訳ありません。至急お伝えせよということでしたので」
参謀達が話を返すより早くその兵士の後ろから人影が現れた。
その人物は兵士の肩をぽんと叩く。
「いい、俺が直接言う」
「はっ!」
兵士は下がったが関東軍の参謀達はその人物を見て目を丸くした。
「お、おまえは…い、いやあなたは…」
その人物はカツカツと床を歩き参謀達の前まで来ると口を開いた。
「ロシア連合を破る方法がある」
参謀達は再び目を丸くするのであった。
メグ「ふーん、なるほど」
作者「言わないでね」
メグ「大丈夫大丈夫。あの謎の人物はすでに登場している誰かなんていわない言わない」
作者「いうなって!」