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第186話 機密情報

昭和18年2月22日、元ソ連の海であった北極に近いラプテフ海には3隻の艦がいた。

一隻は空母である。他の二隻は駆逐艦で旗はドイツを示す旗であった。



原子力空母『ヨルムンガルド』に着艦した黒い戦闘機、メッサーシュミットゼロから降りた世界最強の撃墜王、エーリッヒ・ハルトマンはヘルメットを兵士に渡しながらヨルムンガルドの格納庫を歩いていた。

横にはメッサーシュミットゼロの飛魂、ルチアが従っている。


「ねえ、ハルトマン大尉、私達はもう行かないの?」


ちょこちょことついて来るルチアをハルトマンは見ながら


「ルーデルと一緒にするな…役目は果たした」


ちなみに、ルーデルはというと補給が終わったら押し止めようとする兵を振り切って再びハインケルで飛び出していってしまった。

疲れ知らずの化け物である。



このヨルムンガルドにはエースパイロット達が多く乗っている。ハルトマンを始めとしてルーデルやバルクホルンといったエース達だ。


ヨルムンガルドはエース専用空母と言ってもいい空母であった。



「えー、でも青い戦闘機との決着まだついてないよ?決着をつけなくていいの?」


ルチアは不満そうに言うのをハルトマンは見て


「いずれ決着はつける。ゼロは整備中だ。出撃したくてもできないだろ?」


「えー、大丈夫だよ!私元気なんだから機体に異常なんかないよ!」


「整備の兵に言え」


彼女は飛魂、自分の体である機体に異常があればすぐ分かるのである。

その点は艦魂とよく似ている。



「だって!」


なおもルチアが食い下がろうとしたのでハルトマンは無視しながら扉を開けた。そこは…


「資料室?」


ルチアの言葉にハルトマンは頷きながら

「ああ、あの青い戦闘機のデータを見ておきたくてな。艦長の許可はもうもらってある」


「は、早いねハルトマン大尉」


ルチアの声を聞きながらハルトマンはパソコンを操作した。パソコンの操作方法はお手のものであるなにせ、彼の乗るメッサーシュミットゼロは電子機器が多いためドイツで学ばされたのである。


青い戦闘機の話は未来のドイツにも伝わっている。

大戦中、もっとも多くアメリカやドイツの航空機を落とした戦闘機。

『震電』


「あったぞ」


「どれ?」


ルチアがパソコンを覗き込んだ。

画面には少し形が違うがあの青い戦闘機の写真が載せられていた。

とはいえ不鮮明な写真で距離も離れているので戦って見ていなかったらよく分からない写真であったが…


「パイロットは…」


「神崎 凪。公式には1944年死亡って書いてるよ」


「間違いないな」


ハルトマンはいった。

歴史改変の艦隊は公式に記録を残すのはまずい。

とはいえ撃墜王といえる戦果をあげた機体のパイロットを記録に書かないわけにはいかず死亡という形をとったのだろう。

この記録の神崎 凪は紀伊と共に2044年の日本にタイムスリップしたはずだ。

フレドリク達の世界の記録では1944年には第2次世界大戦は終結しているのだ。ちなみに記録によれば1943年に太平洋戦争は決着している。


「顔写真はなしか…」


ハルトマンが呟いた。

まあ、元々顔写真を見るのが目的ではない。

敵を知るのは悪いことではないが相手に情けを持ってしまうような情報はいらないのだ。

ハルトマンが知りたかったのは凪の腕や撃墜数である。

だが、彼女の撃沈数の欄は100機以上ということしかかかれていなかったら。

実際はもっと撃墜したのは確実である。案外フレドリクの歴史のハルトマンやルーデルは欧州で彼女に落とされていたのかもしれない。

性能差が違いすぎるからだ。


「ないか…」


「仕方ないよ。タイムスリップの事実じたいが隠されたことなんだから…」


ルチアが残念そうに言った。

ハルトマンの役に立つチャンスなのだが知らない情報は伝えられないのだ。

その時


「聞いたよ。エース君」


パアアとそんなに広くない資料室の一角に光の粒子が集まる。

艦魂の転移の前触れである。

そして、現れたのは金髪をポニーテールにした艦魂であった。

頭にはレシプロ機のパイロットがつけるゴーグルをつけている。

着ている服は2042年のドイツ海軍の白い制服であった。

瞳は青く歳は14歳といったところの童顔だが胸が大きかった。

Cか下手したらDはあるかもしれない。


「め、メグ!」


ルチアが言うとヨルムンガルドの艦魂メグはにっと笑い。


「グーテンターグ、ハルトマン大尉、ルチア。何かお探しかな?」


「グーテンターク、メグ。神崎 凪の情報を探していたんだが…」


するとメグはにやりと笑い大きな胸を張りながら


「任せなさい!」


というと手の中に粒子を集め小型のパソコンを取り出した。艦魂が自分の艦で使える特殊能力である。


カチャカチャとメグはパソコンをいじくりハルトマンとルチアは画面を覗き込もうとしたがメグはばっとパソコンの画面を手で隠した。


「駄目駄目!これは秘密の情報満載だから見たら駄目!」


「いいじゃないケチ!」


ルチアがあっかんべーをしながらメグにいうが彼女は画面をハルトマンとルチアに見えないようにして再びパソコンをいじくりだした。

ハルトマンとルチアは顔を見合わせながら彼女が口を開くのを待つ。

15秒後メグは画面を見ながら顔をあげた。


「神崎 凪、女、年齢は太平洋戦争中でいうなら16〜19歳。撃墜数は…1000機越えてるね。搭乗機はハリアー3に震電。父を戦闘機の訓練中で無くし、母親は幼い頃に死亡。性格は優しいが少しぽけぽけしたところがあり…」


「お、おいメグ!そこまで詳しくはいらない!」


ハルトマンが慌てて言った。

撃墜数だけでいいのにこの娘ときたらこのまま放っておいたら神崎 凪のスリーサイズまで言ってしまいそうだ。


「えー、まだ、あるのに」


メグは不満気に小型のノートパソコンを閉じた。


「少し聞きすぎたな…」


ハルトマンとしては凪の詳しい話を聞くつもりはなかった。歳は今は1943年2月だから16歳か17歳。若い。

それに父親を事故で無くしたとも聞いてしまった。

引き金を引くのに迷いはないが相手を知りすぎるのもいけないものなのである。


「どこでそんな情報つかんだのメグ?」


ルチアが聞くとメグはいたずらっぽく笑いながら右手の小型ノートパソコンを自分の肩にトントンと当てながら


「秘密。ハッカーなんかしてないよ」


「嘘つき!」


「ハッカー?」


ハルトマンが聞き慣れない言葉に呟いた。


「ハッカーていうのは他人のパソコンに自分のパソコンで侵入して情報を引き出したりすることだよ!つまり犯罪」


ルチアの言葉を聞いてもメグは明後日の方角を見ながら知らないなーと惚けていた。

ハッカーが本当かどうかはともかくまあ、ありがたい情報ではあった。


「Dank schon(ありがとう)


「いえいえ、どう致しまして。お礼はデート一回ということで」


にっと笑いながらメグはハルトマンの腕に抱き着いた。


「あー!」


ルチアが悲鳴をあげるがメグはその胸をハルトマンの腕に押し付けたが…


「すまないがそれはできない」


と、ハルトマンに引き離される。


メグは予想していたのかパソコンをひらひらさせながら


「分かってますよ〜ハルトマン大尉には素敵な恋人がドイツで待ってますもんね」


「…」


ルチアはハルトマンを不満気に見ていたがハルトマンはドイツの恋人と聞いて照れながら

そんなことまで知っているのかと驚いていた。


「ふふん。ドイツ一の情報屋を舐めないでほしいなぁ。このパソコンには機密情報から女の子のスリーサイズまでなんでもありさ」


「なんでもか?」


ハルトマンが聞くとメグは自慢気に頷いた。


「何々?まだ聞きたいことある?答えられるのなら答えちゃうよ。報酬は弾んでもらうけどね」


ウインクしながらメグはかわいらしく言った。


「アドルフ・フレドリク。あの男に昔何があった?」


「え?」


空気が固まった気がした。

ハルトマンは興味本位で聞いたのだが聞いてはならない話であったらしい。


「えっと…駄目かな…その情報流すと私エリーゼ総司令に殺されるから…」


「いや、無理に言わなくても構わない。すまなかった」


「あ、うん。でもせっかく聞いてくれたから少しだけ教えてあげるよ。フレドリクは昔、大切な人を戦争で亡くしたの」


「戦争に巻き込まれたのか?」


ハルトマンが聞くとメグは言っていいのかと考え込んだが


「満州を知ってるよねハルトマン大尉?」


「一応昨日行って来たからな」


「?」


ルチアは首を傾げながら話を聞いている。


「ルチア、ハルトマン大尉。他言は駄目だよ?詳しくは言えないけどフレドリクの大切な人は昔、ロシア軍に殺されたの。ひどい方法で…」

「ひどい方法?」


ハルトマンが聞くとメグは両足と両手を指した。


「射撃の的っていうのかな…簡単にいえば逃げる相手の足を撃ち抜き逃げられないようにしながら射撃を楽しむみたいな方法…」


「ひどい…」


ルチアが呟いた。


「復讐か…」


ハルトマンは呟いた。


「これ以上は残念だけど言えないよ」


「いや、いいメグ。教えてくれてありがとう」


「どう致しまして」


メグは再びにっと笑って言った。


「で、でも…私達ドイツはフレドリクの復讐の駒にされてるってことなの?」


ルチアが聞くとメグが口を開こうとしたが代わりにハルトマンが口を開いた。


「そうかもしれん。だが、あの男の決意は本物だ」












ハルトマンは始めて彼に会った時を思い出していた。

19歳の若輩な自分をアドルフ・フレドリクは呼び出しメッサーシュミットゼロを見せながらハルトマンと話をしたのだ。

「俺は世界を変える。戦争のない。新たな歴史を作り上げる。そのために力を貸せ。ハルトマン」


フレドリクは言ったのだ。

戦争を無くすと。

そんなことができるのかは分からないが少なくてもハルトマンはあのフレドリクという男の言葉には信念を感じた。

必ず成し遂げるという信念を…




「だから、俺も可能な限りあの男に協力しようと思う。彼に協力するものはみんな同じ気持ちなのかもしれない。私にできることは戦闘機で敵を落とすだけだがな」


ハルトマンは資料室のパソコンに移る凪のデータを見ながら


「だから、次に会ったときは落とさせてもらう。神崎」


「きゃーかっこいい!」


突然メグはハルトマンに抱き着いた。


「うわ」


ハルトマンは倒れそうになるのを堪えた。


「今の聞いた?次に会ったときは落とさせてもらうなんてまるで映画の一シーン。ねえねえハルトマン大尉。艦魂の恋人はいかが?」


「なっ、メグ!ハルトマン大尉から離れてよ!大尉は私のパイロットなんだからぁ!」


再びルチアが悲鳴をあげてメグを引き離しにかかるがやはり人間の恋人がいるハルトマンが答える言葉は一つだった。



「いいかげんにしろ!」

作者「次回はようやく満州に戻れる」


メグ「私の情報によると…」


作者「わああ!私のパソコンをハックしないで!」


メグ「フフ、全部頂いたわよ。登場人物のプロフィールに至るまでと最後までに至る道もね。へー分岐点があるんだ。こうして見るとエンドのパターンがいっぱいあるし分岐点も結構…」


作者「やめてください!お願いです!」


メグ「黙っててもいいけど口止め料…んー、2000万円でいいよ」


作者「あるかダアホ!」


メグ「情報開示ぃ♪」


作者「払います!分割で」


メグ「取引成立だよ」


作者「悪魔め…ハルトマンは黒い悪魔だがこいつは悪魔以上だ…」


メグ「フフフ、それじゃね。次の出番までお別れだよ」


作者「沈めて闇に葬るか…そうすれば分割も…」


メグ「聞こえてるよ」


作者「ぎゃあああああ!」


ズドオオオオオオン

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