第178話 伝説の戦艦『尾張』
『第3次世界大戦』
もしこれがおこれば次の世界大戦は石や槍が武器になるだろうとある人物は言った。
核兵器の応酬、最終戦争となり文面は崩壊する。
読者の方々ならわかるだろう。
核によるかりそめの平和。
しかし、核兵器がなくなればどうなるか?最終戦争への危惧は薄くなり再び人は争い出す。
ベルンハルト達の未来は正にその時代なのだ。
日本の歴史改変により起こった悲しい戦争。
椎名達は自分達がやって来たことをベルンハルトにより否定されたのだ。
自分達が歩む道の先にあるのは第3次世界大戦。そして、その年は日本が滅んだ年だ。
「あなたたちの戦いは無意味だ。日本を勝利に導いても新たな争いを呼ぶ」
両戦艦は互いをミサイルの射程に収めながらも攻撃はしない。
椎名とベルンハルトの話の間も両艦の距離は小さくなっていっている。
「な、何を証拠にそのようなことを言う?お前のいうことが真実だという証拠はあるのか?」
椎名は渇いた声で言った。
認めたくない。
そんな思いから出た言葉だった。
自分達は日本を滅びから救うためにきた。
だが、その果ては第3次世界大戦という悪夢。
「証拠はない。だが、我々が戦争根絶を主目的としているのはまぎれもない事実なのだ。記録映像が見たいなら見せよう。だが、わかるだろうがそんなもの捏造しようとすれば簡単だ。証拠にはならないだろう」
「ああ…」
「私の話が真実として話を続けよう。降るなら悪いようにはしない。我々は降るものには寛大だ。少なくても独立機動艦隊の兵全員の命は保証しよう。武装解除してくれるだけでいい」
「…」
椎名は黙ってベルンハルトを見ている。
「椎名艦長!駄目です!言うことを聞いてはいけません!ドイツの言うことなど信じては…」
霧島の言葉に椎名は耳を傾けながら口を開いた。
「戦争根絶を掲げその道にはどれほどの血が…屍が築かれるのだ?」
「艦長!」
霧島が声を荒げた。気持ちが傾いていると思ったのだ。
ベルンハルトは微笑をやめて真剣な目で椎名を見た。
「数十万…いや、1億の人間が死んでも可笑しくはない。だが、変革というのは犠牲がつきものだ。大きく体制が変わるときには大きな戦いがおこる。私達の世界でいうならアメリカに勝利を納めたあなたたちのような変革だ。あなたたちは恐らく死ぬはずのなかったアメリカ兵を大勢殺したはずだ。それは新たなる変革のための犠牲ではないのか?我々がしようとするのは世界の統一だ。当然流れる血は多い。それだけ巨大な変革なのだ。どうか分かってほしい」
「…ベルンハルト艦長。我々は軍人だ。軍人は国を守るのが仕事だ。貴方はさっきロシアが暴走する原因となった人物の先祖達を皆殺しにしたと言ったな?」
ベルンハルトは頷いた。
「ああ」
「ならば今いる我々の世界は新たな歴史を歩みだしたことになる。その未来にはたどり着かないかもしれない。それに私は戦争を引き起こす先祖とは言え罪のない民間人を皆殺しにすりあなたたちのやり方に賛同はできん」
「罪ならある。戦争を引き起こす人間を育ててしまった責任が」
「それでも!女子供を殺すやり方は私は反対だ」
「戦争だよ椎名艦長。失礼だが日本陸軍も朝鮮半島や中国大陸で同じようなことをしている。信念もないただの馬鹿だかね」
「そうだな…確かにベルンハルト艦長の言う通りだろう。私が選ぶ道は間違っているのかもしれん」
CICのメンバーは耳を椎名の声に集中させていた。
次の言葉で何かが決まる。
「残念だが…」
ダン
椎名が口を開いた時、CICの中に何かを叩くような音が聞こえた。
兵の一人が見るとモニターが少し揺れていた。
しかし、椎名の目には別の光景が映し出されていた。
「明」
明は左手に槍をもったまま右の拳で画面を叩いていた。
手加減は当然しているようだ。
彼女は右手をどけるとベルンハルトの反応を見る。
彼が見ているのは向こうのモニターに移る明。
「お断りよ!あんた達に屈服する気はまったくない!とっとと帰りなさい!」
明は怒りに燃えながら言い放った。
「ふ、元気なお嬢さんだ。尾張の艦魂だな?」
ベルンハルトの口調から彼が艦魂が見える人間だと椎名はすぐに分かった。
向こうも椎名の反応から自分が艦魂が見える人間だと気がついただろう。
霧島や艦魂の見えない兵達は頭に?マークを浮かべていたが…
「そうよ。覚えときなさい!あんた達のくだらない計画は私達が打ち砕いてやるわ!」
「うわ。生意気」
そう言ってベルンハルトの横から現れたのは金髪の少女ラキアであった。
同じ艦魂同士である。
もちろん正体はわかる。
「ふん、あんたがそのトロンベとかいう雑魚戦艦の艦魂ね」
「ざ、雑魚戦艦!ふざけんじゃないわよ!終わりなんて不吉な日本語のくせに」
ラキアと明が睨み合いながら言った。
ちなみにベルンハルトと椎名以外には椎名とベルンハルトが沈黙しているようにしか見えない。
ベルンハルトと椎名の共通点はどこか楽しげな感じがあるところであろう。
「「待ってなさい!沈めてやるんだから!」」
二人はまったく同じセリフを吐き捨てて画面から消えた。
ベルンハルトと椎名が再び向かい合う。
「さて、ラキアがしつれいした。返答を聞かせてもらおう」
すでに決まっていることだ。
CICを見回すと皆期待に満ちた目で椎名を見ている。
日本を守るかあるいはドイツに屈し未来の平和を掴むか。
日本人である彼等の返答は決まっていたのだ。
「答えは決別だ。我々はドイツに屈するつもりはない」
「そうか。分かっていたこととは言え残念だよ。我々の世界では伝説の戦艦として名高い『尾張』我が友ラキアと共にその伝説に終止符を打とう」
回線が椎名の返答を待たずに強制的に遮断される。
言葉は終わった。
後は力が正義となる戦場で兵器とを使い己の正義を通すのだ。
「…」
「…」
椎名と明は互いに無言で頷く。
彼女は光の粒子となり己の戦場へと戻っていく。
椎名はCICを見渡した後艦内放送を
つけた。
「艦長の椎名だ。これより我が尾張はドイツ機動艦隊と艦隊決戦を行う。我々は行き着く未来。それは誰にも分からない。だが、私は未来は一つではないと信じている。私達は日本を…祖国を守るためにここにいる。各員奮闘を期待する以上だ」
「オーーーーーーー!」
艦内放送を聞いた尾張の兵士達は揃って拳を空に突き上げた。
ドイツの意図など関係ない。
尾張がここにいる理由は日本を救うことなのだ。
「砲雷長。君の腕に任せるぞ」
砲雷長の上坂は眼鏡を中指でカチャリと直すと自信に満ちた声で言った。
「任せて下さい艦長。日本の維持を見せてやります」
「頼んだぞ上坂」
尾張・ドイツ艦隊は互いに距離をつめていく。
世界の命運をかけた艦隊決戦は刻一刻と迫っていた。
この戦いは連合艦隊なら必ずこう言っただろう。
『興国ノ興廃マサニコノ一戦ニアリ各員奮闘努力セヨ』
闇の中菊の紋を先頭に尾張は南の海へと消えていった。
作者「読者参加企画。リレー小説『連合戦記−戦艦『草薙』最後の戦い』が連載開始です」
凛「それで?」
作者「いや、それだけです。読者と共に作る小説です。独立させちゃいました」
凛「ところで草薙…本当に尾張が主人公みたいに見えるんだけど…」
作者「ん?確かに」
凛「タイトルも伝説の戦艦『尾張』なんて…」
作者「ハハハ、伝説の戦艦『紀伊』はないですよね。大和はあるのに」
撫子「あらあら」
作者「おお!撫子様」
凛「久しぶりね撫子」
撫子「あらあら、うふふ、怒ってはいませんよ作者様」
作者「ひっ!笑顔なのに怖い!ごめんなしい!」
土下座する作者
撫子「お顔をお上げ下さい作者様。大丈夫ですよ」
作者「な、なんて優しいんだ!撫子様こそ正当ヒロ…」
凛「馬鹿ぁ!」
作者「ぎゃあああああ!」
ズドオオオオオオン
撫子「あらあらうふふ」
凛「私ヒロインなのよ!もっと活躍させてよぉ!」