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第177話 もうひとつの日本

そして、その瞬間はついに訪れた。


『距離440キロ』


トマホーク改の射程であった。


ドイツ艦隊と尾張はほぼ同時にトマホークを発射した。










「艦長!ドイツ艦隊よりミサイルが来ます!数3」


「本艦の速度は維持!アイギスは命令あるまで使用するな!訓練通り撃墜してみせろ!」


「了解!」


尾張の速度は50ノット。

しかし、敵艦隊は70ノットの高速でこちらに向かっている。アイギスを使った場合速力は20ノット削られるため椎名はアイギスによる安全策を捨てて迎撃を命じたのだ。

互いが目視できる距離までそう遠くはない。

そして、その海域は最終防衛ラインぎりぎりの海域なのである。

尾張は速度を落とす訳にはいかなかった。









そして、シースパローの射程までトマホークが迫った時、尾張は迎撃を開始した。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


という轟音と友に尾張のVLSからミサイルが発射される。

ミサイルの迎撃には順番がある。

アイギスを使わない場合の手順は迎撃ミサイルによる迎撃。それに失敗したら速射砲やチャフによる迎撃。

そして、それが失敗したらCIWSでの迎撃になる。

CIWSが抜かれればもはや遮るものはなくミサイルは艦に突き刺さる。

通常のイージス艦なら致命的ダメージとなってしまうのだ。

2042年の日本の軍艦の選択肢にはアイギスという選択が生まれたが…



「シースパロー目標に命中!」


「ミサイル2左舷から突っ込んでくる!」


「全速射砲撃ち方ぁ始め!」


尾張の砲雷長の怒鳴り声と共に尾張の前部46センチ速射砲と後部127ミリ速射砲が左に旋回しオートで迎撃を開始した。

ダーン ダーン ダーン


ドーン ドーン ドーン


と大きさの違いから違う音を立てて2つの速射砲から砲弾が飛ぶ。

目視では闇のため見えないが尾張に向かうミサイルの周囲に巨大な水柱を立てる。


「ミサイル1を迎撃!」


目標はなおも健在。この時点で椎名が選ぶ選択肢は2つだった。

アイギスを使うかCIWSによる迎撃を行うかだ。


「左舷全CIWS迎撃始め!」


選んだ選択肢は速度を落とさないCIWS。

尾張に装備されている各CIWSがそれぞれ目標を自動で捕らえ銃撃を開始する。

ダダダダダダダダダダ


と近くにいたら鼓膜が敗れるのではないかとというような音を聞きながら尾張の兵士達は手に冷や汗を書きながらモニターを見つめた。


しかし、モニターに移るミサイルた。


しかし、モニターに移るミサイルはどんどん迫ってくる。


「だ、駄目だ!」


誰かが叫んだ。

椎名は黙って光点を見つめていた。


そして…



ズドオオオオオオン

凄まじい爆発が起こった。











「ミサイルの消滅を確認」


「アイギス解除。進路尾張に向け全速!」


「了解!」


ドイツ艦隊は尾張から放たれたミサイルをアイギスで凌ぐと再び70ノットに増速し尾張に進路をとる。

機動艦隊が尾張に放ったミサイル3発は消滅した。

しかし、尾張の反応は消えていない。


「さっさと沈めばいいのに」


「ふっ、分かっていたことだよ。機動戦艦同士の戦いにミサイルは牽制ぐらいにしかならない」


ラキアの言葉にベルンハルトは答えた。最もミサイルも使い方次第では機動戦艦でも有効な兵器だ。アイギスをずっと使っていても必ず攻撃する時にはアイギスを解かなければならない。

しかも、アイギスは一度解除すると10秒は張れない。

そこをつく戦いも2042年では研究されていた。

機動戦艦の戦いが確立していたベルンハルト達と機動戦艦を運用し始めアイギスが試作である日本艦隊では経験値が違うのだ。

それは装備にも明確に現れている。

尾張は単装速射砲に対しドイツは三連装の主砲である。

むろん速射性能を確立した砲である。


尾張の圧倒的不利は動かない。


砲による艦隊決戦。ベルンハルトと椎名は同じ戦いを考えていた。










「熱!」


明は爆散したミサイルの熱風に顔を背けながら体の異常を確認した。


「問題ないわね」










「各科!被害報告急げ」


ミサイルは尾張の至近距離で20ミリCIWSにより撃墜された。


「被害ありません!各システムオールグリーン!」



「ふー」


誰かがほっとした息を吐いた。

一発や二発では機動戦艦は沈まないにしろやはりミサイルが自分達に向けられているといい気持ちはしない。

兵器は人を殺すもの。

殺意を込められたものなのだ。






「椎名艦長。こちらのトマホークは相手に被害を与えられなかったと思われます。このままミサイルを撃っても弾の無駄遣いかと」


霧島の言葉に椎名は頷いた。


「向こうもそのつもりのようだな」

機動戦艦VS機動戦艦の戦いは『尾張』『三笠』が経験した『ドーバー海峡海戦』『北大西洋海戦』の2つのみ。

椎名達のいた2042年世界ではアメリカや中国、ロシアといった超大国ですら機動戦艦は持っていなかった。

戦艦という艦種に疑問があったということは疑いようのない事実である。


『大艦巨砲主義』は忘れられし幻想となっていたのだ。

しかし、日本は計画のためと国防のためあえて新たなる戦艦『機動戦艦』を作り出した。

日本しか持っていないものなのだから対機動戦艦のシュミレーションはほとんど行われていなかった。

まあ、この時代の対戦艦のシュミレーションはしてもまさか未来のドイツが現れるとは完全に予想外だった。


しかし、今言えることは一つ


『艦隊決戦』


これこそが均衡を崩す一手である。



「椎名艦長。敵艦隊より通信が」


「何?」


椎名は驚いて兵を見た。


「モニター越しに話をしたいと言っていますが…」


「…」


椎名は一瞬考え込むような仕種をみせだが


「分かった。繋いでくれ」


「了解!」


椎名の座る艦長席の前のモニターに人が映し出される。

西洋人だ。

西洋人はこちらを見ながら


「初めまして尾張の皆さん。ドイツ第三帝国海軍所属機動戦艦『トロンベ』の艦長ベルンハルト少将です。今回のドイツ艦隊の指揮をとっているものです」


ベルンハルトは見事な日本語で話し掛けてきた。


「独立機動艦隊所属『尾張』艦長椎名だ。貴国と我が国は戦争状態にある。用件を伺おうか?」

ベルンハルトは口許を一瞬緩めてから


「用件は至ってシンプルです。降伏していただけませんか?」


「何!」


椎名が少し声を荒げるとベルンハルトは微笑を浮かべたまま

「失礼だが我が国と貴国の戦力差は圧倒的。すでに世界の3分の一を掌握した我が国にアメリカと争っている大日本帝国が勝てる見込みは少ない」


「そうかな?日本には機動戦艦がいる」




「確かに。我がドイツ第三帝国に対抗できる唯一の戦力を保持するのは貴国の独立機動艦隊だけだろう。だが、それでも貴国は滅びの道を行くだろう」


「ここで降伏したところで同じだろう?それに私はドイツを支持することなどできん」


「それはユダヤ人虐殺や独裁者の先祖を皆殺しにしていることを言っておられるのか?」


「そうだ。ドイツがやることは許されることではない。例え戦争でもだ」



「必要なことなのですよ椎名艦長我々は戦争根絶を目指している」


「馬鹿な!そんな夢物語ができると思っているのか?それにユダヤ人を殺すことが必要だと?」


「戦争根絶は決して夢物語ではない。小さな争いはなくならないだろうが我々は巨大な戦争が二度と起きない世界を構築することが目的なのだ。世界をドイツという国に統一し新しいシステムを作り上げる」


「世界制服といいたい訳か?ヒトラーならそれが出来ると?」


「ふっ、彼では無理だろうな」


「では…」


「だが我々は計画を進めている」


「計画だと?どのような計画だ?」


「残念だがそれをお教えすることはできない」

「それでも降伏しろというのか?」


「椎名艦長。あなたたちの戦いは無駄だった。我々の世界は日本がアメリカに大勝利を納めた時代なのは聞いているかな?」


「聞いている」


フレドリクと日向の会談で明かされた事実は椎名も聞かされていた。


「日本は我々の世界ではアメリカやロシアに並ぶ大国になっている。満州も存在している。だが、日本の勝利はロシアという巨大軍事大国を生み出してしまった」


「それは我々の時代でも同じだ。ロシアは巨大な軍事力を要していた」


「指導者と国の体制が問題なのですよ。巨大な軍事力を背景に他国を恫喝し日本やアメリカ、欧州と対立していた。必要な時は軍事力を使ってね」


「だが、ロシアも世界に戦争をする。それほど馬鹿ではあるまい」


「いや、違う。2042年。我々がこの世界に転移した日は第三次世界大戦が始まった日なのだ」


「!?」


椎名の目。

そして、それを聞いていた皆の目が見開かれた。


自分の艦への通信なら当然明にも伝わる。


「そんな…私達の戦いは無駄だったっていうの…」

作者「日本の勝利は無駄だった」


ベルンハルト「そういうことだ」


ラキア「だから私達が歴史を変えてあげる」


ベルンハルト「最もこの先の歴史ではロシア暴走しないだろうがな」


ラキア「フレドリクが真っ先に皆殺しにしたのってあの時代の先祖だったわね確か…」


作者「以前にも読者に言われましたが独裁者の先祖を殺しても意味はないのでは?」


ベルンハルト「それは違うぞ草薙。確かに絶対に変わるとは言えないがリーダーになるには資質が必要なのだ。資質を持つ人間というのは少ない。例えばヒトラーだ。あの時代にヒトラーに変わるカリスマを持った人間がドイツにいたか?」

作者「いませんね確かに…」


ベルンハルト「そういうことだ。まったく意味がない訳ではないのだよ」


作者「しかし、第3次世界大戦とは滅びるんじゃ…」


ラキア「あんた馬鹿?核兵器がないのよ私達の世界」


作者「あ!」


ラキア「馬鹿ねぇ」


作者「うう…馬鹿馬鹿いうなぁ!」


ベルンハルト「さて、そろそろお茶にしよう。今日はチージケーキに挑戦してみた。食べてくれラキア」


ラキア「ふ、ふん。仕方ないわね。そんなに言うなら食べてあげるわ」


作者「やーい!ツンデレお…」


ラキア「うるさい!死ね!」


作者「ぎゃあああああ!」


ズドオオオオオオン


ラキア「ふん」


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