第173話 竜巻の名を持つ少女
ザザザと巨大な3隻の艦が台湾島の近くにあるラン島より北東120キロの地点を航行していた。
3隻の艦にはナチスドイツの鍵十字の旗が翻っている。
ドイツの機動戦艦トロンベ『ローレライ』『アースガルド』である。
旗艦を務めるトロンベは2隻の前を航行しアースガルドを挟み込むようにローレライが後ろを航行していた。
機動戦艦は中央に戦艦の特徴である艦僑を備えていた。
しかし、中央のアースガルドはフェンリルに見られた上部を開放されれば飛行甲板が現れる潜水空母とでもいえる種類だった。
本を開くことを想像してくれたらいい。
ドイツの新なる力だった。
台湾から出撃した第1次攻撃隊60機は呆気なく全滅した。
しかし、台湾の航空隊は面子の問題もあり陸海合わせた第2次攻撃隊140機が新たに3隻のドイツ艦に向かい進んでいた。
零戦、隼、一式陸攻を中心とした編隊である。
日本の最新鋭機竜神は台湾には配備されていなかった。
「き、来た…」
今回、初めての実戦に出る立花は誰にも聞こえないことをいいことに震える声で言った。
周りを見れば味方の海陸合わせた編隊がいるが恐怖は振り切れない。
「全機攻撃開始!」
隊長がバンクを振り散開する。
立花の零戦も後に続くが前方から飛んで来たミサイルに味方の零戦一機が消し飛んだ。
「は、早い!」
キイイイイイイイイン
というジェット戦闘機の音と共にメッサーシュミット1000が立花機とすれ違った。
なんとか後ろにつこうとする日本軍機であったがレシプロ機ではジェット戦闘機には勝てない。
零戦の不敗神話はとうに終わっているのだ。
ジェット戦闘機の戦いはすれ違い様を狙えと言われていたが早過ぎて敵わない。
メッサーシュミットの編隊が反転してさらにミサイルを発射した。
たった30機程なのにレシプロ機の編隊はまったく歯が絶たなかった。
「ちくしょう!」
攻撃隊の隊長は突っ込んでくるメッサーシュミットに向かい20ミリ機銃を発射した。
ダダダダダダダダ
「落ちろぉ!」
機銃はメッサーシュミットをかすりもせず虚しく海面に落ちていく。
そして、隊長機もまた、別のメッサーシュミットのミサイルを浴びて消し飛んだ。
「ば、化け物…」
初めての実戦でこんな化け物と当たるなんて運が悪すぎる。彼の後方からミサイルが迫ったが電子機器の一つもないレシプロ機に乗った彼はミサイルの炎に包まれてその生涯を閉じた、
「ハハハ!まるで射的だな」
メッサーシュミットのパイロット達は最強の戦闘機と言われた零戦やそれに並ぶとも劣らない隼が次々ミサイルや機関砲を浴びて落ちて行くのを見て笑っていた。
これではマリアナの七面鳥撃ではなくシナの七面鳥撃ちである。
一方的な攻撃で台湾の攻撃隊は散々な目に合い敗走した。
メッサーシュミットのパイロット達はそれを追わずに空母に帰還する時、新なる命令が下った。
「ハンス!メインディッシュが来るぞ。前菜はその編にしておけ」
「本島か?メインディッシュは食べ応えがあるんだろうな」
「日本の料理人次第だな」
「ハハハ、違いねぇ」
通信越しにハンスは仲間と軽口を叩きながらこちらに向かってくる神雷の編隊と接触するため機体を北に向けた。
「機影120を確認!距離440キロ」
「来ましたなベルンハルト艦長」
機動戦艦『トロンベ』の副長は隣に立つ男に言った。
「ああ、いよいよメインディッシュ…いや、メインディッシュは尾張だな」
「それでは神雷は前菜ですな。レシプロ機は前菜にもならない葛という訳で?」
ベルンハルトは微笑を浮かべたまま首を横に振った。
「食事に無意味なものはないさ。彼等は前菜を頂く前の調味料といったところだな」
「すると前菜はおいしくいただけそうですな」
「ああ、手順通りにメッサーシュミットを向かわせろ」
「はっ!」
潜水空母アースガルドはメッサーシュミットを320機搭載している。
エレベーターとカタパルトで打ち出すのは普通の空母と変わらない。
バルムンクは搭載していないが潜水能力とアイギスによるレーダーの無効果などによる隠密性は優れている。
通常の機動戦艦ならアイギスでレーダーを無効にしてもここに来る前に日本軍の索敵に引っ掛かっただろうが潜水型であるこの3艦は発見されずに喜望峰を周りこちらにやって来た。
ベーリング海を回ったニブルヘイムとは真逆ということになる。
「それにしても間抜けよねジャップは」
ベルンハルトの横で言ったのはトロンベの艦魂、ラキアであった。
ベルンハルトは前のモニターを見ながら微笑みを浮かべたまま
「どうしてそう思うのかなラキア?」
「決まってるじゃないベルンハルト。簡単に罠にはまったことよ」
ラキアは右肩にかかった金髪をさっと右手で後ろに回した。年は16歳くらいで身長はそれなりに高い。
ベルンハルトが184センチだからラキアは168センチ。
ただし、ラキアは青い瞳という点はともかく少し童顔である。
「確かにこの時点まではフレドリク準総統の読み通りだな」
ロシア連合を囮に使った沖縄壊滅作戦である。
旗艦が日本語で竜巻というトロンベなのが皮肉とも言える。
「フレドリクねえ…エリーゼ司令には悪いけどあいつ嫌い。ベルンハルトも嫌いでしょ?」
「ふっ」
ベルンハルトはそうだとも違うとも答えずに微笑んでいる。
「ま、いいけどね」
この男が中々本心をさらけ出さないのは2年の付き合いでラキアは知っている。
「大きな目的を果たそうとするなら切り捨てる冷酷さも必要だ。あの男はそれができる」
「ヒトラーに取り入る時はユダヤ人。そして、今回はロシア人って訳?」
ベルンハルトは頷く。
「ねえ、ベルンハルト…この戦争は戦争根絶に繋がるのよね?」
それがドイツの…いや、フレドリクの目的。
「…」
ベルンハルトはメッサーシュミットが飛び立つのをモニターで見ながら黙っていた。
「ベルンハルト?」
ラキアが声をかけてみる。
すると、ベルンハルトはやはり微笑んだまま
「戦争はなくなるかもしれない。だが、争いはなくならない。私達人類は愚かな生き物なのだ」
「じゃあ、私たちがやってることに意味はあるの?」
「世界を一つの国家に統一する。その先にあるのは未知の歴史だ。私達の未来のようにロシアやアメリカ、日本がのさばることはなくなるだろう」
「でも…その未来に行くには無数の屍を越えないといけないわよね…」
全てを救うことなんてできはしない。
何かを切り捨て人は前に進んでいくのだ。
ドイツが切り捨てるのは統一世界のために不要な優しさだ。独裁者の祖先を抹殺し他国を奴隷のように従わせる。
人の心を捨てる行為だがフレドリクにはそれができる。
だが、今ベルンハルトがやることは一つ
「艦長!間もなくメッサーシュミットが神雷と交戦します」
「よし、作戦を完遂させる!逝くぞ友よ」
「OKベルンハルト。ジャップなんか私達の敵じゃない」
この先になにがあるかは分からない。
だが、ラキアの考えることは単純だ。
彼と戦い勝ちつづける。
それが竜巻の名を持つ自分の役割なのだ。
ラキア「沖縄壊滅艦隊旗艦ラキアよ」
作者「おのれ!日本には尾張がいるんだぞ」
明「なんかあんた凜に似てるわね…」
ラキア「そう?」
凜「はぁ?なんでこんなのと似てるのよ」
ラキア「ふん、ジャップにこんなのなんて呼ばれる筋合いないわよ」
凜「あんたなんてナチスじゃない!あんたの艦長恥ずかしわね。何が逝くぞ友よ」
ラキア「ベルンハルトを馬鹿にするなら許さないわよ」
凜「どう許さないのよ」
ラキア「そ…」
作者「まあまあ、二人友。ツンデレ同士仲良くしましょうよ」
凜・ラキア「「誰がツンデレよ!」」
作者「ぎゃあああああ!」
ズドオオオオオオンズドオオオオオオン
明「息ぴったりじゃないあんたたち…」