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第172話 核兵器の意義

敵戦艦部隊が接近していることから沖縄本島全域に空襲警報が発令された。

第2次世界大戦の空襲警報といえばナチスドイツのV2を除けば爆撃機が付き物だが今回の襲撃者達はミサイルという長射程のロングランスを持っている。

沖縄県民は不気味に鳴り響く空襲警報の中、防空壕や洞窟に慌てて飛び込んでいく。


「健一!早くしろ!」


「ま、待ってよじいちゃん」


逃れる民間人の老人は息子の手を引きながら近くの防空壕へと走っていた。

海沿いに住んでいたので防空壕は遠い。初めての空襲警報だ。

空を見て爆撃機が今にも来るのではないかと不安で仕方ない。


「じ、じいちゃん日本はどうなるの?父ちゃんは?」


ラジオで日本軍が北海道でロシア軍と戦い始めたことを2人は知っていた。

ラジオでは日本軍はロシア軍を押し返しと言っていたがこの有様では分からない。

もちろん日本軍は負けてるのだと言えば非国民と言われてしまうため言わないが…


「大丈夫だ健一。神国日本は負けん」


「う、うんそうだよね。あ!じいちゃん大和だ」


「何大和だと?」


月明かりの明るさしかない暗闇の海に祖父と孫は見た。

薄紫の光に包まれ南の海に行く戦艦を。まるで島のようだと健一は思った。

日本民族は皆知っている。

『大和』『紀伊』『尾張』の活躍を。

きっと今回もあの戦艦は奇跡を起こしてくれるだろう。


「すごいなぁ!僕も大和で戦いたい!」


「違う。健一、あれは大和じゃない」


「え?」


子供は母親を見上げた。


「あれは尾張。戦姫の戦艦だ」


「姫?男の戦艦じゃないの?」


健一は不思議そうに祖父を見上げた。

祖父は遠い目をしながらつぶやいた。


「大丈夫だよな…炎樹」


「え?」


その老人はかつて日本海海戦でバルチック艦隊を破った三笠に乗っていた兵士であった。

今は退役し沖縄にいる。

彼は知っていた。

艦魂の存在を。

だからこそ尾張は戦姫なのだ。


「なんでもない。行くぞ健一」


「う、うん」


なぜか少し微笑んでいる祖父の後を健一は駆けていった。










尾張のCICでは椎名艦長がモニターを睨んでいた。

敵、機動戦艦が確認されたのは台湾のラン島の東に100キロの地点だった。

台湾方面の偵察機が見つけたのである。その後、発見されたことを察知されたドイツの機動戦艦3隻は浮上し高速で沖縄に向け突撃を開始した。

台湾の航空隊も襲い掛かったがミサイルと出撃してきたメッサーシュミット1000により散々に撃ち破られてしまった。

相手はレシプロ機で敵うはずのない次元の相手でペーパーナイフで日本刀と戦うのと同じくらい無謀だった。

しかし、彼等の犠牲のおかげで情報を修正することができた。

一隻は潜水型の空母ということが判明したのだ。

敵は潜水型の機動戦艦2隻に潜水型の空母1隻の陣容だった。










尾張の作戦会議室には艦長兼今回の総司令を務める椎名と参謀達が集まっていた。

中央のテーブルには地図が映し出されている。


「台湾からの情報によると敵戦力は潜水型の機動戦艦2隻と戦艦型の空母が一隻とのことだ。この潜水型の空母の能力は未知数だが呉を襲ったメッサーシュミットに似ている形らしい」


「例のメッサーシュミット1000という種類ですか?」


航空参謀が手を挙げて聞くと椎名は頷いた。


「そうだ。この種類は滷獲できたものはないから詳しい性能は分からんが神雷と互角かそれ以上の性能を持っていると思ってくれていい」


ざわと少しだけ騒がしくなった。


「私が言えることは一つだけだ」


椎名のその一言で参謀達が黙り込む。


「これはまさに背水の陣だ。奴らを沖縄に行かせてはならん」


「となるとこの辺りが最終防衛ラインとなりますね」


線が引かれたのは宮古島と石垣島の間にある多良間島であった。

対地ミサイルのトマホークは射程はおよそ460キロである。

衛星がないこの時代では射程ぎりぎりで撃たないかもしれないがもし、宮古島まで進出を許せば沖縄はトマホークの射程にすっぽり収まってしまうのであった。もちろん琉球基地には迎撃ミサイルもあるが衛星もないこの時代のミサイルでは全て撃ち落とせないのは分かり切ったことだった。

考えたくないがもし核ミサイルなら一撃で沖縄の基地は消し飛ぶ。


「椎名艦長…」


参謀長の霧島が口を開いた。

皆の視線が若い彼に集まる。


「核ミサイルによる攻撃を進言いたします」


「…」


ごくりと誰かが息を飲んだ。

その場に沈黙が訪れる。

尾張を始めとする機動戦艦には核ミサイルが搭載されている。

ドイツはフレドリクの話を信じるなら持っていないはずだ。圧倒的な優位性をこちらは持っていることになる。

しかし、椎名は首を横に振る。


「霧島、まだ分からないのか?核は威嚇。いかに不利に陥ろうとも使ってはならんのだ」


「使えない力に何の意味があるんですか!失礼ですが椎名艦長は日本を滅ぼしたいとしか思えません」


「言い過ぎですよ参謀長」


霧島より年が上の参謀が言うが椎名は手で制した。


「いい、霧島続けろ」


「尾張は傷ついてる!この状況で勝てると思ってるんですか?敵は3隻、いくら沖縄からの航空援護があるとはいえ尾張が撃沈される可能性は低くない。それなら核ミサイルで沈めるべきです。椎名艦長。あなたは核ミサイルの使用をためらったばかりにイギリスは陥落しました。今度は沖縄を奴らに壊滅させるつもりですか?」


「…」


誰も何も言わない。霧島の言うことにも一理あるのだ。

核ミサイルを使用すればもしかしたらドーバー海峡の戦いは連合軍が勝利を収めたかもしれない。

今の状況も招かなかったかもしれない。

「私達が…いや、俺達が今ここで核ミサイルを戦術目的で使ってしまえば核の連鎖がおこり人類は核の使用にためらいがなくなるだろう。俺達は広島を長崎を知っている。知っているからこそ最初に定めた目的にしか使ってはならんのだ。勝ち目がないだと?それをなんとかするのが俺達軍人だ。違うか?」


椎名の言葉は一つ一つに重みのある言葉だった。

古参の兵士だからこそ出せる威厳。

数多の戦いを戦い抜いてきた戦士の言葉であった。


「…」


霧島は何も言い返せない。


「通常の戦術により敵艦隊と対峙する。異論はないな?」


「…」


椎名の言葉に誰も異論は挟まなかった。椎名はそれを見ると次に会議室の椅子に座っている天城博士を見た。


「博士、例のものは期待してもいいんだな?」


椎名が聞くと天城はふっと笑った。


「やる価値はあると思うぞ椎名艦長。ぶっつけ本番とはな。機動戦艦の遭遇率といい。この戦艦呪われて…いだ…」


突然天城博士は誰かに殴られたようにテーブルに勢いよく頭をぶつけた。


「明」


椎名があきれた様子で言うと明はもう一回天城の頭を殴って消えた。


ふぅと椎名がため息をつくと航空参謀が怪訝な顔で椎名を見た。


「あの…艦長、一体なにが」


「気にするな」


椎名はそういいながら内心で笑っていた。

ちなみに天城はといえば情けないことに気絶し参謀に起こされる始末であった。

凜「あんた!わかってるんでしょうね!」


作者「え?なんです」


凜「フフフ…とぼける気?」


作者「?」


凜「私の…メインヒロインの登場が…久しぶりの登場なのにあれだけ?あれだけなの?」


作者「あ…いや、その…」


凜「何?」


作者「ごめんなさ〜いですぅ!」


ダダダダダダ


凜「絶対に逃がさない!」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


作者「うわあああああ!」


ズドオオオオオオン







合格本島突撃編とこんな感じの後書きを書きます。合格本島突撃編は感想欄で書いてますしね。


凜「まだ生きてる!」


作者「し、しま…ぐわあああ!」


ズドオオオオオオン

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