第165話 時代の流れ
「森下艦長!烈風より打電です。敵艦隊発見ス、国後水道ヲ南下中、敵戦艦二ミサイルランチャーハ見当タラズ」
「…」
森下は頷いた。
北海艦隊が全滅した今、大鳳と近江の指揮権は森下にあった。
近江、大鳳共に少将クラスの士官が乗っていなかったのである。
「どう思う副長?」
「はっ、敵が機動戦艦でないなら我が近江が負ける要素はないかと」
「つまりは艦隊決戦を?」
「近江の性能なら艦隊とも渡り合えると思われますが…」
参謀も乗っていないので森下はこれだけで判断しなければならなかった。
大鳳に攻撃隊を出してもらうことも考えられたが陸戦の状況が分からない以上無駄な航空戦力を敵艦隊に向けるのは避けたい。
大鳳は重装甲、高速空母として完成していたので艦載機は100機もないのである。
「敵艦隊の陣容は?」
「報告では戦艦を中心として輸形陣を敷いているようです。巡洋艦が7隻、駆逐艦が14隻です。空母は見当たりません」
「そうか、北海艦隊を全滅させた機動戦艦は確認できないか?」
「引き続き偵察を続けさせます」
「そうしてくれ」
相手が旧式戦艦ということは分かった。
だが、森下が気がかりなのはやはり機動戦艦の存在だった。
あの艦は1艦で戦局を変えてしまう恐ろしい戦力なのだ。
水上にいないからといって安心は出来ない。
潜水能力を持つ機動戦艦も存在するのである。
「対潜警戒を厳に、ヘリを飛ばして対潜警戒に当たらせろ」
「はっ!」
近江は単艦で下北半島の端、尻屋岬より400キロの海上にいた。
北海艦隊が全滅した今敵艦隊撃滅は近江の仕事だ。
陸上の基地航空隊は上陸部隊との戦いで航空機を飛ばす余裕はない。
その証拠にしばらくして北海艦隊司令部から近江に戦艦を含む艦隊の迎撃が命じられた。
ご丁寧に大鳳の艦載機は引き続き陸上戦力の援護に回せという伝聞であった。
「まったく…近江も紀伊や尾張のようにミサイル攻撃が出来れば楽なんだがな。そうは思わんか副長?」
「確かにそうです」
近江にはミサイルが装備されている。
だが、それは初期のミサイルなので遠距離の相手には誘導ミサイルが必要であった。
このミサイルは今はハワイにいる村雨に搭載されているもので各艦に装備された対艦ミサイルは1つのミサイルの信号を追って飛ぶ。
そして、信号を発するミサイルが敵艦に突き刺さると次々とミサイルが命中するという仕組みであった。
対潜ミサイルや対空ミサイルは違う原理が使われている。
対空ミサイルは熱探知式のものである。
対潜ミサイルに関してはソナーを搭載した最新式のもので敵を追尾する能力も持ち合わせている。
技術レベルがばらばらだが対潜ミサイルは琉球基地で作られているもので本土で作るにはまだ、技術レベルが足りなかった。
目下未来からの技術者達が技術を教えている最中である。
「敵さんはどうやら本艦と艦隊決戦を望んでいるようだな。まったく、もてる艦はつらいな副長」
「まったくです。ドイツの戦艦と殴りあったあの1回だけでも妙な戦いだったというのに今度は性能の劣る艦隊対本艦ですか?勘弁して欲しいものです」
通常、戦艦1隻対艦隊や戦艦対戦艦の1艦の決闘など起こらない。
少なくても史実では起こることはなかった。
それが、今起きようとしている。
まったく、歴史のifというのは予想できないものだなと森下は思いながら決断した。
「ジェットエンジン始動。航海長、敵艦隊へ進路を向けよ」
「了解、ジェットエンジン始動!敵艦隊へ向けます」
加速の警報が鳴ったドーンと艦尾のジェット噴射口から炎が巻き上がり近江は加速を始めた。
「艦長、ハリアーを出しますか?」
近江の後部の飛行甲板から発艦する機体である。
近江はハリアー3を9機搭載している
森下は首を横に振った。
「いや、艦隊決戦に航空機は無粋だろう。それに近くに機動戦艦が潜んでいるなら航空機は格好の餌食となる。忘れるな?ハリアーは補充が難しい機体なんだ」
「はっ!了解いたしました」
敵戦艦がこのままこちらに向かってきているとすれば釧路沖で激突することになりそうだった。
このぞくぞくする感じは航空機の戦いでは味わえない。
やはり艦隊決戦は帝国海軍人にとって愛すべき戦法なのだなと森下は思いつつも
時代は航空主兵に傾いていくのだなと未来を知る男は思った。
兵士「波動要塞ジェネシスより砲が!」
作者「うわあああ!」
ズドオオオオオオン
兵士「ぐ…艦が左に傾斜していきます」
作者「注水だ!」
兵士「艦長…今の一撃で左舷の砲が全滅しました」
作者「ば、馬鹿な!」
兵士「注水も限界が近いです」
作者「たった一発でこれか…」
空を見上げる作者
巨大要塞を倒す手立てはあるのか?作者は合格し本島へ突入できるのか?それは神にもわからない。