第162話 反撃の狼煙 大鳳攻撃隊出撃
「森下艦長!」
「どうした?」
高速戦艦『近江』には今、少将クラスの将校は乗っていない。
従って近江、大鳳の2艦は森下が指揮を取っていた。
森下は報告を聞いて目を丸くした。
「何?北海艦隊が全滅しただと?」
重巡利根を始め9隻の艦隊はミサイルの攻撃を受けて全滅した。
やはり敵には機動戦艦がいるのだと森下は思った。
「…」
このまま、進むにはあまりに危険だと森下は思った。
確かに近江は機動戦艦に対抗すべく完成させられた戦艦ではあったがほとんど相打ちと変わらない勝利を収めただけだ。
しかも、1対1で勝利を収めたに過ぎない。
北海艦隊が壊滅した今、砲撃戦になれば近江のみで戦うことになる。
大鳳は空母なのでそんなところまで連れて行けない。
「よし、攻撃隊を出そう。大鳳に第1次攻撃隊を出撃させるように行ってくれ。それと烈風を偵察で出してくれ。もちろん対艦ミサイルの搭載は忘れるなよ?」
「はっ!」
兵士が大鳳に発光信号で伝えるため走っていく。
機動戦艦がいるとすれば修理が完全ではない近江が勝つのは難しい。
だが、近江は希望なのだ。
「大鳳は発艦後、この海域に待機だ。我々はこのまま北海道に突入する」
「危険ではありませんか?」
「いや、昔とは違うんだ。大鳳にも対潜ミサイルもあるし独立機動艦隊から譲り受けたヘリもある。近江は突撃を続ける」
「はっ!」
ジェット噴射で遠ざかっていく近江を飛行甲板の上から大鳳の艦魂、奈菜は敬礼で見送った。
「零さん…どうかご無事で…」
「発艦準備急げ!」
エレベーターで竜神が上げられる。
第1次攻撃隊20機である。
その中にはさきほど、奈菜と零の真名を呼びぼこぼこにされた男の姿もあった。
(やれやれめんどくさいな…)
零戦と違い、細かい計器をチェックしながら男…斉藤 源は思った。
エレベーターで甲板に上げられて前で旗を振っている兵士を目に入れる。
竜神の噴射口の後ろにはジェット・ブラスト。リフレクターがセットされる。
カタパルトに乗せられてそこで発艦可能という合図が入る。
「さてと、行きますかね」
ドッとカタパルトとジェット噴射により竜神が加速する。
「ん?」
加速していく竜神の中で甲板の先に立っている少女の姿が見えた。
だいぶ小さくなった近江に対して敬礼しているようだ。
大鳳の艦魂、奈菜
「艦魂ね…」
つぶやいた瞬間、源は空の人となった。
「それじゃあ、お姫様を守る空の侍にでもなるかね俺は」
崎に出撃していた編隊と大鳳の周りを一周する時、源は奈菜に向かってさっと敬礼し
10小隊2人編成の編隊で北の空へと消えていった。
近江の後部甲板でも発艦準備は進められていた。
近江にはハリアー2が搭載されているが残念ながら航続距離の問題で今回は
第6世代戦闘機の『烈風』のみの出撃である。
これのパイロット青葉 淳一は烈風に乗り込んで各計器をチェックしていると近江の艦魂零が後ろの席に乗り込んできた。
「零?今回は駄目だよ。呉と違って500キロ以上は慣れるんだから」
青葉 淳一は体を後ろに向けて言うが零は首を縦に振らなかった。
「私も行きます」
「どうなっても知らないよ」
淳一は一刻も早く発艦しなければならなかったのでそれ以上は言わずにエレベーターが上がりきるのを待った。
ガコンとエレベーターが上がりきると烈風を垂直離陸の態勢に移行しエンジンを噴射した。
垂直離陸が可能な戦闘機。
ハリアーやF35戦闘機の究極系の戦闘機といえる機体だ。
もっとも、震電が完成すれば時代遅れとなるのが兵器の定めではあるが…
垂直離陸で烈風は浮かび上がり次の瞬間バンという音と共に風圧を残して北の空へと消えていった。
作者「二次試験海域を突破するぞ!」
兵士「ジェノサイド、ヴォルケンクラッアー接近!」
作者「イレイズ砲発射ぁ」
キュイイイイイインキュイイイイイイン
兵士「反応ミサイルきます!」
作者「うおおお!」
ズドオオオオオオン
兵士「127ミリ速射砲大破!各所で火災発生!」
作者「消火作業急げ!」
2月5日…二次試験海域を巡る最後の戦いが始まった。