第157話 凍りの人形
ドイツ第三帝国のキール軍港はドイツの北部にある。
ポーランドとの国境からさほど離れていない北部のこの軍港は第1次世界大戦で水兵が反乱を起こした地として第1次世界大戦を戦った古参の兵に知られる場所でも会った。
史実ではポケット戦艦やUボートなどを中心としていた海軍の戦力ではあったがこの軍港には1隻の巨大戦艦が鎮座している。
『フリードリッヒ・デア・グロッセ』、紀伊や尾張を上回る巨大戦艦である。
イギリスが陥落した今、キール軍港を空襲する戦力もなく。
また、アメリカの大西洋艦隊もキールまで空襲に来る戦力を持ち合わせていなかった。
イギリス軍は政府と共にオーストラリアに逃れているのだ。
フリードリッヒ・デア・グロッセの艦魂、エリーゼは帰港してくるUボートや駆逐艦などを青い瞳に映しながら海を見つめていた。
「暇です」
その頃、日本は大変なことになっていることを承知でエリーゼは言った。
腕時計を見て見ると朝の6時、時差があるため日本では13時でもドイツではまだ、朝になったばかりだ。
丁度起床してくる兵士がちらほらと各艦上に見えた。
「…」
その様子を時間つぶしにするかとエリーゼは海を見つめていると後ろに転移する気配を感じて振り返らずに口を開いた。
「また、あなたですか?」
「そうよ。悪い?」
声には憎しみが乗せられている。
敬意のかけらもないその言葉を聞いてもエリーゼの無表情は怒りに歪まない。
「敵を討ちにきたのですね」
エリーゼは振り返った。
そこには憎悪に支配された艦魂がいた。
セントヘレナ島沖海戦で拿捕された戦艦カシオペアの艦魂、サラである。
彼女やアメリカの艦は拿捕されると損傷が激しかったり改装したりする艦はキールなどの軍港に曳航されたりして新設されたり元からあるドッグで改装を受ける。
ミサイルなどの装備を付け足すためである。
フレドリク達によるドイツの未来艦隊の支援の下、ドイツはミサイルの工場などを新設し
新技術などにより次々と戦力を整えていた。
イギリスという最大の脅威も消えているので撃沈される心配もなく、空母機動部隊や乗員の戦闘機パイロット育成も未来から持ってきた輸送船の改造空母で行われていた。
戦艦の運用法も学ばせている。
後、1年もあれば未来艦隊を抜きにしても巨大な海軍が誕生するはずだった。
「この海賊が!死ね!」
サラは手に始めから持っていたサーベルでエリーゼに切りかかった。
エリーゼはそれを右に交わす。
「この!」
むちゃくちゃにサラはサーベルを振り回し続けるがエリーゼは表情も変えずにそれを回避する。
自らの船であるから艦魂の能力も使用できるが武器を出そうともしない。
「それでおわりですか?」
息が上がってきたサラを挑発するような言葉。
サラの目に怒りの炎が燃え上がる。
「うあああ!」
「…」
ドン
たった一つの銃声。
それだけでサラのサーベルは弾き飛ばされた。
「っ!」
カチャリ
エリーゼのリボルバー式の銀の銃がサラの頭に当てられサラは固まった。
「かわりませんねあなたは」
「殺してやる」
人の…いや、艦魂の命を握るこの状況でもエリーゼは無表情であった。
サラは悔しそうに憎きドイツの司令であるエリーゼを睨みつける。
艦は屈しても心は決して屈さない。
そして、妹のリアの敵を取る。
それがサラの生きる原動力となっていた。
このキールで初めてエリーゼと会った時、サラはこの艦魂を必ず殺すと決めた。
もちろん艦魂は船が破壊されない限り死ぬことはないので痛みつけるといったほうが正しい。
だが、このエリーゼという少女は強かった。
艦が最強なら艦魂も強いという理屈は艦魂には当てはまらない。
人間でも筋肉がすごい奴に劣る奴は勝てないという道理がないのと同じように…
何度もサラは彼女に挑み負けた。
挑み続けているうちになぜこんなにこの女は無表情なのだと思った。
どんなに重要な件を聞いてもほとんど表情を変えない。
鹵獲されたアメリカなどの艦からは『アイスドール』とまで呼ばれているのがエリーゼだった。
「ふぅ」
エリーゼは銃を粒子にして消すとコツコツと甲板を歩き出した。
「ま、待ちなさい!なんで私に処分を下さないの!情けをかけているつもり!」
エリーゼはサラが暗殺未遂のようなことをしているのに彼女を罰さない。
その気になればい自分を痛みつけることだって出来る権限をもっているのに…
「気分が乗りません」
いつもその言葉だけで済ませてしまう。
いや、正確に言えば彼女は公平に裁きを下す。
艦魂同士の喧嘩や争い、規律違反などには判断を求められれば罰を与える。
「罰です」
その言葉もその現場にいればよく聞く言葉だ。
だが、エリーゼは自分に対する規律違反にには何も言わない。
フィリアが失礼な態度でエリーゼに接しても彼女は何も言わないし今のようにサラが
殺そうとしても何も言わない。
まるで自分に対する規律が存在していないかのようだった。
「気分が乗りません」
エリーゼはいつもと同じ言葉を言うとその場から消えた。
「くっ!馬鹿にして!殺してやる!絶対に殺してやる!」
目に涙を浮かべてサラはその場から消えた。
サラが消えたのを艦橋の上から見ていたエリーゼは目を閉じた。
この艦魂の少女の心のほとんどは凍っている。
「アイスドールですか…」
情報部から上がってきた情報の中にアメリカの艦魂が自分につけている二つ名を思い出す。
凍った人形。
まさにぴったりの名ではないかとエリーゼは思った。
そんな時、シュンという音と共に艦橋の扉が開いた。
そういえば兵が来る時間かと思いエリーゼは艦内にある自分の部屋に転移しようとした。
「あれ?エリーゼじゃないか?」
その声の方を見ると丸眼鏡の金髪。
今は沈んでいない戦艦『ビスマルク』の名を2世とつけて生まれた『ビスマルク2世』の
艦長カール。
エリーゼが人間で真名を許している数少ない人間の1人だった。
作者「これより我が軍を『最終連合艦隊』と命名する」
加藤「なんですかいきなり」
作者「いや、名前が欲しいなーと」
加藤「はぁ…というわけです。みなさん」
作者「戦況は?」
加藤「よくありません…各艦隊も損害甚大」
作者「く…」
加藤「ミサイル来ます!」
作者「面舵いっぱああああい!」
ズドオオオオオオン作者「うわああああ!」
加藤「ぐ…艦僑に披弾…か、艦長…ご無事で?」
作者「しっかりしろ加藤!衛星兵!」
兵士「艦長!今の攻撃で後部主砲全壊」
作者「な、馬鹿な!主砲は後、一基か…」
兵士「はい」
作者「各艦隊に打電!勇気を持ち進め!」
兵士「はっ!」
不合格の場合→全艦隊全滅エンド
合格の場合全艦合格本島突入となります。
全滅の可能性が嫌な方は直ちに撤退を!