第152話 独立機動艦隊出撃ス
大鳳と近江が出撃している頃、独立機動艦隊は日本海を航行していた。
ただし、先行しているのは『紀伊』のみである。
後続に機動戦艦『三笠』と原子力空母『蒼龍』『飛龍』『赤城』『加賀』がいるが
原子力空母は50ノットが限界速度のために紀伊がは70ノットで先行しているのであった。
『三笠』は空母の護衛をかねている。
三笠が中型空母並みの搭載能力を持っているので機動部隊とも言える艦隊である。
『尾張』はイギリス遠征で負った傷の修理と基地防衛の要として残った。
ミサイル搭載のために改装を受けていた駆逐艦『綾波』『暁』も速度の関係上基地防衛ために残された。
ドイツの機動戦艦の襲来もありえたからだ。
一応基地航空隊などはいるのだが…
機動戦艦『紀伊』のCICでは独立機動艦隊司令長官の日向 恭介が矢継ぎ早に命令を下している。
ドイツの傀儡国家ロシア連合軍による満州襲来は予測できていたことだった。
今回の樺太や千鳥列島攻撃にしてもそうだ。
だが、仕方なかったのだ。
わずか7ヶ月と少しでは日本の工業力を底上げするのはこれが限界だった。
竜神を始めとする戦闘機や戦車。
原子爆弾。
連れてきた研究者達もそれらの開発にてんてこ舞いになっているのが現状である。
おまけに陸軍ときたら空軍の設立に反対したりなどはっきり言って足を引っ張りまくっている。
無論理解を示してくれたものもいたがもう少し頭をやわらかくして考えて欲しいものである。
現在侵攻を受けている満州や千鳥列島にしても戦力が圧倒的に足りていない。
大戦力はハワイや南方に取られているのが現状だからだ。
「はぁ…」
機動戦艦『紀伊』の甲板でこの艦の艦魂、凜はため息を吐いた。
つい半日ほど前までは『三笠』の艦魂炎樹や『尾張』の艦魂明達と先日の恭介に対する
告白をからかわれて『蒼龍』の艦魂星菜や飛龍の艦魂『弥生』に敵視されつつも楽しい
1日だった。
それが今回のロシアの攻撃により独立機動艦隊は緊急出撃することとなった。
「凪大丈夫なのかしら…」
凜が気にしているのは満州に言っている凪のことだった。
ハリアーに乗っている頃から紀伊に所属している神崎 凪中尉は艦魂が見える。
最近ではなにやら恭介に対する態度がおかしいような気がするが…
いずれにせよ自分は満州へ行くことは出来ない。
満州を救援するのは空母や三笠の艦載機の役目である。
「恭介はどうしてるのかな…」
あの鈍感男は凜が何を言おうとも気づかないのか…
「うう…」
数時間後には戦いが始まるというのに凜は前の告白騒ぎを引きずっていた。
炎樹はあの男はもう駄目じゃないとあきれていたし明は鈍感ねと言っていた。
何を言っても恭介主義の星菜はお兄様素敵だし弥生はあきらめないよと前向き。
まったく、なんであんな鈍感男はもてるのか…
「なんで好きになったんだろ…」
そういいながら凜は胸にある星のペンダントをあける。
『星の子守唄』という未来のオルゴールの曲が流れ出す。
ペンダントはロケットになっておりその中には未来の連合艦隊の艦魂達撮った写真が入っている。
凜と親友であった機動戦艦『霧島』の艦魂桜と自分が中央に移るその写真。
桜は自分より先に日向 恭介を好きになった艦魂である。
以前聞いた事がある。
なぜ、彼のことを好きになったのかと…
日向 恭介は機動戦艦『霧島』の艦長を務めていた時期もあるのでおそらく好きになったのはそのときだろう。
『優しい所かな?』
それは平凡な理由ではあったが凜にも分かる気持ちである。
「ま、鈍感なんだけどね」
くすりとその時の事を思い出しながら彼女はロケットを閉じた。
落ち込んだり気分が沈んだときなどはこのロケットを開く。
かつての仲間達と会っているような感覚になるのだ。
風に髪を揺られながら凜はその場から転移して消えた。
紀伊から100キロほど後方では三笠から烈風の出撃準備が急がれていた。
航続距離が桁違いの烈風は1000キロ以上は慣れているこの場所からでも援護は可能である。
パイロットの負担があるためにここまで出撃を見合わせていたのだが満州の戦況は思わしくないらしい。
耐Gスーツを着て烈風に乗り込むパイロット達。
烈風は次々とエレベーターからリニアカタパルトに上げられて打ち出され小隊を組んで満州へ向かう。
千鳥列島への援軍は紀伊や連合艦隊の近江、大鳳の艦載機が向かうことになっていたので
行かない。
内陸へ派遣できる援軍は航空戦力のみなので致し方ない事態だった。
原子力空母『蒼龍』の甲板では次々と空に彼方に消えていく烈風を神雷のパイロットや整備兵たちが悔しそうに見上げていた。
無論彼らも出撃するが満州が危機的状況に陥っているのだから自分達も早く出撃したかった。
だが、満州についてもろくに燃料がなければ戦える時間が限られてしまう。
彼らは満州の連合軍を押し返す役割があるのだった。
「悔しい…」
蒼龍の艦魂、星菜はその烈風隊を見上げながら言った。
「しょうがないよ今回ばかりは」
妹の弥生に言われて星菜はじっと弥生を見た。
「な、何お姉ちゃん?」
「別に」
星菜はふいっと空に再び視線を戻した。
「き、気になるよう」
弥生が言うが彼女は振り返らない。
結構長い付き合いではあるが姉の星菜の性格を弥生は完全には掴みきれていない。
正直どれだけの人が彼女の性格を掴みきれているのか謎で謎大き、艦魂なのであった。
なつく相手もよく分からない。
大和の艦魂、撫子をお姉さまと慕っているし日向 恭介をお兄様といって恋している。
妹の自分達にも決して冷たいわけではないがどうもなれないのだ。
「星菜姉さん、弥生姉さん」
そんな2人の後ろで2人の妹の蒼龍4姉妹の3女で赤城の艦魂優妃と蒼龍4姉妹の末の加賀の艦魂月花が現れた。
星菜が振り返る。
「どうかしたの2人とも?」
弥生がそう聞きながらなんか理不尽だなと思った。
なぜか蒼龍4姉妹は体がおかしい。
星菜と弥生が12〜14ぐらいなのに対して優妃と月花はなぜか17歳ぐらいで抜群のポロポーション。
まあ、一般的な体型だが…
「うん、なんか久しぶりだなって。私達4人揃って出撃するのって過去に来て初めてじゃない」
「え?そうだっけ?」
優妃の言葉に弥生は首を傾げてみた。
そういえばハワイ攻略作戦の時も蒼龍は南雲艦隊と共に行動していなかった。
確かに共に出撃するのははじめてだ。
「機動部隊対決じゃないのは少し残念ですが…」
月花が言った。
まあ、確かに空母の艦載機で陸軍の援護は不本意だ。
自分達は本来ならアメリカと激突するはずでロシア軍との激突は想定外の事態なのだ。
未来ドイツの介入さえなければもしかしたらアメリカをすでに下して平和な時代になっていたのかもしれない。
「まあ、確かに…」
弥生も同意した。
「あ、あのそれはそうと…」
おずおずと優妃が言う。
「星菜姉さん怒ってない?」
「怒ってない」
優妃の問いに星菜は即答した。
しかし、なんとなく不機嫌に見えるのはやはり紀伊の日向と離れてしまったことにある。
実は彼女、今日は久しぶりに演習もなく基地で日向にべたべたと甘える予定だったことは
彼女にしか知らない事実である。
それをしってかしらずか
「ま、さっさとロシアを追い返して帰ればいいよ」
気楽にいう弥生である。
「弥生姉さん、油断は駄目よ。相手にドイツ軍がいるかもしれないんだから」
お気楽気分の姉に優妃が言った。
「大丈夫、大丈夫。日本軍は連戦連勝なんだから今回も私達の大勝利だよ」
確かにこれまでフェンリルの件を除けば日本軍は連戦連勝である。
もちろん独立機動艦隊と未来の技術が入っての結果であるが今回は100万を越える大軍なのだ。
安々と決まるとは思えない。
こちらの艦載機は1000機を越える航空戦力があるがそれでも…
「私達は日本を救う。ただそれだけ…」
空を見上げながら星菜は後ろにいる3人に聞こえないように言うのだった。
彼女が瞳には最後の烈風の小隊が映っていた。
<合格本島特攻>
作者「様々な人達から援軍が…これで成功しなければ…」
兵士「詳しくは感想をどうぞ」
作者「戦力はばらばらだがいつのまにか大艦隊になってしまった…だが、合格本島付近に展開する艦隊は強力だ。これで突破できればいいが…」
兵士「いよいよ後1日ですね」
作者「ああ、そろそろ対空戦闘の用意がいるかもしれん」
兵士「どうなさいますか?我が軍はいつでも動けます」
作者「いや、明日まで待とう。今日は兵達にとって最後の休日になるかもしれん」
兵士「了解いたしました」
作者「後一日…」
凛「陸奥、零戦やその他の大艦隊が支援する戦い…合格本島付近の兵力は分からないの?」
桔梗「二式大挺ちゅうもんの通信によれば戦艦123隻、空母456隻、その他駆逐艦や輸送船を合わせたら2000は確実に越えるな」
凛「二式大挺からの続きの報告は?」
桔梗「あかん…連絡は途絶えた…撃墜されたんかもしれん…」
凛「そう…でも絶望的な戦力差ね」
桔梗「せやな…零戦艦隊や越後艦隊が多少引き付けたとはいえ敵の第1次攻撃隊は少なくても400機は来るな」
凛「絶望的じゃない。草薙艦隊は戦艦『草薙』に加えて駆逐艦6隻の戦力なのに」
桔梗「これはあかんかもしれん…せやけど奇跡を信じるんや。応援してくれる人のためにも…」
凛「更なる援軍(応援)があれば…」
桔梗「それは読者しだいや…」