第140話 青の守護者
思わぬ形で終了した模擬戦であったが彼方がたこ上官に階級を盾にして強制的に
その場を収束させて後にした。
「まったく」
眠そうなクマは相変わらずで美少女台無しの彼方は滑走路から連れ出した凪と歩いている。
後ろからは幸樹と護衛の兵2人が続いている。
「外が騒がしいから出て切れ見れば何してるのよ凪」
「ご、ごめん…」
普通に考えて彼方は泥のように眠っていたはずなのだ。
幸樹が起こしに言ったそうだが部屋の外で問答しただけで部屋には入っていない。
気づく可能性は低いはずだが彼方はその小さな騒ぎに気づいて出て切れくれた。
無理やり階級で押し切るのは後々問題になりかねなかったがあの場で見ていた兵士は
たこ上官が悪いことは見ていたはずだし
いざとなれば日向を通じて天皇陛下に頼むという日本最強の後ろ盾を使えば問題にはならない。
昭和天皇は独立機動艦隊に関することには基本的には味方であり最大の理解者でもあった。
「まあ、いいけどね。眠気覚ましにはなったし」
2人が歩いているのは原子爆弾研究所がある建物へ向かう道である。
性格にはジープに乗るために駐車している場所に向かっているところであった。
ジープはこれも設計図の通りに作った国産品である。
「ふぁ…」
眠気覚ましにとは言ったがやはり彼方は眠いようだ。
まあ、30分寝られていればいいほうなので凪は責任を感じていた。
「ほ、本当にごめんね彼方」
「ん、いいよ別に…」
ジープのあるところまで来ると彼方は自分で運転席に乗ろうとしたので護衛の2人が慌てて私達がやりますと彼方を助手席へと誘導した。
彼方は逆らわずにそれに従い助手席で目を閉じるとついたら起こしてと眠ってしまった。
「それでは失礼します神崎中尉」
護衛の男が言うとジープが発進する。
研究所は基地の中央にあり車で10分ぐらいの距離にあった。
そこへ行くまでに幾重の検問があり簡単にはたどり着けない。
ジープが言ってしまうと凪はどうしようと思った。
滑走路に出ればまたたこ上官に出会ってしまうかもしれない。
とすると行く場所は限定されてくる。
「行きましょうか桜井さん」
それまで黙ってついて着ていた幸樹だったが弾かれたように顔を上げた。
「あ、はい」
凪は軽く首を傾げたがそれ以上気にせずに震電が格納されている場所へと歩き出す。
あれも重要機密ではあるが登録された指紋を認証させないとエンジンすらかからないので
盗まれたり勝手に使われる心配はなかった。
コツコツと音を立てながら歩く満州の空。
沖縄やハワイが懐かしくなる寒さである。
「寒いですね桜井さん」
「は、はい。そうですね」
声が裏返った幸樹
「どうかしたんですか?」
凪が聞くと幸樹はしばらく無言だったが決心したように口を開いた。
「凪さんはすごいと思いまして」
「私がすごい?どのようにすごいんですか?」
「性能の劣る戦闘機で勝利を収めたことです」
「…」
なるほど幸樹は確かパイロット志望であると聞く。
今のジェット戦闘機はレシプロ機などと比べて遥かに生産数が少ないのでパイロットになるのは非常に難しかった。
だからこそ空でたこ上官を破った自分のことを英雄のように見ているのかもしれなかった。
「私なんてまだまだですよ?」
「そんなことありません。凪さんは…」
「やめてください…」
ぞっとするような冷たい声で凪いい幸樹を冷たい視線で見た。
「あまりエースだといわれることは好きではないんです。すみません」
「あ…」
幸樹は何か言おうとしたが言葉が見つからず結局歩き出した凪についていくが
その日は彼らに会話はほとんどなかった。
その夜、凪は震電がある格納庫にいた。
操縦席で先ほどのことを反省していたのだ。
「言い過ぎたかな…」
もちろん幸樹のことである。
エースエースともてはやされることは凪は嫌いだった。
ある程度は許せるがやはり言われすぎるのは好きではない。
エースといえば肩に背負う期待という荷物がとても重いのだ。
理解者である紀伊の小川大尉や彼方などはそうでもないが烈風5機を打ち破ったり
今日のたこ上官を倒したことなどで凪はこの基地でも一目おかれる存在になってしまった。
目立たなければいいだけの話だがどうしても空での戦いでは負けたくなかった。
ただ1度の敗北で死んだ父を意思を継ぎ日本を救いたいのだ。
「みんな私に期待しすぎだよ…」
つい本音が漏れコクピットで膝を抱えて座り込む。
格納庫には誰もいないし凪は小柄なのでいたとしても闇も手伝って見えることはないだろうが…
「私はただ、誰にも負けたくないだけ…」
「出来るんじゃありませんか?凪なら」
その声は優しい言葉であった。
「え?」
声のした方。
そちらを見ると今はなき日本空軍の女性用の制服を着た少女が後部席に座っていた。
瞳の色は凪と同じ透き通るような青き瞳。
そして、髪の色は流れるような黒髪を黄色のリボンでポニーテールにしている。
体は小柄でお人形のような少女といってよかったがその目は力強い意思を感じることが出来た。
「あ、あなたつのま…痛!」
急に立ち上がったため閉まっていた風防に頭をぶつけた凪は悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫ですか凪?」
少女が心配そうに声をかけてくれる。
「う、うん。大丈夫だけどあなたは誰?いつ乗り込んだの?」
頭を抑えながら涙目で凪が言うと少女は微笑んだ。
「始めまして神崎 凪、私はこの震電の飛魂です」
それが震電の飛魂と凪の始めての出会いであった。
作者「さてみなさんに聞きたいことがあります」
凛「何よ?」
作者「近江に搭載されている51センチ砲ってどれくらい飛ぶんですかね?」
凛「は?」
作者「大和の46センチ砲は四万五千でしょ?51ならもっと伸びるはずですし」
凛「読者に教えてっていうのあんた」
作者「しかたありません。最大射程で戦う近江はまだ書いてませんがいずれ必要になる可能性がありますからね」
凛「はぁ…罰ね」
作者「え、エリーゼ様みたいなことを…うぎゃああああ!」
ズドオオオオオオン
凛「ということでこの馬鹿の疑問に誰か答えてあげてくれないかしら?お礼の言葉しか言えないけどねこいつ」