第136話 満州へ!
「いやあ、俺ってラッキーだと思うよ」
「…」
場所は震電の中、捕虜のはずであるドミニク・ハートは手錠に繋がれているというのに口やかましい男だった。
後部の席に無理やりドミニクと彼方が座っているので狭いことこの上ない。
幸いドミニクが小柄だったのでどちらかが相手の上に乗るという屈辱的な思いはせずにすんだが…
酸素マスクは予備などないので高高度の飛行は控えねばならなかったがドミニクの話によればジェット戦闘機はあの1機のみということだった。
聞けばドミニクはくだらない理由で上官を殴り、上官の差し金で中国に飛ばされたということだ。
任務は彼方の暗殺だったというのだから驚きだった。
彼らは彼方が乗る戦闘機がここに来ることを知っていたのだ。
まあ、1機しかいなかったところを見ると上官が逆恨みで飛ばしたと思えなくもないが…
「ちょっと!狭いじゃない!もっとつめてよ!」
「はいはい、喜んでといいたいところだけどごめんね彼方ちゃん、残念ながらこれ以上は無理。どう?俺の膝の上に乗ったら気持ちいいかも」
「絶対お断りよ!」
「あ、ハハハ…」
機体を満州に向けながら凪は苦笑した。
このドミニクという男とんでもない女好きということが判明した。
本来2人乗りの震電に3人、しかも彼方はドミニクと一緒の席な訳だから地獄だろう。
「あ、胸が当たった!」
「死ね!ど変態!絶対に死刑にしてやる!」
「お、おい!機内で銃を突きつけるな!」
「うるさい死ね!」
「ちょっ!彼方駄目だよ機内で銃は使わないで!」
凪は慌てていった。
本気かと思うほど声に力がこもっていたので…
「だってこいつが…」
と彼方が泣きそうな声で言う。
「俺の名前はドミニク・ハートだ。なんでも答えるぜお嬢さん方。命と待遇さえ保証してくれたらな」
なんというあつかましい男だと2人は思ったがドイツの情報がこれで手に入る。
呉を襲撃したドイツのフェンリルなど今までドイツの未来人を捕虜にしたことなど皆無だった。
出来れば満州から琉球基地に連れて帰りたい。
そして、日向長官に合わせて情報を引き出すのだ。
抵抗されなかった分辺りの捕虜といったところだった。
「ああ!もう、私は寝る!ついたら起こして凪」
「お!俺に寝顔見せてくれるのか?」
と、ドミニクが言うが彼方はぎろりと睨んでから目を閉じてぼそりと
「何かしたら原子爆弾にくくりつけて投下するからね」
と本当か嘘か分からない恐ろしいことを言って眠りに入った。
先ほどの戦闘で緊張していたのだろう。
巡航速度なら大したGもない。
ちなみにドミニクもドイツ製ではあるが耐Gスーツ着用である。
「…」
「…」
彼方が眠ってしまったためおきている人間がドミニクと凪だけとなる。
凪は自動操縦に切り替えているので多少後ろに注意を払うだけである。
最悪彼方が人質にされてしまう危険性はあったがその場合は彼方は遠慮せずに脱出レバーを引けといっている。
まあ、戦闘機の中で暴れてもどうにもならないが…
「なあ、凪ちゃんだっけ?」
突然話しかけてきたドミニクに凪は意識を向ける。
「はい、なんですか?」
「凪ちゃんはすごいな。あんな操縦なんてドイツでもそうできるやつはいないぜ?
せいぜいハルトマンぐらいじゃないかな?」
「ハルトマン?」
聞いたことのある名前だと凪は思ったがドミニクが未来からの人物のためすぐにエーリッヒ・ハルトマンとは結びつけることができなかった。
「エーリッヒ・ハルトマンだよ。知らないのか?史上最多の撃墜王にして世界最強の戦闘機パイロットだよ」
「ああ…」
当然凪も聞いたことはある。
2042年の世界でも伝説のエースパイロットだった。
戦後はソ連に捕まる不幸な人生を歩んでから空に戻った大エース。
「ハルトマンがどうしたんですか?」
だが、彼は敵だ。
いずれ凪もハルトマンと戦うことがあるかもしれない。
「いや、凪ちゃんはハルトマンに並ぶエースだよってことさ。負けなしだろ?あの操縦技術なら」
「いえ…」
勝てない相手はいた。
その人は凪が理想の果てとしている凪の中では誰よりも大きいパイロットである。
「決して勝てない相手ならいますよ」
「へえ」
ドミニクが興味深そうに言った。
「それは日本人か?」
「はい」
「凪ちゃんよりもすごいエースか。会ってみたいもんだ」
それはドミニクの女たらしの一面から何気なく行った言葉であったが次の瞬間彼は固まった。
「もういないんです。2042年にあった国連軍との戦いで父は私をかばって戦死しました」
しまったぁという顔をしたドミニク。
見事に禁止エリアーに入ってしまったらしかった。
「えっと…」
なんとか明るい話題にとするドミニクであったが凪が黙り込んでしまったのであきらめた。
しばらく無言でそれは彼方が起きるまで続くのであった。
それから数時間後に満州に震電は入り途中で味方の竜神が2機で迎えのためか震電の横についてその誘導に従い原子爆弾研究所近くに作られた滑走路へと着陸した。
満州に展開する関東軍は凪達にドミニクの引渡しを要求したが彼方が独立機動艦隊の名と中将の権限で引渡しを拒んだ。
相手は苦い顔で凪達をにらみつけたがドミニクはなんとか引き渡されずにすむのだった。
後に彼はこの時生きた心地がしなかったよといっていた。
作者「クリスマスも終わり」
凛「奇跡も終ったわね」
作者「さて、いよいゃ満州に到着です」
凛「何があるのよ?」
作者「ヒャハハハハ!内緒だぜ」
凛「何よその言い方は!」
作者「うぎゃああああああああ!」
ズドオオオオオオン