第135話 対峙
メリークリスマス!
「し、死ぬかと思ったわ…」
彼方は相手の戦闘機が撃墜されたのを確認してから言った。
なんだかんだで彼女は実戦は初めてだったので結構怖かった。
「ご、ごめんね彼方、体は大丈夫?」
「まあ、訓練は受けてたから大丈夫だけど…」
戦闘機のパイロットは男性より女性が向いているとされている。
彼方も戦闘機での移動も独立機動艦隊ではあるかもしれないということで父親の洋介と訓練を受けていたのだがさすがにマッハ3とか4で振り回される訓練はやってない。
「本当にごめんね彼方」
「いいわよ。実戦でのいいデーターも取れるしバリアシステムの方も実戦での有用性が証明されたしね」
震電、この戦闘機には核動力のために起こる膨大なエネルギーを紀伊などと同様にバリアを発生させる装置を備えていた。
紀伊など戦艦よりずっと小型のバリアなのだが戦闘機の動力に直結して発生させるわけだからいろいろと問題もあった。
バリア発生時は全ての動力が停止するのだ。
これはバリアにエネルギーを全てとられてしまうためである。
当初の計画ではバリアを張ったまま戦闘が可能かあるいは消えるにしても推進システムは生きるようにしたかった。
いろいろと考えては見たもののそれを克服しようとしたら1〜2年は必要だと彼方は思っている。
だが、それでは震電は実戦に参加する機会を失うかもしれなかった。
あと少し何かをいじくれば震電は震電改として完成するのだ。
その少しを得る為には凪にがんばって実戦データーを取ってもらう必要があるのだが
未完成の震電でも凪はやるんじゃないかと彼方は思っていた。
「ところでこれからどうする?烈風隊と別れた後は私達は独自の行動が許されてるけど?」
「そうね…」
彼方は考え込むように下の森を見ながら
「ねえ、凪」
「え?」
「敵パイロットが降りた場所分かるかしら?」
「え?パラシュートが木に引っかかっていたら多分分かると思うけど…」
「よし、あいつを捕虜にしましょう。なんでドイツのメッサーがいたのかも気になるしね」
「え、ええ!ちょっと待って!返り討ちにされたらどうするの!」
さすがに凪は慌てた声で言ったが彼方は強引に
「大丈夫よ。いざとなれば機関砲で粉々にしたらいいわけだし周りは森と荒野のみで町までは百キロ近くはあるわ。悪い話じゃないわよ戦闘機で満州にご案内ってね。命令よこれは、中将としてのね」
「そ、それは卑怯…」
上官の命令とあっては凪は従わないといけない。
震電を垂直で着陸態勢へと移行させた。
「悪いわね凪」
後ろから楽しそうに言う彼方に凪は泣きそうな声で
「なにかあったらすぐに逃げるからね」
「当然よ」
どうやら彼方との出会いはとんでもない不幸を招くのかもしれないと凪は思った。
森に下りてパラシュートを切り離したドミニクはやれやれと辺りを見回した。
森である。
「どこだよここ…」
どちらに行けば町なのかも分からない。
衛星も飛んでいないし携帯なんて使えるわけがない。
ドイツから来たのは自分ひとりなので味方の救助も期待できない。
ドミニクは共産党など味方だと思っていなかった。
ただ、命令があったから接触して協力していたに過ぎないのだ。
メッサーシュミットはいろいろと調べられたようだがこの時代の中国人に理解できるものではあるまいとドミニクは考えていた。
「ごちゃごちゃ考えててもしょうがねえか」
とりあえずコンパスを取り出して方向を確認していると森の中に爆風が吹きドミニクの髪をばさばさと揺らした。
「ああ?、げっ!マジかよ!」
自分から数十メートルも行かない上空から先ほどの青い戦闘機が降りてくる。
ドイツ語で降伏勧告までしていた。
さらに30ミリ機関砲がこちらを睨んでいる。
「勘弁してくれよ」
ドミニクはとんでもない貧乏くじを引かせた上官を頭の中でぼこぼこにしながら
両手を頭に乗せてうつぶせになるのだった。
「彼方はここで待ってて」
凪はオートマチック製の銃を片手に震電から降りた。
「気をつけなさいよ」
「うん、分かった」
慎重に慎重に凪はうつぶせになっている男に近づいていく。
相手はうつぶせになり両手を頭に乗せているが油断は出来ない。
銃を構えながら手錠を取り出しながらさらに近づく。
「まさか女か?」
男が言った。
「動くな!」
その瞬間凪は反射的に叫んだが男は動かない。
驚いたことに男の言葉は日本語だった。
「ま、待て!動かないから撃たないでくれ」
慌てた様子でいう男。
凪は近づきながら手錠を男の両手にかけた。
「立て」
捕虜に対する基本である威圧的に凪は言った。
もっとも向いていないなと思ってはいたが
立ち上がって振り返った男はにやりとして言った。
「やっぱり女じゃないか。それも若くて美人ときたら捕まるのも悪くはないな」
「…」
凪は黙って銃を構えていたが男の若さに驚いた。
自分と同じか少し年上ぐらいの17、8ぐらいの少年であった。
作者「メリークリスマス!」
ドミニク「女の子の味方ドミニク・ハートだ」
作者「だ、誰だお前は?」
ドミニク「ああ?男に用はねえよ」
ドン
作者「フハハハ!小銃などきかん!伊達に46センチ砲を受けてないぜ」
ドミニク「まじかよ…化け物め」
作者「今度はこっちの番だ!くらえ!クリスマススペシャルミ…」
ズドオオオオオオン
凛「反射的に攻撃したけどまた再生かこいつ…」
ドミニク「あんたは?」
凛「何よあんた?」
ドミニク「おっかねえな」
凛「うるさい!」
ドミニク「ま、まて俺は不死身じゃ…」
ズドオオオオオオン