第13話 ジェット戦闘機『神雷』活躍す
太平洋艦隊出撃の報を受けた連合艦隊は直ちに出撃した。
元々3ヶ月後の反撃は予測されていたことであったのでその動きは迅速だった。
直ちに太平洋に艦隊が集結する。
その戦力は新型戦艦武蔵を旗艦としてまず、戦艦である。長門、陸奥、伊勢、日向、扶桑、山城、金剛、比叡の戦艦部隊に加え空母 瑞鶴、翔鶴、瑞鳳、鳳翔。
それに駆逐艦や重巡と言った編成である。
航空戦力は200。
それが今動かせる日本連合艦隊全戦力なのである。
後、これに大和が加わるのだが残念ながら大和は今回の戦いには間に合わなかった。
従って今回は大和の姉妹艦『武蔵』が連合艦隊旗艦を勤める。
航空戦力では太平洋艦隊の半分にも満たない。
このままでは連合艦隊の運命は壊滅である。
従って当初の予定を少し変更されたがこれに原子力空母『赤城』が援護を目的と
して加わった。
連合艦隊は先行してくるハルゼー艦隊と激突することとなる。
「長官。私達は勝てるのでしょうか?」
『武蔵』艦長、有馬馨大佐は不安そうに言った。
「突然なんだね?」
山本が振り返って言った。
ここは連合艦隊旗艦『武蔵』の艦橋である。
連合艦隊は呉を目指そうと見せかけているハルゼー艦隊と決戦を行なうため東へ向かっていた。
「報告では敵の戦力は空母が19隻に戦艦や駆逐艦が多数の大艦隊と聞きます。しかし、我々の空母はわずか5隻。それも、小型空母を入れての話です」
山本はほうと感心した。
この有馬艦長は航空戦力の有効性を理解しているのだ。
こういう柔軟な思考の持ち主は貴重である。
「大丈夫だ。赤城も入れると航空機の数はほぼ互角だ。それにジェット戦闘機もあるのだ」
「あの『神雷』とかいう新型ですか?」
「うむ、話では音速を超える速度を出せるらしい」
「音よりも早いのですか?それはすごい」
有馬は感心していった。
「それはそうと他の独立機動艦隊はどうしているのですかな?」
と参謀長の黒島が言った。
「日向君の話ではスルーアンス率いる艦隊を迎え撃つため第2独立機動艦隊が迎撃に出たらしい」
「では第1独立機動艦隊は?」
それは『紀伊』が旗艦となる艦隊である。
「それはな…」
山本は口元を緩めて言うと2人は驚愕の表情を浮かべた。
9月7日、ハルゼー率いる機動部隊は日本の東海岸から2000キロを切ろうとしている地点にいた。
旗艦アイオワの艦橋ではハルゼーが葉巻を加えながら黙り込んで外を見つめている。
そんな時だった。作戦司令室から兵が飛び出してきた。
「レーダーに反応があります!敵戦闘機です!」
「来たな!」
ハルゼーは葉巻を床に叩きつけるように捨てる。
「敵艦隊の位置は?」
「不明です。それがレーダーに映る敵の戦闘機に妙なことが…」
「妙なことだと?」
それはレーダーに映る敵の数がはっきりしないということだった。
消えたり出たりという変な出かたなのだという。
「レーダーの故障ではないのか?」
「整備兵の話では異常はないと…」
ハルゼーは奇妙な話だと思ったが新型のレーダーなので欠陥かなにかだろうと
決め付けた。
「直ちに迎撃するのだ。敵艦隊も戦闘機が来た方角にいるはずだ!探し出せ!」
迎撃機が発艦していく。
「どうして敵は我々に気づいたのでしょう?」
ハルゼーの参謀長が言うとハルゼーはうむと唸った。
「待ち受けていたように思えるのですが…」
「例の空母が報告したのだろう」
とハルゼーは忌々しげに言った。
この海域に着くまでに1度だが敵空母発見の報告が入っている。
しかし、なんと単艦で航行していたという。
おそらくその空母の艦載機のレーダーか何かに見つかったのか…
だが、それでいいとハルゼーは思った。
元々ハルゼー艦隊は囮なのだ。
えさが食いついてくれるならそのえさを叩き潰してやろうじゃないか。
「レーダに敵艦隊が映りました!戦艦、または空母が多数」
「よし!」
ハルゼーは怒鳴った。
「攻撃隊を出せ!KILL JAPS, KILL JAPS, KILL MORE JAPS!(ジャップを殺せ、ジャップを殺せ、ジャップをもっと殺せ)」
「攻撃隊出します!」
エセックスを始めとした空母からドーントレス急降下爆撃機が発艦していく。
F4Fグラマンがその護衛につく。
第1次攻撃隊に続き第2次攻撃隊も間をおかずに発艦させる。
スルプーアンスの報告を聞いたハルゼーの判断だった。
戦闘機も上げられるだけあげた。
そして、その判断は正しかったといえた。
「戦闘機来ます!」
青い空をすさまじい速度で飛行する黒いその航空機の名は『神雷』。
レーダーにまばらにしか映らなかったのはステルス戦闘機の特徴である。
その神雷から何かが発射されブロックしようとしたアメリカの最新鋭戦闘機グラマンを
消し飛ばした。
「くそ!この前の奴じゃないぞ!」
以前ジェット戦闘機と戦ったことのあるハリー=ボーマン大尉はグラマンの中で怒鳴った。
そして、ロケット弾を発射した。
しかし、神雷はあざ笑うかのようにロケット弾を交わし、グラマンの編隊を交わして空母に向かう。
「逃がすな!叩き潰すんだ!」
ボーマン大尉は怒鳴ったがグラマンをもってしてもそれは無茶な話であった。
神雷の性能はハリアーを凌駕しているのである。仮に相手がハリアーであってもグラマンでは勝てないというのに神雷が相手ならなおさら勝ち目はない。
「くそ!」
従ってボーマン大尉は遠ざかる神雷に対して悔しがることしか出来なかったのである。
その頃ハルゼーは地獄を見ていた。
100機近い黒いジェット戦闘機が高速で突っ込んできたかと思うと何かを発射した。
「ロケット弾来ます!」
部下の兵が悲鳴を上げる。
「対空砲火を張るんだ!」
それはハルゼーが命令するまでもなく行なわれていたがハルゼーは叫んでいた。
アイオワを始めとした戦艦部隊が空母を守るように対空砲火を張るがまるでそれをあざ笑うかのごとく3つのミサイルがまず、エセックスに突き刺さり同時に大爆発と共にエセックスは海の底へと消えた。
就航してから1月も立っていない短い生涯であった。
護衛空母も無事ではすまない。
ミサイル攻撃は当然護衛空母を襲い次々と護衛空母を沈めていく。
グラマンは必死にジェット戦闘機を叩き落そうと追いすがるがどうにもならない。
たった100機の編隊に倍以上いるグラマンは圧倒されているのである。
ミサイルはグラマンも襲った。
次々と火を噴いてグラマンが叩き落されていく。
戦艦部隊は必死に対空砲火をはりアイオワの主砲も唸るが敵は1機も落ちない。
「こんなことがあってたまるか!」
ハルゼーは悲鳴を上げた。
「叩き落すんだ!奴らを地獄へ落とせ!」
しかし、地獄にいるのはハルゼーであった。
そうこうする間に護衛空母を含めた空母は全て沈没、あるいは大破という状態になり敵戦闘機はミサイルを撃ちつくしたのか悠々となんと編隊を組みなおして去っていった。
後に残されたのは空母を全て失ったハルゼー艦隊であった。
凛「ハルゼー艦隊に残ったのは戦艦や重巡や駆逐艦。
撤退するのかしらね?それとも…次回予告は艦隊決戦?。ご意見・感想お待ちしておりますと」