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第131話 出発前日の光景

さて、中国のほうに少し目を向けよう。

中国は日向達が未来から来た早々に石原に講和の成立を依頼した。

日本としての方針は中国との講和である。

始めは渋っていた蒋介石であったがパソコンにより彼の未来の末路と毛沢東のことを資料つきで話すともともと親日家であった蒋介石はたちまち日本と講和することを了承した。

大きくいう条件は中華民国は満州国を認めることにあった。

もちろん日本は共産党ではなく国民党政府を唯一の政府と認めた。

日本軍は中国本土からの随時撤退を始めておりその戦力は主にハワイに回されていた。

その結果日本は新型の戦車などの新兵器を実戦配備しつつ旧式となった兵器を国民党政府に売却し始めた。

隼や零戦などがその対象である。

レシプロ機の時代は終わりを迎えつつあるのだった。


今回再び石原が中国に向かうことになったのは日本と中国の軍事同盟の締結と大東亜共栄圏の中から作る連合軍である大東亜連合の調整に向かうためであった。

当初、富嶽で蒋介石のいる場所まで行く予定であったが石原の頼みもあり航続距離が優れている烈風が用いられることとなった。

ジェット戦闘機なので時間も富嶽よりも遥かに早くつくことが出来るのであった。

その護衛に神崎 凪も震電で向かうことになる。

なぜなら中国大陸はソ連の崩壊で弱体化したとはいえ裏からアメリカなどから支援を受けた毛沢東率いる共産党軍が人民を味方につけて粘り強く抵抗を続けていたからだ。

空も決して安全とは言いがたかったのだ。

もっとも震電や烈風相手にレシプロ機など蚊も同然であるが…




「お疲れ様です」


時刻は昼の2時、中国大陸への出発を明日に控えた神崎 凪は震電を調整している整備兵に魔法瓶にいれたお茶を渡した。


さすがに出発を明日に備えているだけあって整備はほとんど終わっていたが整備兵が行っていたのはコクピットの中の調整である。

震電の後部座席でカチャカチャとパソコンを弄りながら計器のチェックをしていた整備兵は顔を上げた。


「ありがとう」


そばかすが残る少年の整備兵であった。

さしずめ整備兵見習いかと思ったがどうやら違うようだ。

震電の横では1機の神雷がばらされて整備を受けている。

そちらには整備兵が2人ついているが震電にはそばかすの少年だけであった。


「1人で整備してるの?」


整備している少年兵の階級は自分より下である。

凪はあまりなれなれしい口調では話したくなかったが回りの目があるので少し上から口調で話す。

少年はうんと顔を凪に向けてからそうだよといってパソコンに向き直った。


ずいぶんぶっきらぼうな整備兵である。

凪は少しだけむっとなったが私は上官なのよ。などという性格ではないので…


「何か手伝うことはない?」


「ない」


と切り捨てられた。


「…」


「えっと…」


「邪魔だからあっちに行ってて」


「はい…」


さすがにそこまで言われて凪はこのままずうずうしくいるわけには行かない。

明日に向けて一応は非番の凪は日向長官辺りに許可をもらって空を飛ぼうかと考えながらその場を後にしようとしたが…


「こらぁ孝平!凪になんていい方するのよ!」


「はっ?」


声のした方を少年もとい孝平が見ると長い髪を降らしながら走ってきた震電の開発者であり白衣の少女天城 彼方が孝平の頭をグーで殴った。


「痛!何すんだ彼方!」


「うるさい!凪に謝りなさいよ!」


「何で俺が謝るんだよ!俺はただ調整作業してただけだぞ!」


「女の子を邪険に扱うなんて最低よ!」


「うるせえよ!ちょっと偉くなったからって調子こいてんじゃねえブス!」


「何ですって!やろうと思ったら私はあんたを軍法会議にかける事だって出来るのよ!」


「おもしれえやって見やがれ!」


いきなり無表情に作業をこなしていた整備兵の無表情が崩壊し先日友達になったばかりの彼方と言い争いを始めてしまったため凪はぽかんとしてその光景を見ていた。

天城 彼方は数日の付き合いで活発な性格だということが分かっている。

だが、しかしここまで言う男がの洋介以外にいるとは知らなかった。


「あ、あの彼方?その整備兵の人と知り合いなの?」


「「ああ?」」


2人の声がはもったので凪は一瞬ひるんだが彼方が嫌そうに少年を見て


「月城 孝平、私よりは・る・か・に・低い階級の幼馴染」


「いちいちむかつく言い方しか出来ねえのかブス!」


「ブスですって!」


「ああ、そうだよ!ブスブス!大ブスが」


「こ、この馬鹿孝平…覚悟は出来てるんでしょうね」


「彼方!」


凪はこのままではいつまでも終わりそうになかったので再び口を挟んだ。

彼方は孝平をちらりとみてため息をついた。


「不本意だけど私の震電を整備できる数少ない整備兵の1人よ」


「ん…」


月城 孝平は凪を見て軽く敬礼した。

どうやら人見知りするタイプらしかった。


「こいつ昔から人見知りというか女恐怖症だから無礼は許してやって」


「だれが恐怖症だ!」


孝平が声を荒げたが今回は彼が部が悪い。


「あーら、私以外の女の子にあんた声をかけられたことあったかしら?」


「う…」


言いよどんでしまう孝平。

白衣の美少女は年相応の笑みを浮かべて鬼の首とったりという顔で


「アハハハ!黙るってことは認めるって事ね」


「う、うるさい!うるさい!俺はこいつを整備できりゃいいんだよ!震電は親父の夢なんだからな!」


「え?夢?」


凪がそれを問おうとした時…


「何をやってるか貴様ら!」


格納庫の中で3人が飛び上がるほどの大音量が聞こえた

びりびりと鉄が振動した気がする。

見ると格納庫に鬼のような顔をした男が腕を組んで立っていた。


「げ、親父!」


孝平が言うと男はにやりと笑った。


「ほうまたお前か孝平。どうやら走り足りないようだな。それとも営倉にまた行きたいのか?」


「い、いやその…」


孝平が言う親父という男だが本名は角松 龍二という独立機動艦隊の兵の中ではとても珍しい鬼上官だった。

整備兵たちの中でのあだ名が親父という名であるのはその怒り方があまりに怖く親父みたいだからというらしいがこれでは鬼といった方がいい。

孝平は汗をだらだらかいて後ずさった。


「こいつらがさ…」


と凪と彼方を指差した。

必然的に親父の目が2人に行く。


「ちょっ!私は関係ないでしょ!」


「わ、私もないかと…」


命の危機を感じた凪と彼方は情け容赦なく孝平に罪を擦り付ける。

まあ、彼方と言い争いになったのは彼方は悪いし原因といえば凪なので無関係ではない。

そもそも凪はともかく彼方は間違いなく彼の上官なのだからそこまで焦る必要はないのだが…

少し運が悪かった。


「貴様ら基地を2周走って来い!」


「ちょ!」


彼方が悲鳴を上げる。

どいやらこの親父は上官であろうとお構いなしらしい。

いや、もしかしたら知らないだけなのかもしれない。

彼方 凪 孝平を合わせても平均で18歳にすら届かないのだから…

下士官と取ってもおかしくはない。

ちなみに基地の広さは相当なもので軽く1週で10キロ以上ある

体力のない理系の彼方にとってまさに地獄だった。

このと彼方は孝平を睨んだが孝平はざまあみろという顔でこちらを見ている。

凪にしろ休みなのにと泣きたくなったが休みですから帰りたいですなんていえる感じでは断じてなかった。

運の悪いことにこんな時に限って止めてくれる人は通りかからなかった。


「早く行かんか貴様ら!」


「孝平!あんた覚えときなさいよ!」


半泣きで走り出す彼方、凪もしぶしぶ走り出す。

孝平はむしろ彼方を罰に引っ張り出せたのがうれしいのかニヤニヤしながら走る。


「ハハハ!天罰だ!」


しかし、彼にも天罰は下る。


「孝平!貴様は3週だ!」



「ええ!」



せめてもの救いは夏ではなく冬だったことだが沖縄の冬なので糞寒いということはなく

終わったときには凪以外の2人は死にかけていた。

凪と彼方はシャワーとベッドを求めて寮に帰ったが孝平だけは親父に見張られて整備を完璧にこなしてから眠ったという凪達にとって散々な1日であった。



凛「にしてもずいぶんあの彼方という子と凪を引っ張るわね」


作者「あの二人、特に凪は空の主役のような設定です。陸戦部分は彼女を中心に展開させようかと思いまして」


凛「これからしばらく続くわね大陸編」


作者「出合いあり別れありの予定です」


凛「ふーん、ところで草薙」


作者「あ、嫌な予感」


凛「確か満州編や中国編はこの話からじゃなかった?」


作者「その…勘違いでした。えへ」


凛「気味悪い!」


作者「ぎゃああああ!」


ズドオオオオオオン

凛「まったく…次の話は…やっと中国に向けて飛ぶのね。意見と感想は歓迎よ。それと草薙はどうやら水曜にまた更新するみたいよ。ストックも残り少ないのにこの馬鹿は…じゃあね」

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