第130話 第三帝国の影
琉球基地で山本五十六を迎えた独立機動艦隊の艦長クラスの面々が集合し会議が行われていた。
本来ならアメリカとの決戦について話すはずのが普通だがやはりここは尾張、三笠が交戦したドイツの未来艦隊の戦力分析が優先された。
「まずはフリードリッヒ・デア・グロッセと思われるドイツの機動戦艦です」
天城 洋介が言った。
彼は相変わらずよれよれの白衣を着ている。
椅子に座っている娘の彼方は何も言わなかった。
言っても無駄だとあきらめているのだ。
モニターに映し出された機動戦艦は尾張の中にあるデーターから引っ張り出してきた画像だった。
機動戦艦の開発や改良にも少なからず関わっていた天城親子がこの説明をする。
交戦した尾張は結果的に敗北したわけだがそれはアメリカ機動部隊を守ったからであって
あの場でのフリードリッヒ・デア・グロッセと尾張の戦力はほぼ互角といえた。
違う点といえば尾張が46センチ速射砲1門に対してフリードリッヒ・デア・グロッセは
砲の大きさは詳しくは分からないが巨砲を三連装で3基備えていた。
これが速射砲だとすれば対戦艦用の兵装と見てよかった。
速射砲の役割は本来艦隊決戦ではなく飛来するミサイルの迎撃のための手順の1つなのだ。
だが、ミサイルに関してはバリアが開発されたので速射砲は未来での戦いにおいては対艦用であった。
もっとも紀伊がいた未来では日本以外は機動戦艦を開発してなかったから後のことを考えての武装だったわけであるが。
「つまりドイツの機動戦艦とこちらの機動戦艦は互角の性能ということかね?」
山本五十六が聞いた。
天城博士はめがねをかちゃりと手で直しながら少し考え込む動作をし
「これだけではなんともいえませんね。隠しだまの様なものがなければほぼ互角の性能だと思いますが…」
「隠しだま?」
山本が聞くとその場に出席している原子力空母『蒼龍』の艦長雨宮 葵大佐が口を開いた。
「私達がいた2042年は太平洋戦争でアメリカに敗北した歴史でした。しかし、今回のドイツは日向長官とアドルフ・フレドリクとの会談で私達の日本がアメリカに大勝利を収めた世界から来たということが判明しています」
「うむ」
山本が頷いた。
「大勝利を収めたのはいい。しかし、その後の歴史は大きく変わったはずでまた、科学技術も私達がいた時代より進歩していると考えられます」
昭和の時代から飛躍的に上がった科学技術にさらに積み重ねていけば科学技術が2042年の時点で本来の技術より上回っていても不思議はなかった。
「例えばどういうものなのか分かるかね?」
山本が天城博士に聞くと天城はモニターに映る画面をパソコンで操作して切り替えた。
「上げると切がありませんから例を上げて言うならレールガンですかね」
画面で回っているのは何かの砲身であった。
それもかなり巨大で巨大なカタパルトのようにも見えなくはない形である。
「これは、日本で開発中だったものの図面ですが結局間に合わすことは出来ずじまいでした。実用化するには後、数年は必要だったものです」
レールガンは電気の力で砲弾を射出する兵器であるがその破壊力は絶大である。
電力にもよるが戦艦の装甲でも軽く貫通できる。
「それをドイツが持っていた場合は?」
「…」
部屋に沈黙が流れる。
そして、口を開いたのはドーバー海峡で戦った尾張艦長椎名 浩介であった。
「勝利の確立は格段に下がると予想できます」
「レールガンもまあ、電力や大きさにもよりますがバリアで防げるか微妙なところです」
天城がため息混じりに言う。
「バリアが崩壊する強度はモンタナ級の突撃。おそらく超弩級戦艦なら打ち破れると考えられます。後は51センチ砲ですね。互いの距離が30〜50ほどの距離まで近づくことが出来れば有効ですが…そんな技量を持つ艦長や兵員が連合艦隊にどれほどいるか…」
あのフェンリルとの超高速艦隊決戦でそれをやりのけた近江の艦長森下などがそうであるが仮にレールガンが実用化にいたっていれば近づく前にズドンで終わりである。
「まあ、あるかどうかも分からない兵器の心配なんてしてたら何も出来ない。天城博士。当然何か対抗策はあるんだろ?」
それまで黙っていた日向 恭介が言うと天城博士はにやりと笑った。
「もちろんだ日向長官。根本的な解決にはならないが尾張にその作業を行っている。
紀伊と三笠にも同様の措置を取らせる」
天才博士は頼りになる味方であった。
「ところで原子爆弾の件だが…」
会議が進む中で山本が言った。
アメリカ本土に落とす予定の核は独立機動艦隊の核ミサイルを使うが後の日本の科学を発展させるためにも原子爆弾の実験は必要だった。
「それでしたらすでに準備段階に入っていますよ」
天城 洋介博士の娘天城 彼方が言った。
山本から見たら孫のような年齢の少女であるが艦魂でなく人間である。
年は16だが開発など様々な分野でその頭を披露している天才である。
「説明頼めるか?」
日向が言うと彼方は父親の洋介に代わり前に立った。
「現在満州で準備中の原子爆弾は数日中に…」
その会議が終わったのは夜だった。
ドイツの対策やアメリカとの決戦の配置などいろいろ話し合う内容が多く。
独立機動艦隊と連合艦隊が足並みを揃えるためにこの会議は必須であった。
会議のの結果アメリカとの決戦時には日本本土防衛のため機動戦艦が1隻か多くて2隻残ることになった。
アメリカは総力決戦で来るわけで機動戦艦が2隻抜けるのは正直痛いがドイツの件を考えるならしょうがないことであった。
アメリカとの決戦で投入される独立機動艦隊の戦力は紀伊 蒼龍 飛龍 赤城 加賀である。
連合艦隊は南方に派遣している艦隊を除きほぼ全戦力でアメリカと激突する。
中核となる戦力は大和になるであろうが大和と紀伊は連合艦隊から離れて別行動を取ることになっている。
つまりアメリカとの決戦で連合艦隊と共に行動する独立機動艦隊の戦力は原子力空母4隻のみとなる。
航空機だけで1000機を越える絶大な戦力ではあったがやはりイージスシステムを備えている機動戦艦がいないのは作戦に不安が残る。
もちろん機動戦艦が別行動を取るのは最大の機密で未だに山本や独立機動艦隊の上位の面々しか知らなかった。
作者「さてさて次回より満州、中国編開始です」
桔梗「私達は無視か?」
作者 「無茶言わないでください。飛行戦艦に改造しろとでもいうんですか?」
桔梗「飛行戦艦武蔵か…ええなそれ」
作者「無理だから!」
桔梗「じゃあどうするねん?」
作者「満州、中国編は彼方さんと凪さんを中心に展開します。空戦もありますよ」
桔梗「どれほで続くんや?」
作者「中国編はおまけみたいな量ですが満州編は少し長いかもしれません」
桔梗「例の神の炎やな」
作者「開発には手間取りましたが凪と彼方は満州や中国で悲惨な目に会います。しかし、震電の力が発揮されます」
桔梗「楽しみやな。まあ、がまんしたるわ」
作者「すみません。桔梗様達はハワイだすしね…独立機動艦隊は沖縄ですしね」
桔梗「なかなかアメリカ艦隊との決戦にいかれへんな…」
作者「まあ、神の炎は必要不可欠な事件ですからね」
桔梗「年末が近いが大丈夫なんか?」
作者「うーん、ストックはけっこうありますから大丈夫ですよ」
桔梗「お、この紙は米艦隊編か?な、なんやと!」
作者「駄目です!見たら駄目」
桔梗「なんやねんこれは?」
作者「ぎゃああああ」
ズドオオオオオオン