第129話 山本 五十六と震電
ドイツの潜水戦艦フェンリルによりぼこぼこにされてしまった呉であったが再建は順調に進んでいた。
とはいえまだ1月ほどしか立っていないので完全に元に戻るのは早くても半年ほど先だと考えられていた。
戦時というともあり岩国基地など各基地は滑走路を中心に最優先で再建された。
連合艦隊の…それも大和の故郷というべき呉は未来からの技術者を中心として
再建される。
せっかくだから道路の拡張など未来都市のようにしてしまえばどうかという案もあったが
道路の拡張などはするが大きく変わる点はほとんどなかった。
フェンリルとの激闘で傷ついた戦艦近江は今だドッグの中から出てきていない。
傷はそれほど深いのである。
零距離射撃は切り札ということである。
岩国基地は滑走路の整備も終わり大方の復旧作業はすんでいた。
だが、基地を守るはずの航空機はわずかしかなかった。
フェンリルの攻撃により高価でなけなしのジェット戦闘機は全滅に近い被害をこうむったのである。
ハワイ戦線がこう着状態であるため内地よりもそちらに最新のジェット戦闘機竜神は配備が優先されているのである。
艦載機である竜神が陸上に配備されるのは機体の優秀性がこれまでの戦闘機を凌駕している点にある。
フェンリル襲撃により陸海の航空隊を空軍に統合する話はあったが乗り気の海軍とは違い
陸軍は自分達の航空隊が海軍の取られるのではないかと中々設立には至らない。
とはいえ陸軍の航空機開発の方はひっくり返っても竜神のようなジェット戦闘機を作ることなど出来ないので空軍設立は時間の問題となりつつはあったが…
雲ひとつない空を青い戦闘機が下りてくる。
岩国基地では山本五十六が琉球基地にいくために迎えの戦闘機を待っていたのだ。
戦闘機で移動とはさすがに回りは不安がったが山本五十六は琉球基地で作られた最新の戦闘機『震電』に乗ってみたかった。
聞いた話によれば震電は独立機動艦隊の最強といわれる戦闘機烈風5機相手に勝利したということであった。
「おお、あれが震電か」
徐々に高度を下げてくる震電を見上げて山本五十六は言った。
岩国基地の兵士達も珍しい戦闘機が下りてくるので空を見上げている。
ジェット戦闘機といえば銀色や黒が一般的な現在の大日本帝国である。
青い戦闘機などあまり見かけない。
震電と呼ばれるその戦闘機は滑走路に着陸する。
兵士達が走っていくが整備兵にすることはない。
震電は未来でも最新の戦闘機のためこの時代の整備兵にできることはほとんどないのだ。
震電は複座である。
その前の操縦席からパイロットは格納庫の前で降りてヘルメットを取る。
神崎 凪である。
凪は3日前に震電を受け取り軽く三笠所属の烈風の小隊と模擬戦を行ってきた。
結果は震電の勝利である。
凪の技量の高さもあったがこの震電という戦闘機はこれまでのどの戦闘機も凌駕する戦闘機であった。
基地の中で山本五十六と会おうとしていた凪である。
走ってきた兵士が道案内を買って出たがその心配は無用であった。
数人の護衛に囲まれて山本五十六がこちらに歩いてきたからだ。
「紀伊所属、神崎 凪中尉です!山本長官をお迎えに上がりました」
近くまで来た山本に敬礼する凪。
「うん」
山本も敬礼を返してから興味深そうに震電を見つめた。
「ずいぶん他の戦闘機とは違うんだな」
山本五十六の知る未来のジェット戦闘機はステルスが配慮されているための平べったい形が主であった。
ハリアー3もステルスが考慮されて平べったい。
だがこの震電はのっぺりとはしていなかった。
「はい、この震電は未来で言うなら第7世代戦闘機となります。開発に関わった天城 彼方特別中将によりますとステルスを考慮せず他の戦闘機を圧倒できる戦闘機ということで作られた戦闘機です」
山本はふむとうなずいた。
「機銃はどれほどのものなのかね?」
「30ミリ機関砲です。当初の計画ではレーザー機銃が採用される予定でしたが開発が間ないあわなかったそうです」
山本はそのレーザー機銃の威力はよく分からなかったが30ミリ機関砲とはまたすごい。
既存の戦闘機ならそんなものを浴びればただではすまない。
「そうか、では神崎中尉、今日は頼むよ」
「はい」
その数時間後山本は空の人となった。
途中、なけなしの竜神が護衛についてきたが山本の遊び心とも言うべきか震電の速度についていけず仕方なく引き上げたパイロット達は基地司令に怒鳴られる羽目となった。
京子「山本はなぜ岩国にいたんじゃ?」
作者「近江を見に呉にいたんですよ」
京子「そこは書かんのか?」
作者「痛々しいですからの零は怪我してますし」
京子「なるほどのう」
作者「さて、どうしたものか…」
京子「なんじゃ?」
作者「ドイツ未来艦隊を撃ち破る方法ですよ」
京子「何?汝まさかまだ…」
作者「ハッハッハ!どうでしょう?天才の天城親子がなんとかしてくれますよ。波動砲とか開発して」
京子「波動砲は無理じゃろ…」
作者「心配しなくても私には策がある」
京子「策とな?パワーアップはせんのか?」
作者「一応、尾張を始めとしてプランはありますがバルムンクに匹敵する兵器開発はこの時代じゃ難しいかもしれません」
京子「となると体当たりか?よくあるじゃろ?打つ手がなくなったら白兵戦というパターンじゃ」
作者「うーむ…例え出来ても一隻だしさすがに警戒してるからなあ…相手の方が機動戦艦が多いし」
京子「いっそのこと宇宙人がテクノロジーを渡してとかはどうじゃ?」
作者「おお!それいただき!」
京子「この大うつけがああああ!」
作者「ぎゃああああ!」
ズドオオオオオオン
京子「馬鹿な奴じゃ冗談を真に受けおって。読者の皆も草薙が言ったことは嘘じゃから本気にしてはならぬぞ?」
作者「うう…タイムスリップも似たような…」
京子「まだいうか!」
ズドオオオオオン