第117話 アフリカ撤退作戦
紀伊の舞台は少しだけアフリカへ飛びます。
アフリカ戦線はどうなっているのか?
その岬を喜望峰と名づけた人物はその名の通りの希望を夢見てつけたのだろう。
だが、今のこの場所は地獄だと第3機動部隊の旗艦空母『アルタイル』の艦魂、アリアは
思った。
アフリカの端の端であるこの場所…空母の甲板から見える海岸には連合軍の兵士達が自分達に助けを求めて船に乗り込んでくる。
第3機動部隊はアフリカ撤退作戦を支援するためにここにいるのだった。
時は1943年2月4日のこと。
砂漠の狐ことドイツの名将ロンメルの指揮とミサイル攻撃により連合軍のアフリカ戦線は壊滅しついにアフリカから撤退が決まった。
中立国も関係なく蹂躙したドイツ軍はアフリカにアフリカ連邦を作り次々と降伏したアフリカ諸国を吸収して言った。
もちろんアフリカ連邦はドイツの傀儡政権である。
ドイツ軍は撤退する連合軍を追う気はないのかドイツ陸軍は攻撃を仕掛けてこなかった。
敵が仕掛けてこないなら早く撤退しなければというのが連合軍の本音だった。
輸送船団を護衛するアメリカ大西洋艦隊の戦力はエセックス級空母 アルタイル カペラ リゲル ペテルギウスの4隻と護衛空母7隻、航空戦力は568機
戦艦はカシオペア ケフェウス ペルセウス テネシーである。
その他に重巡や駆逐艦などが随行する大艦隊であったが彼らが護衛するのは敗北した
味方である。
「やりきれないわね…」
アルタイルの艦魂は16歳ぐらいの少女で金髪をサイドテールにしていた。
瞳は青い。
典型的なアメリカの艦魂であった。
「ここにいたのアリア姉さん」
声にアリアは振り向いた。
「リンダ?どうしたの?」
アリアの妹のリンダであった。
今ここにいるエセックス級空母の中でアリアは1番年上であった。
とは言っても日本軍やドイツ軍に次々沈められるエセックス級である。
アリアは生きている姉妹の中では生まれて1年も立っていないのに最古参組で
姉で生き残っているのは唯一星の名ではない艦名を持つホーネットのクレアだけだった。
リンダの髪はアッシュブロンドに灰色の瞳をツインテールにしている元気のいい妹である。
「どうしたのって?なんか暗くない?」
「撤退作戦で明るくなれるわけないわ」
アリアはため息を吐いてアフリカ大陸を見た。
このアフリカ大陸はアフリカ連邦としてドイツの傀儡国家となる。
無力な自分が情けなかった。
「まあ、イギリスも陥落しちゃったしアフリカも落ちた次はアメリカが…」
「そんなことさせない!」
アリアはアフリカ大陸を睨んだ。
「私達は希望を繋ぐの!この撤退作戦を成功させて再び反撃するその日を実現させるために」
「でも、太平洋の方も合衆国は負け続けているというじゃない?このままじゃ…」
リンダということももっともだった。
ドイツはアフリカを手に入れサウジアラビアの膨大な石油も手中に収めた。
アフリカ大陸も押さえて膨大な資源も…
世界の3分の1近くがドイツに制圧されたことになるのだ。
陸で言うならかろうじてインドが生き残っている。
ソ連もばらばらにされ満州との国境までドイツの支配下である。
もっとも内部を落ち着かせるためにこれ以上の侵攻はしばらくは不可能だろうが…
「それでも守るの!合衆国は私達軍隊が!」
「うん…そうだね…」
彼女達に待っているのは絶望なのかもしれない。
それでもアリアは命尽きるまで合衆国のために戦うつもりでいた。
それから数日が過ぎ、兵士達を収容をしたアメリカ艦隊はアメリカ本国に向けて出港した。
第3機動部隊の司令官ゲイル少将は旗艦空母『アルタイル』の艦橋で腕を組んで座っていた。
艦橋にいる皆が緊張に包まれた顔をしている。
ドイツ艦隊の襲撃を恐れているのだ。
「レーダーに反応はないか?」
ゲイル少将が聞くとありませんと声が返ってくる。
「では、偵察機からの報告は?」
それは四方に飛ばしている偵察機である。
「定時連絡の時刻はまだ先ですが…」
「うむ…」
ゲイル少将は不安げに大西洋の海を見た。
第3機動部隊は大量の兵士を乗せた輸送船団を護衛しながらセントヘレナ島の西400キロを16ノットの低速で進んでいた。
輸送船団を伴うと動きが鈍るのだ。
「モンスターが出なければいいのだが…」
モンスター戦艦やドイツの空母が現れればゲイルの機動部隊は終わりである。
アメリカ本国からは輸送船団を死守せよと命令が降りているが…
「いつからこうなってしまったんだ…」
ゲイルは嘆いた。
栄光ある合衆国海軍がぼこぼこに負け続けている。
こんなことがあっていいはずがないとゲイルは思った。
「そうだろう…」
誰に言うわけでもなくゲイルはつぶやいた。
「その通りですゲイル少将」
アリアはゲイルの呟きを聞いていた。
「我々の合衆国は…」
アリアは最後まで言うことが出来なかった。
兵士が慌てて艦橋に飛び込んできたからだ。
「か、艦長!レーダーに敵が!」
「な、なんだと!」
ゲイルは絶望的な気分になった。
これまでモンスター戦艦と戦い気づいたときにはミサイルの攻撃を受けている。
今回も例外はないだろう。
だが…
「攻撃隊を出せ!」
ゲイルは少将である。
はい、そうですかとあきらめるわけには行かない。
ジェット戦闘機シューティングスターが空母から発艦していく。
普通ならこの段階前にミサイルが空母に直撃しているはずだ。
「なんで?」
アリアは発艦していくシューティングスターを見ながら艦隊が2手に分かれるのを見ていた。
駆逐艦を護衛とし輸送船団が離れていく。
第3機動部隊は輸送船団の盾となるつもりだった。
第1次攻撃隊が北の空へ飛んでいくのを見ながらアリアは祈った。
みんな帰ってきてね…
それが適わぬ願いと知りながら…
クレア「舞台はアフリカですか?」
作者「その通り!まあ、長くは続きませんよ多分」
クレア「私の妹達は無事撤退はできるの?」
作者「さあ?」
クレア「死になさい!」
作者「ぎゃああああ!」
ズドオオオオオオン
クレア「逃げましたか…しつこいです。あ!空母、戦艦の名前のアイディアありがとうございました。実は戦艦は銀河の名前、空母は惑星の名前でまだ募集していますからどしどしとご応募を待ってます」