第114話 東條の頼み
「ハワイ占領おめでとう長官」
首相官邸の一室で山本と日向を出迎えた東條 英機首相は山本 五十六の手を取って言った。
ハワイ占領以来直接会うのは始めてである。
「いえ、まだこれからです」
山本も東條の手を握り返した。
「お久しぶりです。 東条首相」
「うん、君と会うのも久しぶりだな。日向長官」
東條は現在の戦況に満足しているため機嫌よく微笑んで言った。
3人は部屋にある椅子に座ると出されたお茶を口に含んだ。
「ところでこれからのことなんだが…」
先に切り出したのは東條であった。
「これからというと?」
山本が聞いた。
「機動部隊を南太平洋に向ける余裕はないか?山本長官」
山本は目を見開いた。
ハワイ占領という大事な時期にこの男はなんて事をいうののだろうと山本は東條を凝視した。
「そう睨まないでくれ山本長官。陸軍の中には海軍ばかりが活躍して不満を持っているものも多いんだ。MO作戦のような新たな作戦をするというわけにはいかんかね?」
「無理です」
山本はきっぱりといった。
「一部でも構わないんだが…」
東條が言う。
本来戦略は大本営で決められるがこの時点での山本 五十六の信頼は昭和天皇にとって東條より厚くて無視して決めることが出来なくなっていた。
「南太平洋には第4機動部隊を派遣していますが正直それすら惜しい状況です。ハワイから動かせる空母が1隻もありません」
山本が言うと今度は東條は日向を見た。
「では機動戦艦はどうかね?紀伊かあるいは大和1隻のみでも事足りると思うんだが…」
機動戦艦1隻の戦力は機動部隊を上回ることは常識となりつつあった。
1隻で戦局を覆すことが出来る機動戦艦なのである。
しかし、日向も首を横に振った。
「無理です。南太平洋へは防衛のための出撃ならともかく侵攻のために派遣できる機動戦艦や空母はありません」
「むしろ以前よりお願いしている陸軍の撤退はどうなっているのです?」
今度は山本が東條に問うた。
ガダルカナル島からの撤退作戦である。
「それは…」
東條は口ごもった。
陸軍の正直なところを言えば勝っているのに撤退するなど馬鹿がやることだという意見が多かったのでなかなか撤退の方向へはいかない。
ガダルカナルは史実ではヘンダーソン飛行場と名のつく飛行場を作り終えて基地も完成していたのだ。
それを撤退しろと言われても納得できるわけがないというのが陸軍の言い分だった。
「この広がりすぎた戦線を縮小する必要があるのです。陛下もそれをお望みとのことでした」
「陛下が?」
東條はあきらめた様子であった。
天皇の言葉は絶対だ。
特にこの東條という男は天皇に対する忠誠心が異常なほど高い。
これまで撤退に関して天皇の名をあまり出さなかったのは無理やり従わせるようなことをしたくなかったからである。
「分かった。撤退できるように大本営で言おう」
「ありがとうございます」
日向はその言葉に満足して言った。
東條はため息をついてタバコを口にくわえた。
「ところで例の話なのですが…」
「例の話?ああ、あれか」
東條はふーと煙を吐いていった。
タバコをすわない日向は少し嫌そうな顔をした。
「準備は出来ている。しかし、本当にできるのかねそんなことが?」
「アメリカが愚かでなければ大丈夫だと思います」
「そうだといいがな」
と東條は言うのであった。
それから数日後、ドイツがイギリス侵攻作戦シーライオン作戦を発動した。
日本のハワイ攻略と連動して行うと予測されていたその作戦に対して日向は機動戦艦『尾張』をイギリスへ派遣していた。
あわよくばドイツのイギリス侵攻作戦を頓挫させるのが目的であったが結果はイギリスは陥落しイギリス艦隊はオーストラリアに本家イギリスを打ち立てることになる。
イギリス撤退作戦のおり3日間の不戦の約束がアメリカ、日本、イギリスの間で成り立ったのである。
しかし、それは仮初の休戦であり真の休戦ではない。
日本とアメリカの戦いはまだこれからなのだ。
凛「南太平洋がだんだんと注目が…」
作者「それはもちろんあちらで海戦があるからですよ」
凛「南太平洋の日本の戦力は?」
作者「原 忠一の第4機動部隊と第8艦隊がいますね」
凛「守りきれるの?」
作者「さあ?」
凛「はっきりしないわね」
作者「フフフ、凛様?」
凛「何よ?」
作者「アメリカの戦力は疲弊してるとはいえ空母は南太平洋にいます。そこにオーストラリアを目指すイギリス艦隊が加わればどうなります?」
凛「あ!」
作者「そういうことです」
凛「もっとはっきりいいなさいよ」
作者「ぎゃああああ!」
ズドオオオオオオン