第110話 秘密の苦悩
天気は晴天、真珠湾基地のあるオアフ島は1月だというのにまさに常夏の楽園であった。
「はぁ…」
ため息を吐いてワイキキビーチの砂浜に寝転んだ神崎 凪はじりじり照り付ける太陽に目をしかめたが太陽が雲に隠れるとようやく安堵のため息をついた。
(疲れたなぁ…)
なにせ昨日は眠っていない凪は急に押し寄せてきた眠気に体が動かなくなっていくのを感じた。
(戻ら…ないと…)
凪の意識は闇に落ちていった。
独立機動艦隊司令長官日向 恭介は出掛けてくると古賀にいい真珠湾基地を出てワイキキビーチにやって来ていた。
むろん古賀は怒り狂ったが日向は偶然?通り掛かった雷の艦魂真弓に転移してもらって陸に上がった。
車を一台借りる(職権乱用)と車からビーチパラソルや机を運び出してビーチにセットした。
「よし」
ハワイなのでアロハシャツにズボンと言った格好の日向は他人からみたらとても天皇の直属とも言える艦隊の司令だとは思えないだろう。
ゴトリと
『シグザウェルP230』
と名のつく銃を砂浜に置いた折りたたみの机におくとパソコンを開いた。
このパソコンは特別性で機密を守る措置が施してあるものであった。
軍用の日向のパソコンで出来るときは仕事がはかどるので日向は外で仕事をする。
パソコンに太平洋の地図が映し出される。
日向は何かを考えて南太平洋をズームアップした。
現在南太平洋は小康状態にある。
ガダルカナル撤退を要請した日向であり当初は史実の絶対国防圏まで戦力を下げようとしたが陸軍がいうことを聞いてくれなかった。
陸軍は独立機動艦隊の技術援助により舞い上がり米豪遮断の長期に渡る戦いを当初推し進めようとした。
山本長官のおかけでそれは阻止できたが今だにガダルカナルから陸軍は撤退しようとしない。
海軍が力を貸さないので陸軍はそれ以上進めない状況に陥っていた。
南太平洋には紅龍級空母1隻を伴う重巡中心の第三艦隊がいるが山本の命令で陸軍の援護は禁止されている。
早期に提案のあった空軍が難航しているのも陸軍が原因らしい。
南太平洋はマッカーサーがアイシャルリターンを理由にフィリピン奪回を目指しているがアメリカの空母は壊滅状態で南太平洋に送るくらいなら本土防衛にというのが今のアメリカの本音だろう。
そのため南太平洋は軽い小競り合いくらいしか起こらない平穏な時が流れていた。
「動くとしたら…」
カチカチとキーを叩くとオーストラリアの艦隊戦力が急上昇した。
「イギリスが陥落した場合、オーストラリアにイギリス艦隊が逃げ込むなら…」
画面に写しだされたマッカーサの写真を日向は見ながら
「来るな…」
イギリス艦隊との決戦である。
だが、日向はイギリスとは戦いたくなかった。
そのため尾張を欧州に派遣してイギリス陥落を防ごうとしていたのだ。
「…」
今度はドイツの地図をアップして戦力を確認した。
だが既存の戦力はともかくドイツの未来艦隊の戦力はまったくの謎だった。
唯一わかっているねは…
日向はあのエリーゼと言っていた機動戦艦の艦魂を思い浮かべた。
『フリードリッヒ・デア・グロッセ』
先日呉を襲撃したフェンリル以外で唯一わかる未来戦艦の名前だが性能は未知数だ。
こちらの手札はバレバレである。
「くそ…手札がばれた戦いなんて不利にもほどがあるだろ」
悪態をつきながら日向はパソコンをいじった。
既存の戦力だけでドイツを破らなければならない。
大和、紀伊、尾張、蒼龍、飛龍、赤城、加賀
大和以外の未来艦隊全てだがフェンリルの襲撃を考えるとドイツの未来艦は一隻や二隻じゃないのはあきらかだった。
「どうするかな…」
腕を組んで考えこみふと横を見ると戦時のためか誰もいなかったワイキキビーチに誰かが寝ている。
最初は民間人かと思って銃とパソコンを手に持って近づいていくと…
「神崎じゃないか」
すぅすぅと眠る神崎 凪がいた。
パラソルを移動して凪を影にいれているのを確認した真弓と由真は顔を見合わせ某殺人ノートに出てくる主人公みたいな顔をした。
(計画通り)
そしてさらに離れて監視する謎の艦魂は通信機のスイッチをいれた。
「こちら紅、任務を継続する。方向終わる」
京子「なにやら007の小説がすごいことになっておるのう」
作者「言っちゃ駄目です!」
京子「安心せい。いわんわ」
作者「ほっ」
京子「じゃが読者の期待にはのらんとな。飛ぶんじゃ草薙!」
作者「ぎゃああああ!」
ズドオオオオオオン