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第109話 山本の思惑

『連合艦隊艦魂司令部』とは日本軍でいう『連合艦隊司令部』である。

連合艦隊艦魂司令部の現所在地は機動戦艦『大和』にある。

その一室、大和艦内にある空き部屋の一つに艦魂達の連合艦隊司令長官であり大和の艦魂撫子はいた。


「しかし、姉さんよかったんか?」


部屋にある机の一つで姉を手伝っていた武蔵の艦魂桔梗が姉の方を見て言った。


「なにかしら?」


撫子も顔をあげた。いつもながら思うがその仕草ひとつひとつに優雅が伺えるなと桔梗は思った。


「いやな、由真達の『忍』の連中のことや。やり過ぎにならんとええんやけど…」


「すでに何人か調査に動かしているから大丈夫よ」


「ほんまに?」


「ええ」


撫子はカチっと机の上においてある電話を取る。


桔梗も繋がっているので机の上の電話を取り耳に当てた。


「GFより『紅』へ、状況をお願いします」


撫子がいいしばらくの沈黙の後


「こちら紅、目標αは真珠湾基地を抜けたもよう。最重要目標は現在小沢長官、宇垣参謀長と話をしています」


「ごくろうさまです。そのまま監視を続けてください」


「了解、通信終わる」


ブツンと回線が途切れる音が聞こえ桔梗は撫子を見た。


彼女は笑みを絶やさずに電話を受話器に置いた。


「なあ、姉さん…」


「あら?なに桔梗?」


あのコードネーム『紅』って誰のことなんやと桔梗は聞こうと思ったがやめた。ただ、うちの姉は恐ろしいと再認識する桔梗であった。



















その頃、真珠湾基地より少し離れた場所にある病院の一室では山本長官は誰もいないことをいいことに逆立ちをしていた。

物を考えながら最近は山本はよくこれをする。

もし、看護婦(このころの名称)や医者が見たら悲鳴をあげる光景である。

なにせ昨日まで山本は意識不明の重態であったのだ。


だが山本からしてみれば連合艦隊司令長官に戻る以上いつまでも寝てられない。

なにせ太平洋艦隊と日本連合艦隊の最終決戦は避けられないこの状況である。

山本の中や連合艦隊司令部ではアメリカ本土攻撃はすでき決定事項である。

日本が攻めればアメリカも本土防衛の航空戦力と機動部隊、戦艦などの水上戦力を全てだしてくる総力決戦となるだろう。

だが、問題は…


「ドイツがどう動くかだな…」


山本はふぅと息を吐いて逆立ちをやめた。

汗を右手で拭いながら窓の外に見えるハワイの海を凝視した。


(国内の整備は進んでいる。補給も含めてると決戦は半年ぐらい先か…)


先日のドイツの呉襲撃は事実上の宣戦布告である。


(これでいいのか?アメリカと休戦するにはアメリカ本土攻撃は必須…しかし、ドイツはソ連を崩壊させた。残るはイギリスだが半年持ちこたえられるか…)


世界情勢は連合国にとって厳しいものになりつつある。


アフリカは砂漠の虎の名を持つ猛将ロンメルにより連合軍は壊滅状態と聞く。

アメリカの膨大な補給もドイツに現れた未来戦艦のせいでまったく届かない状況に陥っている。

アフリカはもはやドイツが制圧したと言っていいいだろう。

そして、ソ連だ。

あの広大な領土は一国一国が四国くらいの大きさの小国に分断されドイツ傀儡国家になっている。

満州との国境に出来た国はロシア、この国は日本ほどの大きさを残す大きな国だがやはり傀儡国家である。

ただ国内の反抗勢力は存在し完全に鎮圧されるまではまだ時間があると山本は思っていた。

陸軍は先日の呉や基地攻撃に怒りロシアに攻め込むべきだという意見が押し初めていると聞く。

戻らなければ…


山本は思った理由である。

ドイツとアメリカを同時に相手にする力は日本にはない。



「早まるなよ陸軍」


山本がそこまで言った時だった。

急にガタンと音がしたので山本が振り向くと士官服を着た少女が山本の病室に入ってきた。

艦魂で山本も知る人物だった。


「おお、凛じゃないか」


先程までの厳しい顔は隠して山本は人ななつっこい笑みを浮かべた。

凛は山本をちらりと見てから病室を軽く見回し


「こんなところにいるわけないわよね…」


と山本には訳のわからないことを言って出ていこうとした。


「おいおい、せっかくきたんだから少しくらいいたらいいだろ?」


と山本が呼び止めると凛は振り返って病室に入ってきた。


「何か甘いものはある?」


「羊羹ならある」


と山本は部屋から持ってきていたクーラーボックス(入手先は日向)を空けて包みを凛に渡した。

芋羊羹である。


「包丁は?」


ああ、そういえば艦魂の空間から物を取り出す能力は艦の上限定だったなと山本は思いながら果物ナイフを凛に渡した。


凛は羊羹を切り分けると山本に半分渡した。


「全部食べていいぞ」


「本当に?」


凛の顔がぱっと明るくなり羊羹を全部自分の皿に乗せて幸せそうに食べはじめた。


山本は孫を見るような顔で凛を見ていた。


「小沢のやつが持ってきたものだがなうまいか?」


「うん」


凛は口に羊羹をいれながら答えた。


「ところでなんで俺の病院に来たんだ?誰かを探してたようだが…」


「神崎 凪っていう紀伊のパイロットを探してたの」


「そりゃまたなぜだ?」


そういいながら山本は頭の中の神崎という名を探すと日本軍最多の撃墜王としてヒットした。

撃墜記録が日本でつけられるようになったのは第一次ミッドウェー海戦以降ではあったが岩本 哲三と並び撃墜記録最多の彼女の名を山本は捜し当てた。



「恭介と…だ、抱き合ってたって」


いいにくそうというか少し怒気を発しながら凛は言った。


「ほう、日向君は隅におけんな」


「うるさい」


「む…」


連合艦隊司令長官にこの言葉、金剛の艦魂柚子がいたらすごいことになったかもしれんと山本は思った。


「あ、ごめんなさい。山本に向かって…」


「いや、なに階級は同じだよ」


未来において日向が最後の連合艦隊司令長官ということは彼の指揮する紀伊の艦魂である凛は艦魂の連合艦隊司令長官となるわけである。

階級的には対等である。


「私そろそろ行くわ」


凛が立ち上がった。


「もう行くのか?」


山本が淋しそうに言った。

昨日はお見舞いが多かったが今日はなぜかあまり来客がないのだ。


凛は不思議そうに山本を見て


「いてほしいの?」

「そうだな。たまにはゆっくりと話すのもいいだろう。未来の話なんかを聞かせてくれんか?」


「いいけど食べるものは?」


山本は苦笑しながらクーラーボックスからりんごを取り出した。


「なにが聞きたい?」


凛はそれを切りながら言った。


「そうだなぁ…2040年の…」



この後、山本と凛は夜に消灯になるまで未来の話を語り尽くした。


こうして凪追撃の追っ手は一人消えた。





京子「のう、草薙」

作者「はっ?なんですか」


京子「この次の日には日本に向けて山本は立ち去るんじゃろ?」


作者「はあ」


京子「そうなると我達の出番はどうなるんじゃ?」


作者「うーん、しばらくお休み?」


京子「ふざけるでない!」


作者「ぎゃああああ!」


ズドオオオオオオン


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