第101話 消えゆく命と動めく闇
「今夜が峠です」
1943年1月7日21時18分、2042年から医療スタッフとしてやって来ていた坂井医師は集中治療室から出てくるなりその場にいた人物に言った。
「そんな…」
その場にいたのは宇垣ただ一人だった。小沢達も見舞にきたがったが山本不在のためそんな余裕はなかった。
宇垣にしろ雑務を終わらせてから直行できたのである。
『山本長官容態悪化』
その事実は司令クラスにしか話されていなかったが宇垣は小沢に呼ばれてその事実を教えられ慌ててきたというわけである。
「なんとかならんのか先生あんたは未来の医師なのだろう?」
宇垣は顔を蒼白にして坂井に詰め寄る宇垣であったが坂井は首をただ横に振り
「医者は神ではないのです。いかに医療技術が進もうと救えない命はあります」
「だが…山本長官が死ねば世界は…」
山本長官の死は単なる死ではすまない。負けているならともかく勝っているこの状況で米軍に山本長官が殺されたとなれば日本軍…特に海軍はドイツとの戦いにおいてもアメリカとの連携を拒むだろう。
山本はそれほど影響力がある人物なのだ。
「なんとかならんのか?」
宇垣は必死にいうが坂井はただ首を横に振りながら言った。
「神に祈りましょう…」
アメリカ合衆国ホワイトハウスではルーズベルトがトントンと車椅子を指で叩きながら報告を聞いていた。
「結局の所作戦は成功したのかね?」
ルーズベルトが目の前にいる海軍長官キングを見て言った。
「山本の乗る爆撃機を撃墜したという報告が入っています。奴らの連合艦隊司令長官は小沢治三郎になったとも報告が入っています」
「そんなくだらないことを聞いているんじゃない」
ルーズベルトは冷ややかにしかし、怒りをにじませながら
「山本は死んだのか?生きているのか?私は国民にリメンバーパールハーバの親玉を倒したと言えるのかね?」
キングは冷や汗を流しながら
「葬儀の報告はまだありませんが奴らが隠しているか…司令クラスの人物がオアフ島の病院に通っているという報告もあります。山本は生きているのではないでしょうか?」
「つまりは失敗かね?」
「はい、もっとも小沢が連合艦隊司令長官になったということは良くて死亡、悪ければ意識不明や軍務を行えない体になっている可能性は高いかと…」
「ふむ…」
ルーズベルトはため息を吐いてからコーヒーを口に運んだ。
「ではもうひとつ君に報告が入っているか聞かせてもらおう。紀伊、尾張といったあの戦艦のことは何か分かったか?」
「進展はありました」
キングが言うとルーズベルトはにこりと微笑んだ。
「聞かせてくれ」
「はい、紀伊、尾張が所属する独立機動艦隊、合衆国のコードネームはゼロですがその司令、日向 恭介という男が妙なのです」
「妙?何が妙なのかね?」
「経歴を調べたのですが軍の記録などに残っていないのです」
「日本人ではないということか?」
「わかりません。ただ、一つ言えることはゼロが確認できるようになった頃から日本の技術はおかしいほど向上しました」
「確かに…」
ルーズベルトは日本の兵器を思い浮かべてた。
誘導ロケット弾、ジェット戦闘機、不可思議なバリアとでもいうもの。
「どれもすごいものばかりだな」
「はい」
ルーズベルトは何かを考えこんでから
「拉致できないか?」
「は?」
キングが聞き返すとルーズベルトはにやりと笑い
「その日向という男を拉致、いや、捕虜にできないかと聞いているんだ」
「捕虜にするなら他にもいると思いますが…」
ルーズベルトは首を横に振った。
「駄目だ。司令クラスでないと意味はあまりない。直接会って聞こうじゃないか日向とやらに会って経歴を。できるか?」
「検討してみます」
キングは言ってからこれはまともな作戦ではないと思った。ルーズベルトは狂いかけているのかもしれないとキングは思ったが口には出さなかった。
エリーゼ「アメリカもいろいろとやりますね」
京子「まさか拉致とはのう…どこかのならずもの国家と違い捕虜なんじゃろうが…」
エリーゼ「まあ、成功する可能性は低いですね。アメリカもそこまで余裕があるか…キングも検討しますで逃げましたしね」
凛「恭介が…もし捕まるならワシントンに核ミサイルを撃ち込んでやるわ」
エリーゼ「その格好…フっ」
凛「うう…もう諦めたわよ」
京子「見る人が見たら襲いそうな格好じゃな…」
凛「それもこれもあいつらが…」
作者「いや、凛様?本当に似合ってますよ?」
凛「ふ、フフフ…そんなに死にたいの草薙?」
京子「まあ、可愛いのは認めがのぅ」
エリーゼ「ですね。少なくても似合ってないわけではありません」
凛「あんたたちも調子にのるなぁ!」
エリーゼ「撤退です」
京子「逃げるのじゃぁ」
ダダダ
作者「あ、みんな待って!おいて…」
凛「ぶっ飛べぇ」
作者「戦うメイドさん?ぎゃああああ!」
ズドオオオオオオン