第98話 連合艦隊司令長官山本五十六
投げ出された山本長官の安否は?ついに一部が判明
ばりばりと富嶽天井が吹っ飛び自分が投げ出されたというところまでは覚えている。
山本五十六が意識を覚醒させたのは満天の夜の海であった。
「俺は助かったのか?」
漂流しているので助かったとはまだ言えない訳だが山本五十六は自分が流木にしがみついているのに気がついた。
どうやら無意識に水から出てしがみついたらしい。
体は怪我はなかったが救命胴衣は無くなってしまっていた。流木がなければ今頃海の底だっただろう。
いろいろ便利ですからと日向からもらった衝撃に強い腕時計のライトのボタンを押してみると時刻は午後10時である。
投げ出されてからすでに5時間は経過していた。
「そうだ。宇垣と朱里は?」
あたりを見回すが月明かりにより見える範囲に動く生き物の姿はなかった。
「無事だといいんだが…」
とにかく山本は持ち物のチェックを始めた。
食べ物はないし飲み物なぞあるはずがない。
着の身着のままというわけだ。
喉もかわいているし腹も減った。
水なら大量に周りにあるが塩辛くて飲めるはずもない。
おまけに暖かい温暖な気候の場所とはいえ海の中にずっといたわけである。
体は冷え切り手も冷たかった。
(いかんな…)
山本は意識が遠退いていくのを感じていた。
次に目が覚める保証はない。
次の瞬間には海の底かもしれないのだ。
(眠っては…)
そう思いながら山本の意識は遠退いていった。
「なんだと山本長官が?」
軍令部総長の永野修介大将が呻くようにいった。
太平洋の大半は日本が制海権を握っているはずである。
そこに山本長官の富嶽が撃墜されたとの報告は大本営を震撼させた。先日のフェンリル来襲の傷もまだ癒えておらず軍は大忙しの状態であった。
「なんてことだ…これからという時に…」
「まだ、死んだと決まったわけでは…」
参謀長は顔を青くして言った。
「楽観的なことを言ってるんじゃない。ならその言葉に責任をとれるのか?」
「長官が無くなっていたら腹を切ります」
「ほう、よく言ったと言いたいが自決は陛下が禁止なされている。軽々しく自決などと言うな」
「は、はい…」
永野の言葉に参謀長は冷や汗をかきながら言った。
「しかし、最悪の事態も考えねば…連合艦隊司令長官は…山本長官の後任は誰がいいか…」
「古賀大将にはすでに承諾をいただいています」
参謀総長が言った。
「適任だな。でも今すぐという訳にはいかないな…代行は小沢君に任せよう」
「小沢中将にですか?」
参謀総長が驚いた声で言った。
「ああ、彼はみら…いや、なんでもない」
参謀総長は永野は訝しい目で見た。
永野は未来からの戦艦が現れたことを知っている人物だった。
というのも軍は個人の力では動かない。天皇の言葉は絶大だが疑問をもたれては勝てるものも勝てない。
そこで口の固いものには事実が教えられていた。
「連合艦隊を彼に任すのも運命なのかもしれんな…」
永野はつぶやくように言ったが参謀総長にその意味を知るすべてはなかった。
山本五十六連合艦隊司令長官死す。
その誤認ともいえる情報は呉にいる艦魂達に衝撃が走った。
フェンリルとの戦いでぼろぼろになった大和級4番艦『近江』は修理中であった。
その艦魂零は近江のドッグの屋根で満天の空を見上げていた。
零は山本長官にあったことはないが泣き崩れる艦魂達を見て偉大な人だったということは分かった。
会って見たいと零は思った。
ここまで艦魂達の心を掴む偉大な長官…日本にはこういう人こそ必要なのだ。
「生きていてください。山本長官」
零は手を重ねて月に祈った。
桔梗「なんやねんこれ!山本長官は結局死んだんか!」
剣「説明を要求します」
作者「ひいいい!」
撫子「まあまあ、皆さん。作者様も100話目前ですので容赦いたしませんか?」
凛「そういえばそうね」
京子「黒鉄のボリュームには遠く及ばんがな」
凛「作品のレベルも桁違いね」
桔梗「黒鉄さんに書かれたかったわ」
作者「ちょっと!最近皆さんひどすぎませんか?」
撫子「大丈夫ですよ作者様、私は味方です」
作者「おお…天使だ…」
凛「なんか腹がたつわね」
作者「へん、こうなったら撫子様以外みんな沈めてやる。大和単艦でアメリカを撃破だ」
撫子「作者様…味方の期間は終わりました。そんなラストは私は望みません」
作者「え?ああ!嘘です!」
桔梗「もう遅いわ!撃てえ!」
ズドオオオオオオン