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第97話 小さな休戦


ザザザと波をかきわけながら常夏の島ハワイ方面の海から巨大な艦船が西に向かい航行していた。

もし、彼等のことを知らない人がその光景をみたらこういうだろう。


「なんという速さだと…」










空母『信濃』を中心としてゆく艦隊は山本の乗る富嶽が撃墜された海域に向かう救援艦隊であった。

演習に出ていた艦隊がそのまま救援艦隊となったわけだである。


高速戦艦『紀伊』『大和』は50ノットで進む艦隊より先にいきもう見えない。



戦艦日向の艦魂京子は己の艦の第一主砲の上で空を見上げていた。

見渡す限り満天の星空である。


「京子」


そんな京子の後ろに伊勢の艦魂剣が転移の光と共に現れた。

しかし、京子はそれに気づかずただ座ったまま空を見上げている。


「京子!」


もう一度剣が声を後ろからかけると京子は振り返った。


「ん?おお、姉上どうかしのか?」


剣はため息を吐き


「ぼーとしてたのはあなたでしょ?どうかした?」

京子はまた、空を見上げながら


「いやな…あまり話にあがらんが確か宇垣のやつもあの富嶽に乗っていたらしいからのう…」


「気になるの?」


剣は京子の横に座り空間からオレンジジュースを出して京子に渡した。


「おお、すまん姉上、一年もおらなんだが我の艦長をしていたことのある男だからのう…少しくらいは心配してやらんと思うのじゃが…もちろん山本の安否は気掛かりじゃがな」


「大丈夫よ京子、朱里さんがついてるんだから山本長官も宇垣さんもきっと…」


「だといいがのう…」


危機に見回れていることなどしるよしもない二人はただ早く自分達が現場に着くことを祈るのであった。













京子達がいた海域より遥か西の空は先程まで雲に覆われ闇であったが雲は薄れ月の光が宇垣達を照らしケリー、朱里、宇垣は互いの顔をはっきり視認した。


〔〕は英語です。



〔え?なぜ女がここに?〕


宇垣を庇うように前に出ている朱里を視認したケリーは混乱した声をあげた。

宇垣達とケリーの距離は10メートルほどしか離れていない。ケリーは混乱してその場に立ち泳ぎを始めた。



そして、朱里達も相手のアメリカ兵が自分を見えるということに驚いていた。


「朱里、あのアメリカ兵は…」


宇垣が言うと朱里は頷きながら


「はい、私が見えるみたいですね」


ある程度の警戒は残しつつ朱里はパイロットを見た。


彼は不思議そうな顔でこちらを見ている。

自分達を殺そうとしたなど今では信じられない。


「まだ、子供だな」

宇垣はケリーを見ていった。


「16歳くらいでしょうか?」


もしこの時ケリーが日本語を理解していたら怒っただろうが幸いケリーは日本語を理解していなかった。


「できればこんな状況で争いたくないな…朱里、説得できんか?」


「捕虜ではなく協力者ということでいいですか?」


「ああ、頼む」


「分かりました」


朱里は剣を鞘に戻すとケリーの方に泳ぎだした。


〔く、来るなジャップ!〕


ケリーはナイフを朱里に向けようとしたが相手は少女といえる年代の相手である。

いきなり刺すことはケリーにはできなかった。


朱里は一旦近づくのをやめて声が十分に届く位置で


〔私は大日本帝国海軍所属の戦艦比叡の艦魂です。あなたと争う気はありません。この場は協力を申し出ます〕


ケリーは目を丸くした。

彼女が艦魂だということはすぐに納得できた。



ケリー自身艦魂の知り合いがいるからだ。

しかし…


〔そこの男は山本五十六か?〕


宇垣を見て言うケリーに朱里は首を横に振ることで返した。


〔違います。彼は宇垣 纏さんです〕


〔では山本は死んだのか?〕


〔不明です〕


一瞬朱里はケリーに怒りの視線を向けたが一瞬だったのでケリーは気づかなかった。


〔ここで傷つけあえばお互いただではすみません。あなたもまだ死にたくないでしょう?一時休戦を提案します〕


〔…〕


ケリーは黙りこんだ。

選択肢はある。

あくまでジャップを命をかけて殺すかこねまま彼等とともにいるか…

あるいは別行動をとるかだ。

1番生存率が高いのは互いに協力しあうことである。

最悪自分は捕虜になってしまうが助かる公算は高かった。


(帰ってきてね)


クレアのあの言葉がケリーの胸に突き刺さった。

死にたくないとケリーは思ったのだ。


〔いいだろう。一時休戦してやる〕


〔助かります。仮に私達の味方がきたらおとなしくしていただけますか?あなたの味方がきたら私達は観念しましょう〕


〔運試しという訳か?〕


朱里は頷いた。


〔分かった…〕


〔ではあちらの宇垣さんに貴方を紹介します。ナイフはしまってくださいね〕


ケリーは自分がナイフを持ったままだということに気づきナイフのホルスターにいれた。



小さな休戦が日米で成立した瞬間だった。



エリーゼ「朱里達とケリーとのあいだに結ばれた小さな休戦」


京子「現実はこうはいかんじゃろうな…」


凛「アメリカの潜水艦が回収するのが先か私と撫子が到着するのが先か勝負ね」


エリーゼ「もっともアメリカの潜水艦は逃げてこないとおもいますけどね」


京子「そりゃあのう…残っていたら怒りのミサイル攻撃で全艦撃沈してくれるわ」


作者「こ、怖い…」


凛「京子、試し撃ちしたら?」


作者「ええ!」


京子「いい考えじゃ」


凛・エリーゼ「撃てぇ!」


作者「ぎゃああああ!」


ズドオオオオオオン

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