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プロローグ 「よくある?日常」

―――――――――――――――――――――

「アアアアアアアアアアアアッッッ!!!違う違う違う違う違う違う!!!私が作りたいのはこんなモノじゃないいいいぃぃぃ!!!」


叫び声がして、ふと瞼を開ける。

(…ここは…どこだ?)


何も思い出せない。ただ分かるのは、自分が液体の入ったカプセルの中に入っていること、そして、目の前に―――がいることだけだ。


「何故っ!!?何故っ!!?どうしてっ!!?どうして『アノ子』は完成しないぃぃぃぃぃぃ!!??」

―――は血走った眼で、頭を掻きむしり、机の上にある紙や書物をぶちまけたり、ガラスの瓶を壁に投げたりして、その姿は誰が見ても『狂人』そのものだ。


周りに壊すようなものがなくなると―――は、髪を振り乱してこちらを向き、よろよろと歩いた。そして、自分が入っているカプセルに手をつき、まるで親の仇を見るような眼でこちらの顔を覗き込んで、言う。

「なぜ…どうして…」

その眼は、同時にとても悲しそうなものにも見えた。



―――――――――――――――――――――

「ハッ!…はぁ…はぁ…夢…か?」

俺はベッドの上で飛び起きる。ふと自分の手を見ると、びっしょりと汗で濡れて震えていた。

最近たまに、起きたときになにか夢を見ていた気がする。そんなときは起きたときに決まって必ず手が震えている。ただ、どんな夢を見ていたのかが全く思い出せない。


何を見ていたのか分からないのに、何故か…とても悲しい気分になる。


そんな気持ちの中、ふと見上げると、時計の針は10時を過ぎていた。

「やべっ!完全に遅刻じゃん!!」

俺は布団を跳ねのけて、急いでハンガーに掛けていた制服に着替えて、机の上に置いてある生徒手帳を取ろうとしたところで、ミニカレンダーを見て今日が日曜日であることを思い出した。

「んだよ…休みの日に制服着るとかバカみたいじゃねえか…」

でも、また着替えるのもめんどくさいしこのままでいいか。俺は学ランだけ脱いでポロシャツは着たままにした。

その時、まだ顔を洗っていないのを思い出して、俺は1階の洗面所に向かった。


洗面所の前のドアに到着したとき、中に誰か入っている気配がした。この家でこんな時間に洗面所にいる奴なんて俺以外に1人しかいない。

俺はためらいも無くドアを開ける。

「あ、お兄ちゃんおはよ~。今日は起きるの遅かったね~」

中には思った通り、パジャマ姿で眠そうな妹、和葉かずはがタオルで顔を拭いていた。

和葉は中学生で、身長は普通、黒髪短髪でいつも寝癖で髪が少しはねている可愛らしい俺の妹だ。

いや、訂正しよう。可愛らしい俺の『天使』である。

「ん?今なんか変なこと考えてた?…ってお兄ちゃん?」

「ん?どうしたmy天…和葉」

危ねぇ…一瞬考えていたことをそのまま話すところだったぜ。


「…なんか顔に泣き跡ついてるけど…なんかあったの?」

「え?そうか?」

「うん。ほら、鏡見てみなよ」

和葉に言われたとおりに鏡を見ると、なるほど、確かに両頬に涙が流れた後ができている。

「ああ、なんだろうなコレ?まあ何でもねえよ」

本当は夢を見たときいつもついているが、そんなこと言えるわけがない。

「そうなの?あ、欠伸したときについたのかもね」

そんな冗談を言ってフフッと笑う和葉。やべぇ、マジで可愛い。

「じゃあ私は着替えてくるね。あ、テーブルの上に朝ごはんあるらしいから食べといてってお母さんが言ってたよ」

そう言って顔を拭き終えた和葉はパタパタと2階に上がって行った。

その可愛らしい動作をしばらくボーッと眺めていた俺は、ここに来た最初の理由を思い出して顔を洗った。



―――――――――――――――――――――

顔を洗った俺は、和葉が言っていた通りにテーブルのところに行く。すると、確かに俺がいつも座っているところに朝ごはんが置いてあった。

そして、その左の席には既に足を組んで座っている人物がいた。

「あら、今日はずいぶん遅かったのね優斗ゆうと。夜更かしでもしていたのかしら」

その人物、鳴宮優子なるみやゆうこ、つまり俺の母は、優雅にコーヒーを飲みながら少しこちらを向いて言った。

「おはよう、母さん。何でもないよ。たまたま遅れただけだよ」

俺は返事をしながら自分の席に座り、パンを口にくわえる。

「本当でしょうね?あなたくらいの年だとゲームとかにハマりそうだから心配だわ」

そんなことを言いながらも全く心配をしていない様子の母だが、別に俺も気にしないのでそのままご飯を食べる。

「それより優斗、あなた何故制服を着ているの?今日は高校はお休みでしょう?」

「あ、いやさっき間違えて着替えちゃったんだけど、着替えなおすのもめんどくさくてさ」


そう言ったとき、左からすごい殺気のようなものが伝わってきた。

俺が冷や汗をかきながらゆっくりと左を向くと、母が先ほどと同じ姿勢をとったまま目線だけこちらを向けて、静かに俺を睨んでいた。

いや、睨んでなどいない。睨まれていると錯覚するだけの気配がそこにあったのだ。

「優斗」母が静かな冷たい声で俺に話しかけてくる。

「な、なに?」

「着替えてきなさい」

「え?いや、めんどくさいし今日は…」

「着替えてきなさい」

「…はい」

母は細かいことを気にするところがある。調味料の配置が少しずれていたり、門限を1秒でも過ぎていたら、恐ろしいほど怒ることがある。

そのキレ具合が尋常ではない。うちの中では起こった時の母に頭が上がる人はいないのだ。

仕方なく俺は服を着替えるためにもう一度2階に上がった。



―――――――――――――――――――――

「はぁ…結局着替えることになんのかよ…」

2階の自分の部屋に戻って来た俺は、すぐに着替える気力がなくてベッドの上に寝転がった。

「つーか俺が制服着て一日をを過ごしても別によくね?なんか不自由なことがあっても困るのは俺だけだし」

しばらく寝転がりながらブツブツ呟いていたが、このままずっとだらけていても何も解決しないので、仕方なく俺は起き上がり、制服を脱ぎハンガーラックに掛けた後、クローゼットのドアを開けて着替えた。

正直今日は外に出かける気などなかったので、この前「安いから」という理由で母が大量に買ってきた「阿吽の呼吸」とかのダサい文字だけがプリントされている、いわゆる「ダサT」を着て、その上にパーカーを着た。

このTシャツも他に使い道が思いつかない。ちくしょう母め。覚えていやがれ。

ちなみに下はタンスの中にあったジーンズを履くことにした。

「うーん…しかしやっぱ先が冷えるな…」

今は1月、今年の冬も先端冷え性である俺をいじめに来たようで、例年よりもずっと低い気温が続いていた。しかも俺の部屋には暖房器具がないため余計に冷える。

「なんかねぇかな…おっ!」

周りを見回してみるとヘッドフォンがあいてあった。別に何かを聞きたいわけでは無いが、ただ単に耳が冷えるという理由で、耳あて代わりに自分の頭に装着した。手も冷えるが、室内で手袋をはめるのもおかしい気がしたのでそれはやめておく。ヘッドフォンのコードはパーカーの胸ポケットに入れておく。

「うーん…でもやっぱコード邪魔だしちゃんと耳あて買うか。あ、靴下履くの忘れてた」

そう思った俺は、もう一度クローゼットを開けて靴下を履いた。

「ん?」

その時、視界の端にあるものが映った。

「なんだ…コレ?」


今、俺はクローゼットの中にいる。そう、いつもの自分の家の、しかも自分の部屋のクローゼットの中だ。

当然、自分の知らないものがあったらすぐに気づく。だから、さっき入った時に気づいているはずなのだ。


ましてや、移動できるようなものでない「ドア」があることなんて、一瞬でわかるはずなのに。

読んでいただいてありがとうございます。

前作は話が思いつかなくて休みが多く、今も制作できていない大笛です…。

今回は少しギャグを入れつつも、しっかりと考えを練りながらなるべく毎日投稿していきたいと思います。

もしよろしければ、今後もよろしくお願いします!

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